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中国、驚異の情報革命はいかに実現したか(3)

Ⅴ.   モバイル決済の創始者アリババ
 1. アリババ創業の苦闘と馬雲
 ー世界最強の総合プラットフォーム企業。
  ・アリババドットコム(企業間取引 B to B)、淘宝網市場(タオバオ:C to C 取引)、
   天猫(Tモール)(B  to C 取引PF) 国内、天猫国際(T モールグローバル)
   など展開。
  ・アリババのネット通販取引総額(2016)は3兆元(51兆円)。Walmartはここまで 
    半世紀。ABはわずか13年。B2CタオバオやB2BのTmallだけでなく、ヘルス、エン
   タメ、スポーツ、ニューメディア、物流、決済、金融、クラウドコンピューティング
   サービスなどのビジネスインフラと共に構成されるエコシステム。
 ー苦闘の創業期
  ・ アリババ集団、浙江省杭州市高校教師 馬雲1999.3設立。当初企業間電子商取引
   サポート仲介サイトは苦難の連続。2000ネットバブル崩壊直撃→倒産の危機。
  
  ー淘宝(タオバオ)・アリペイで開けた運命
  ・復活の転機は2003.5.開始のC2Cの淘宝(タオバオ)。
   
  ・勝敗は決済サービス。eBayはCCなどの前払い(欧米一般的)。これはCC保有低く、
   決済成功率の低い中国市場に馴染まなかった。 馬雲は、ネット決済の中国独自の課題に
   気づき、米国Paypalの仕組みを参考にアリペイ(エスクロー第三者預託サービス)を中国
   で最初に導入。買い手が代金をアリペイの口座に預託。送付商品確認して問題なければ
   アリペイに支払い指示。そこで初めて売り手に代金支払われる。売手も買手も不安なし。
  ー前例のない決済サービス
  ・金融サービスの許認可のない民間企業が、決済サービスを行う前例なし。法律にも
   規定なし。「問題が起きれば僕が刑務所に行く」馬雲の決意で開発急ピッチ。
  ・2004.12.29、アリペイアカウントシステムが杭州で誕生。
  ・アリペイ促進策。全額補償キャンペーン、利用者の不安↓。利用者のリスクを全てアリペイ
   が負う。タオバオの決済、アリペイの利用率は7割に。手数料無料化:eBayとの差別化。
  ーインターフェイスを開放、加盟店を味方に
  ・2005.5. 担保取引と決済のインターフェイスを開放。タオバオ以外のEC事業者の
   利用促進。決済手数料無料、加盟店に奨励金。当初は皆慎重。しかしタオバオが
   アリペイ効果で年100%以上成長。皆アリペイ導入決断。アリペイは電子決済で
   自動的に各社取り分を計算。他の決済手段ではできない効率化がアリペイで実現。
  ーeBayに打ち勝つ
  ・中国ではeBayのシェアが圧倒的。アリババ・タオバオ導入後、eBayのシェア低下。
   2005シェア逆転、2007.9 馬雲はEC事業者大会で、アリペイ利用者5000万人突破を
   報告。翌年1億人。手数料にこだわったeBayは敗退、撤退。
  ーイノベーションの後追い規制
  ・2005、中国人民銀行は「決済精算組織管理弁法」を発表。アリペイのような第三者決済
   機関を対象に入れる意向。 2010.6.「非金融機関決済サービス管理弁法」発表、第三者
   決済サービス機関にライセンス。中国は新サービス発生、すぐに規制せず、発展を
   見守って後追いで規制。日本の民泊のように、既存業界保護で規制するのと対照的。
  ーアリババクラウド誕生
  ・2017.11.11(ダブル11、独身の日)取引高、1682億元(2.85兆円)。取引ピークには
   毎秒32.5万回。データベースの処理のピークは毎秒4200万回。ネット攻撃全て防御。
   2010以来の独自分散型処理技術。このクラウド技術がアリババの競争力の源泉。
         アリババの技術は進化つづけ、クラウドシステムのサービスをアリババ以外にも提供
     ー余額宝(ユエバオ)誕生
  ・2012証券監理委員会一行がアリババを訪問した際、無名のファンド天弘基金が出し入れ
    簡単でネットショッピングにも利用でき資産としても運用できるサービスを提案。
    アリペイと天弘は特別PTを編成して商品化。2013.3.監理委員会は販売事実上解禁。
    2013.6余額宝(ユエバオ)発売。利用者急増。アリペイはユエバオで収益を生み出す
    ウォレット(財布)として人気↑
   ーWeChat Payの追い上げ
    2012頃からTCのWechat Payが追い上げ。決済を通じて消費者との接点を確保できれ
    ば、より多方面での情報を取得できるので、アリババとテンセントは激しい入り口争奪
    戦に戦略的取り組み。こうした切磋琢磨からさらに多様な革新が生まれた。
Ⅵ.   SNSの王者テンセント
 1.  創業の挑戦と馬化騰
  ー巨大なプラットフォーマー
   SNSを起点としつつ非常に幅広く、ゲームなどデジタルコンテンツの提供、決済など金融
   サービス、AIによる自動運転、医療サービス、AWSのようなクラウドサービス、新小売
   の店舗展開。テクノロジーの総合百貨店。
  ーQQメッセンジャーサービス
   ・TCは馬化騰(Ma Huateng、Pony Ma)が1998.3.設立。馬化騰はシステムエンジニア
            出身。通信会社のシステム開発経験。オンラインコミュニケーションアプリØICQから
            スタート。OICQはイスラエルのMirabillis社のインスタントメッセンジャーICQから
    ヒント。ICQの中国語版であるインスタントメッセンジャーアプリ開発。アプリ名称を
    OICQとした。OはOpenの意味。
   ・ユーザーのデータをサーバーに保存できる仕組みやダウンロードの時間短縮のために
    ソフトサイズの縮小など工夫を重ねユーザー獲得。中国最大のメッセンジャーサービス
    に成長。ICQを買収したアメリカ企業から知財侵害訴えで、名称をQQに。
  ー会員向けQQ秀(QQshow)でネットカフェ席巻
   ・2000NTTドコモのiモードに触発されたチャイナモバイルが移動夢網(モンターネット)
    (モバイルインターネット)を開始。TCは6500万人の会員基盤を武器に提携したが、
    解消され、TCは自らユーザー確保の必要性を痛感して2003.1.会員向け有料サービス
   「QQ秀」(QQshow)開発。Virtual tool購入などで自己実現志向の若者に人気。これは
    マーケッティング部門の発案。後にTCの商品マネジャー制につながる。
  ー微信(WeChat)開発
   ・2007、初代i-phone発売。スマホ革命。中国ではシャオミやファーウェイの格安スマホ
    が普及。人々のライフスタイルが変わった。開発部隊の張暁龍がアメリカで先行している
    無料メッセンジャーアプリと同様なサービスの開発を馬化騰に提案。TCでは複数開発が
    進行していたが、馬化騰は重複コストよりスピード重視。社内レースで微信(WeChat)が
    勝利。2011,1,Wechatがリリース。これは後に「社内競馬制」に発展。
  ーWeChatは不可欠の生活インフラに
   ・スマホ大手の小米が類似の「米聯Mihao」リリース。当初はMihaoが先行。
    WeChatが改良重ねて人気↑。登録者、2012.3.1億人、2012.9.2億人、2013.1.
    3億人、改良と進化で、WechatはSNSサービスの域を超え、人々の生活スタイルと
    融合、必要不可欠になった。アリババも開発したがWechatに勝てず。SNSの王者に。
  ー公式アカウント開設
   王者TCには世間の批判や風当たりも強くなり、馬はビジネスインフラ「公式アカウント」
   の開放決断。サービス提供者と利用者をつなぐツール。購読、サービス、企業アカウント
   など。2018には2000万加入。多くの企業がこぞってTCの公式アカウント開設に。
 
