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2020年6月

コロナウィルス感染と世界経済(1)

 

コロナウィルス感染の蔓延の中で世界諸国はその被害を最小に留めようと懸命な取り組みを進めています。感染を抑制するためには人々の接触を叶う限り無くすことが要諦ですが、それを徹底すれば経済活動は停止することになります。

2019年12月末に中国で新型コロナウィルスが発生してからほぼ半年が経ちますが、世界諸国は感染抑制か経済活動維持かのtrade offの最適なバランスを求めて試行錯誤を繰り返しています。本稿では世界各国のその取り組みの実態を経済の観点から体系的にかつ詳細に展望し、今後求められる方向についての手がかりを提示しています。

本稿は大変長い文章となったので、全体を5つのパートに分けてこれから順次このブログに掲載していきたいと思います。ご高覧戴ければ幸いです。

 

Ⅰ.   はじめに

 

 ー世界は、今、新型コロナウィルス感染の猛威に襲われているが、各国は懸命に感染拡大を

  防止して犠牲者を最小にすべく総力を挙げて取り組んでいる。

 

 ーウィルス感染を防止するためには、有効なワクチンが開発されて世界の人々に広く提供される

  ことが何よりも求められるが、それまでには相当の時間がかかると見込まれている。

 

 ー効力のあるワクチンによって感染が収束するまでの期間、感染の拡大を防ぐほとんど唯一の 

  対策は、人々が接触をしないようにすることである。それは、ウィルスが非常に微小な存在

  であり、感染者の体内の細胞などに寄生するウィルスが人の咳などから飛び散る飛沫の中に

  含まれて他の人に付着して感染する、あるいは人が会話する際の呼気に含まれたウィルスが

  他の人に移ることがないように、人が他人の至近距離に近づかないようにするためである。

 

 ーそのために世界諸国では、人々が移動せず、集合せず、近寄らないために、いわゆるSocial

  Distancing(社会的距離の確保)を人々に要請し、さらに要請するだけではSocial Distance

      が確保されない場合には、都市をlockdown(封鎖)したり、人々が集まる商業施設、娯楽

  施設、学校などを閉鎖する対策をとっている。

 

 ーこうしてSocial Distanceを確保することは、ウィルスの感染を抑制するためには必要では

  あるが、人々が会話をし、会食し、集合し、集会し、通勤、通学、さらに地域や国境を

  を超えて移動することは、まさに経済活動そのものであり、そうした人々の行動を抑制

  したり禁止することは経済活動そのものを抑制し停止させることである。

 

 ーしたがって、感染を防ぐために経済活動を抑止・停止するのか、経済活動を継続するために

  感染を許容するのかは, 今、世界諸国さらには人類が直面している重大な選択もしくは

  trade offの大課題である。

 

 ーウィルス感染の問題は今にはじまったことではない。ウィルスは何億年も前から存在した

  ことが知られており、おそらく人類よりも長い歴史をもっている。人類が文明を持って

  からも例えば中世の”黒死病”では欧州人口の多くが犠牲者になったとされており、1918~

  1920年の三波にわたったスペイン風邪では、3500万人もの人々が犠牲になった。近年で

  もエイズと通称されるHIVやエボラ熱などが記憶に新しいが、それらは皆、ウィルス感染の

  現象であり、さらに言えば毎年多くの犠牲者が出るインフルエンザもウィルス感染である。

 

 ー文明が発達し、医学が長足の進歩を遂げてきた現代では、こうしたウィルス感染にたいして

  は効果的なワクチンが開発されて、感染の流行やパンデミックは一定時間の後には沈静化

  し克服されてきた。今回の新型コロナウィルス(WHOはこれをCovit19と命名したので、

  これからは本稿ではCVと略称したい)に特徴的なことは、これが非常に急速に短期間に

  世界中で蔓延したことである。12月末に中国の武漢市で感染が発見されたとされているが

  中国を含め、わずか2ヶ月後には欧州で感染爆発が起き、3月後半からはアメリカが感染大

  爆発の被害をうけている。効果的なワクチンが開発されるまでには、世界諸国はおそらく

  一回以上の膨大な波状感染の被害を受けることになるのではないか。

 

 ーCVがあまりに短期間に世界全体を覆って甚大な被害をもたらしたおそらく最大の要因は

  新型のウィルスがあまりに強悪な性質をもっているということ以上に、世界のいわゆる

  グローバル化があまりに高密度に進展したことにあると思う。

 

 ー近年、情報化が急速に進展し、人々は個人でも組織でも国家レベルでも瞬時に世界中の 

  どんな情報も入手できる時代になった。情報で理解したことを具現化し現実の成果にする

  ために、人々はこれまでとは比較にならない速さと密度で、交流し、会合し、交渉し、集会

  し、世界中を移動する。現在の世界では、国境を超えて何億便もの航空機が延べ何十億人も

  のグローバルな移動を実現している。CVの急速で爆発的な感染はまさにこのようなグロー

  バルな人の動きに乗じて展開したといえる。

 

 ーCVパンデミックを収束させるには、まさに、現在の世界の経済活動を支えているこうした

  人々の動き、あるいは経済活動そのものを抑制する必要がある。感染抑制か経済活動の抑制

  かという深刻なtrade offに直面して、世界諸国では、今、経済活動の抑制を最小限に抑えて

  感染を効果的に抑制できないか、懸命な試行錯誤が行われている。

 

 ーCV発生源となった中国では、感染爆発を強力な感染者隔離政策で短期間に収束させた。

  イタリーはじめ欧州諸国では感染爆発による多大な犠牲をはらったが、少しずつ、経済

  活動の再開を試行している。アメリカは感染対策が遅れたため、NYを中心に感染爆発

  が起き、莫大な犠牲を被っている。韓国、シンガポール、台湾などアジア諸国ではSARS

  の経験を教訓にして早期の感染防止策をとり、一定の成功を収めている。

 

 ー日本は1.2億人という大きな人口の割には累積感染者数も死亡者もすくなくとどめてきた。

  しかし2020年3月下旬から新規感染者数が急速に増える兆しがあり、4月7日に緊急事態宣言

  が発令され外出自粛と店や施設等の休業を要請した結果、感染爆発は回避された。とはい

  え、こんご第二波、第三波の感染拡大が起きた時に有効に機能する感染抑制体制を構築した

  とは言えない。

 

 ー感染の経験とならんで、これらすべての国々に共通する大きな関心は、感染の増加を抑制

  しながら、どのように経済活動を再開し、持続していくのか。また感染収束を視野にいれて

  感染がもたらした莫大な経済被害を克服し、将来のV字型回復につなげるのか、ということ

  である。そのためには、すべての国々で、また国際協力をつうじて適切な経済政策が立案

  され、実行される必要がある。

 

 ー本稿の目的は、そうした問題を実際の事象の観察をつうじて体系的、総合的に考えること 

  である。

 ー以下では、II章で、 CV感染抑制と経済活動抑制のTrade Offの関係を理論的に整理、

  III章で、CV感染の世界展開の過程で生じた経済活動の崩落とそれを緩和するための 

  経済政策、崩落の原因となった感染抑制策の解除の動きなどを事実に即して展望、

  IV章では、世界各国のCV感染抑止への取り組みの経験を中国、EUと欧州諸国、アメリカ、

  アジアとして韓国、シンガポール、台湾そして日本の順で跡付け、

  V章では、IMFの2020.4.の世界経済展望を中心に経済予測と金融、財政問題レポートを

  紹介、VI章は結語に換えて今後の課題を5点ほど述べる。

 

 

Ⅱ.   CV感染抑制と経済活動抑制のTrade Off

 

1. ウィルス感染の増大と収束

 

 ーCVの感染は2019年12月末に中国武漢市で確認され、2020年1月から2月にかけて中国で

  感染は爆発的に拡大した。1月下旬から中国当局の強力な感染抑制策が展開され、2月下旬

  から感染は収束にむかった。2月中旬から感染は欧州で急速に拡大し、3月には欧州諸国は

  感染爆発が進行した。3月にはいると感染はアメリカで急激に拡大した。アメリカは5月

  下旬には感染者170万人、死者10万人を超えて甚大な被害を被っているが、まだ、収束の

  段階にはいっているとはいえない。韓国、台湾、シンガポールなどアジア諸国は検査と

  感染者隔離の徹底で、感染爆発を回避しており、日本は5月末までの段階では感染拡大の抑制

  と死者の最小化を達成している。

 

 ー以上、CV発生以来およそ半年にわたる世界諸国の感染状況の経緯を概観したが、CV感染

  の拡大を抑制する各国の努力もあり、アメリカ以外の諸国では、感染の急増から1~2ヶ月

  のうちに新規感染者の増加が逓減しており、感染はピークから収束の局面に移行している

  ように見える。図1.参照

 

 図 1. 世界諸国の感染状況:感染増大と収束  

Photo_20200618170101

 

 図1の展開を単純にモデル化すると図2のように描けるだろう。

  図2の曲線は、epidemiological curve(疫学的感染曲線)と言われる。

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 ・左から右は5段階で示される。それは、1. ウィルスの発見、2. 感染者の確認

  3. 感染者の急増(爆発)とピーク、4. 新規感染者の減少、5. 収束段階

   

 ーCVのような感染型の疫病を抑止、撲滅するには、有効なワクチンが開発され、多くの

  人々がそれを服用して、感染しないようになることが望ましいが、CVの場合、ワクチン開発

  の努力はまだ端緒についたばかりで、開発と普及にはまだ数年はかかるとされる。

 ーしたがって、当面(1~3年)はワクチンが活用できない状態で、世界はCV感染の抑制と克服

  を図らねばならない。その状況で、CV感染を抑制する方法は、できるだけ多くの人々の健康

  状態・感染の有無を確認し、感染者を隔離して治療すること。そして、その他すべての人々に

  は互いに接触しないよう”social distancing” を徹底することである。

 

 ーCVは人々の唾や体液などの微小な飛沫に含まれて他人に感染し、また会話の際などの呼気

  にも含まれて感染するので、人々が互いに接触もしくは近接しないようsocial distancingを

  徹底することが極めて重要だが、それが不徹底だといわゆるovershoot(管理不能の感染

  爆発)現象が起きる。2月中旬のイタリーや4月以降のアメリカなど。

 

 ー管理不能の原因は”医療崩壊”。

 ・感染爆発で大量の感染者が発生。

 ・彼らが病院に殺到し、病院の医療能力を超えると医療崩壊

 ・医療システムは有限: ベッド、ICU、熟練医師・看護師、人工呼吸器

 ・病院はふつう他の病気で入院している患者の治療の従事。そこにCV感染者が大量に送り

  こまれると、感染者のみならず治療を受けられない患者は劣悪な状態におかれて死亡率↑。

 ・医療崩壊の防止=死亡者の最小化

 

 2. 感染カーブの平坦化:

