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躍進するIT産業:インドの可能性と課題(1)

以下、3回に亘って掲載します。

 

 

Ⅰ.  はじめに

 

  インドがモディ首相のリーダーシップの下で、IT産業を中心に近年めざましい発展を見せ、

  国際的な存在感も大きく高まっている。

 

 インドの人口構造は若く、これからの市場として日本にとっても巨大な可能性があり、

また地政学的にも日本にとって重要なパートナーとなる可能性がある。

 

 私は私が主催する若手事業家の勉強会「島田村塾」の有志と関係者とともに2020年1月

末から2月上旬にかけてインドを訪問した。私にとってインドは4回目の訪問だが、今回は

これまでとくらべてもインドはさらに一段と発展しており、米中に次ぐ超大国になる可能性を感じさせた。

 

 可能性と同時に、巨大で多様なインドには複雑な課題や旧植民地時代の歴史的後遺症が随所に色濃く残っており、

それをどう克服するかがインドが大国にふさわしいリーダーシップを世界で発揮するためには大きな宿題であることも否定できない。

 

 このエッセイでは、そうした論点に関する私の感想を記してみたいと思う。

 

 

Ⅱ.   躍進するIT産業とIT人材

 

    1. インドIT産業の発展

 

ーインドのIT産業が凄まじい発展を見せている。IT産業はインド南部の都市、バンガロールを

 中心に20年ほど前から急速な発展をみせていたが、近年ではインド全土に点在する主要都市に

 IT産業が集積しつつあり、インドのIT立国化ともいうべき現象が進展している。

 

ーたとえば、デリー近郊の新興都市グルがオン。ここはスズキなど日本企業の立地も多い。モディ

 首相の出身地グジャラート州の州都アーメダバード、中南部テランガナ州のハイデラバード、

 また東南部タミルダノウ州マドラスに近いチェンナイなどが急速な発展を見せている。

 

ーバンガロールはアメリカ西海岸のシリコンバレーが世界のIT産業の中核として急激に成長を 

 加速させた20年ほど前に、シリコンバレーのいわば下請け基地として発展した。シリコンバレ

 でIT産業の仕事量が膨大になるのをうけてソフトウェアなど下流の作業を、人材が豊富で賃金

 が安く、時差が13.5時間という条件を最大に活かしてシリコンバレーのオフショア投資の基地として発展した。

 

ーシリコンバレーの技術者がITシステムの設計などの業務を午後5時に終えると、彼らは   

 インドバンガロールの契約業者にそれを受けたソフトウェア製作などの下流業務を発注する。

 時差が13.5時間なので、翌朝シリコンバレーの技術者が出勤すると昨日注文した作業が

 出来上がってきているとういうわけだ。

 

ーいいかえればシリコンバレーとバンガロールはIT産業の上流と下流の分業と協業で24時間休

 みないフル回転稼働体制を世界規模で構築してめざましい発展を実現したといえる。インドの

 受注先はシリコンバレーに限らず、最近では世界のアウトソーシングの56%をインドが占める。

 

ーそれを反映してインドのIT産業は大量の雇用を実現している。IT業界は直接雇用だけでも 

 現在370万人。ちなみに日本は90万人。

インドは高度IT人材を大量に雇える唯一の国。理工系大学新卒が毎年100万以上。うち20万人 

 がIT業界に。ちなみに、日本の理工系大学卒業生はたった10万人。しかもIIT(インド工科大)

 やNIT(国立工科大)でコンピューターサイエンスを学んだ学生の学力は抜群。世界のトップクラス。

 

ーインドのIT産業はいわば米欧先進国の下請けとして発展してきたが、近年では、欧米IT産業 

 の受け皿として培った経験と学習を生かして、次々に上流の業務に取組み、独自のイノベー

 ションを実現している。そうしたイノベーションの中でも、インドは後発国の弱みをむしろ

 強みに変えて先進国を追い越す(リープフロッグ:カエル跳び)”リバースイノベーション”が

 得意技。貧困や環境汚染などの悪条件を克服する技術開発で先進国を追い抜く革新を実現。

 

ーさらにインドでは近年、スタートアップ企業の起業がめざましく増えている。2010年には

 480、2016年4700~4900、そして2020には1万を超えるというのが専門筋の見方。スタート

 アップ急増の背景:スマートフォンの急速な普及で、ネット経由で様々なビジネスの提供が可能に。

 

  2. インドIT関連人材の世界での大活躍 

 

