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中国、驚異の情報革命はいかに実現したか(1)

Ⅰ.  はじめに


 1. 中国の目覚ましい情報経済の躍進
   ・中国の最近の情報化による経済の質的発展には瞠目すべきものがある。
 ・中国は2010年以降、GDP(ドルベース)で日本を追い越し、規模では経済大国に
  なったが、国民1人あたり所得はまだ低く、技術的にはまで世界水準にキャッチ
  アップしようという後発国の段階にあるとの印象を我々日本人の多くは持っていたの
  ではないか。
 ・それが近年、情報化が急速に進み、社会全体がデジタル技術で大転換をしており、
  また次世代通信技術である5Gでも世界をリードしているといったニュースが伝えられ
  るようになった。


 2. この急激な発展はなぜ、どのように起きたのか
 ・規模は大きくても、質的技術的にはまだ遅れていると思われていた中国が、最新の情報技術
  を取り入れ、社会・経済全体のデジタル転換を進め、通信技術でも世界の最先端に立つと
  いう急激な発展をどのように達成したのか。


 3. 中国の近年の変化を知らなかった日本
 ・中国の情報化、デジタル化の急激な発展は最近10年ほどの間に加速度的に実現したものと
  思われる。
 ・ところがそのニュースも実態も日本にはあまり伝えられず、その理解が不足している印象。
 ・この情報ギャップは、とりわけ、2012年の尖閣列島をめぐる日中対立が先鋭化し、日本企業
  排撃運動が高まった頃から日本にも”嫌中感情”が高まり、また中国の賃金コストの高まりを
  受けて日本企業の”中国離れ”が進んだ中で広まったように思われる。


 4. 中国の変化の実態を学び、中国の可能性と課題について考える。
 ・本講では中国の近年の驚異の情報革命の実態の事実を学ぶとともに、その背景、これからの
  可能性そして課題について考える。


Ⅱ.   中国DX(digital transformation)の躍進


 1. 時代はDX
 ー馬雲(Jack Ma) 2014.「時代はITからDT(データ・テクノロジー)へと移行する。
  ・データはガソリンと同様、経済活動の原動力になる」と発言。象徴的。
 ーデータ蓄積が促進するイノベーションと新産業
  ・消費者の購買行動、タクシー、モバイクなどの移動行動、金融取引などがモバイルで決済
   されるとそれらのデータは瞬時に蓄積される。そのデータ量が大きくなるほどまた個人
   認証や信用情報など内容が詳細になるほどデータは経済資源として価値が高まる。
  ・なぜなら、そうしたビッグデータはAIによるディープラーニングなどの分析を通して、
   個人行動や社会動態のより精確な把握・予測を可能にするからであり、そうした理解と
   予測はサービスを提供する企業の行動をより効率化させるだけでなく、新たな産業の創出
   などイノベーションを加速する可能性を持つからである。
   ー中国のデジタル経済規模、2016、22.6兆元(385兆円)、GDPの30.3%。
  ・中国の電子商取引、利用者4.67億人、取引額26.1兆元(443.7兆円)。世界全体の40%。
   モバイル決済(アリペイ、WeChat Payなど)の規模はアメリカの11倍。
   デジタル経済は中国全土で280万人(2016)の新規雇用。


 2. モバイル決済の爆発的普及
  ーモバイル決済の爆発的な普及で中国社会全体がdigital transformation潮流に。
  ・インターネット企業、アリババ、テンセントのようなPF企業、先端テクノロジー企業
   にデータとして蓄積された会話、画像、取引、コンテンツがAIによって解析、それを
   元に新しいサービスが生まれる。人と人、人と企業、企業と企業、人や企業の評価情報
   が蓄積。
  ・主役はアリババ、テンセント、それに続く世界レベルのスタートアップ企業。中国型
   イノベーションの大きな特徴。モバイル決済の普及が起点。アリペイと微信支付(Wechat
           Pay)がモバイル決済を巡って激しい競争を展開したことも大きい。