 ー医療崩壊を防止するには、感染カーブを平坦化する必要

 ー感染カーブの平坦化のためには、 Social distancingと優れた医療サービスで感染率↓。

 ・入院感染者が少なければ、病院はゆとりを確保できるので、医療サービスの質↑できる。

 ・これまでの世界の経験では、中国、韓国、台湾などが死亡率抑制成功。医療崩壊回避の例

 

 ー新規感染者数を少なく抑えるにはSocial distancingを徹底することが有効。

 ・ただし、social distancingを徹底することは経済活動を抑制すること 

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 3. 感染抑制は不況の深化

 

     ーCV不況の特徴は、感染抑制がそのまま不況を深化させることになるということ。

   感染抑制のためには、現状では、都市封鎖、移動・外出禁止などの手段で人々の

   接触を回避(social distancing)をせざるを得ず、それはそのまま経済活動を低下させる

   ので、不況を深化させざるを得ない。残念ながら不況を深化させることが今のところ

   感染抑制の唯一そしてもっとも効果的な手段。

   

  ー感染カーブを平坦化することは、結果的に、不況カーブを深化させること。

  ・Social distancingの強化:学校・大学休校、不要不急ビジネス休業、外出自粛・規制

   はとりもなおさず、生産活動と取引の減少。

  ・在宅勤務できる労働者の比率はまだ限られている。 

 

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   ー経済活動減少→GDP↓

   ・CV不況はリーマン不況より深くなる。リーマン不況、毎月80万人失業    

    しかし大部分は雇用され働いている。失業率ピークは10%

   ・CV不況、短期間ではあるが、50%以上が仕事できない状態。

            この状況は経済に衝撃波を与え経済にさらに深刻な影響を及ぼす。

    経済運営を間違えるとより大きなより長期な被害。

 

   ーCVの負の経済効果

   ・医療効果:入院中、隔離中は人は働けないのでGDPにはマイナス。

   ・外出規制効果:自宅待機中は生産活動できない。

   ・期待効果:感染拡大中は将来不安が大きいので人々は消費を手控える。

   ー経済循環の負の拡大効果

    ・現代経済は相互に関連した主体が構成する複雑なwebのような構造。

     雇用者、企業、供給者、銀行、その他の金融機関

    ・このリンクが感染や隔離で断絶すると、断絶が連鎖して拡大する。

 

  4. CV不況は経済循環ネットワークをつうじて増幅する 

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   ーCV危機の中で経済循環の流れが途絶するリスク

     X1: 企業の破綻もしくは倒産

     X2: 解雇、賃金・労働時間カット

     X3:国内サプライチェーンの分断

     X4 :  金融危機

     X5 :  国際サプライチェーンの分断

     X6 :  国際需要ショック(所得減は先行き不安で需要急減)

 

   ー現代の経済は多くの主体が相互に密接に繋がった複雑なシステム:

   ・企業:雇用主=生産者

   ・家計:消費者=労働供給者

   ・政府:政府サービス提供=徴税者

   ・中央銀行:金融システム維持

   ・金融機関:資金提供、

   ・株式市場:投資、投機

   ・世界諸国:貿易:輸出、輸入:サプライチェーン

        :投資:資金市場

 

   ーこのネットワークのどのチャネルで活動阻害(disruption)が起きても国内・国際の

    多層で複雑なネットワークをつうじて、阻害効果が増幅し破壊的影響をもつ可能性。

       ・都市封鎖:企業活動阻害、売り上げ激減、雇用削減、失業増加

       ・外出規制:消費削減、サービス業の売り上げ、利益激減、雇用削減、失業増加

       ・サプライチェーンの分断:輸出入の削減、供給停止、価格高騰

       ・CV不況の不確実性:期待形成に影響、人々の消費抑制、企業の投資削減、株価急落

       

   ○サプライサイド

    ・労働供給↓←休校で子供ケア必要で働けない母親等々、死亡率↑など。

    ・稼働率↓←都市封鎖、自宅隔離、入院隔離など

    ・サプライチェーン分断←中国からの供給途絶、電子製品、機械設備

    ・SC分断はビジネスコスト↑、生産性↓、経済供給能力↓

 

   ○デマンドサイド

    ・所得↓、感染の恐怖、不確実性↑→消費抑制

    ・労働者のレイオフ。旅行業や接客業により大きな被害(例、イタリー)、航空業↓

    ・消費者と企業家心理↓→企業は需要↓を予期。企業の支出と投資削減。

    ー生産低下、廃業、→雇用喪失。

 

   ○金融への影響と波及効果

    ・借入コスト↑、融資条件厳しく→銀行が借入者が負債を期限まで支払えない不安。

    ・借入コスト↑は資金供給の脆弱性:低金利時代に蓄積:負債の借り換えにリスク。

    ー信用低下は供給・需要ショックからくる景気悪化を増幅。

 

   ーこれらのショックが多くの国々で同期化(synchronize)すると、それは国際貿易と投資

    の連関をつうじて増幅し、世界の経済活動を低下させ、商品価格を落下させる。石油

    の急落はその例。

 

   ーCV不況によるこれらのdisruptionsが、経済循環のネットワークをつうじて増幅、波及を

    くりかえし、負の相乗効果の相互作用から大恐慌に発展する可能性も。

 

   ー負のフィードバックループや負のショックを拡大するチャネルを迂回し回避。

   ・それができない(uncheck)と不況は経済の多様で複雑な連関(linkages)を破壊する

    おそれがあり、経済循環を阻害し、回復にかかる時間がより長期化する。

   

   ー経済にもカーブ平坦化の課題

   ・医療崩壊の防止策としてのSocial distancing は、同時に、経済不況カーブを悪化させる。

   ・適切なマクロ経済運営がないと、何百万、何億という経済主体の意思決定が上記の多層・

    複雑なネットワークをつうじて増幅し、不況カーブはより深くなる可能性。 

   ・個々の主体の、消費節約、投資削減、信用供与削減、慎重化などの行動。

   ・個々の主体の判断や意思決定は合理的でも、多くの主体の意思決定がネットワークを

    つうじて相乗効果を持ち、増幅すると、不況が深化するなどのマイナスの外部性

   (合成の誤謬)を助長する可能性がある。 

   

 5. 不況カーブ平坦化への経済政策

  ー重点: 

   1. 労働者が雇用され続けること(賃金給付確保):隔離されても自宅待機中も。

     家計は必要不可欠な支払いがある:家賃、光熱、ローン、保険料など

   2. 企業が倒産しないように危機を乗り切る支援:より条件の良い融資(低利、無担保、

     長期)、税、保険料、賃金、ローンなど支払い繰延措置 or  助成金支給など。

   3. 金融システムの保全(不良債権蓄積などの負担軽減):金融危機への転化防止。

 

  ーその実現のために:

   ・中央銀行は金融市場に流動性の緊急提供

   ・財政スタビライザー発動(減税と財政支出増)

    は家計と企業への打撃を緩和できる。

   ・政府は対象を絞った財政支援提供 or 経済活動全体の底上げ支援。

 

  ーこれらの措置は、悪循環の拡大を抑制もしくは防止。→不況深化を抑制できる。

 

 

CV感染と政策対応: 日本の経験:日本型モデルは成功するか?(4)

Ⅴ.   感染抑制と政策対応の経済シミュレーション

 

  ー感染抑制政策と緊急経済対策が感染の抑制と中期的にどれほどの経済コストになるかを

   判りやすく示すために、二つの対照的なシナリオでシミュレーションを試みる。

  ー中期的とはこれから2年ほどの期間。それ以降にはCVに対するワクチンが開発され

   世界の人々に広く提供される可能性があると想定。以下のシナリオはそれ以前の状況

   での感染抑制と経済コストのあり方を対照的に示す。

 

 1. シナリオA:小出し逐次政策対応と感染・経済コスト

   ー日本政府がこれまでに推進してきた感染抑制政策と緊急経済対策をシナリオ化。

 

   ーその特徴は以下:

    1)感染抑制策は日本の「感染症法」にもとづく伝統的な感染症対策を踏襲。

    ・それは国立感染症研究所を中心に地方衛生研究所と全国市町村の設置された

     保健所のネットワークを駆使して、感染者の行動追跡からクラスターを究明し、

     濃厚接触者などの健康・行動調査をつうじて感染拡大を抑制する方法。

    ・これは感染対策が小規模(全国で感染者が1000件ていど)段階では有効だが感染者

     が15000(2020.5.初)にもなりその大半の感染経路が不明の状況になると機能し難い

 

    2)CPR検査の数量が限られ、増強のスピードが極めて遅い。

    ・CPR検査を徹底して実行し、成果を収めた先行例として韓国があり、4月頃からドイツ

     など欧州諸国やアメリカなどが1日10~20万件規模で検査を実施している。

    ・日本は安倍首相が早くから1日2万件を主張しているが、5月初段階では8000程度。

     検査の数量限定と拡大の遅れは、緊急事態宣言体制の解除にともなって発生しうる

     感染再拡大(第二波、第三波)に対応するデータ基盤の乏しさから再拡大を防止する

     対応が不十分で感染再発が起こりやすいリスクがある。

 

    3)Social distancingを徹底するための休業の補償が不十分。

    ・効果的なワクチンが開発され國民に広く提供されるまでは、GV感染抑制策は感染者

     の入院隔離を除けば、もっぱらsocial distancing(接触しない)、self-quarantine(外出

     自粛)しかない。諸外国は外出を罰則で規制している例が多いが、日本は強制力の

               ない自粛要請のみ。

    ・Social distancing を徹底するには、人々が出かけ、集まる先を閉じるほかない。その

               ためには飲食や集合できる施設を閉店するしかない。日本ではそれらの施設に休業を

     要請してきたが、休業中の収入に対する補償はほとんどない。これら施設の大部分は

     小零細事業であり、資金力は極めて限られる(1~2ヶ月ていど)。確かな休業補償が

     なければ、多くが倒産、廃業そして多くの事業者と労働者(失業保険非加入者も多

     い)は所得を失い困窮者になる。結果として経済基盤が劣化し経済活力が失われる。

 

    4)緊急経済対策の発動の遅れと内容の不適格。

    ・緊急経済対策は4月7日緊急事態宣言と同時に発表されたが、感染拡大にともない

     改正特措法に基づき自治体等の感染抑制策に法的根拠をあたえる緊急事態宣言の発令

     を求める声が3月はじめ頃から高まっていたにも拘らず、政府の対応は1ヶ月も遅れ

     同時に経済対策の発表も遅れたため、迅速さが求められる政策発動が大きく遅れた

     ことは問題。

    ・発表された対策には緊急対応として医療支援のほかに所得が急減した家計や小零細

     企業への所得補償が掲げられたが、所得急減家計への補償は実効性がなく結局、國民

     全員に一律10万円給付という政治決着になり、緊急対策として本来救済すべき所得

     急減家計への集中支援はなおざりになった。

    ・総額108兆円という超大型対策の”真水”は30兆円あまりであり、多くの事業経費

     がV字型回復のための対策として観光地への”go to”プロジェクトなど緊急対策とは

     関係のない意味不明な内容。

 