ー今一つ注目すべきは、世界のIT業界はじめ学会や国際機関などで活躍するインド人材の存在感。

 

ーIT業界の例:

 サティア・ナデラ(Satya Nadella) 2014.2. マイクロソフト3代目CEO、就任。

 ラジーブ・スリ(Rajeev Suri) 2014.5. ノキアCEO、2015.8. GgCEOに、

 スンダー・ スンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)2013 Google CEO

  ちなみにGg上級幹部には多数のインド人、

    Nikesh Arora, COO、 クロームOSとアンドロイド担当Sundar Pichai

    Amit Singhal、 サーチエンジン担当     

    Sridhar Ramaswamy、広告とeコマースプラットフォーム

    Vic Gundotra Gg +担当

   なお、2019.10にシリコンバレーのGoogle Campusを訪ねた時点では4万人の従業員

   のうち1万人がインド人だった。

 

 ーシリコンバレーで活躍するインド出身事業家(数字は時価総額:億ドル)

   Baiju Ghatt     Robin hood   株式売買サービスアプリ    60

   Apoorva Mehta  Instacart      食料品delivery service             40

         KR Sridhar     Bloomenergy  燃料電池の開発・販売    30

   Laks Srini          Zenefits     Social Mgt Platform運営   20

         Ragy Thomas   Sprinkly         Backup Appliance提供     20

 

 ー学会の例:

   Nitin Nohria 2010.7. ハーバードBスクール学長、

       Sunil Kumar  2010.1. シカゴ大学Bスクール→Johns Hopkinsに転出

   Madhav V.Rajan シカゴ大学Bスクール 2017.7から後任

   Dipak C.Jain 欧州最高峰BスクールINSEAD      

   Shankar Sastry カリフォルニア大学バークレー、  

   Anantha P. Chandrakasan MIT工学部長

 

 

 ーインド工科大学(IIT)

  ・1947 インド独立後、ネルー首相が訪米時にMITを訪問。MIT学長とインド人留学生と

   面談。アメリカの科学技術の高さに強い印象を持ったネルー首相はインドにも同様な教育

   機関を作ろうということでMITをモデルにしてIITが創設された。現在、IITの23校からは

   毎年約9,000人の最優秀の人材が輩出されている。

 

  ・IIT入試は、100万人以上が受験するJEF(選抜試験)を受け、その中からトップ20万人が

   JEE Advance(上級選抜)を受け、最終的には1万人が合格。その成績順に、希望する

   学校と学部を選べる方式。したがって競争率は100倍以上。世界でも最難関。

 

  ーIIT訪問:

  ・冒頭にふれた島田村塾の今回のインド研修旅行では、バンガロールを拠点に活躍している

   江藤宗彦様(株式会社ドリームインキュベータ DIインド社長)の紹介でIITムンバイを

   訪問した。ここは創設5校グループのひとつでインドの超名門大学。キャンパスは非常に広

   く、日本の神社の参道のような長い導入路の両側には大木がそそり立って、いかにも伝統

   の学府の雰囲気が漂っていた。

 

  ・指定された研究棟に行くと、数名の教授、助教授、助手たちが集まってくれた。彼らは

   いずれも最先端の材料工学、マイクロ3D、レーザー加工のような製造技術、またビッグ

   データのマシンラーニング、あるいはハイブリッドの製造技術など主として製造技術の最先

   端を専門とする人々。IIT側が私達訪問団の関心分野をふまえて対応してくれた模様。

 

  ・多様なテーマについて議論をしたが、インドと日本の共同研究に関心があり、ある教授が

   2x2 モデルすなわち両国で産業代表と学会代表を組み合わせた方式を提案したのが印象的

 

  ーインドとMITの深い関係

   インド独立前からMIT留学はじまっている。

   1882から2000の間、1300人がMIT留学。

   IT分野では、3人のMIT卒業生が初期インドITサービス企業を創業

 

  ー世界で活躍するインド人の強み:(武鑓行雄 『インドシフト』2019 PHP)

   ・論理的思考力

   ・英語によるディベート力、スピーチ力

   ・専門的知識(IT、数学ほか)

   ・マネージメント力やリーダーシップ

   ・多様性ある環境への適応力

 

  ー私見では、武鑓氏の指摘する多様性ある環境への適応力がとくに重要。

   ・インドは極めて多様な社会:多民族、多言語、多宗教、多様な地域特性、カースト

     格差など。

    ・この多様で複雑な社会の激しい選抜競争を生き抜かないと出世の道はない。

    ・インドは通常の一国というよりそれ自体複雑で容赦のない超国歌もしくは小世界。

    ・その競争を生き抜き勝ち抜くことはWorld Cupの世界予選を勝ち抜くのと同等。

    ・インド社会の選抜競争を生き抜いた人材は、世界競争では厳しい予選の勝者。

 

