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CV感染と政策対応: 日本の経験:日本型モデルは成功するか?(2)

 

 Ⅲ.   日本のCV感染展開の経緯

 

  1. 初期(2020.1~3月中旬)の動向

   ー中国で新型肺炎のウィルス感染発生

   ・2019.12末、中国武漢市で新型コロナウィルス感染発生のニュース。感染が急激に拡大

    している模様。

   ・2020.1月末から2月にかけて春節中国観光客が日本に入国。日本各地で警戒。

   ・2020.1.16にはじめての日本国内感染者が確認された。

   ーDiamond Princes号の横浜帰港とウィルス感染の顛末

   ・イギリス船籍、アメリカクルージング会社所有のDiamond Princes号、

    1.20 横浜港出港 1.25 香港の男性が香港で下船 2.1.香港男性の感染確認

    2.3. 横浜港に帰港。再検疫開始 2.5.乗客・乗員10人感染確認、14日間個室待機要請

    2.6.クルーズ船「ウェステルダム」の入港拒否表明、2.12検疫官1人感染確認 2.13

    重症化しやすい高齢者らの順次下船表明 2.14. 80歳以上11人下船 2.16.米国人が

    下船(17に米チャーター機で出国) 2.17.全員の下船前検査のための検体採取完了

    2.19.乗客の下船開始

 

   ークルーズ客船事件の教訓

   ・日本人を多く含む3000人以上の乗客と乗員を合わせ700人以上が感染。2月まで日本国内

    感染より多い。船内に14日間(のちWHOの新基準で12.5日)留め置いたことは関係国

    政府は評価(河野太郎防衛相)したが、外国メディアからは生活状況などに批判集中。

   ・なお、2.7以降、船内感染は通常の国内感染とは別集計にすると表明。

 

       2. 厚労省クラスター対策班と全国保健所職員の活躍

   ークラスター確定による感染拡大の防止

   ・感染症流行への日本当局の対応は、クラスター(少人数の集中感染)を確認し、それが

    感染拡大につながらないように人海戦術で防御するもの。

   ・感染者が発見されると保健所の職員が、これまでの濃厚接触者についての聞き取りを

    行い、感染経路と他の人々への影響を詳細に調査。調査をつうじてクラスターが確認

    されるとクラスターに関わった人々の健康状態を調査・確認して感染が疑われる人々

    は隔離する。

   ・このような極度に労働集約的な方法によってクラスターの拡大を防ぎ、感染拡大を

    防止してきた。

 

   ー厚労省クラスター班と保健所職員の感染抑制努力は評価

   ・厚労省にはクラスター対策班があり、専門家と職員の混成チームで感染拡大を

    抑制もしくは防止するための戦略を研究、策定する。

   ・全国1700余の市町村には保健所が設置されており、保健所職員がクラスター追跡の

    現場実務を担う。彼らは感染者や濃厚接触者への聞き取りなど一件数時間もかけて

    情報を収集し、感染経路の確定に尽力する。

   ・全国保健所には数千人の職員が働いている。保健所のシステムは敗戦後、占領軍の指示

    で構築された。当時、日本は衛生状態が劣悪で、多くの疫病で年間数万人もの患者が

    死亡。保健所のしくみはアメリカでも試行されたが根付かなかったとされる。

   ・感染病対策で、全国の保健所職員が担う草の根作業の重要さは評価すべき。

 

  ークラスター追跡戦略の成果と限界

   ・今回のコロナウィルス感染でも、1月から3月21日(感染者1000人)まではクラスター

    追跡戦略が奏功して感染者の拡大を抑制してきたと言える。全国で感染者1000人以下

    の段階では、クラスターは一部のライブハウス、バー、病院などに限られており確認

    されていた。

   ・しかし3月22日に感染者が1051人になって以降は、感染は急速に拡大の兆し。

   ・新規感染者の急増のうち、感染経路の不明な感染者の割合が増え、6~7割になると

    クラスター追跡戦略は限界に直面。クラスターを追跡できない。クラスター戦略の効果

    がなくなる。

 

