« 2018年12月 | トップページ | 2019年2月 »

2019年1月

『激変する世界と日本の針路』(3)

本エッセイ「激変する世界と日本の針路」は、私が2019年1月28日に行った島田塾の年頭講演の講演メモを、今回から4回に渡って掲載するうちの第3回です。

Ⅴ.   北朝鮮の脅威と展望
ー北朝鮮問題は2018年の6月まで世界の最大の関心事だった。
・北朝鮮が米国に届くICBMの開発をほぼ完成させた?
・その事実を容認すれば、北朝鮮は”核保有国”になる。このやり方は世界に拡散する可能性が
 あり、世界全体の安全保障にとって重大な脅威になる。
・日本はアメリカの核の傘に守られて68年間、安全を享受してきた。日本にとっては、その核の
 傘が形骸化する恐れがあり、日本は戦後の米国に依存した安全保障戦略全体を見直さなければ
 ならないかもしれないという重大問題に直面する。
・2018.6.12のトランプ大統領、金正恩委員長の米朝会談以降、情勢はやや沈静化したが、朝鮮
 半島の”非核化”をめぐる本質問題は何も解決されていない。
・これまでの経緯を展望し、今後の展開と課題を考える。

 1. 核と弾道ミサイル開発に盲進する北朝鮮

 ー2017.11.29、北朝鮮は最新の火星15型弾道ミサイルの発射実験を敢行した。
  それはロフテッド軌道(真上に打ち上げ)で宇宙4800kmの高度に達した模様。
 ・韓国国防省の推定では、これは通常軌道だと1万3000kmほどは飛べる能力。
  その意味は重大だ。その飛距離は米国東海岸全域を射程内に収めることになるから。

 ー北朝鮮は真剣に核保有国をめざしている。核保有国とは仮想敵国から抑止されない
  核武力を持った国である。北朝鮮が核保有国化すると、アメリカは攻撃を抑制せざるを
  得ない。日本はアメリカの核の傘を抑止力とする日米防衛体制の下で平和を享受してきた
  ので、アメリカが北朝鮮の脅威に対して抑止力を使用しにくくなると日本の安全保障体制
  は根底から形骸化する恐れがある。

 ー北朝鮮が核保有国になると、イラン、サウジなどの紛争国やテロ集団など多くが北朝鮮の
  跡を追って核武装を求める可能性がある。今、北朝鮮の核保有国化を阻止しないと、世界
  の崩壊に繋がる核拡散は防ぎようがなくなる可能性がある。

 ー北朝鮮の創立者、初代労働党委員長の金日成の時代に、核ミサイル開発を構想したが
  国力がなく、夢物語だった。当時、友好国だったソ連、中国から技術面の支援が得られな
  かったのも困難の原因。1985年、北朝鮮はNPT(核不拡散条約)に加盟させられ、IAEA(国
  際原子力機関)の監視下に置かれた。
 
 ーしかし、冷戦終結(1980年代末)で、事態は大きく変化した。ソ連が崩壊し、同国の核
  ミサイル技術のノウハウが技術者と共に流出した。ちなみに核兵器の多くはソ連邦の一部
  (民族共和国)だったウクライナにかなり集中していたし、技術者も多かった。パキスタン、
  イラン、北朝鮮などは、これらの技術者の協力で核開発が可能になった面が大きい。新し
  い技術人材や資源を得て核開発に着手した北は1993年3月、NPTを脱退した。

 ー過去20年ほどの間に、下記のミサイルが開発された。
   ・スカッド(短距離弾道)最大射程 300~1000km
   ・ノドン(準中距離弾道)同1300km:日本全域
   ・テポドン1型(1500km):日本全域
   ・ムスダン(中距離弾道)2500~4000km →グアム
   テポドン2型(大陸間弾道)6000km
  ーしかしこれまで技術水準は低かったが、2017年5月頃からミサイル開発技術レベルが
   飛躍的に高まった模様。
   ・北極星1型。潜水艦から発射。SLBM: submarine launched ballistic missile
   ・北極星2型。2.21、5.12.発射。北極星1型を地上型に改良。固体燃料、移動自由
     発射位置特定しにくく、攻撃されにくい。実用性は高い。
   ・火星12型(グァムを射程)、ムスダンの後継、ロフテッド軌道で、5.14発射。
     なお、8.19、9.15にも発射。ロフテッド軌道。日本上空通過、襟裳岬沖。
   ・火星14型(ICBM) 7.4,  7.28発射。アメリカ本土ほぼ全域射程内に。
   ・火星15型(ICBM) 最大飛距離13000km。東海岸含むアメリカ本土全部。