   ーシナリオAは以上のような特徴をもつこれまでの日本政府の対応のしかたを前提として

    以下のシミュレーションをする。

   ・シミュレーションの時間視野は2020年ならびに2021年。

 

    (1)直接コスト:「緊急経済対策」(2020.4.7) 20.5兆円

      ・その内容は:アビガン確保やマスク配布、自治体交付金 1.8兆円

             中小企業資金繰り対策          3.8

             中小企業などへの給付金         2.3

             特定定額給付金(国民一人一律10万円) 12.6

 

       ・2020.4.7.発表の緊急経済対策に加えてさらに大型対策が実施される

        可能性もあるがここでは4.7.対策を前提。

       

    (2)間接コスト:緊急事態宣言下の休業要請は主として飲食、集会、移動などの産業の

         収益ならびに関連勤労者と事業者の所得を著しく削減するので、それらは

         国民が広く負担する間接コスト。

          ・参考:サービス業の事業所得    134.9兆円(2019年)

              JRと2大航空会社の年間売上高 10.8兆円(2019年)

              詳細はシナリオBで述べる。

       ・シナリオAでは休業補償が充分に実施されない前提なので間接コストは陽表的

        には計上しない。  

 

    (3)GDPの変動

     ・シナリオAでは、小出し逐次政策対応で、CVの感染拡大を2020年中には収束

      できず、さらに小出し対応をつづけているうちに、経済活動は2020ならびに

      2021年にわたって停滞する。

     ・GDP変動は2020、4~6月期がどん底で年率ー20%以上の落ち込みもあり得るが、

      感染収束が実現しない中で、経済も少しずつ回復する。そうした状況は2021年

      中も続くと見込まれる。

     ・GDP変動は2020.4~6月以降年率ー10%、2021年も通年平均ー10%。

 

 2. シナリオB:迅速・大型政策対応と感染・経済コスト

    ー迅速・大型・徹底政策でCV感染を早期収束、2021年に向けて経済V字型回復を

      はかる対応のシナリオ化

 

     ーその特徴は以下:

      1)迅速な政策決定とその果敢な実施

      ・危機対応で何よりも問われるのはスピード。政策が遅れることは問題への対処

       が遅れ、必要な対策を打つべき貴重な時間が失われる。緊急経済対策の構想から

       実現まで2ヶ月の時間の浪費、改正特措法が成立してから緊急事態宣言発令まで

       4週間を要した遅れ、また緊急事態宣言発令から休業要請まで2週間様子を見る

       とした政府対策本部の考え方などは大いに反省すべき。

      ・所得補償を決断しないままに休業要請をしても負担はもっぱら経営基盤の弱い

       小零細企業にしわ寄せされ、休業は徹底しにくい。休業要請は所得補償とセット

       で果敢に実施すべき。

      ・これらの反省に立ち、シナリオBでは政策の迅速な決定と果敢な実行を基本とする

 

      2)感染症対策を立案し実施する本部設置

      ・日本の感染症対策は、対策を立案し実行する体制が一元化されておらず、

        決定と実行のプロセスの権限が不明確で、対応が遅れがち、また不徹底。

       ・韓国:「疾病管理本部」省庁級で常設、

        台湾:中央感染症指揮センターが臨時政府のような強大な権限を掌握。

        アメリカ:US厚生省傘下の疾病対策センター(CDC)も強い権限。

       ・日本の感染症対策の専門最高機関は「国立感染症研究所」だが、この機能を

        生かし、単に厚生労働省の焼け太りにならないよう留意して、対策策定と実行

        の権限をもつ強力な機関を設立すべきではないか。

      

       ・参考

          日本の感染症対策はこれまで厚労省下の国立感染症研究所が主に担ってきた。

          感染研の業務の中心は研究で、知見は示すが、対策の策定や実行権限はない。

          今回、CV対応で、臨時組織を次々と立ち上げて対応。1月末に政府対策本部を設置

          した時は根拠法もなし。2月に同本部に専門家会議を設置、感染研の所長を座長に。

          法的根拠ができたのは3.26. 改正特措法成立を受け同法にもとづく対策本部とした。

          緊急事態宣言の是非を評価する諮問委員会もつくった。  

          感染研は、予算と人員、法の制約あり。平時は機能しても今回のような”戦時”では

          十分に対策をとるのは困難。

  

     3)旧習に囚われない徹底的な感染検査と国民の状況把握

      ・日本の伝統的感染抑制法は伝統的に感染経路からクラスターを究明し、その拡大

        を防ぐ方法で感染規模が比較的小さい場合は良く機能するが、コロナウィルス

        感染のように大規模になると機能しにくい。

       ・感染検査を多くの国民に徹底して第二波、第三波に備えることが必要。その

        ためにはこれまでのように検査は公的検査機関だけでなく広く地方自治体、医

        師会、大学、民間企業も総動員し、新技術も大いに取り入れて国民全員の状況

        把握をめざす。

 

     4)緊急経済対策:必要な対象に重点的効果的支援

      ・緊急経済対策は、感染抑制策によって休業が要請されその間、事業所得を失う

        多くの小零細事業者の機会所得の補償と、同時に所得が急減もしくは失業する

        労働者の喪失所得を補填する所得補償が主眼なので、一律給付でなく最も支援

        を必要とする事業者や勤労者への重点支援が基本。

       ・シナリオAでは重点給付の実行には実務的困難があったので、一律給付と

        なった。

       ・もっとも支援を必要とする事業や労働者に重点給付をするにはせっかく作っ

        た「マイナンバー制度」に就労、所得、資産状況など個人情報を接続して

        活用すれば迅速・効率的に重点的給付は可能になる。

 

      5)コロナ後の新しい経済システム構想とその実現

       ・コロナパンデミックは日本はもとより世界中の経済や社会に大きな衝撃と変化

        の契機を与えている。

       ・世界諸国はこれまで自粛と規制の解除を模索しはじめているが、それ感染の

        再発を誘引しないとは限らない。また、ワクチンの開発・普及などによって

        今のコロナ禍が克服されたとしても新たなウィルスパンデックがまた襲来しない

        とは限らない。専門家会議副座長の尾美茂氏の言葉を借りればコロナとは”長

        丁場”の付き合いと覚悟する必要がある。

 

       ・専門家会議はそのために「新たな生活様式」を提案したが、本質的な課題は、

        ウィルス感染の流行に負けない新たな経済社会システムづくりだ。人々の

        接触や移動なしに持続し発展できる経済システムを構想し実現することだ。

 

       ・その大きな手がかりは”情報と通信”の活用にある。今回のコロナ禍で、私たち

        はリモートオフィス、ネット教育、画像の活用などを経験した。今求められる

        のは、その経験を生かして日本中の組織や家庭に高度な通信環境を整備し、産

        業、教育、医療、娯楽、アートなどが人々の接触と移動なしにこれまで以上に

        実現できる経済社会システムを構想することだ。

 

       ・準備し実装する戦略を、政府は感染症の専門家だけでなく内外の英知を

        結集して描き出し、国民に良く説明して理解を共有して、夢のあるV字型

        回復像を提示する。

        

 ーシナリオBでは以上のような日本の抜本改革後の対応のしかたを前提として以下の

    シミュレーションをする。

  ・シミュレーションの時間視野はシナリオAと同じ2020年ならびに2021年。

 

   (1)直接コスト:緊急対策:医療基盤整備、休業補償、急減所得補償など:53.0兆円

      ・その内容は:医療基盤の整備・充実              10.0兆円

             休業補償                    19.0兆円  

              参考:広義のサービス業の年間事業所得は134.9兆円(上記)

                 そのうち、とくに宿泊・飲食、生活・娯楽関連などの

                 事業所得は年間約57兆円、その4ヶ月分19兆円

             航空・交通                    4.0兆円

              航空・交通年間収入は約20兆円その8割の4ヶ月分 4兆円

             所得急減家計の所得4ヶ月分           20.0兆 

           

    (2)間接コスト:緊急事態宣言下で要請される多様なサービス業の休業と国民の外出

        自粛による経済活動の休止もしくは低下は、経済の複雑な連関構造のなかで

        多様なチャネルをつうじて経済の産出と消費を縮小する。この削減効果による

        総合コストはGDPに反映する。

 

      ー参考:熊野英生、第一生命経済研究所主席エコノミストは、緊急事態宣言の

       5.31までの延長で、実質GDPが23.1兆円押し下げられると試算。5.6.までの

       1ヶ月の押し下げ効果はすでに21.9兆円に達し、合計の減少額は45兆円。

       年間GDPの8.4%に相当。

 

      ー参考:中島精也(丹羽連絡事務所主席エコノミスト)は、現在の未曾有のCV経済

       危機にたいしては敢えて迅速かつ巨額の財政支出でウィルス感染を収束させ、その

       後のV字型回復を実現すべきとし、そのためには新たにコロナ基金を創設、100

       兆円の特別国債を日銀に引き受けてもらい、うすくひろいコロナ復興債で50年

       かけて返済すればよい、と提案している「眼光紙背」(2020.5.1日経産業新聞)

   

    3)GDPの変動

     ・シナリオBでは、迅速・大型の政策対応で、CVの感染拡大を2020年秋には収束。

      2021年に向けてコロナ後の新しい経済システムづくりの準備と実装に着手。

     ・GDP変動は2020、4~6月期がどん底で年率ー30%以上の落ち込みもあり得るが、

      2020年中の感染収束を視野に、経済活動は回復。2021年には回復が加速してV字型 

      回復が実現

     ・GDP変動は2020.4~6月以降年率ー20%、2021年は前年の大きなマイナスを反映

     (反動増を含む)通年平均15%。

 

 3. 感染抑制策と政策対応の経済効果の総合評価

 

  ーシナリオAは、逐次・小出しの政策対応の結果、直接の経済コストは20.5兆円(2020.4.7

   緊急経済対策の財政コストのみ勘案)だが、ウィルス感染を早期に収束できないために

   GDP成長率は2020 ー15.0%、2021年もー10.0%となった。

 

  ーシナリオBでは、休業補償など大型対策を早期に徹底的に実施した結果、直接コストは

   53.0兆円と多額にのぼり、その結果もあってGDP成長率は2020年ー20%だったが、

   2021年には感染収束と未来志向の経済戦略の効果もあってGDP成長率は+15%と

   V字型回復を達成。

 

  ーGDPを総額580兆円前後と想定すると、2020と2021年の2年間で、シナリオBはシナリオA

   にくらべ58兆円ほど多くなる。小出し逐次対応の政策は短期には経済コストが節約される

   ように見えるが、2年間では、早期に大型対策を徹底的に執行する方がV字型回復の効果

   で経済コスト総額は少なくて済む。

  ーそして何よりも重要なことは、小出し逐次政策で感染を早期に収束できなかった場合、

   中小零細企業などの経済基盤が劣化し経済全体の活力低下の後遺症が残ることである。

 

 

 Ⅵ.    日本型モデルは有効か

  ー日本型モデル:国民の理解、自覚、行動に期待?