3.    インドの国際的存在感の増大

 

 ーインドは、IT産業などの急速な発展によって経済的に大きな可能性のある国として近年その

  存在感を高めてきた。

  

 ーインドの大きな可能性を求めて、世界の多くの企業がインドに生産や開発拠点を設ける

  動きが加速している。例えば:

  ・IBM、全世界従業員40万人のうち13万人をインドで雇用。10年前の2倍。

    アメリカ国内雇用を上回る。

  ・アクセンチュアは37.5万人のうち、14万以上(37%)をインドで雇用

  ・コグニサント(COGNIZANT)は世界25万の7割17万人をインドで雇用

 

  ・台湾の鴻海(ホンハイ)がインドに生産拠点設立。郭台銘(テリー・ゴウ)董事長、

   2020までにインドに10~12工場建設。100万人雇用発言。最大の生産拠点中国に匹敵。

 

 ーさらに国際政治面、宇宙・航空技術、軍事面でもその存在感を急速に高めている。

 

 ーインドの世界政治での存在感も近年、急速にたかまっている。

 ・それは独立以来1980年頃まで維持した”非同盟主義”から転換し、1990年代以降、経済開放

  を進めて開かれた国際経済競争に参加し、アメリカとも接近。とくに2014年以降のM政権下

  では政治的にも世界での存在感をたかめている。

 ・インドはG20では主要メンバーの役割を果たし、国連安保会議では、日本、ドイツ、

  ブラジルとともにG4として常任理事国拡充を主張。アラブ諸国に多くの出稼ぎ労働者

  を送っていることから慎重だったイスラエルとの接触にも意欲

 

 ー2013.インドは火星探査機「マンガルヤーン」の打ち上げに成功。2014には

   同機は火星の周回軌道にはいった。日本もまだできないことをインドは達成。

 ・2014. 5000~5800km射程のICBM「アグニV」の発射成功。広域攻撃能力の保持明白。  

 

   ー2015.10 インド海軍、新たな海洋安全保障戦略発表。インド洋全域、ペルシャ湾、紅海を

  海洋権益の最重要区域に指定。南シナ海、東シナ海は第二区域。

 ・背景:経済成長によるインド権益領域拡大。石油輸入のシーレン確保。中国との緊張関係

 ・2016、インド軍は初の国産原子力潜水艦アリハントを就役。核ミサイル能力は非公開。

 ・インドは130ないし140の核弾頭保持と推測。

 

 ートランプ大統領訪印:

 ・2020.2月末、トランプ大統領はM首相の招きでインド訪問。10万人の聴衆を前にして

  上機嫌で”America loves India, America respects India!” と持ち上げた。

 ・その後の首脳会談では、アメリカの武器輸出でほ合意したものの、高関税、5G問題

  では合意できず。インドはしたたか。

 

Ⅲ.   インドの可能性

 

   1.  インド成長の可能性

  ーインドの経済発展の可能性は膨大

  ・インドの経済発展の経緯を過去数十年にわったて通観すると、インドは中国より約15年

   遅れて中国の発展の奇跡を辿っている(江藤宗彦氏:株式会社ドリームインキュベータ 

   インド社長)。  

  ・中国の実質GDPは1960年頃には数十億ドルで微々たるものだったが、2002年には2兆ドル

   を越え、2010年には4兆ドルを超えて日本を上回った。

  ・これに対し、インドは1975年頃に中国の1960年頃の水準。2017年に2002年の中国に

   ならんだが、インドは人口が若いので、これがやがて生産力となることが見込まれ、

   15年後には現在の中国の水準となることが見込まれる。

      

 2. 人口ボーナス

  ーインドの突出した強みは人口が若いこと。

  ・現在平均年齢は約25歳。現在13億人の人口の約半数が25歳以下。

   つまり6億人以上の人口がこれから40年間は労働力として経済活動に貢献。

 

  ・国連は2022にはインド人口が中国を抜き、世界1となると予測。インドのTFRは2.4。

   こんごも人口は増える。インドの人口ボーナスはこれからで、2040頃までつづくと

   見られている。それは経済成長をささえる強力な力すなわち”人口ボーナス”になる。

 