2.  北朝鮮はなぜ弾道ミサイルと核の開発に執着するのか

  ・第二次大戦後74年がすぎ、朝鮮戦争勃発から59年が経過しているが、朝鮮戦争はまだ
   終わっていない。朝鮮半島では1953に南北朝鮮間で休戦協定が結ばれたが、未だ38度線
   の休戦ラインを境に南北は軍事的に対峙している。

  ・その現実の中で、国家体制存続の保証を取り付けるためアメリカに核ミサイル保有に
   よる核武力を認知させることが唯一の体制保障になるとの戦略に固執している。

  ・中国は、朝鮮戦争の際、人民解放軍の義勇兵(実際には中国軍)を大量に送り込み
   北朝鮮を助けた。この共闘は”血の同盟”と言われた。ソ連は、最新鋭のジェット戦闘
   機部隊を戦略的に派遣し、北朝鮮と中国の同盟軍を支援した。中ソの参加と支援が
   あって朝鮮戦争は初めて休戦に持ち込むことができた。

  ・そのソ連が、まずゴルバチョフ時代、北朝鮮を見限って韓国に接近し、1990年に韓国と
   国交回復をした。1992年には韓国ロシア基本関係条約が締結された。中国も1992年
   に韓国と国交を樹立。1998年には中韓協力パートナーシップ、2008年には戦略的
   パートナーシップを締結し、互いの経済交流を深めている。こうした動きは北朝鮮か
   ら見れば裏切りの驚愕。そうした中で北朝鮮は事実上、国際的に孤立化した。
3.    北朝鮮を誤解させたアメリカの対北戦略とトランプ大統領の登場

    ・北朝鮮が核開発に着手し始めた1994年、クリントン政権は北朝鮮と核開発の凍結・国交
   正常化の道筋をつける合意。それを反故にされたので、北への武力攻撃を考えたが、韓国
   で100万人規模の犠牲者が出るとの情報で中止。カーター特使を派遣して金日成とアメリカ
   の派兵停止と核開発の代わりに軽水炉援助の「米朝枠組み」合意。しかし、その後、北が
   核開発凍結を破棄。枠組みは崩壊。2003年から6カ国協議で北が時間稼ぎの食い逃げ
   外交。ブッシュJrJ大統領は北朝鮮をイラク、リビアと並べて「悪の枢軸」と非難しテロ
   支援国家に指定したが、2008年に取り下げ。オバマ大統領は、北への軍事力行使という
   オプションを完全に放棄し、”戦略的忍耐”。。

  ・こうした対応が20年以上も続いたため、北朝鮮の内部には一つの神話ができたのでは
   ないかという観測。それは、北朝鮮が何をしてもアメリカは武力攻撃はしてこない。
   「アメリカが北を怖がっているからだ」という考えがあったとすれば、それは妄想。
   ただ、日本がかつて、生産力が10倍も大きいアメリカを相手に太平洋戦争に挑んだ頃
   の日本のメディアの喧伝や軍部の戦略判断を思いやると、北朝鮮の”妄想は四半世紀の
   経験の基づいているだけ、日本のかつての経験より”実証的”かもしれない。
       ・2017.1.のトランプ大統領の登場を契機に、アメリアかはこれまで24年間の実質的放置か
   ら軍事力の行使も辞さない姿勢へ大きくを舵を切った。トランプ氏は独特のツィッターを
   使った”口撃”も繰り返しており、レトリックが激しい。例えば、2017.7に北朝鮮がグアム
   島攻撃を示唆した際には、「世界が見たこともないような炎と怒りに包まれるだろう」と
   述べ、また2017.9.19の国連演説では「防衛のためには、北朝鮮を完全に破壊する以外、
   選択肢はない」と公的に威嚇した。