  ・世界の主要なモデルには、中国モデル、欧州モデル、アメリカモデル、アジアモデルなどが

   あるが、日本はそれらいずれとも異なる日本モデルともいうべき特徴がある。

 

  ・中国は共産党独裁の体制下、国家権力がしばしば私権を超越して徹底的な都市封鎖や外出

   禁止を強制し、また高度に浸透した情報化を活用して感染経路を究明し、感染拡大を短期

   で収束させた。  

  ・欧州諸国は都市封鎖や外出禁止をしたが、イタリーのように悲惨な医療崩壊もあり、人口

   の割には大規模な感染爆発の犠牲を払って、ようやく規制解除に踏み出している。

  ・アメリカは技術も資源も豊富な先進国だが指導者の失政で世界最悪の被害を被っている。

  ・韓国、シンガポール、台湾などはSARSなどの被害を教訓に感染抑制体制を高度に整備。

 

  ・日本は、伝統的な感染対策で当初は拡大を抑制してきたが、感染拡大の加速の直面して、

   都市封鎖や外出規制も休業補償もせず、人々の理解と自粛と自主的な行動変化に期待して

   感染抑制をはかろうとする独特なモデル。

 

 ー日本型モデルを支える政策支援の強化

  ・日本型モデルは、強制も罰則もなく人々の理解と自粛に期待するやり方。

  ・感染規模が少ない段階では伝統的な感染抑制策は機能したが、全国で1.5万人を超える

   規模になると伝統的な感染抑制策は限界。大規模な感染検査で国民全体の状況を把握

   する抜本的な対策とシステムの改革が必要。

  ・また休業要請は十分な補償があってはじめて徹底できる。”戦時”財政措置が必要。

  ・感染抑制体制の抜本改革と有事財政の支援があってはじめて日本型モデルの機能

   は裏付けされる。

 

  ー政策なき日本型モデルは”精神論”の罠に陥る危険

  ・上記のようは強力な政策支援があれば、国民の理解と協力に依存する日本型モデル

   は機能して、世界の貴重なモデルになる可能性がある。

  ・必要な政策支援を欠く日本型モデルは、精神論的な希望にとどまり感染の再来を防げず、

   経済は衰退するおそれがある。

 

以上

CV感染と政策対応: 日本の経験:日本型モデルは成功するか?(3)

5. 緊急事態宣言と緊急経済対策の陥弊

 

   ー意思決定の遅れと時機喪失

   ・3.13の特措法の成立後、新規感染者の増加ペースが東京をはじめ各地で高まり出し、

    危機感が強まる中でも政府は地方自治体の首長に権限を付与する緊急事態宣言になか

    なか踏み切らず、宣言発出は4週間後の4.7。この間、貴重な時間が空費されて時機を

    失した。

   ・安倍首相が緊急経済対策の策定を指示したのは3.17。ところが、公式に発表されたのは

    4.7.その後、所得急減家計への給付金が、国民一律10万円に変更される補正予算の改定

    があり、実施は5月にずれ込んだ。この変更がなくても財政規定と財政法の定める手続き

    で2ヶ月はかかる。実現に2ヶ月もかかる対策は緊急対策とはいえない。

   ・緊急事態宣言と休業要請は同時にすべきだった。宣言にもとづく外出自粛要請は休業

    要請と同時でなければ効果がない。休業要請を宣言から2週間ほど様子を見てからという

    発想は信じがたい。

   ・緊急事態宣言は本来全国に向けて発令すべきだった。迅速に最大の対策を打つのが

    危機管理の鉄則で、政府の緊急事態宣言の逐次発令はその真逆だった。

 

   ー曖昧な内容と自己矛盾

   ・4.7に発表された緊急経済対策は、総額108兆円のうち、医療支援はわずか1.8兆円、

    中小企業の資金繰りと給付が5.1兆円、減収家計給付が4兆円、その他大部分はV字型

    回復に伴う民間資金も含む事業費や税・社会保険料の支払猶予などで、とても本格的

    な緊急対策とは言い難い。また急ごしらえで各項目の内容も明確でない。

   ・休業要請をするのに、休業補償がないのは自己矛盾。サービス業の大半は小零細企業

    で、資金力が乏しい。その多くは資金繰りが1ヶ月もできなければ倒産する。本気で

    休業要請をするなら国と自治体が力を合わせて十分な休業補償をするかわりに徹底的

    な休業を要請するのが当然。

 

   ー逐次小出しの給付追加。

   ・中小企業向け「持続化給付金」売り上げ半減などの事業者対象。

     法人最大200万円、フリーランス含む個人事業主最大100万円

     予算規模2.3兆円(2020補正予算)、2020.5.8.支給開始、申し込み殺到、底つく恐れ

    ・家賃補助:自民・公明、5.8.家賃支払い困難な中小事業者への支援策で合意。

      大幅減収事業者に家賃の2/3を国が助成。上限は中堅中小企業が月50万円

      家賃の財源は2兆円弱。第二次補正の根拠に。

     ・公明党は荻生田文科大臣に、大学生らに1人10万円給付を要請。対象は低所得世帯

      やアルバイト収入で生活を支える学生など50万人想定。

 

  6. 医療崩壊は防げるか

 

   ーはじまった医療崩壊

   ・感染者の増加ペースが高まるにつれて、「感染症法」(感染症の予防及感染症の患者に

    対する医療に関する法律、1999.4.1施行)の規定で、感染者は軽症であっても入院させ

    ねばならず、それでなくても病院は通常の多くの患者に対する医療提供で手一杯の状況

    であるため、医療の供給能力を超える”医療崩壊”現象がはじまっている。医師、看護師、

    コメディカルスタッフの能力の限界が多くの医療施設で指摘されている。

   ・日本医師会は4.1.「医療危機的状況宣言」を発出。

 

   ーベッド数は多くても医療サービスが不足

   ・日本の病院はベッド数そのものは多い。イタリーのようにベッド数不足で医療崩壊が

    起きる状況ではない。

   ・人口1000人あたりのベッド数は、たとえばドイツ8.2、フランス6.2、イギリス7.1、

    アメリカは少なく2.9であるのに対して、日本は13.2(OECD調査、2016)。

   ・足りないのは医師。ベッド100あたりの医師数は、ドイツ49.9、フランス53.8、

    イギリス102.4、アメリカ88.6にくらべ日本は17.9と極端に少ない。

   ・日本は1960に国民皆医療、皆保険制度を実現したが、それを本当に担う医療サービス

    の体力がなく、いたずらにベッド数を増やして入院日数を伸ばすなかでなんとか対応

    してきた経緯がある。

   ・「日本は地域医療構想見直しで、病床の機能区分で過剰を抑制する計画をつくる段階

    でまだ動いていなかったので、なんとかなった」(横倉義武 日本医師会会長)

   ・足りないのは病床ではなく、医師、看護師、医療スタッフなど人材。彼らの過酷な

    勤務状態が医療崩壊につながる。

 

   ー外電記者(Robin Harding)による欠陥指摘(FT 2020.5.7)

   ・コロナ感染疑いの患者、引受病院探すのに数時間、40km。

   ・多くの病院、設備・資材整わないのでとくにICUに感染患者引き受けに二の足。

   ・感染患者、退院まで二度陰性検査結果必要、1ヶ月の在院も。

   ・日本はベッド数は多いのにその活用は極めて非効率。事実上の医療崩壊現象。

 

   ー防護具、機材、薬剤の不足、過少な感染テスト

   ・院内感染が各所で起きているが、感染防護マスク、アイソレーションガウン、フェース

    シールドなどの器材や薬剤不足も一因。これらの大半は中国など海外に依存していた。

   ・PCRなどの感染テストが韓国やドイツなどにくらべて非常に少ない日本の状況の背景

    要因については上述。

   ・これらはいずれも克服できない問題ではない。

 

   ー医療崩壊を防ぐ方策

   ・以上を踏まえると、医療崩壊を防ぐ方策がみえてくる。

    1. 医療人材の強化。長期的には医療人材の育成を大規模に推進すべきだが、今は

      現有の人材が過度な労働強化にならないよう、配置、編成、労働環境を整備。

      また彼らに社会が感謝し、偏見、中傷などは厳につつしむことが肝要。

    2. 防護具、機材、薬剤など、これまでの輸入偏重を改め、国産化を強く推進。

    3. PCRテストは、ドライブスルーの促進、規制を撤廃し民間企業活用推進。

 

   ー感染のピークを低位に抑えることが最大の方策

   ・最大の対策は、イタリーやアメリカNYのような感染爆発を避けるため

    感染者増加のピークを低く押さえ続けること。爆発で感染者数が医療の

    能力を超えると、医療崩壊と爆発の悪循環が起きて制御不能になる。

 

  7. ゴールデンウィークを”Stay Home Week”に

 

   ー小池流アピール戦術

   ・流行語づくりの名手、小池都知事は5月のゴールデンウィークが爆発を未然に防ぐ正念場

    と位置付け、命を守る”Stay Home週間”と名付けた。このキャッチワードが全国の

    合言葉となり、4.25~26の週末は都市の盛り場や観光地で明らかに人出が減った。

    知事はスーパーでの買い物も3日に一度にするように、など細かい要請を重ねている。

   ・知事の強い呼びかけ以降、東京都では一時は200人を超えた1日の感染者増が2週間ほど

    100人前後で推移。感染者増加のペースがやや鈍化したことはたしか。 

     

   ー接触8割削減の呼びかけ

   ・感染者数の増加が加速し始めた4月以降、安倍首相はじめ感染対策関係者は人との接触

    を8割減らすよう繰りかえし訴えた。

   ・8割削減の根拠は政府専門家会議メンバーで感染者数の予測を数理モデルで解析している

    北海道大学の西浦博教授の計算した数字。8割減達成すれば、1ヶ月で収束。0.7だと

    2ヶ月。0.6だと収束しないという。西浦教授は巷では”8割オジサンの異名。”

 

   ー国民の理解と自粛に期待する日本型の実験

   ・日本が今やろうとしていることは、都市封鎖も罰則を伴う外出規制も強制休業

    もなしに、自粛と補償なし要請で人々の行動パターンを変え、感染爆発を防ごう

    という挑戦。欧米や中国とは異なる日本型の実験。 

   ・これまでのところ、感染者数、死亡者数とも国際的にははるかに少数で済んでおり、

    日本型の実験は注目に値する。

 

   ー”Stay Home Week” キャンペーン、一定の成果

   ・G Week 連休を含む外出自粛キャンペーンは、盛場、行楽地への人出は激減。

    航空乗客率、JR乗車率は9割減少、

   ・東京の新規感染者は図5に示されるように5月以降は100人以下の日がつづいて一定の

    成果が伺われる。

 