    ー社会インフラとして共存努力
   TCとAlibabaのあまりに急激な発展は既存産業に衝撃。両社は2013年頃から全てのサービ
   スを自社提供に限らず、他企業と連携オープン戦略推進。TCは総合プラットフォーム企業
   として取引マーケット、決済、物流、クラウドシステムなど未来のビジネスインフラ提供
   をめざす。
   
Ⅶ.  後に続く革新企業群
 ー百度(バイドゥ)
  ・中国のグーグルとも称される。バイドゥ検索、地図、翻訳 動画ストリーミングサービス。
  ・中国政府の「次世代人工知能の開放・革新プラットフォーム」PTで委託
   AI 事業4事業者のうち、バイドゥが自動運転事業を受託。
   2013にはすでに自動車メーカーと協力して自動運転に取り組み。高精度3次元地図、
   ローカリゼーション(自動位置特定)、センシング・行動予測、運行プランニング、運行
   インテリジェントコントロールなど自動運転に関わる技術開発を進めていた。
  ・これらの蓄積の上で2017.4 自動運転プラットフォーム『アポロ計画」を発表。
   2018アポロ3.0。自動運転バス実装化。
  ー滴滴出行(Di Di):シェアリングエコノミー(交通)の最大手。
  ・創業者 程維は、元アリペイ社員。2012. 29歳で滴滴打車を設立。2015 滴滴出行に。
   創業時、反応乏しい。北京の冬、雪の日タクシーつかまらず、滴滴のアプリ使う人口コミ
   で広がる。アプリのデモで失敗。百度からスピンアウトの張博をチームごとスカウト。
   アプリの品質にこだわり。ハイレベル人材。マッチング成功率↑。
  ・類似会社が参入したが、成長加速の滴滴は引き離し続ける。テンセントの資本の入った
  「快的打車」と「焼銭大戦」と言われる値引き、報奨金の激しい競争。2015両社合併。
  ・2014.2. 上海、広州、深圳にUberが進出。両社市場獲得の熾烈な戦い。両社の消耗は
   大きく、2016.8.休戦。滴滴がUberブランドや業務データすべての資産を買収。
   Uberは見返りに滴滴の株式5.89%獲得。約70億ドルの権益獲得。
  ・2018.4. 滴滴登録運転手2000万。毎日2500万のオーダー処理、世界最大ライドシェア
   サービス。
 ー陸続とunicorn企業
  ・衆安保険(Insure Tec), センスタイム(AI)、廣視科技、科大訊飛、出門問問など
   ユニコーン企業群。
 