4.    北朝鮮を非核化できるか
 ・”すべてのオプション(手段)はテーブルの上にあるとして軍事攻撃も示唆。
 ・軍事攻撃の前に、国連などを使った外交非難と忠告。ならびに経済制裁による圧力

 ・軍事手段としては、(1)先制攻撃で国境付近の砲撃能力を壊滅、そしてミサイル発射
  装置の破壊、すべての攻撃能力の排除、(2)斬首作戦として金正恩への直接攻撃。但し、
  これはその後の混乱が大きい。(3)外科手術(surgical strike):まずサイバー攻撃で
  北朝鮮の情報機能を麻痺(手術の前段の麻酔に匹敵)させ、強力な戦力で北朝鮮の
  戦力を完全破壊、などが考えられ、計画された。
 
 ・一方、金正恩はこれまでの対米経験を踏まえ、米国の意思と能力を侮っていた可能性。
  米国が本気になるとどれほど怖いか、をトランプ政権とのやりとりの中で自覚。米国は
  軍備(Bi, Fシリーズ、ミサイル、空母)を持つだけでなく、毎年のように実戦している。
  実戦で鍛えられた戦力ほど強力なものはない(小泉首相)ことを自覚して直接交渉を
  模索した?
 
5. 米朝首脳会談への道

 ・冬季五輪が韓国平昌で開催される機会に、北朝鮮チームを招きたいと文在寅韓国大統領が
  懸命なラブコール。文在寅氏は人も知る熱烈な親北朝鮮派。北朝鮮は渡りに船と融和攻勢。
  南北朝鮮は急遽、合同チームで五輪参加。北朝鮮からは音楽隊の応援団も参加。

 ・訪朝した韓国特別使節団訪朝に北朝鮮金正恩委員長が直々の会談。金委員長がトランプ
  大統領に会いたい旨を語る。トランプ大統領が、金委員長の思いを伝えに訪米した韓国特別 
  使節団代表に3月8日、金委員長と会談の意向表明。トランプ氏は会うと即答。その件を
  特別使節団代表にWHのWest Wingで記者団にブリーフィングさせるという特別扱い。

 ・金正恩委員長が3.26~27、極秘裏に北京に習近平国家主席を訪問。習近平主席は、父親が
  厳しくかつ優しく諭し迎えるような対応だったという。金正恩の核ミサイル実験で何度も
  メンツを潰された習近平氏との関係修復。トランプ氏に会う前に後ろ盾が欲しかった?

 ・4/27、板門店で南北朝鮮首脳会談。30年ぶり。当日は快晴。文在寅大統領と金委員長が
  手を取り合って38度線を越えるという演出。全世界にTV実況中継。しかし、会談の結果
  は具体策なし。南北の合意は(1)非核化によって核のない朝鮮半島を実現する共同目標。
  (2)今年中に”終戦”を宣言し、休戦協定を平和協定に変換。その他。非核化の具体的
   段取りなどは米朝首脳会談に先送り。

 ・米朝首脳会談は6/12にシンガポールで開催決定。5/25、トランプ大統領が、金委員長
  のメッセージを問題として、突如、会談の中止を発表。トランプ氏独特の脅し取引。
  金委員長、文大統領の支援要請。5/27、金委員長、文大統領の再会談。また習近平
  主席をも訪問相談。
 
6.  米朝首脳会談とその結果
 ・6.12. 米朝首脳会談。全過程をネットで中継する演出。会談の結果、共同声明。内容乏しい。
  要点は二つ(1)トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束、(2)金委員長 
  は朝鮮半島の完全非核化への確固で揺るぎのない約束を再確認した。

 ・この会談結果には、重大な欠陥がある。それは最大課題であったはずの非核化の具体案、
  手続き、スケジュールなどについて一切言及がなかったこと。非核化については”確固で
  揺るぎない約束の再確認”という口約束にもならない文言が声明文に書き込まれただけ。