   ー「陽性率」の公表

   ・東京都は5月にはいって「陽性率」の毎日公表を開始した。陽性率は4月上旬には30%

    ほどあったが、5月以降は7%台まで低下の傾向。

   ・毎日の新規感染者数と陽性率を合わせて評価すると感染の動向と意味が良く判るとの

    判断。その背景には欧米諸国で、陽性率の高い国では死亡者が多く、低い国では

    低いという観察事実が見られているという事情がある。

   ・陽性率は、陽性感染者数が分子だが、分母はPCR検査者数なので、検査者が多ければ

    陽性率が下がるという問題があり、検査母数の異なる陽性率をそのまま評価すること

    には問題がある。

 

   ー緊急事態宣言延長

   ・2020.54. 安倍首相は、緊急事態宣言の5月末日までの延長を宣言。

   ・延長宣言に先立ち「専門家会議」の意見。人との接触を8割減らす目標達成不十分

    行動自粛を継続すべき。週日昼間の接触制限しきれず大都市では減少4~6割。

   ・ウィルスとの戦いは”長丁場”として”新しい生活様式”を提示。例:大皿で食べない。

    食事中は会話をしない。ヨガ教習所では動画を使って練習する、など。

 

   ー緊急事態39県解除

   ・5.14. 政府は「特定警戒地域(8都道府県)」以外の39県の緊急事態宣言を5/31

    の延長期限を待たずに解除

   ・西村経財再生省は、再感染の波のおそれは高いので、解除後も感染予防に注力するよう

    注意喚起。もし感染が増えれば再指定あると警戒要請

 

  ー東京:休業解除の7条件

   ・5.15. 東京は6月からの段階的解除を目指して、休業緩和の7条件を発表

         -1日の新規感染者数   20人未満(解除)50人以上(再要請)

         -感染経路不明率     50%未満(解除)50%以上(再要請)

         -週ごとの感染者の増減   減少     倍増

        その他、重症患者数、入院患者数、陽性率、受診相談窓口相談件数

 

 ー感染収束につながるか?

  ・このやり方で感染者の増加ペースが鈍化していけば、強制なしに最小コストで達成

   された成果で、それはそれなりの”成功”

  ・しかしそのやり方でコロナウィルス感染を最終的に収束できるのか、が問題。  

   日本型モデルに問われる最大の課題。

 

 図 5  日本と東京都におけるCOVID19の新規感染者数

 

 5  

     

 

  

   

 

 

 

     

 

CV感染と政策対応: 日本の経験:日本型モデルは成功するか?(2)

 

 Ⅲ.   日本のCV感染展開の経緯

 

  1. 初期(2020.1~3月中旬)の動向

   ー中国で新型肺炎のウィルス感染発生

   ・2019.12末、中国武漢市で新型コロナウィルス感染発生のニュース。感染が急激に拡大

    している模様。

   ・2020.1月末から2月にかけて春節中国観光客が日本に入国。日本各地で警戒。

   ・2020.1.16にはじめての日本国内感染者が確認された。

   ーDiamond Princes号の横浜帰港とウィルス感染の顛末

   ・イギリス船籍、アメリカクルージング会社所有のDiamond Princes号、

    1.20 横浜港出港 1.25 香港の男性が香港で下船 2.1.香港男性の感染確認

    2.3. 横浜港に帰港。再検疫開始 2.5.乗客・乗員10人感染確認、14日間個室待機要請

    2.6.クルーズ船「ウェステルダム」の入港拒否表明、2.12検疫官1人感染確認 2.13

    重症化しやすい高齢者らの順次下船表明 2.14. 80歳以上11人下船 2.16.米国人が

    下船(17に米チャーター機で出国) 2.17.全員の下船前検査のための検体採取完了

    2.19.乗客の下船開始

 

   ークルーズ客船事件の教訓

   ・日本人を多く含む3000人以上の乗客と乗員を合わせ700人以上が感染。2月まで日本国内

    感染より多い。船内に14日間(のちWHOの新基準で12.5日)留め置いたことは関係国

    政府は評価(河野太郎防衛相)したが、外国メディアからは生活状況などに批判集中。

   ・なお、2.7以降、船内感染は通常の国内感染とは別集計にすると表明。

 

       2. 厚労省クラスター対策班と全国保健所職員の活躍

   ークラスター確定による感染拡大の防止

   ・感染症流行への日本当局の対応は、クラスター(少人数の集中感染)を確認し、それが

    感染拡大につながらないように人海戦術で防御するもの。

   ・感染者が発見されると保健所の職員が、これまでの濃厚接触者についての聞き取りを

    行い、感染経路と他の人々への影響を詳細に調査。調査をつうじてクラスターが確認

    されるとクラスターに関わった人々の健康状態を調査・確認して感染が疑われる人々

    は隔離する。

   ・このような極度に労働集約的な方法によってクラスターの拡大を防ぎ、感染拡大を

    防止してきた。

 

   ー厚労省クラスター班と保健所職員の感染抑制努力は評価

   ・厚労省にはクラスター対策班があり、専門家と職員の混成チームで感染拡大を

    抑制もしくは防止するための戦略を研究、策定する。

   ・全国1700余の市町村には保健所が設置されており、保健所職員がクラスター追跡の

    現場実務を担う。彼らは感染者や濃厚接触者への聞き取りなど一件数時間もかけて

    情報を収集し、感染経路の確定に尽力する。

   ・全国保健所には数千人の職員が働いている。保健所のシステムは敗戦後、占領軍の指示

    で構築された。当時、日本は衛生状態が劣悪で、多くの疫病で年間数万人もの患者が

    死亡。保健所のしくみはアメリカでも試行されたが根付かなかったとされる。

   ・感染病対策で、全国の保健所職員が担う草の根作業の重要さは評価すべき。

 

  ークラスター追跡戦略の成果と限界

   ・今回のコロナウィルス感染でも、1月から3月21日(感染者1000人)まではクラスター

    追跡戦略が奏功して感染者の拡大を抑制してきたと言える。全国で感染者1000人以下

    の段階では、クラスターは一部のライブハウス、バー、病院などに限られており確認

    されていた。

   ・しかし3月22日に感染者が1051人になって以降は、感染は急速に拡大の兆し。

   ・新規感染者の急増のうち、感染経路の不明な感染者の割合が増え、6~7割になると

    クラスター追跡戦略は限界に直面。クラスターを追跡できない。クラスター戦略の効果

    がなくなる。

 

       3. 感染検査(PCRテスト)の少なさと遅さとその背景

   ー感染検査による隔離戦略

   ・クラスターを追跡・確定してそこからの感染の拡大を防ぐ方策が感染経路不明の

    感染者が増えたことで限界が見えてくると、PCRなどの感染検査によって感染者を

    確定して隔離することがより重要になる。

   ・より効果的に感染者を発見して隔離するためには、できるだけ多くの人々に感染検査を

    行い感染者を隔離することが感染拡大を防ぐためには効果的なはず。

 

  ー感染者を多く確定することが本来は合理的

   ・韓国や台湾では、そのために効果的にできるだけ多くの人々に感染検査をする戦略を

    採用している。韓国では現時点で約50万人にPCRテストを実施した。日本は13万人。

    韓国の人口は日本の約4割(5180万人)ほどなので、日本の人口に当てはめれば120万

    人、すなわち10倍の検査が行われたことになる。

   ・韓国や台湾の考え方は早期に感染者を確定して隔離して感染拡大を抑制するとともに、

    感染していない人々には仕事をしてもらうという合理的なもの。欧州でもドイツは同様

    な考えで感染検査を大規模に実施している。ちなみにドイツの検査は日本の17倍。

 

  ー日本のPCRテストが少ない理由

       ・PCR検査を受けるには、まず、保健所が運営する「帰国者・接触者相談センター」に電話。

      検査が必要と見込まれれば、PCR検査を担う「帰国者・接触者外来」を紹介してもらう。

     全国860ヶ所(東京都は77ヶ所)の「帰国者・接触者外来」の医師が検査の必要性を判断。

    ・感染確認されれば「感染症法(1999年4月1日施行)」の規定で無症状や軽症でも原則入

   院。ドイツは軽症なら自宅待機。

  ・厚労省は、検査の網を広げすぎると、誤判定も含め入院患者が急増して病院が機能不全に

   陥り医療崩壊につながると警戒。CV感染しても8割は軽症のまま回復。肺炎の症状が確認

   されない段階で多くが検査を求めると今の医療体制では現場が混乱し重症患者への治療に

   支障をきたすとの懸念。

 

  ー疫学調査の思想

  ・厚労省は感染検査を医療行為というより感染症拡大を抑える公衆衛生の「疫学調査」と位

   置付けた。公衆衛生を司る「感染症研究所」は自前で確立した検査法にこだわり、民間の

   キット使用などには消極的。したがって検査数がふえない。

  ・検査を受けるまでにも、37.5度以上の熱が4日間つづくなど多くの条件があり、検査を

   受けるには障害が多い。

  ・安倍首相は4月初め1日2000件ていどだった検査を1日8000件をめざすとしたが、進捗は

   鈍く4月末でも1日4~5000件ていど。

 

  ー官邸の要請にも厚労省マフィアが”専門知見”を盾に壁

  ・4月上旬、首相、PCR検査はなぜ増えない?

   厚労省は、37.5度4日以上などに絞り検査。各国が検査増やすなかで異質対応。

   理論的支柱は医師免許もつ医系技官。新設次官級ポスト医務技官には鈴木康裕。その独立

   性が動きを鈍くしている?

  ・重度の応じて区別するしくみをつくり検査数を増やす方向でなく、軽症社の入院が増え

   続ければ、重症患者に手が回らなくなる「医療崩壊」を懸念する従来の姿勢が先。

  ・「検査には誤判定もあるし、陽性でも8割は無症状や軽症」との見解による厚労省対応は

   海外から批判。米国大使館は罹患者の割合を正確に把握しがたいと米国民に帰国呼びかけ

 

  ーPCR検査はようやく医療保険対象に

  ・しかし、感染拡大が進む中、病院検査に慣れた”検査大国”の人々はPCR検査が少なく不満

   と不安が増大。厚労省も3月に入ってようやくPCR検査を公的医療保険の適用対象に。この

   結果、これまで各地の保健所が検査の適否を判断してきたが、今後は専門外来の医師が必

   要と判断すれば、保健所をとおさなくても検査可能に。検査数の増加が期待されるが、

   地方衛生研究所の検査能力の制約もありあまり増えないとの現場に見方。

 

  ードライブスルー検査ようやく始動

  ・ドライブスルー方式実施認める厚労省事務連絡。4.15. 名古屋市、新潟市先行。

  ・大都市では検査対象をひろげて感染者を隔離する対策が急務。DT方式認めるのが遅すぎ。

  ・東京都医師会、4.15.都内20箇所にPCR検査所を設置する方針発表

   医師会の協力で保健所の負担軽減し、PCR検査も増加の方向

 

        ーPCR検査の「相談・受診の目安」改定

  ・PCR検査は受けたい人が多いのに、厚労省が「受診の目安」を設けていたために、保健所

   などの現場ではそれを”基準”と受け止めて忠実に希望者の選別をしていたことが、検査数が

   ふえない一因との批判が高まっていた。

  ・たとえば「37.5度以上の発熱が4日間継続」という目安のために受診できずに自宅療養で

   死亡者が出た例があるなどの批判が寄せれられていた。

  ・厚労省には、軽症の人が多く受診を求めてくると保健所や医療機関が対応しきれず医療

   崩壊につながるとの懸念もあった模様。

  ・厚労省は200.5.7.ようやくこの体温数字を削除し、息苦しさや強いだるさで相談できると 

   した。

 

       ーPCR検査目詰まり深刻

  ・5月半ばの時点でPCR検査の現状は目詰まりなお深刻。

  ・PCR検査目標2万件(能力2.2万件)実際は多い日でも8000

  ・相談窓口となる保健所の業務は依然として逼迫

    保健所が運営する「帰国者・接触者相談センター」を経由せず、検査が受けられる

    PCRセンターは全国46ヶ所、予約制でかかりつけ医師の紹介が必要ケース多い。

  ・民間の医療機関などもっと多く検査する能力あっても、院内感染を遅れて踏み切れず?