  ・しかも、インドは現在まだ経済発展の途上にあって賃金水準が低い。

   インドの人材の一部は高度な教育によって訓練され、理数系の高い学力を

   もち、彼らが上記のようにIT産業などで活躍してインドの経済発展を牽引。

   

 3. 見え始めた成長戦略の実効性

  ーインドの経済はWWII後の独立以降も長期にわたって低迷状態だったが、

   20世紀末から成長率をたかめ、21世紀に入るとその成長が加速している。

 

  ・インド経済の成長を牽引しているのはIT産業。IT産業は伝統的な製造業と異なり、

   大規模な設備投資が不要。2010年以降はスマートフォン人口が増え、膨大な情報

   が蓄積され、それを活用した新事業が発展。

 

  ・スタートアップ企業による起業が増え、その中には数年で巨大企業に発展する

   ユニコーンも増えた。ユニコーンの成長は市場の大きさに依存する。インドには

   ユニコーンを増加させる基礎条件がある。

 

  ー2014年に政権を握ったモディ首相はこうしたインドの成長可能性を具現すると期待

   される。

 

Ⅳ.   IT基地バンガロールの驚異的発展

 

 1. 世界のIT基地バンガロールBg

  ーインドはバンガロールを中核にしてIT産業が発展し、それが全国に伝播している。

  ・バンガロールで急速に進んだIT産業の集積には海外企業の直接投資が大きく貢献。

  バンガロールに拠点を構える著名IT企業の例:

   ・ソフトウェア、Internet、IT機器:MS, Gg, アマゾン、オラクル、SAP、アドビシス

    テムズ、HP、Dell, EMC, ネットアップ。

   ・ITサービス、コンサルティング:IBM, アクセンチュア、キャップジェミニ

   ・半導体:TI,  Intel,  Qualcom, AMD, エヌビィデア、アーム、

   ・通信・ネットワーク機器: シスコシステムズ、ジュニパーネットワークス、ノキア

     エリクソン、Huaweiなど。

 

 2. Off Shore開発が発展の契機

 ーBgは1990sからインドIT産業中心地として発展した。

  ・それはとくにオフショアの開発拠点として世界的に注目された。

  ・とりわけ、シリコンバレーがBgを活用した。

   英語ができるので、アメリカ人と意思疎通しやすい。人件費が欧米より格段に安い。

  ・13.5時間の時差があるので「アメリカの夜中にインドで作業。翌朝には成果が仕上がる」

  Bgには多数の技術系大学があり、新卒エンジニアを毎年多数輩出。

      

  ー90sになると、MS,インテル、オラクル、シスコシステムズ、フィリップス、シーメンス

   など拠点を開設

  ・2000sになるとITテクノロジーの爆発的な普及で、IT業界は空前の好況。

   とくにY2K問題(2000を越えると世界中のシステムが誤作動するとされた)で膨大な

   ソフトウェアの修正作業が必要となり、それへの貢献で実力が評価された。

 

  ーBgで最先端研究が進む理由

  ・新しい分野の専門家を育てやすい。たとえばビッグデータの解析は歴史が浅いので、

   データサイエンティストは世界的に少ないが、インドは最先端のITを理解し、モチベー

   ションの高い若手IT人材がケタ違い。毎年、輩出される理工系学部卒業生は約100万人。

   その中から20万人がIT業界に採用。

 

  ー背景にラディブ・ガンディーの政策。 

  ・1984. コンピュータの輸入関税を大幅に引き下げるラジブガンディー政権の「新

   コンピューター政策」がインドのIT国家戦略の本格的推進の契機に。

 

  ・1986、ソフトウェア輸出促進の指針も。

   IT分野に海外から大型直接投資始まり、南部のバンガロールでは海外IT企業の拠点設立

   相次ぐ。ラジブガンディー首相は1991にテロで死亡。しかしインド政府は情報通信を

   専門とするIT省」を設立するなど政策的にIT産業の振興をはかってきた。

 

 3. Off Shoreから自主開発へ

 ー現在のBgは下流工程だけ請け負うオフショア開発拠点だけではない。

 ・最先端のテクノロジーを用いた研究開発など上流工程の戦略開発拠点に脱皮しつつある。

  今では、クライアントのニーズに合わせてシステムの機能などを決める「要件定義」など

  上流工程も請け負う。

 

 ・インド大手ITサービス企業は、戦略的にBuffa Resource(余剰人員)抱える。新しいPT

  を受注した時に対応できるため。人的余裕でRDチーム編成。時代先取り総合サービス可能。

  高度IT人材をこれほど雇える国は世界でインドだけ。

 