Ⅷ.   中国の可能性と課題

  1. 起業家精神と激しい企業間競争
 ー自立的起業家精神
 ・21世紀初頭にめざましく台頭した中国の新興企業群の際立つ特徴は、華為の創始者、任生非、
  アリババの馬雲(Jack Ma), テンセントの馬化騰(Pony Ma)などに共通する自立心の強い
  起業家精神である。これは日本で戦後の焼け野原から立ち上がった松下電器の松下幸之助、
  Sonyの井深大、ホンダの本田総一郎、確立した織機を脱却して自動車をめざした豊田喜一郎
  らを彷彿させる。
 ー激しい企業間競争
 ・今ひとつ、これら中国企業に共通するのは激しい企業間競争を勝ち抜いて今日の隆盛を達成
  している点だ。華為が国家の支持と支援を受ける国有企業との熾烈な戦いから浮上したこと
  と、アリババとテンセントをめぐるモバイル決済事業の激しい戦い、また滴滴出行とUberの
  市場シェア争いなど枚挙にいとまがない。
 ー国家はこうした民間活力を利用
 ・こうした経験は、彼らが国家主導で国家の支援を受けて成長したという批判が全く的外れで
  あることを物語る。政府はむしろこうした民間活力を事後的に利用してきたと言える。
2.  中国のDigital Transformation
ー中国のdigital transformationは加速する
 ・こうした創造的な企業群を追って多くの活力あるベンチャー企業群が生まれており、
  いわゆるユニコーンが陸続と成長している。彼らの企業力はdigital革命の潮流を踏まえ
  ますます強大になりつつある。
ー巨大人口とビッグデータの有利性
 ・14億人という巨大人口は超ビッグデータを生む基盤であり、この点では中国は他の諸国を
  を圧倒する。ビッグデータはDeep Learningを可能にし、AIによるその分析から次の
  イノベーションや新産業が発芽する。
ー巨大digital 企業のPF展開力
 ・そうしたビッグデータの有利性をあますところなく利用して多くのプラットフォーム
  企業が多様なサービスと繰り広げ、それがデータ革命をさらに促進するという循環が
  起きている。
3.  国家の戦略と執行力
ー新常態経済、「製造2025」、AI戦略
 ・中国が開発途上国から先進国への転換をはかる過程で、「新常態経済」「中国製造2025」
 「AI戦略」などの国家戦略が打ち出された。それらはそれまでの低賃金経済の量的成長では
 なく高賃金経済を支える質的高度化をめざした。
ー国家戦略と政策執行力
 ・21世紀に入っての中国の凄さは、それらの戦略や政策が机上の議論ではなく着実に
  そして確実に実行されていったことである。政府のそうした実行力を理解する必要が
  ある。
 ・ちなみに日本では、安倍政権の下、毎年6月に「経済財政諮問会議」ならびに
  「未来投資会議」が5.0ソサエティーの実現など総合的な政策案を公表しているが、その
  内容が確実に実現されることはあまりない。
ー政府の統制力、個人情報の活用力
 ・一方、中国では、個人の自由が制限され、国家の統制が優先する特質がある。それはデータ
  革命をより容易にする側面があると同時に、国際的批判の対象にもなっている。
 
 4.  中国から学ぶ時代
ー中国のinnovationから学ぶ時代
・中国はこれまで開発途上国の常として先進国の技術をコピーして発展してきた経緯があるが、本
 講義でつぶさに紹介したように、digital革命の多くの側面で中国はすでに世界をリードしつつ
 ある。中国の優れた面は率直に評価し、学ぶ必要がある。
ー中国の動向を注視しよう
・2012年の尖閣列島問題以来、日本は中国から目をそらし、彼らの発展の様相の理解を怠ってき
 たうらみがあるように思う。中国は多様な意味で日本にとって極めて重要な存在なので、その
 動向は注視しつづける必要がある。
ー中国企業との協業のメリット
・日本の企業は中国を対等の相手としてよく理解し協力し合えるところは協力してお互いの
 メリットを増幅するべきだろう。

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