 ・しかも会談後、記者会見したトランプ氏は上機嫌で、北朝鮮は正しい方向へ進めば素晴
  らしい国になる、北朝鮮の今後の経済発展のためには韓国と日本が経済支援をすれば良い、
  米韓軍事演習は費用もかかるので、やらなくても良い、などとアドリブでコメントし、
  関係者を驚愕させた。

 ・会談は今後もやろうという含みを残し、これからの詳細な詰めは、Pompeo国務長官と
  北朝鮮の担当高官の協議で行うこととされた。トランプ大統領は、最大の関心は11月の
  中間選挙であり、米朝会談の成果は、”もうアメリカに北朝鮮のICBMは飛んでこない”
  と胸を張ることであったのかも。

 ・2018年年末にかけて、金委員長から会談の打診があり、トランプ氏も関心を示しているが、
  Pompeo長官らとの事務レベルの折衝では、北朝鮮は(1)非核化については具体的な対応
  を示さず、(2)経済制裁の停止が前提、という主張で、米朝はかみ合わず、どのような展開
  になるか不透明。北朝鮮は金日成・クリントン大統領の折衝以来、約束を守ったためしが
  ない交渉巧者であることも多いに念頭に置くべきか。

 ・2019年2月末をめどに、2回目の米朝首脳会談を、ベトナムで開催する方向。両者の思惑。
  トランプ氏:壁問題など制約される内政の不評を、外交で得点ねらう?
  金正恩氏:第一回首脳会談で政体保証や米韓演習中止を引き出し、さらなる成果を?
 ・米朝会談の結果、核・ミサイル実験の危険は↓。しかし非核化のプロセスには時間が
  かかる?

7.  北朝鮮問題の今後と日本の役割

 ・北朝鮮の核・ミサイル開発は、世界の安全保障体制に重大な危険をもたらすと懸念された。
  危険をとり除く鍵は、北朝鮮の”非核化”である。2018.6.12の米朝会談への世界の期待は、
  トランプ氏が北朝鮮の非核化についてどこまで具体的な約束を取り付けるかに注がれた。
  米朝会談では、上述のように具体的な約束はとりつけられなかったが、非核化が問題の核心
  であることに変わりはない。
 
 ・その後の米朝交渉では、北朝鮮は経済制裁の停止を要求する一方、非核化については具体的
  な対応を示していない。北朝鮮は非核化についてはこれまでも約束破りを繰り返してきた狡猾
  な交渉者なので米朝の折衝も成果を挙げられるかは不明。

 ・北朝鮮は、今回の一連の交渉で、朝鮮半島に「終戦」をもたらしたいとしている。終戦が
  確定すれば、日本に対して正式に賠償請求ができると期待しているのだろう。日本と韓国は
  朴正煕大統領の時代、日本は平和条約を結んで多額の援助をし賠償問題には決着を着けた。
  それがこれまでの日韓の理解だったが、文在寅大統領は、慰安婦問題、徴用工問題などで
  も、決着済みの問題を一方的に蒸し返して日本に大きな賠償を迫るという挙に出ている。
  終戦で南北平和条約が結ばれれば、北朝鮮はかつての日本の”侵略”にたいして法外な賠償
  を求めてくる可能性がある。

 ・2018.6.12の米朝首脳会談後の記者会見で、トランプ氏は北朝鮮の今後の経済発展のため
  には日本や韓国が経済援助をすれば良い、と口走った。日本がそうした援助をするため
  には、どのような条件が必要か?

 ・北朝鮮と日本の間には、拉致問題をはじめ、深い溝がある。日本が経済援助を可能に
  するような相互理解や相互信頼は醸成できるのか。本格的な研究が必要だろう。 

Ⅵ.   プーチン・ロシアの現況と北方領土問題

 1.  プーチン第四期政権の展望と課題

  ー2018.7. 島田村塾ロシア研修訪問
     ー プーチン政権 第一、第二期(2000→2008)
   ・原油、LNG価格などエネルギー価格の持続的上昇による高度経済成長、年7%
    2000~2008で、GDPは83%増大、所得↑、中間層↑、貧困率↓。
   ・2008年訪問時のエピソード:”プーチンストップ” ピロシキ屋のプーチン絶賛