 ー近年、IT業界は、技術仕様やプログラムのソースコードなどを公開する「オープン化」が

  トレンド。リナックスやアンドロイドなどはソースコード公開。インドの優秀なエンジニア

  はすぐに理解し活用できる。インドの高度IT人材を大量に雇って鍛えれば、データサイエン

  ティストなど自前で育てられる。またIoTはブロックチェーンなど最新技術でもすぐキャッ

  チアップできる。

 

 ーBgのインフォシス社内研修施設「グローバル・Education Center」は世界最大の

  training center。専任講師600人。1万人以上を同時に訓練。

  インフォシス入社者は全員がこのキャンパスで4ヶ月から半年訓練。初心者が

  アメリカ大学のコンピューターサイエンス学部卒業レベルに到達する。

 

 4. 世界のinnovationセンター、スタートアップSU熱

  ー今やBgは世界的なSUハブとして脚光。インドSU急増。

  ・テクノロジーSU2016。US:52000~53000、UK:4900~5200、

   インド、4700~4900、イスラエル:4500~4600、中国:4200

 

  ・インド:2010:480、2016:4700~4900、2020:10500~11000?

   SUが増えた理由:スマートフォンの急速な普及で、ネット経由で様々なビジネス提供

   可能に。インド平均年齢25歳、ほとんどがデジタルネイティブ世代。スマートフォンの

   普及で膨大な潜在顧客層創出。

  ・またデータ通信費用が大きく低下したので、SU立ち上げの初期費用削減。

   PC、スマホ、クラウド環境あれば起業できる。通信費用低下にはReliance Jio社が

   大きく貢献。

 

  ーReliance Jio社訪問:

   インドのデータ通信コストの急削減にはReliance財閥兄弟の兄が立ち上げたJioが

   大きく貢献。通信が4Gのモバイル通信の時代にはいり、Jio社ではモバイル通信参入時

   にしばらくタダにして市場の通信価格を格段に下げた。そのおかげでインドのデータ通信

   価格は国際的にももっとも安価。Reliance財閥は、貧困階級の出身でグジャラート州の

   小学校の教師をしていたAnil Dhirubhai Ambani氏が創設。今では世界屈指の巨大企業

   グループ。村塾研修団はムンバイの隣市にあるJio社を訪ね、執行社長から懇切の講義を受けた。

     

  ーエコシステムの充実も重要

    VC180社、エンジェル・個人投資家350人、2016投資総額40億ドル

    US610億、中国480億、欧州120億に次ぐ。イスラエル22億、日本13.5億を上回る

 

  ー島田村塾研修グループは、上記の江藤宗彦氏の紹介で、バンガロール、グルがオン、ムン

   バイなどで多くのベンチャー企業を訪ねた。例えば一定期間、好きな車を所有できるカー

   シェアリングベンチャーのRevv社、心電図のAI解析ベンチャーTricog社オンラインの

   保険勧誘サービスベンチャーTurtlemint社など創設ほどない意欲的なベンチャー企業が

   印象的だった。

 

  ー同時に、日本からはるばるインドに来て、バンガロールでMarket Drive社というe-

   Commerce企業を起業した意欲満々のベンチャー経営者、伊藤太氏からインドの

   ベンチャー事情を身近に聞いたことは貴重な勉強になった。

 

  ・伊藤氏は数年前に日本でアプリで結婚紹介をする事業を起業したが、心に期するところが

   あって青雲の志に萌える若者が競いあっているインドに人生の夢をかけて飛び込んだと

   いう。彼はやがて10兆円規模のユニコーンを育てたいとしており、気宇壮大な若い日本

   の起業家の姿に明日への勇気が湧く思いだった。

 

Ⅴ.    Modiが変えるインド

 

 1. Modi政権が変えるインド

 

  1)2014選挙。BJP(インド人民党)の圧勝。

  ・下院545席中、BJPは282。単独で過半数。インドでは30年ぶり。

   2014.5.26 M政権正式発足

 

  2)M政権の基本方針

   ・MのBJP政権は、独立後長期にわたって政権を独占してきた国民会議派の憲法に明記され

    た思想と政治路線を否定。BJP型の思想と政治を打ち出す。

   ・「反植民地主義」:反英⇒繁栄のために機会の平等、競争による雇用と成長

   ・「社会主義:平等と計画経済⇒計画委員会廃止。M独自の官邸主導組織。

   ・「世俗主義」:宗教と政治の分離、多宗教容認⇒ヒンドゥー至上主義。

 