    PCR臨床検査は精度管理、取り違え防止、個人情報保護など高い水準、自身も

    感染するリスク負う。

  ・医師が不要と判断すれば検査は受けられず。希望しても受けられると限らない。

  ・検体採取の場所も防護服などを備えた医療機関に限られる。

 

   4. 抗体検査とコロナパンデミック収束の可能性

  ー抗体検査への関心の高まり

  ・4月に入って欧米で抗体検査に関心が高まる。過去にウィルスに感染した人の体内には抗

   体ができている可能性があり、抗体があればそれが免疫細胞の増殖を促すので、ウィルス

   への抵抗力が高まり、再度の感染はしがたいという見方。

  ・抗体をもっている人は免疫力が高いので、外出や一定の就業も可能ではないかという考え

   が関心の根底にある。抗体保有者が多ければ、彼らが外出や就業をすることで、感染抑制

   策としての都市封鎖や外出禁止も緩和でき、経済回復に役立つという期待感。

  ー抗体検査の実験例

  ・抗体検査の実験例として、スタンフォード大学の研究チームがカリフォルニア州サンタ

   クララ・カウンティで3300人のボランティアに行った検査の結果が注目された。検査者

   の2.5~4.2%に抗体が確認。サンタクララ人口200万人に当てはめれば4.8万~8.1万。

   その時点で確認されている感染者の50~80倍。

  ・NY州のクオモ知事は4.23.市民3000人に対して行った抗体検査で13.9%の保持者を確認

   したと発表。NY州の人口1850万人に当てはめれば270万人が抗体保持者となる。同様の

   検査はロスアンゼルス、ドイツ、オランダ、イタリーでも実施され、日本でも東京と東北

   地方で500人ずつ検査が実施され結果は5月初にも発表される予定。

 

  ーコロナウィルス感染の死亡率は低い?

  ・これらの抗体検査の結果は、これまでのPCR検査による感染者の死亡率に対して新たな

   視点を提供する。これまでは新型コロナウィルスによる死亡率は5~6%と高いと考えられ

   てきた。例えばアメリカの感染者は4月末で94万人、志望者は5.4万人。死亡率は5.7%。

   しかし、母数をアメリカ人口3.3億人の14%とすれば4620万人、死亡者5.4万人はその

   0.12%と極めて低くなる。

 

  ー抗体検査の信頼性?

  ・ただ、抗体が新型ウィルスへの抗体なのかどうかが不明など専門家の間でも疑問の声も

   あり、WHOも抗体検査の信頼性には疑問を呈している。ドイツでは抗体保有者に「免疫

   パスポート」を発行する案もあるが、新型コロナウィルスへの抵抗力が必ずしもない感染

   経験者が出歩くことが感染をさらに拡大する可能性も現状では否定できない。

 

  ー集団免疫と感染収束への潮目

  ・ウィルス感染が収束するかどうかの潮目は、人口の約6割が感染経験者になるかどうか

   とされる。そこまでいわゆる「集団感染」が増えれば、その大部分は抗体を保持している

   と考えられるから「集団免疫」が増え、感染の拡大はその潮目を過ぎれば収束するという

   考え。

  ・アメリカを例にとれば、それには約2億人が感染するのを待たねばならない。NY州の実験

   から推定される抗体保持者4600万人のまだ4倍以上が感染する必要があるという気の遠く

   なるような話である。

 

5. Social distancing(人々の接触禁止)をいつまで続けられるか

   ー実効再生産数と感染の収束

   ・一方、一人の感染者が何人に感染をひろめるかについて「実効再生産数」という指標

    がある。最近までそれは1.7くらい、すなわち一人の感染者が1.7人に対して感染をひろ

    げる傾向があるとされてきた。

   ・この数字が1を下回れば、感染は次第に縮小していく。いいかえれば、ワクチンがなくて

    も、感染を収束させることができる。

  

   ーSocial distancingは有効だが経済には劇薬

   ・実効再生産数を引き下げるには、人から人への感染の確立を下げる必要がある。すな

    わち、人の接触確率を減らず必要。そのためにはsocial distancing(社会的距離)を厳格

    に守ることが必要。

   ・しかし、人間社会は本質的に人々の交流で構築され発展してきた。人々の接触を禁ずれ

    ば、社会機能は停止し、経済は崩壊するおそれがある。

 

  ーSocial distancingは短期勝負

   ・Social distancingは有効なワクチンが存在しない段階では、ほとんど唯一の感染抑制法

   ・しかし、これは経済の息の根をとめかねない劇薬。劇薬の投与は短期に限るべき。

    短期の勝負は迅速、短期かつ徹底的がのぞましい。短期の投与は感染を抑制して、

    経済機能を維持させる可能性がる。

   ・不徹底に長期につづけると感染は収束せず、経済機能は長期的に衰退する危険が高い。

 

  ー短期に感染を抑制しても感染を克服できる保証はない

  ・短期に感染が抑制されても、徹底的なSocial distancingをいつまでも続けることは  

   できない。やがて感染第二、第三派が高まる可能性もあり、また変異したウィルス

   の新たな襲来もありうる。新型コロナウィルスは変異の可能性が高い。

  ・それでも当面はSocial distancingを徹底するほか方法はない。

 

  ー「実効再生産数」の削減と感染収束

   ・「実効再生産数」(1人の感染者が何人に感染させたかを示す)日本では3.21.~3.30

    の確定データで1.7。その時点で数万人の感染者がでていたドイツ2.5を下回っていた

    が。4月にはいって感染増がつづき、ドイツを上回った可能性。この指標が増え続ける

    と感染爆発になる可能性が高い。

   ・この数字は世界では多くの研究者が競って推計しており、データに即して更新がつづく

    が、日本では北海道大学の西浦博教授に負担が集中しており、4.1.以降更新されていない

   ・この数字が1.0以下で持続すると感染は収束に向かう。再生産数を下げる唯一の方法

    は人との接触を減らすこと。Social  distancingを徹底するしかない。

   ・その後、実効再生産数の更新値が発表された。それによると: 

     全国では 3.25で2.0、4.10で1.0、東京では3.2で2.6、4.10で0.5.

 

  ーワクチン開発への期待

  ・強力で効能高いワクチンが開発され。多くの人々に普及すればコロナ感染を克服する

   可能性が高まる。

  ・現在、世界各国の研究機関等でワクチン開発の懸命な努力が行われているが、

   ワクチンの開発には、検体の確保、検査分析、試薬の製造、投薬試験、治験など  

   のプロセスに早くても数年の時間がかかる。今回の場合、特例で過程を短縮しても

   1~2年はかかるとされる。

  ・この問題は本稿のテーマの外にあり、別の機会に詳論したい。。

 

 6. 2020.3.下旬から東京はじめ新規感染者増加が加速

     ー小池都知事危機感あらわ

   ・3月下旬になって東京都の感染者増加がにわかに加速しはじめた。3月23日から25日

    の3日間で新規感染者が74人増え、東京都だけで210人になった。日本全体ではまだ

    1100人ほどだったので、東京の急増が目立った。

   ・都知事は25日、都庁で緊急記者会見。「感染爆発になるかどうかの重大局面だ」

    3月21~23は花見シーズン最中の三連休。自粛要請の中でも人出が多く気のゆるみ?

   ・東京の3月下旬の感染者増のうごきは1ヶ月前のNYに酷似していた。NYはその後、急速

    に感染爆発が起きたので、知事はじめ東京都関係者には危機感が募った。

 

 

Ⅳ.   政策対応と問題点

 

  1. 学校休校と特措法

 

   ー学校休校要請

   ・政府も新規感染者増加の傾向を警戒。安倍首相は2.27突然、新型ウィルス感染症

    対策本部で、全国の小中高、特別支援学校に臨時休校要請する考え表明。3.2.か

    ら春休みまでの期間。

   ・荻生田文科相は、全国の学校を一斉休校させる環境整備を憂慮したが、首相は決断。

    クルーズ船対応まで前面に居た菅官房長官に代わって、今井首相補佐官(経産相出身)

    と北村国家安保局長が首相のブレーンとなったとの観測がもっぱら。

 

   ー中国・韓国からの入国制限

   ・3.5.北村氏はそれまでの湖北省からの入国制限を拡大し、中国韓国からの入国者を2週間

    待機させ、ビザ効力も停止する措置を実施する主導的役割。

    

   ー改正特措法成立

   ・3.13.インフルエンザ対策特措法の対象に新型コロナ感染症を追加する改正法が成立。

    感染が急速に拡大した場合、首相は「緊急事態宣言」発令可能。知事は宣言を受け、

    法律にもとづいた外出自粛要請や学校などの使用制限要請・指示ができることになる。

 

  2. 緊急事態宣言

 

   ー緊急事態宣言発令

   ・安倍首相は4.7.夕方、7都道府県にたいし緊急事態宣言を発令した。

   ・小池東京都知事は3月25日以降の新規感染者数のうなぎ登りの増加傾向に危機感を

    募らせており、知事に外出自粛、商業娯楽施設などの休業要請、医療施設整備の

    ための建物・土地収容などについて法的権限を付与する緊急事態宣言の1日も早い発令

    を待ち望んでいたが、安倍首相は発令を逡巡し、3週間近くも貴重な時間を浪費した。

   ・首相はようやく4.5に宣言の検討を専門家と対策会議に諮問し、4.7.18時の発令となった

    が、首相の意思決定の遅さに国民の不満と不評が高まった。

 

   ー緊急事態宣言は無内容?