  ーメドベージェフ政権(2008→2012)
   ・2008年9月、リーマンショック⇒2009年GDP ー7.9%
   ・しかし平均4%程度の成長は確保

  ープーチン第三期政権(2012→2018)

   ・メドベージェフ政権時代に憲法改正、大統領任期を4→6年に。
   ・首相から大統領就任、全国で批判噴出、大規模デモ↑
   ・Hillary Clinton国務大臣が支持を公言したことをプーチン氏は根に持つ。
     Hillary Clinton(オバマ政権(2008→2016)氏らの扇動と認識。
   ・2014年3月、クリミヤ併合、西側諸侯はアメリカ主導で経済制裁
    →2015、2016年は経済縮小(マイナス成長)、2017年はようやく1.5%

  ープーチン第四期政権(2018→2024)
   ・経済戦略:大統領令の国家目標
    (1)経済成長、経済安定
     世界5大経済大国(韓国や英国抜く)、インフレ4%以下、世界平均以上成長率達成
    (2)人口増加、国民生活水準向上
     人口持続的自然増、寿命78才へ(現在72、M67、F77)2030までに80才。
      実質所得の持続的↑。インフレ以上の年金伸び確保、貧困半減。
    (3)快適な生活環境:住宅環境と自然環境改善

   ・総合構造改革が必要、Alexei Kudlin前財務相主導の戦略策定センター
     これまでも同様な目標→プーチン戦略体現していたが実現していない。
    ・第一次2010年発展戦略(2000策定)、第二次2020年発展戦略(08策定)
     ・第三次発展戦略諸機関で論争が、今回の第四次2024発展戦略(2018策定)に続く?

  ー年金問題で支持率急落
    ・メドベージェフ首相、2018.7.年金支給開始年齢引き上げ発表
      M:60→65(2028まで)、F:55→63(2034まで)、国民反発、全国デモ。
      プーチン支持率、80%→60%へ。
    ・年金問題でプーチン大統領が条件緩和
     2018.8.29. プーチン大統領は国民の反発を意識して、これまで提示していた
     年金支給の開始年齢引き上げ 55才→63才を、55歳→60歳とすると修正。
     それでも国民の不満は高まったまま。
    ・ロシアは財政赤字はわずかだが、貧弱な社会保障にしわ寄せ。

 2. プーチンロシアの他国評価と自己認識
  1)西側諸国のイメージとプーチン政権の自己認識に大きな乖離
   ・西側諸国から見ると、プーチン政権の外交戦略は、攻撃的、侵略的、非民主主義、
    人権無視。スパイ活動など。 深刻な脅威。当然、制裁(経済、軍事)の対象。
    そもそもNATO(北大西洋条約機構)は冷戦時代以来のロシア(旧ソ連)の
    軍事的脅威に対抗するために創設された。

  ・プーチン政権の自己認識は全く異なる。正反対
     西側諸国による政治的、思想的脅威。それはロシア国民の一体感と団結を
     崩す恐れ。裏庭から侵食。自己防衛のために強圧的、攻撃的手段も必要。

 3. プーチンロシアの攻撃的な安保・外交戦略の例
   ・チェチェン共和国への攻撃(1994~96、1999~2000) 
   ・グルジア(ジョージア)のバラ革命(2003)
   ・ウクライナのオレンジ革(2004)
    ⇒これらはカラー革命と呼ばれ、ロシアは包囲されているとの被害者意識↑?
     Hillary国務長官が後ろ盾と警戒。
   ・グルジア攻撃(2008.8 北京オリンピック時)南オセチア、アブハチア独立宣言           
   ・クリミヤ併合(2014.3)   
   ・東ウクライナ容喙(2014)  
   ・シリア、ISへの政治、軍事介入(2009)
     オバマ大統領が、アサド政権がRed Line(化学兵器を民間人に使用)を超えたのに
      攻撃を逡巡した時、プーチンはすかさず介入して指導力発揮
   ・アメリカ大統領選(2016)へのサイバー介入の疑い
     ロシア側の意図:Hillary Clintonだけは排除すべし?
     Hillaryでなければ良い。トランプは利益取引型(Deal)なので与し易いかも。
     トランプ陣営は皆素人。フリン補佐官、クシュナー、トランプJrなど
     プーチン陣営はトランプ側の実力評価せず、相手にせず。
 