 2. Modi首相の経済戦略

  

  1)M式ガバナンスの特徴:

   ・国民会議派流の多数の合意を重視、5ヵ年計画など計画にもとづく政策決定の

    方式を廃止。官邸主導のトップダウンで政策打ち出し。

 

  2)華々しい政策提案

  ー「Make in India」製造業振興総合政策

    ・インドは製造業基盤が大国としては貧弱。

     インドは自動車生産では韓国抜き、粗鋼生産では中国、日本につぐ3位。

     しかしインド経済が人口増を吸収できる7%を超える成長を達成するには、雇用吸収力

     の高い製造業の拡充が不可欠。GDP総額のうち16%程度の製造業セクターを25%に拡

     大し、雇用吸収と経済成長達成。

    ・製造業を成長のエンジンとするため、日本の「太平洋ベルト地帯」をモデルにした

     産業ベルトの建設志向。

    ・デリー首都圏とムンバイ間、約1500kmを貨物専用鉄道で結び、沿線の両側150kmで

     産業開発を展開。デリーームンバイ間産業大動脈(DMIC)国家PT.

 

  ー「スキル・インディア」若者の職業能力開発政策。2015発表

     人材豊富。工学系の大卒150万人。中国一人当たりGDP1万ドル、インド2000ドル。

 

    ・「 Digital India 」「スタートアップ・インディア」IT育成政策

     インドの強みであるIT産業の一層の育成と発展を推進するための政策パッケージ。

      例えば 2016.1.開始された「スタートアップインディア」

       9項目のアクションアイテム発表。

         モバイルアプリで1日で法人設立

         コンプライアンス(法令遵守)監視の自己申告制

         低コストで迅速な特許審査

         失敗ケースの迅速な清算手続き

  

  ー「 Clean India」環境整備策

      2015,11に開催された環境保護国際協定Paris Accord.COP 21。

       先進国と途上国の利害が対立。途上国グループの代表格のインドは難しい立場

       M首相は開催ギリギリまで待って、パリ協定賛同を宣言。

       同時に、パリで太陽光発電を促進する国際ソーラー同盟創設を発表して国際

       リーダーシップをアピール。ちなみに発表の日はマハトマ・ガンディー生誕記念日

     

  ー高額紙幣廃止の爆弾宣言

  ・2016.11.8. TV演説。「腐敗やブラックマネーを根絶するため、今夜、午前零時に

   現行の1000rpと500rp札を無効とする。市民は10日から銀行で旧札を新札に交換

   せよ」当初は混乱と批判噴出

  ・数ヶ月後、痛みの記憶が遠ざかると、市民の高額紙幣廃止への評価が変わり始め

   次第に支持増えた。  

  ・高額紙幣廃止のいまひとつの効果。

   デビットカード、クレジットカードが一気に普及。携帯やスマホを使う電子決済が

   急速な広まり。高額紙幣廃止には、ブラックマネーのあぶり出しだけでない、現金決済

   からの社会の転換というねらい。

  ・高額紙幣廃止から3ヶ月後、2017.2.国内5州地方選挙「反汚職」「経済開発」をかかげた

   BJPが4州で政権。Mは勝った。

 

 ー「アーダール・ナンバー(基礎番号)」(インド式マイナンバー制度)。

  ・アーダール(ヒンディー語で基礎を意味)13億人情報をひとつのデータベースに集約  

  ・個人認証の方法が世界最先端。10本の指の指紋、目の虹彩の情報登録。

   カードや暗証番号なしに個人認証できる。

  ・既に12億人以上が参加、4億人分の銀行口座が固有識別番号にリンク。

   電子投票システムも。インドの識字率の低さや投票箱の盗難など選挙妨害にも対応。

  ・数年前まで遅れていた認証が世界最先端に。典型的はLeap flog戦略。

 

 ー間接税の一本化。会議派時代から検討。しかし税収減を警戒する地域政党の反対で実現

   しなかった。Mは、政権発足直後から改革の目玉。ねじれ国会で少数派の上院でも

   法案をとおし、品目ごとに全国一律税率(サービス、物品)の導入に成功。

 

 ー2019.5.23. インド下院総選挙。BJP圧勝。300議席以上を単独で確保。友党と

   合わせると350議席以上の大勝利。Mは2024まで5年政権担う。選挙直前まで2014選挙

   の総定数545の下院で獲得したの282を割り込むとの予測。結果は、前回より21議席上積

   み。ツナミと言われた。

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