       3. 感染検査(PCRテスト)の少なさと遅さとその背景

   ー感染検査による隔離戦略

   ・クラスターを追跡・確定してそこからの感染の拡大を防ぐ方策が感染経路不明の

    感染者が増えたことで限界が見えてくると、PCRなどの感染検査によって感染者を

    確定して隔離することがより重要になる。

   ・より効果的に感染者を発見して隔離するためには、できるだけ多くの人々に感染検査を

    行い感染者を隔離することが感染拡大を防ぐためには効果的なはず。

 

  ー感染者を多く確定することが本来は合理的

   ・韓国や台湾では、そのために効果的にできるだけ多くの人々に感染検査をする戦略を

    採用している。韓国では現時点で約50万人にPCRテストを実施した。日本は13万人。

    韓国の人口は日本の約4割(5180万人)ほどなので、日本の人口に当てはめれば120万

    人、すなわち10倍の検査が行われたことになる。

   ・韓国や台湾の考え方は早期に感染者を確定して隔離して感染拡大を抑制するとともに、

    感染していない人々には仕事をしてもらうという合理的なもの。欧州でもドイツは同様

    な考えで感染検査を大規模に実施している。ちなみにドイツの検査は日本の17倍。

 

  ー日本のPCRテストが少ない理由

       ・PCR検査を受けるには、まず、保健所が運営する「帰国者・接触者相談センター」に電話。

      検査が必要と見込まれれば、PCR検査を担う「帰国者・接触者外来」を紹介してもらう。

     全国860ヶ所(東京都は77ヶ所)の「帰国者・接触者外来」の医師が検査の必要性を判断。

    ・感染確認されれば「感染症法(1999年4月1日施行)」の規定で無症状や軽症でも原則入

   院。ドイツは軽症なら自宅待機。

  ・厚労省は、検査の網を広げすぎると、誤判定も含め入院患者が急増して病院が機能不全に

   陥り医療崩壊につながると警戒。CV感染しても8割は軽症のまま回復。肺炎の症状が確認

   されない段階で多くが検査を求めると今の医療体制では現場が混乱し重症患者への治療に

   支障をきたすとの懸念。

 

  ー疫学調査の思想

  ・厚労省は感染検査を医療行為というより感染症拡大を抑える公衆衛生の「疫学調査」と位

   置付けた。公衆衛生を司る「感染症研究所」は自前で確立した検査法にこだわり、民間の

   キット使用などには消極的。したがって検査数がふえない。

  ・検査を受けるまでにも、37.5度以上の熱が4日間つづくなど多くの条件があり、検査を

   受けるには障害が多い。

  ・安倍首相は4月初め1日2000件ていどだった検査を1日8000件をめざすとしたが、進捗は

   鈍く4月末でも1日4~5000件ていど。

 

  ー官邸の要請にも厚労省マフィアが”専門知見”を盾に壁

  ・4月上旬、首相、PCR検査はなぜ増えない?

   厚労省は、37.5度4日以上などに絞り検査。各国が検査増やすなかで異質対応。

   理論的支柱は医師免許もつ医系技官。新設次官級ポスト医務技官には鈴木康裕。その独立

   性が動きを鈍くしている?

  ・重度の応じて区別するしくみをつくり検査数を増やす方向でなく、軽症社の入院が増え

   続ければ、重症患者に手が回らなくなる「医療崩壊」を懸念する従来の姿勢が先。

  ・「検査には誤判定もあるし、陽性でも8割は無症状や軽症」との見解による厚労省対応は

   海外から批判。米国大使館は罹患者の割合を正確に把握しがたいと米国民に帰国呼びかけ

 

  ーPCR検査はようやく医療保険対象に

  ・しかし、感染拡大が進む中、病院検査に慣れた”検査大国”の人々はPCR検査が少なく不満

   と不安が増大。厚労省も3月に入ってようやくPCR検査を公的医療保険の適用対象に。この

   結果、これまで各地の保健所が検査の適否を判断してきたが、今後は専門外来の医師が必

   要と判断すれば、保健所をとおさなくても検査可能に。検査数の増加が期待されるが、

   地方衛生研究所の検査能力の制約もありあまり増えないとの現場に見方。

 