    ー欧州選挙(2017)への介入の疑い。ロシア、EUの弱体化画策
     マクロン大統領(2018.1)偽ニュースから民主主義守る法制度導入表明
     米英仏がロシアの情報工作対策に乗り出す。
     クレムリンのプロパガンダ(政治宣伝)機関と批判される国営対外発信メディア
      「RT」や「スプートニク」の監視強化、包囲網を狭める。
 
    ・プーチン(2018.3.1)年次教書発表:
      通常の倍2時間演説、40分、兵器詳説
      新型ICBM開発発表、複数核弾頭搭載。米国ミサイル防衛網(MD)も突破。      
 
    ・英国で元スパイの毒殺未遂事件(2018.3)
 
    ・周辺小国への脅威(ジョージア、マケドニア、バルト三国)
       プーチン第四期。経済低迷は不可避。大国意識と強い指導者のアピール
       対外(周辺小国)への強圧的行為に出る危険意識。

    ー西側諸国のロシア脅威感
      ・民主主義否定、
      ・人権否定
      ・国際法違反:力による現状変更(1928パリ不戦条約違反)
      ・経済制裁の正当化と執行

    ー抜きがたい地政学的被害者意識
     ・西側諸国の介入、浸透、侵蝕への警戒、恐怖感
     ・NATO軍事包囲網への対抗
     ・ロシアの価値観、国家主義、一体感の侵蝕。政権基盤の弱体化
     ・ロシアの懸念と論理は理解できるか、共有できるか。ロシア理解には必要?

 4.  プーチン・安倍会談と北方領土問題
    ー安倍首相は就任以来、ロシアとの北方領土解決に熱心に取り組んで来た。
     プーチン大統領との会合は、2019.1会談で25回目。
           ー本題の北方領土問題は、WWII後、ソ連はSF平和条約に調印しなかったため、
     日ソは別途、二国間での平和条約締結をめざし、1955年に交渉を開始。しかし領土
     問題では決着がつかず、翌1956年10月にモスクワで平和条約でなく日ソ共同宣言に
     調印。共同宣言では歯舞群島と色丹島を平和条約が締結さらた後に引き渡すと
     された。日本は鳩山首相、ソ連ブルガーニン首相らが出席。

    ー1993年10月、エリツィン首相来日、細川首相との間で「東京宣言」に調印。宣言では 
     「両国は過去の遺産は克服すべき。北方四島の帰属について真剣に交渉。この問題を
     解決することにより平和条約を早期に締結するよう交渉を継続する」とした。東京
     宣言後、両国の空気は改善し、1998年4月の橋本・エリツィン会談では、領土問題
     は解決寸前に近づいた。そこでは橋本首相が「日ロ間で締結する平和条約で、領土
     問題は別途日ロ間で合意するまで、日本はロシアが四島で施政権を行使することを
     認める」と提案。エリツィン大統領はこ「面白い」としたが、同行の報道官がこれを
     国に持ち帰って検討するよう進言し、その場で合意はならなかった。もし合意して
     いたら領土問題は大きく前進した可能性。この時期はロシアが経済的苦境にあり、
     日本と協力的な関係を欲したいた稀有のタイミングだった。

    ーエリツィンから大統領職を引き継いだプーチン氏は領土問題に関心が深くまたもっとも
     勉強した大統領。彼はロシアは交渉には応じるし、解決への意思もある。しかし
     ロシアには受け入れ可能な妥協が必要。いわば柔道の「引き分け」のようなもの
     が必要、との考え。

    ー安倍首相は領土問題に強いこだわりがあり、2016年5月、プーチン氏に「双方が
     受け入れられる解決策」に向け「新たな発想のアプローチ」で交渉を加速する提案。
     プーチン氏も賛成し、それ以降、頻繁に接触。同年12月にはプーチン大統領を自らの
     故郷の山口県長門市と東京に招き会談。両国で「共同経済活動」を検討する合意。