   ・安倍首相は”命を守る緊急事態宣言”と自画自賛したが、欧米、アジアなどの海外

    メディアは一斉にその中身を批判した。

   ・批判の焦点は、lockdown(都市封鎖)なし、交通規なし、外出は自粛を要請するのみで

     罰則なし、生活必需品の販売と購買は自由というような宣言で果たしてsocial 

               distancingによって感染抑制の実効があがるのか?に向けられていた。

 

   3. 休業要請をめぐる東京都と国のバトル

 

   ー緊急事態宣言を想定した東京都の実行案

    ・安倍政権の緊急事態宣言発令があまりに遅れるのに危機感を抱いた小池都知事率いる

     東京都の対策本部は、国の緊急事態宣言が発令されたとの想定の下に、東京都として

     の実行案を策定していた。

    ・その骨子は、人々への外出自粛要請に照応して、外出する人々が向かう先の商業や

     娯楽施設、不急の生活サービス、大学など公共施設などに広く網をかけ、人々が集

     まる場所に休業を要請し、外出自粛を徹底させようというもの。

    ・バー、ライブハウス、居酒屋など、生活必需品を売るスーパーなど以外の百貨店や

     ホームセンターなどの商業施設、ほとんど全ての娯楽施設、スポーツ施設やジム、

     医療施設以外の美容、理容など生活サービス、大学・保育園など教育施設、など

     広範に及ぶ。この実行案を4.7の安倍首相の緊急事態宣言と同時に発表すると予定。

    ・都側は感染爆発が秒読みと切迫感を強めており、小池都知事は「危機管理の要諦は

     最初に大きく構えること」と主張していた。

 

   ー国の反発と抑制策

   ・都は宣言発令前の6日、休業リスト素案を国にしめし、発令直後から実施しようとした。

    国は特措法45条の施行令に規定される施設以外を含むことを問題視。居酒屋と理髪店。

   「それらを対象にしたら訴訟リスクを抱えるのは都知事ですよ」と警告。

    国はリストに含むより午後8時の閉店をお願いすれば、休業要請でないので法律は

    クリアできると代案を提示。都は時間短縮の代わりに居酒屋など営業継続を受け入れ。

 

   ー2週間も待てない

   ・国は緊急事態宣言発令後、2週間ほど外出自粛要請の効果を見極め、45条にもとづく

    休業要請を出すか検討する方針だった。

   ・これに小池氏は「2週間も待てない」と反発。都が想定していたのは、特措法24条に

    もとづく知事の権限にもとづく要請だった。

   ・国は、20条の「国が各都道府県の措置を総合調整できる」との規定を盾にとって

    「政府対策本部長(首相)は知事が実施する対策について総合調整ができる(菅長官」

    と主張。

   ・小池知事は「権限はもともと社長かなとおもっていたら天の声がいろいろと聞こえ

    中間管理職になった感じ」と憤慨した。

   ・総合調整の及ぶ権限の範囲や強さに具体的基準がない曖昧さがそもそも問題。

 

   ー他の自治体の対応と国・都の合意

   ・小池知事は7府県の同調を期待したが、神奈川県の黒岩知事は東京のように休業補償の

    財源がないとして休業要請に二の足を踏み、他の府県は様子見を決め込んだ。

   ・東京都は、独自の財源から休業事業者には最大50万円の「協力金」を検討。

   ・4.9.午後8時から1時間、小池都知事は西村康稔財政・再生相と会談。折衷案で合意。

    宣言発令から貴重な72時間が浪費されたことになる。

 

   ー緊急事態宣言の全国適用

   ・緊急事態宣言発令後、名古屋、京都をはじめ多くの自治体から緊急事態宣言の適用を

    望む声が上がった。宣言にもとづく休業要請のない自治体に、東京など宣言を受けた

    自治体から人々が参入してきて感染リスクが高まるという懸念。

   ・4.17、安倍首相は緊急事態宣言を全国に拡大し、とくに13都道府県を「特定警戒」

    地域に指定した。

 

  4. 緊急経済対策の内容と問題点

 

  ー緊急経済対策の内容と問題点

  ・緊急事態宣言と同時に発表された緊急経済対策の骨子は以下。

 

     事業総額総計 108.2兆円

     財政支出 39.5兆円

       アビガン確保やマスク配布、自治体交付金       1.8兆円

       中小企業資金繰り対策                3.8

       中小企業などへの給付金               2.3

       減収家計への給付金                 4.0

       (これは補正再決定で当初の3倍の           8.9兆円)

   

       財政投融資                    約10兆円

         日本政策金融公庫の危機対応融資や特別融資 9.3.   

         日本政策投資銀行の大企業向け出資ファンド 0.2

       19年度補正予算の未執行分          9.8

 

      経済対策にともなって支出される民間資金など   42兆円

      企業の税や社会保険料の支払い猶予        26兆円

     

   ・108兆円というGDPの2割に及ぶ超大規模対策だが、おそらく安倍首相の側近主導に

    よる急ごしらえの対策と思われ、中身には多くの問題。

   ・国民の関心事でもあり、経済政策としても重要な「減収家計への給付金」には

    4兆円計上されているが、これをどの階層にどのように給付するのか不明。これ 

    は項をあらためて検討。

 

   ・休業補償の予算が計上されていない。安倍首相はじめ政権幹部は休業補償は産業・

    企業によって事情が異なり「不公平」になるから、それよりも国民への現金給付

    をする、と説明しているが、なぜ不公平なのか不明。本来、要請されて休業する

    事業者の事業継続を支援する休業補償こそが”公平”であり、経済活動を維持する

    ために不可欠なのではないか。

 

   ・緊急経済対策は医療対策や中小企業の経営支援など緊急性の高い政策とコロナ

    克服後の経済のV字型回復を支援する対策の両面構成とされているが、なぜ”緊急”

    経済対策に将来のV字型回復への支出が計上されるのか、意味不明。それは緊急

    事態の克服が見えてきてからにすべきでは。また、V字型回復支援関連で民間

    資金が42兆円など対策規模の見かけ上の”嵩上げ”が行われているのはわかり難くて

    問題。

 

  ー減収事業や家計への給付はどう実施?

   ・総額4兆円の国民給付の内容は以下のように発表された。

 

      ・中小・個人事業主向け給付は売上半減が条件

        中堅・中小企業  最大 200万円

        個人事業主    最大 100万円

         (個人業主にはフリーランスも含まれる)

 

      ・世帯が給付を受けられる基準は複雑(Fplanner助言による)

                 低所得世帯     収入急減世帯

        単身会社員    100万円以下    200万円以下

        3人家族

        (会社員、主婦、子供)205万円以下    410万円以下

        2人家族

       (会社員、子一人)  155万円以下    310万円以下

 

     ・この対策は対象の選別や給付の額についての考え方の基準が不明で

      極めて判り難い。これは給付を期待する多くの人々の不満を呼び、

      下記の”ドタバタ劇”の原因となった。

 

     ・また、これを実行することはおそらく技術的にも極めて困難と想像される。

      例えば、売り上げが急減する事業主や、所得が急減する世帯などに対し、自主申告

      に基づいて給付するとしているが、給付が妥当との判断の根拠となる申告データ

      の信憑性をどう確認するのか。多くの虚偽申告をどう識別するのか。

 

     ・マイナンバーの普及と銀行口座との連結が達成されていない中での給付の判断と

      執行は事実上困難もしくは莫大な時間がかかって実効性がない。

 

   ー原案とり下げと一律10万円給付へのドタバタ劇

    ・緊急経済対策は4月半ばに「補正予算」として確定し、実施にはいる予定だったが

     「減収事業家や家計への給付」が判り難いとの批判が多く寄せられ、与党自民党内

     からもまた公明党からも強い批判と一律給付への要望があり、急遽、当初案を 

     とり下げ、国民全員に一律10万円給付とする変更(ドタバタ劇)があった。

    ・発端は4.14.二階発言、一律10万円を求める切実な声がある。できることは速やかに

     実行を。

    ・公明党山口那津男代表、我が意を得たりと急遽決まった15日首相面会で強硬主張。

     もともと公明党は、立憲民主と同様、3月末に一律10万円案を提案していた。

    ・30万円の政府案発表後、支持者から1.5万通のクレーム、「内閣の評判悪い、危機的

     状況だ」首相は「補正を成立させた上で方向性をもってよく検討」と応じた。

    ・しかし、山口氏は16朝も電話で食い下がった。できねば野党案に同調もと脅し。

 

    ・首相は折れた。麻生太郎氏(リーマン1.2万円の定額給付金で効果なしの体験)は

     疑問を呈したが首相は麻生氏の懸念を押し切り岸田政務調査会長に10万円案を指示。

    ・閣議決定した補正予算の組み換えは異例(歴史上3回のみ)

 

   ー補正予算(緊急経済対策)の再決定(史上3度目)

   ・減収家計(約1300家計)への30万円給付=約4.4兆円を取り下げ、国民全員

     一律一人10万円とした結果、家計向け給付は8.9兆円。

    ・緊急経済対策総額は117.1兆円となった。

 

 

CV(コロナウィルス)感染と政策対応ー日本の経験:日本型モデルは成功するか?(1)

このエッセイは以下、4回にわたってブログに掲載しますので、よろしくご高覧戴ければ幸いです。

 

Ⅰ. はじめに

 

 ー日本、当初はゆるやかな感染増加 

 ・CV感染が世界で猛威をふるっている。

 ・日本は世界諸国の中では、感染がはじまった2月はじめから3月半ばまでは

  比較的ゆるやかな増加にとどまっていた。

 

 ー3月下旬から感染加速の兆し

 ・しかし、3月下旬から東京を中心に感染者の増加がにわかに加速する気配を見せ始めた。

 ・小池都知事をはじめ東京都の関係者は、この傾向がオーバーシュート(感染爆発)に

  発展するのではないかとの危機感を強め、人々に危機感を訴えるとともに、感染急増

  を抑えるために人々に外出の自粛要請と人々が集まる商業施設や娯楽施設などの休業

  要請を含む政策的対応を志向した。

 

 ー政府、緊急事態宣言発令、緊急経済対策発表

 ・感染拡大は他の府県でも加速しはじめたので、危機感はひろく共有されるように

  なり、こうした情勢をうけて、安倍政権も遅ればせながら、4月7日に、緊急事態

  宣言を発令し、同時に、緊急経済対策を発表した。

 ・緊急事態宣言は、地方自治体の首長に、人々に外出自粛を、また人々が集まる大規模

  イベントの中止や商業・娯楽施設の休業要請などに法的根拠を付与。

 

 ー強制も罰則も補償もない日本型対応

 ・緊急事態宣言発令をうけて東京をはじめ地方自治体は、人々に外出の自粛とレストランや

  商業施設に休業を要請した。

 ・他方、諸外国で実施しているようなlockdown(都市封鎖)や罰則を伴う外出規制はなく、

  交通機関は通常通り運行、生活必需品の買い物は規制なしという内容。

 ・日本のこうした緊急事態宣言の具体的内容を見て、欧州や韓国など諸外国のメディアから

  日本の緊急事態宣言は形ばかりで内容はなく、効果は挙がるのか、と多くの批判と疑問

  が寄せられた。

 ・また休業するレストランや商業施設などに対して国は休業補償をせず、東京都など若干の

  自治体が少額の協力金を支払うにとどまった。

 