  ードライブスルー検査ようやく始動

  ・ドライブスルー方式実施認める厚労省事務連絡。4.15. 名古屋市、新潟市先行。

  ・大都市では検査対象をひろげて感染者を隔離する対策が急務。DT方式認めるのが遅すぎ。

  ・東京都医師会、4.15.都内20箇所にPCR検査所を設置する方針発表

   医師会の協力で保健所の負担軽減し、PCR検査も増加の方向

 

        ーPCR検査の「相談・受診の目安」改定

  ・PCR検査は受けたい人が多いのに、厚労省が「受診の目安」を設けていたために、保健所

   などの現場ではそれを”基準”と受け止めて忠実に希望者の選別をしていたことが、検査数が

   ふえない一因との批判が高まっていた。

  ・たとえば「37.5度以上の発熱が4日間継続」という目安のために受診できずに自宅療養で

   死亡者が出た例があるなどの批判が寄せれられていた。

  ・厚労省には、軽症の人が多く受診を求めてくると保健所や医療機関が対応しきれず医療

   崩壊につながるとの懸念もあった模様。

  ・厚労省は200.5.7.ようやくこの体温数字を削除し、息苦しさや強いだるさで相談できると 

   した。

 

       ーPCR検査目詰まり深刻

  ・5月半ばの時点でPCR検査の現状は目詰まりなお深刻。

  ・PCR検査目標2万件(能力2.2万件)実際は多い日でも8000

  ・相談窓口となる保健所の業務は依然として逼迫

    保健所が運営する「帰国者・接触者相談センター」を経由せず、検査が受けられる

    PCRセンターは全国46ヶ所、予約制でかかりつけ医師の紹介が必要ケース多い。

  ・民間の医療機関などもっと多く検査する能力あっても、院内感染を遅れて踏み切れず?

    PCR臨床検査は精度管理、取り違え防止、個人情報保護など高い水準、自身も

    感染するリスク負う。

  ・医師が不要と判断すれば検査は受けられず。希望しても受けられると限らない。

  ・検体採取の場所も防護服などを備えた医療機関に限られる。

 

   4. 抗体検査とコロナパンデミック収束の可能性

  ー抗体検査への関心の高まり

  ・4月に入って欧米で抗体検査に関心が高まる。過去にウィルスに感染した人の体内には抗

   体ができている可能性があり、抗体があればそれが免疫細胞の増殖を促すので、ウィルス

   への抵抗力が高まり、再度の感染はしがたいという見方。

  ・抗体をもっている人は免疫力が高いので、外出や一定の就業も可能ではないかという考え

   が関心の根底にある。抗体保有者が多ければ、彼らが外出や就業をすることで、感染抑制

   策としての都市封鎖や外出禁止も緩和でき、経済回復に役立つという期待感。

  ー抗体検査の実験例

  ・抗体検査の実験例として、スタンフォード大学の研究チームがカリフォルニア州サンタ

   クララ・カウンティで3300人のボランティアに行った検査の結果が注目された。検査者

   の2.5~4.2%に抗体が確認。サンタクララ人口200万人に当てはめれば4.8万~8.1万。

   その時点で確認されている感染者の50~80倍。

  ・NY州のクオモ知事は4.23.市民3000人に対して行った抗体検査で13.9%の保持者を確認

   したと発表。NY州の人口1850万人に当てはめれば270万人が抗体保持者となる。同様の

   検査はロスアンゼルス、ドイツ、オランダ、イタリーでも実施され、日本でも東京と東北

   地方で500人ずつ検査が実施され結果は5月初にも発表される予定。

 

  ーコロナウィルス感染の死亡率は低い?

  ・これらの抗体検査の結果は、これまでのPCR検査による感染者の死亡率に対して新たな

   視点を提供する。これまでは新型コロナウィルスによる死亡率は5~6%と高いと考えられ

   てきた。例えばアメリカの感染者は4月末で94万人、志望者は5.4万人。死亡率は5.7%。

   しかし、母数をアメリカ人口3.3億人の14%とすれば4620万人、死亡者5.4万人はその

   0.12%と極めて低くなる。

 

  ー抗体検査の信頼性?