 3. モバイル決済はイノベーションの起点
  ・中国のイノベーションの発展は、アリババ集団の支付宝(Ali Pay)と騰訊控股(テンセン
   ト)の微信支付(We Chat Pay)の熾烈な競争が牽引したモバイル決済が起点。
  ・その背景には、スマホの普及とQRコードの活用。たちまちのうちにモバイル決済が中国
   全土に普及していた。その結果、世界の先頭を走るキャシュレス社会、デジタル経済圏
   誕生。金融サービス後進国だったからこその一大飛躍。
  ・モバイル決済でシェアリングエコノミーの新サービス↑。膨大な決済データが蓄積される
   ここから中国型のデジタル・イノベーションのサイクルが始動。個人の信用情報が整備。
   新たなサービスに活用。そこにベンチャーファンドなど資金が世界中から。AIなど最先端
   分野のベンチャー相次いで誕生。
  ・モバイル決済は、ビッグデータと画像認識やdeep learningなどのAI技術と融合
   2017後半から、無人スーパー、シェアリングエコノミー、スマートシティ
   など新サービスを生み出す。
  ・中国のモバイル決済は2013を機に爆発的成長。2013は2014の4倍以上。
   2016.の取引規模157.55兆元(2678兆円)、世界最大。都市の住民、財布持たず。
   
  ・Apple がiphone発売した2007がスマホ元年。その後を追って、シャオミなどスマホ
   メーカーが対応。徹底コスト削減、1000元で買えるスマホ、若い世代中心に急速普及。
   ネット人口急増、ネット接続端末スマホの普及が、モバイル決済の土台。2018.6.
   モバイル決済利用者は5.7億人、モバイル経由でシェア自転車利用する人は2.45億人


 4. 中国は今やイノベーション大国
  ・2017年特許出願:華為4024、ZET2965、インテル2637、三菱電機2521、
   クアルコム2013、ソニーが1735など。
   
  ・ AIスタートアップ企業は2542社。うち中国企業は592。AI分野の特許件数は1.57
   万件で、米国に次ぐ2位。かつてコピー大国と言われた中国が知財大国、イノベーション
   大国に劇的変貌。
   
 
Ⅲ.   新常態経済と情報革命への国家戦略


 1. 2010年以降の中国の成長低下と構造変化
 ー2010sから中国経済成長は鈍化
 ・中国経済は1978~2010年、高度成長期、実質年率9.6%、名目5.8%、世界3%→20%へ。
 ・しかし、2011~15年 実質7.8%、2015年は実質6.9%、2018年は6.5%。
 ・IMFは米中貿易摩擦の影響を考慮すると2019年の成長率は5.8%と予測。そうした特殊要因を
  別にしても成長率は低下趨勢にあり、2019年の6.1%から2024年には5.5%になると予測。
  
 ー発展の歴史的転換点を過ぎた中国
 ・経済成長率の低下それ自体は問題ではない。
 ・歴史的大転換期にある中国:(1)中進国のディレンマと (2)人口減少・成熟化が同時進行。
  ー中進国のディレンマ。賃金コスト↑で成長維持できるか。
 ・これまでは低賃金労働、外資と技術導入、競争力↑、輸出で成長:途上国型発展
  鄧小平主席「改革解放」戦略が効果。1970年代末から2000年代初頭、30年間10%成長
 ・しかし賃金コスト↑、賃金上昇、5~6年で倍増。克服するには産業構造近代化、
  自前のイノベーション必要。イノベーションできるかが課題。
 ー人口減少と成熟化
 ・労働力の無制限的供給は終焉(Arther Lewisの転換点)。労働力制限下の成長。
  賃金コスト↑。成長鈍化は必然。さらに成長するには生産性上昇。イノベーション不可欠。
 ・中国:中進国と先進国の課題が複合。
   
 2. 「新常態経済」の提唱
 ー習近平首席:2014「新常態」への移行を呼びかけ。
 ー「新常態」経済戦略の要点。
   1. 経済成長の減速認識、受け入れ、それに見合った経済戦略と政策の推進
   2. 労働力と資本投入による量的拡大からイノベーション(生産性向上と新産業・
     商品創造)による質的向上による経済成長めざす。  
   3. 供給サイド:サービス業、需要サイド:国内消費の発展めざす。
   4. 構造問題の改革、解決