 ー日本型モデルは機能するのか:シミュレーション分析

 ・これまでは検査も医療防具も最小ながら諸外国にくらべ感染の拡大は最小に留められて

  きた日本型のやり方が、これからも通用するのか、そして感染を収束させることが

  できるのか、最近の感染者数の急速な増大傾向をふまえると、予断は許さない。

 ・また、人々の接触を抑制する感染抑制策が経済にもたらす影響、とくに世界全体の経済

  が収縮する中で、日本経済にどのような影響が及ぶかも予断できない。

 ・感染拡大は収束するのか、また経済への影響はどうなるのか。この問題を、これまでの

  やり方の延長線上の(シナリオA)と、他方、迅速かつ抜本的な政策にもとづく展開という

  (シナリオB)を対比して整理し考えてみたい。

 

 ーこれまでの日本型(シナリオA)

 ・これまでの日本の政策対応は、逐次小出し政策だった。これは当面の経済コストは少ない

  かもしれないが、感染拡大を効果的に抑制できなければ、感染拡大は長期化し、また第二

  波、第三波の感染拡大があるかも知れない。

 ・その結果、長期にわたってサービス産業の衰退と産業基盤ならびに人的資本の劣化が進み、

  経済コストは長期的には莫大となる可能性がある。

 

 ー迅速・抜本的政策にもとづく日本型(シナリオB)

 ・感染拡大を一定目標期間内で極小に抑えるための迅速・抜本的政策対応によるシナリオ。

 ・目標期間内の実質的強制力ある休業要請と外出規制。休業するサービスや商業施設には

  休業期間の収入を補償。そのため就業機会を喪失もしくは所得の減る勤労者に適切な

  所得補償。

 ・これは短期的には大きな経済コストになる可能性があるが、その結果、感染の収束が早まり、

  産業基盤と人的資本の劣化が回避されれば、日本経済の衰退は防止され長期的には経済コス

  トは管理可能な範囲にとどまる。

 

 ー世界経済は全世界同時大不況を前提

 ・コロナパンデミックは全世界を覆い尽くしており、世界各国の感染拡大抑止対策は各国経済

  の縮小、国際交易の断絶などから当面、世界同時大不況(2020.4.IMFシナリオの3ないし4)

  に陥ることを想定。

 ・この状況下では日本経済が輸出で活路を見出す可能性は両シナリオとも考えられないことを

  前提とする。

 

 ー日本型モデルは有効か?

 ・日本型モデルは、都市封鎖、罰則、強制はなく、もっぱら国民の理解と自覚そして行動の

  自己抑制に依存する。それは世界でもユニークな対応モデル。

 ・そのモデルが有効になるためには、それを支える抜本的、強力そして迅速な政策支援が必要。

 ・そうした政策の支えのない日本型モデルは単なる精神論に陥り、結果的に日本経済を衰退

  させる。日本型モデルを成功させるには日本型の強力な政策の執行が不可欠。

 

Ⅱ. CV感染展開のパターン

 

  ー本稿の主眼はコロナパンデミックが世界を大混乱に巻き込む中で、”日本型モデル”もしくは

   日本型のやり方で、感染を収束させ、経済を復活させ、今後の経済発展につなげられるか

   を考えること。

  ・そのためには、まず、世界の諸国がコロナパンデミック問題にどのように取り組んできて

   いるのか、その中で日本の経験はこれまでのところどのように位置付けられるのかを

   展望することが、考察の準備として不可欠。

  ・その展望のうえで、日本の経験を詳細に振り返り、今後の展開について可能性や課題を

   考えることとしたい。

 

  1. 累積感染者数の推移のパターン:国際比較

 

   ー以下に、各国別累積感染者数の推移のパターンを対数表示と実数表示、そして

    それを各国人口数で割った100万人あたりの推移のパターンで見てみよう。

 

 図 1. 各国別累積感染者数の推移(対数表示)

1

 

 

 図 2.  各国別累積感染者数の推移(実数表示) 

2

 

 図 3.  各国別累積感染者数の推移(人口100万人当たり) 

3      

 

 図 4.  各国別累積死亡者数の推移(実数表示)    

4

 

   ーこれを通観すると、各国の経験がいくつかのグループに大別できるように思う。

 

  2 中国

   ー中国は世界で最初にCVの感染がはじまり、感染爆発が加速して急激に累積感染者数が

    増えて8万人にも達したが、新規感染者の増加は感染開始から1ヶ月ほどの間に急速に

    鈍化し、2月に入ると収束に向かう傾向が顕著になり3月からは、それまでの都市封鎖

    や外出厳禁などの規制が次第に解除され、4月には生産活動も再開された。中国は累積

    感染者数が8万人を超えているが図3で示されるとおり、人口比では感染者数は極めて

     少ない。また図4に見られるとおり死亡者数が少ないことも評価できる。

 

  3. 欧州:

   ー欧州としてはここではイタリー、ドイツ、スペインのパターンを見たい。

    欧州諸国はいずれも2月後半から感染爆発が起きたが、感染の進展のパターンはほぼ

            共通している。その中で、イタリーの死者が突出して多いこと、人口に比してスペイン

           の感染者数が多いこと、またドイツの死者数がすくないことが目立った相違。

 

   ーイタリーでまず2月後半から感染爆発が起き、中国の爆発と同様 パターンを辿ったが、

          中国のように早期に収束できず、感染の増加は継続し、4月の後半に至ってようやく新規感

          染者の増加に鈍化の傾向が見られるようになった。イタリーは人口が少ない割には感染者

          が21万人、死亡者が21万人という巨大な犠牲を払った。

 

   ースペインは感染者の増加が急激で、累積感染者は5月初頭で22万人とアメリカに次いで

         多い。図3に見られるようにスペインは人口が少ないので、人口比で見た感染比率は突出

         している。

 

  ードイツは感染者の増え方は他の欧州諸国と同様だが、傑出しているのは死亡者の少なさで

         ある。ここでは詳述できないが、優れた検査体制の先行実施など他国が学ぶべきところは

         多い。実際、ドイツは4月中旬以降はそれまでの厳格な規制の解除に動き出している。

 

 4. アメリカ:

  ーアメリカは人口も3.3億人を擁する大国だが、技術力も経済力も世界を最強の自他ともに

   認める最先進国である。そのアメリカの感染の増加は図2に明示されるようにダントツ

   世界最悪。5月初頭の時点で、累積感染者数123万人、累積死者数は7.4万人という事態は

   アメリカの内部に何か大きな問題があると推察される。

  ・コロナ感染がはじまった中国は人口が14億人とアメリカの4倍。しかも中国は人種も多様、

   複雑な構造をもつ国で経済には開発途上的部分が多い。それでも累積感染者は8.4万人。

   死者は4600人にとどまる。アメリカがいかに最悪な状況であるかは明白。

 

  ーアメリカには日本のような公的な国民皆保険や皆医療制度がなく、医療費が高いことが

   人種などによる感染格差を拡大するという構造的問題もあるが、それよりも最悪の問題は

   アメリカ国民が選んでしまったトランプ氏という大統領の存在だろう。

  ・トランプ氏は感染症問題には無知で関心もなく、感染がはじまった2月はじめから6週間と

   いう貴重な期間を空費したというのがもっぱらの評価。

  ・トランプ氏は専門家を尊重せず、立派な州知事などの行政を評価せず、11月の大統領選だけ

   が関心事で、早く経済活動を再開させるため根拠のない規制解除などを焦るので、規制が

   緩和されるとさらなる感染爆発が起きると憂慮されている。

 

  ーアメリカにはトランプ氏以外には優れた専門家、政治家、事業家はおり、また優れた制度

   や機関もあるが、トランプ氏が独裁的な専横をする中で、残念ながら今のアメリカは”世界

   の反面教師”としての価値しかない。

 

 5. アジア:

  ーアジアで参考とすべき国は韓国、シンガポール、そして図示はしていないが台湾、香港

   であろう。

 

  ー韓国はSARSやMERSで大きな被害を受けた経験を生かし、感染対策の国家機構を編成

   しなおし、中央の指令で迅速な対応ができる体制が整備されていた。

  ・韓国は何よりも感染検査を迅速かつ大量に実施することに重点を置き、早い段階から多く

   のPCR検査を実施した。ドライブスルー型の検査方式を開発したのは韓国の医師団。

   アメリカはこれをいち早く導入。

  ・韓国の感染対策の主眼は、できるだけ多くの国民に検査をつうじて感染状態を確認し、

   感染者は厳格隔離して感染を早期に抑制する。韓国の累積感染者数が図3が示すように

   3月上旬まで世界で3番目という多さになっていたのは、大量PCR検査の反映とも考えら

   れる。この対策が奏功したことは同図が示すように感染者が100人を超えてほぼ2週間後

   という早期に感染拡大が収束段階に入ってことに反映している。

  ・また韓国は非感染者にはあるていど経済活動を認めるという感染対策と経済対策の合理的

   なバランスを追求することも重視しており、4月中旬以降は経済活動は全面再開している。

 

  ーシンガポールはやはりSARSやMERSの手痛い経験をふまえて、海外から多くの入国者の

   ある空港などで厳格な健康審査体制を敷き、またIT技術で感染経路を割り出すアプリを

   開発、活用するなど感染をしばらく最小に抑制することに成功したが、入国者からの

   感染がその後、急増したので、入国禁止と厳格隔離の対応を強化している。

  ・台湾や香港も韓国、シンガポールと同様、SARSなどの経験から感染管理体制を整備して

   感染拡大を抑制していた。

  ・台湾はとくに新型コロナウィルスが人から人に伝染することを中国当局に先駆けて世界に

   発表。これがかえって中台間の緊張を高めたとされている。

 

 6. 日本

  ー日本の感染拡大のパターンは、1.2億人の人口を抱える人口大国としては感染者の数

   も少なく、その増え方も緩やかで、とくに図4に明らかなように死者数が少ない。

  ・その傾向は1月末の大型クルーズ船の大量感染を含めても3月上旬まで続き、日本の

   伝統的な感染抑制策が一定の効果を挙げたと評価できる。

  ・しかし、感染がはじまって2ヶ月後の3月下旬頃から東京を中心に新規感染者数が急増

   の傾向を見せはじめ、その数字が3月初のNYの感染推移に酷似していたことから感染

   爆発(overshoot)になるのではないかとの危機感が東京を中心に高まった。図1に

   示されるように、4月に入って日本全体の累積感染者数は韓国を上回った。

  ・日本では20204.7.に緊急事態宣言が発令され、人々に外出自粛と商業施設などに休業

   を要請するなど懸命に感染増加の抑制への人々の協力を求めているが、この日本型の

   対策が、これからの感染抑制と経済活動の維持にどのような効果をもつかが注目

   される。

  ・欧米のような感染爆発を経験することになるのか、韓国やアジア諸国のように早期に

   抑制に成功できるのか、日本型のモデルの行方は、日本のみならず世界のウィルス対策

   のモデルケースになるか、興味ある社会実験でもある。

 

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