  ・ただ、抗体が新型ウィルスへの抗体なのかどうかが不明など専門家の間でも疑問の声も

   あり、WHOも抗体検査の信頼性には疑問を呈している。ドイツでは抗体保有者に「免疫

   パスポート」を発行する案もあるが、新型コロナウィルスへの抵抗力が必ずしもない感染

   経験者が出歩くことが感染をさらに拡大する可能性も現状では否定できない。

 

  ー集団免疫と感染収束への潮目

  ・ウィルス感染が収束するかどうかの潮目は、人口の約6割が感染経験者になるかどうか

   とされる。そこまでいわゆる「集団感染」が増えれば、その大部分は抗体を保持している

   と考えられるから「集団免疫」が増え、感染の拡大はその潮目を過ぎれば収束するという

   考え。

  ・アメリカを例にとれば、それには約2億人が感染するのを待たねばならない。NY州の実験

   から推定される抗体保持者4600万人のまだ4倍以上が感染する必要があるという気の遠く

   なるような話である。

 

5. Social distancing(人々の接触禁止)をいつまで続けられるか

   ー実効再生産数と感染の収束

   ・一方、一人の感染者が何人に感染をひろめるかについて「実効再生産数」という指標

    がある。最近までそれは1.7くらい、すなわち一人の感染者が1.7人に対して感染をひろ

    げる傾向があるとされてきた。

   ・この数字が1を下回れば、感染は次第に縮小していく。いいかえれば、ワクチンがなくて

    も、感染を収束させることができる。

  

   ーSocial distancingは有効だが経済には劇薬

   ・実効再生産数を引き下げるには、人から人への感染の確立を下げる必要がある。すな

    わち、人の接触確率を減らず必要。そのためにはsocial distancing(社会的距離)を厳格

    に守ることが必要。

   ・しかし、人間社会は本質的に人々の交流で構築され発展してきた。人々の接触を禁ずれ

    ば、社会機能は停止し、経済は崩壊するおそれがある。

 

  ーSocial distancingは短期勝負

   ・Social distancingは有効なワクチンが存在しない段階では、ほとんど唯一の感染抑制法

   ・しかし、これは経済の息の根をとめかねない劇薬。劇薬の投与は短期に限るべき。

    短期の勝負は迅速、短期かつ徹底的がのぞましい。短期の投与は感染を抑制して、

    経済機能を維持させる可能性がる。

   ・不徹底に長期につづけると感染は収束せず、経済機能は長期的に衰退する危険が高い。

 

  ー短期に感染を抑制しても感染を克服できる保証はない

  ・短期に感染が抑制されても、徹底的なSocial distancingをいつまでも続けることは  

   できない。やがて感染第二、第三派が高まる可能性もあり、また変異したウィルス

   の新たな襲来もありうる。新型コロナウィルスは変異の可能性が高い。

  ・それでも当面はSocial distancingを徹底するほか方法はない。

 

  ー「実効再生産数」の削減と感染収束

   ・「実効再生産数」(1人の感染者が何人に感染させたかを示す)日本では3.21.~3.30

    の確定データで1.7。その時点で数万人の感染者がでていたドイツ2.5を下回っていた

    が。4月にはいって感染増がつづき、ドイツを上回った可能性。この指標が増え続ける

    と感染爆発になる可能性が高い。

   ・この数字は世界では多くの研究者が競って推計しており、データに即して更新がつづく

    が、日本では北海道大学の西浦博教授に負担が集中しており、4.1.以降更新されていない

   ・この数字が1.0以下で持続すると感染は収束に向かう。再生産数を下げる唯一の方法

    は人との接触を減らすこと。Social  distancingを徹底するしかない。

   ・その後、実効再生産数の更新値が発表された。それによると: 

     全国では 3.25で2.0、4.10で1.0、東京では3.2で2.6、4.10で0.5.