3.  経済強国化戦略と「中国製造2025」
 ー中国建国100年(2049)強国構想
  ・2017、第19回共産党大会で提示
      ・2020:小康社会の全面完成(2021(共産党創設100周年)を念頭に、
  ・2035 :社会主義現代国家建設
  ・ 2049(中華人民共和国建国100周年):社会主義現代化強国。
  ・その実現には創新(イノベーション)が基本戦略
  ー中国製造2025」
   ・中国国務院が2015.5発表の産業政策『「中国製造2025」は、次世代情報技術や
    ロボットなど10の重点分野を設定、製造業の高度化をめざす。
   ・中国は建国100年の2049に「世界の製造強国の先頭グループ入り」をめざす。
    「中国製造2025」はその長期戦略の第一歩。
  
   ー製造強国への工程表
     1. 第一段階(2015→2025):製造大国(規模)→製造強国の仲間入り
     2. 第二段階(2025→2035): →製造強国の中等水準
     3. 第3段階(2035→2049): →製造強国の先頭グループへ躍進。
   ー「中国製造2025」重点10分野
      1.   次世代情報技術:
      2.   高度なデジタル制御の工作機械・ロボット
      3.   航空・宇宙設備
      4.   海洋エンジニアリング・ハイテク船舶
      5.   先端的交通設備
      6    省エネルギー、新エネルギー自動車
      7.   電力設備
      8.  農業用機材
      9.   新素材
     10   バイオ医薬、高性能医療機械


 4.  インターネットプラス、大衆創業・万衆創新
   ・「中国製造2025」は大企業向け
  ー大衆創業・万衆創新(双創)は個人ならびに中小零細企業向け
   ・李克強首相は2014.9. 天津ダボス会議で大衆創業・万衆創新(起業とinnovation推進)
    政策に初めて言及。
  ーインターネットプラス(互聯網+)(インターネットプラス)
   :あらゆる産業にデジタル技術の利活用を推進。サプライサイド政策
  ・2015.3.  第12期全国人民代表大会、第3回会議「政府活動報告」で
   「インターネットプラス」の行動計画策定。
  ・モバイルインターネット、クラウドやビッグデータ、I o Tなど製造業の近代化
   EC、インターネット金融、インターネット企業の国際市場の開拓・拡大を強力に
   支援する方針を明示。
  ・2015.5. 国務院は「中国製造2025」発表。
  ・2015.7. 「インターネットプラス政策」は創業・創新とサプライサイドの構造改革
   の柱としての「中国製造2025」と統合的に進展させる必要との指導意見。
  ・一連の政策には、中国政府の強い決意と危機感。


 5.  国家戦略としてのビッグデータ活用
  ー2016.3.16  全人代採択「中国国民経済・社会発展第13次5ヵ年計画要綱」
  (第13次5ヵ年計画)に「国家ビッグデータ戦略の実施」盛り込まれ、
  ビッグデータ活用が国家戦略に格上げ。
  ・生活者の買い物などのデータがビッグデータとして蓄積。購買履歴、交友関係、公共料金
   返済状況などから、個人の信用度スコアリング。タクシー配車サービスの都市交通情報
   から交通渋滞の予測と誘導。


 6.  AI大国戦略
   ・2017.3.デジタル経済(数字経済)が初めて李克強首相「政府活動報告」に盛り込まれた。
  ー2017.7 国務院「次世代人工知能発展計画」発表。
  ・今後10年でAIを中国経済成長の重要な推進力とすることをめざし3段階アプローチ策定。
   ・ステップ1.:2020までにAIの技術と応用で世界先進レベルに追いつき、1500億元規模
     のAI基幹産業と1兆元規模のAI関連分野実現
   ・ステップ2.:2025までに、AIの基礎的理論研究で重大なブレークスルーはかり、技術と
     応用で世界をリード。4000億元規模のAI基幹産業、5兆元規模のAI関連産業実現。
   ・ステップ3:2030までにAI基幹産業1兆元(17兆円)
     AI関連産業で10兆元(170兆円)
   ・中国を世界で主要な人工知能イノベーションセンターと人材育成基地に。
  ー2017.11. 国務院科学技術部は「国家次世代人工知能オープンイノベーションPF」
    PT指定。
   ・有力な企業Gの分担決定。国家の後押しで、AI分野での振興・育成策が実施段階に。
    ・百度(バイドゥー)→自動運転
    ・アリババ集団→スマートシティ
    ・テンセント→医療映像を中心としたヘルスケア
    ・科大訊飛(iFlytek)→音声認識。
 

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