 

  ーワクチン開発への期待

  ・強力で効能高いワクチンが開発され。多くの人々に普及すればコロナ感染を克服する

   可能性が高まる。

  ・現在、世界各国の研究機関等でワクチン開発の懸命な努力が行われているが、

   ワクチンの開発には、検体の確保、検査分析、試薬の製造、投薬試験、治験など  

   のプロセスに早くても数年の時間がかかる。今回の場合、特例で過程を短縮しても

   1~2年はかかるとされる。

  ・この問題は本稿のテーマの外にあり、別の機会に詳論したい。。

 

 6. 2020.3.下旬から東京はじめ新規感染者増加が加速

     ー小池都知事危機感あらわ

   ・3月下旬になって東京都の感染者増加がにわかに加速しはじめた。3月23日から25日

    の3日間で新規感染者が74人増え、東京都だけで210人になった。日本全体ではまだ

    1100人ほどだったので、東京の急増が目立った。

   ・都知事は25日、都庁で緊急記者会見。「感染爆発になるかどうかの重大局面だ」

    3月21~23は花見シーズン最中の三連休。自粛要請の中でも人出が多く気のゆるみ?

   ・東京の3月下旬の感染者増のうごきは1ヶ月前のNYに酷似していた。NYはその後、急速

    に感染爆発が起きたので、知事はじめ東京都関係者には危機感が募った。

 

 

Ⅳ.   政策対応と問題点

 

  1. 学校休校と特措法

 

   ー学校休校要請

   ・政府も新規感染者増加の傾向を警戒。安倍首相は2.27突然、新型ウィルス感染症

    対策本部で、全国の小中高、特別支援学校に臨時休校要請する考え表明。3.2.か

    ら春休みまでの期間。

   ・荻生田文科相は、全国の学校を一斉休校させる環境整備を憂慮したが、首相は決断。

    クルーズ船対応まで前面に居た菅官房長官に代わって、今井首相補佐官(経産相出身)

    と北村国家安保局長が首相のブレーンとなったとの観測がもっぱら。

 

   ー中国・韓国からの入国制限

   ・3.5.北村氏はそれまでの湖北省からの入国制限を拡大し、中国韓国からの入国者を2週間

    待機させ、ビザ効力も停止する措置を実施する主導的役割。

    

   ー改正特措法成立

   ・3.13.インフルエンザ対策特措法の対象に新型コロナ感染症を追加する改正法が成立。

    感染が急速に拡大した場合、首相は「緊急事態宣言」発令可能。知事は宣言を受け、

    法律にもとづいた外出自粛要請や学校などの使用制限要請・指示ができることになる。

 

  2. 緊急事態宣言

 

   ー緊急事態宣言発令

   ・安倍首相は4.7.夕方、7都道府県にたいし緊急事態宣言を発令した。

   ・小池東京都知事は3月25日以降の新規感染者数のうなぎ登りの増加傾向に危機感を

    募らせており、知事に外出自粛、商業娯楽施設などの休業要請、医療施設整備の

    ための建物・土地収容などについて法的権限を付与する緊急事態宣言の1日も早い発令

    を待ち望んでいたが、安倍首相は発令を逡巡し、3週間近くも貴重な時間を浪費した。

   ・首相はようやく4.5に宣言の検討を専門家と対策会議に諮問し、4.7.18時の発令となった

    が、首相の意思決定の遅さに国民の不満と不評が高まった。

 

   ー緊急事態宣言は無内容?

   ・安倍首相は”命を守る緊急事態宣言”と自画自賛したが、欧米、アジアなどの海外

    メディアは一斉にその中身を批判した。

   ・批判の焦点は、lockdown(都市封鎖)なし、交通規なし、外出は自粛を要請するのみで

     罰則なし、生活必需品の販売と購買は自由というような宣言で果たしてsocial 

               distancingによって感染抑制の実効があがるのか?に向けられていた。

 

   3. 休業要請をめぐる東京都と国のバトル

 

   ー緊急事態宣言を想定した東京都の実行案

    ・安倍政権の緊急事態宣言発令があまりに遅れるのに危機感を抱いた小池都知事率いる

     東京都の対策本部は、国の緊急事態宣言が発令されたとの想定の下に、東京都として

     の実行案を策定していた。

    ・その骨子は、人々への外出自粛要請に照応して、外出する人々が向かう先の商業や

     娯楽施設、不急の生活サービス、大学など公共施設などに広く網をかけ、人々が集

     まる場所に休業を要請し、外出自粛を徹底させようというもの。

    ・バー、ライブハウス、居酒屋など、生活必需品を売るスーパーなど以外の百貨店や

     ホームセンターなどの商業施設、ほとんど全ての娯楽施設、スポーツ施設やジム、

     医療施設以外の美容、理容など生活サービス、大学・保育園など教育施設、など

     広範に及ぶ。この実行案を4.7の安倍首相の緊急事態宣言と同時に発表すると予定。

    ・都側は感染爆発が秒読みと切迫感を強めており、小池都知事は「危機管理の要諦は

     最初に大きく構えること」と主張していた。

 

   ー国の反発と抑制策

   ・都は宣言発令前の6日、休業リスト素案を国にしめし、発令直後から実施しようとした。

    国は特措法45条の施行令に規定される施設以外を含むことを問題視。居酒屋と理髪店。

   「それらを対象にしたら訴訟リスクを抱えるのは都知事ですよ」と警告。

    国はリストに含むより午後8時の閉店をお願いすれば、休業要請でないので法律は

    クリアできると代案を提示。都は時間短縮の代わりに居酒屋など営業継続を受け入れ。

 

   ー2週間も待てない

   ・国は緊急事態宣言発令後、2週間ほど外出自粛要請の効果を見極め、45条にもとづく

    休業要請を出すか検討する方針だった。

   ・これに小池氏は「2週間も待てない」と反発。都が想定していたのは、特措法24条に

    もとづく知事の権限にもとづく要請だった。

   ・国は、20条の「国が各都道府県の措置を総合調整できる」との規定を盾にとって

    「政府対策本部長(首相)は知事が実施する対策について総合調整ができる(菅長官」

    と主張。

   ・小池知事は「権限はもともと社長かなとおもっていたら天の声がいろいろと聞こえ

    中間管理職になった感じ」と憤慨した。

   ・総合調整の及ぶ権限の範囲や強さに具体的基準がない曖昧さがそもそも問題。

 

   ー他の自治体の対応と国・都の合意

   ・小池知事は7府県の同調を期待したが、神奈川県の黒岩知事は東京のように休業補償の

    財源がないとして休業要請に二の足を踏み、他の府県は様子見を決め込んだ。

   ・東京都は、独自の財源から休業事業者には最大50万円の「協力金」を検討。

   ・4.9.午後8時から1時間、小池都知事は西村康稔財政・再生相と会談。折衷案で合意。

    宣言発令から貴重な72時間が浪費されたことになる。

 

   ー緊急事態宣言の全国適用

   ・緊急事態宣言発令後、名古屋、京都をはじめ多くの自治体から緊急事態宣言の適用を

    望む声が上がった。宣言にもとづく休業要請のない自治体に、東京など宣言を受けた

    自治体から人々が参入してきて感染リスクが高まるという懸念。

   ・4.17、安倍首相は緊急事態宣言を全国に拡大し、とくに13都道府県を「特定警戒」

    地域に指定した。

 

  4. 緊急経済対策の内容と問題点

 

  ー緊急経済対策の内容と問題点

  ・緊急事態宣言と同時に発表された緊急経済対策の骨子は以下。

 

     事業総額総計 108.2兆円

     財政支出 39.5兆円

       アビガン確保やマスク配布、自治体交付金       1.8兆円

       中小企業資金繰り対策                3.8

       中小企業などへの給付金               2.3

       減収家計への給付金                 4.0

       (これは補正再決定で当初の3倍の           8.9兆円)

   

       財政投融資                    約10兆円

         日本政策金融公庫の危機対応融資や特別融資 9.3.   

         日本政策投資銀行の大企業向け出資ファンド 0.2

       19年度補正予算の未執行分          9.8

 

      経済対策にともなって支出される民間資金など   42兆円

      企業の税や社会保険料の支払い猶予        26兆円

     

   ・108兆円というGDPの2割に及ぶ超大規模対策だが、おそらく安倍首相の側近主導に

    よる急ごしらえの対策と思われ、中身には多くの問題。

   ・国民の関心事でもあり、経済政策としても重要な「減収家計への給付金」には

    4兆円計上されているが、これをどの階層にどのように給付するのか不明。これ 

    は項をあらためて検討。

 

   ・休業補償の予算が計上されていない。安倍首相はじめ政権幹部は休業補償は産業・

    企業によって事情が異なり「不公平」になるから、それよりも国民への現金給付

    をする、と説明しているが、なぜ不公平なのか不明。本来、要請されて休業する

    事業者の事業継続を支援する休業補償こそが”公平”であり、経済活動を維持する

    ために不可欠なのではないか。

 

   ・緊急経済対策は医療対策や中小企業の経営支援など緊急性の高い政策とコロナ

    克服後の経済のV字型回復を支援する対策の両面構成とされているが、なぜ”緊急”

    経済対策に将来のV字型回復への支出が計上されるのか、意味不明。それは緊急

    事態の克服が見えてきてからにすべきでは。また、V字型回復支援関連で民間

    資金が42兆円など対策規模の見かけ上の”嵩上げ”が行われているのはわかり難くて

    問題。

 

  ー減収事業や家計への給付はどう実施?

   ・総額4兆円の国民給付の内容は以下のように発表された。

 

      ・中小・個人事業主向け給付は売上半減が条件

        中堅・中小企業  最大 200万円

        個人事業主    最大 100万円

         (個人業主にはフリーランスも含まれる)

 

      ・世帯が給付を受けられる基準は複雑(Fplanner助言による)

                 低所得世帯     収入急減世帯

        単身会社員    100万円以下    200万円以下

        3人家族

        (会社員、主婦、子供)205万円以下    410万円以下

        2人家族

       (会社員、子一人)  155万円以下    310万円以下

 

     ・この対策は対象の選別や給付の額についての考え方の基準が不明で

      極めて判り難い。これは給付を期待する多くの人々の不満を呼び、

      下記の”ドタバタ劇”の原因となった。

 

     ・また、これを実行することはおそらく技術的にも極めて困難と想像される。

      例えば、売り上げが急減する事業主や、所得が急減する世帯などに対し、自主申告

      に基づいて給付するとしているが、給付が妥当との判断の根拠となる申告データ

      の信憑性をどう確認するのか。多くの虚偽申告をどう識別するのか。

 

     ・マイナンバーの普及と銀行口座との連結が達成されていない中での給付の判断と

      執行は事実上困難もしくは莫大な時間がかかって実効性がない。

 

   ー原案とり下げと一律10万円給付へのドタバタ劇

    ・緊急経済対策は4月半ばに「補正予算」として確定し、実施にはいる予定だったが

     「減収事業家や家計への給付」が判り難いとの批判が多く寄せられ、与党自民党内

     からもまた公明党からも強い批判と一律給付への要望があり、急遽、当初案を 

     とり下げ、国民全員に一律10万円給付とする変更(ドタバタ劇)があった。

    ・発端は4.14.二階発言、一律10万円を求める切実な声がある。できることは速やかに

     実行を。

    ・公明党山口那津男代表、我が意を得たりと急遽決まった15日首相面会で強硬主張。

     もともと公明党は、立憲民主と同様、3月末に一律10万円案を提案していた。

    ・30万円の政府案発表後、支持者から1.5万通のクレーム、「内閣の評判悪い、危機的

     状況だ」首相は「補正を成立させた上で方向性をもってよく検討」と応じた。

    ・しかし、山口氏は16朝も電話で食い下がった。できねば野党案に同調もと脅し。

 

    ・首相は折れた。麻生太郎氏(リーマン1.2万円の定額給付金で効果なしの体験)は

     疑問を呈したが首相は麻生氏の懸念を押し切り岸田政務調査会長に10万円案を指示。

    ・閣議決定した補正予算の組み換えは異例(歴史上3回のみ)

 

   ー補正予算(緊急経済対策)の再決定(史上3度目)

   ・減収家計(約1300家計)への30万円給付=約4.4兆円を取り下げ、国民全員

     一律一人10万円とした結果、家計向け給付は8.9兆円。

    ・緊急経済対策総額は117.1兆円となった。

 

 

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