    ー領土問題は、平和条約や経済協力も合わせ、双方が合意できるような形を創出する
     必要。交渉上の立場には互いの経済条件も影響。当面は返還の可能性は乏しい?
     また返還にはメリットもデメリットもある。しかし、国境や領土問題は法と正義に
     照らして主張しつづけるべき。

    ー2018.9.12ウラジオストックで開催中の「東方経済会議」に出席していたプーチン
     大統領は、安倍首相、習近平氏と同席のパネルで、まったく前触れなしに「日本と
     無条件で平和条約を締結してはどうか」と爆弾発言。
    ・日本は領土問題を解決してから平和条約を結ぶという立場。換言すれば、領土問題
     の解決は平和条約の前提条件、という立場なので、プーチン氏の発言をそのまま
     受け入れるわけにはいかない。日本政府は同氏の真意を分析中。

    ー2018.9.16. 日露両政府と企業は、82件の経済協力に関する合意文書を交わした。
     8項目の協力分野:医療、都市づくり、中小企業交流、エネルギー、ロシア産業
     多様化、極東の産業振興、先端技術、人的交流。日本側企業にはなお慎重論も。

    ー2018.11.14。安倍首相とプーチン大統領は、シンガポールで会談。安倍首相は1956
     の日露共同宣言を基礎に平和条約交渉を進めていく考えを示した。同共同宣言には
     平和条約締結後、歯舞、色丹2島の引き渡すとされている。プーチン大統領は引き渡し
     ”主権”の返還を意味しないとの立場。安倍首相は2021年の任期中に歴史を一歩進め
     たい、との思い。
    ー2018.12.1.安倍首相はプーチン大統領と会談。平和条約と領土交渉は今後、外相
     以下事務当局の交渉で詰めていく方針合意。日本政府の4島返還主張は消えた?
     安倍首相サイドは「2島+アルファ」の思惑?

   ー2019.1. 14:事務レベル交渉:河野外相、ラブロフ外相。
    ・ロシア側主張:大戦の結果、北方4島はロシア領土。ロシア主権を前提にすべし。
    ・日本側主張:4島は歴史的に日本固有の領土。56年共同宣言は平和条約後、歯舞、色丹
     返還を明記。
   -2019. 1. 22安倍ープーチン会談(25回目)
     ・平和交渉と日露経済協力に重点、領土問題は?
     ・2019.6にまた首脳会談、それをめざして息長く準備
 

『激変する世界と日本の針路』(2)

本エッセイ「激変する世界と日本の針路」は、私が2019年1月28日に行った島田塾の年頭講演の講演メモを、今回から4回に渡って掲載するうちの第2回です。

3. メルケル政権後のドイツ

 1)2017.9総選挙の与党大敗からメルケル退陣へ
 ・2017.7に島田村塾はドイツに研修訪問をした。4年に一度の総選挙を2ヶ月後に控えて、
  ドイツは選挙モード一色だった。その中で印象的だったのは、メルケル氏が4選するとの
  見方が多かったことだ。
 ・メルケル首相は、中東などから大量の難民・移民が欧州をめざして流入し始めた2015年に、
  人道的立場から彼らを受けいるべきと主張し、EU各国に受け入れの割り当てを提案する
  に及んで、EU諸国のみならずドイツ国内からも強い批判を浴びて人気が急落した時期が
  あった。メルケル首相はその後、受け入れ政策に慎重になったが、そうした負の遺産が
  あるにも関わらず、選挙に強いメルケル氏の”神話”はなお健在に見えた。
 ・メルケル氏は牧師の娘で東ドイツ育ち。ライプツィヒ大学物理学部卒の理化女。ドイツ統一
  を成し遂げ、Euroに道を開いた大政治家Helmut Kohl氏の寵愛を受け、出世街道を駆け上り
  CDUの代表。社民党のSchroeder政権後、ドイツ連邦首相になって3期12年連投した。
 ・その間、リーマンショック後のドイツ経済の復活に尽力、Euro圏を危機に陥れたギリシャ
  問題を決着させ、また東ウクライナ紛争ではモスクワとウクライナのシャトル外交でプーチン
  と渡り合ってミンスク合意を取り付けるなど輝かしい業績は枚挙にいとまがない。EUを
  代表する大政治家の評価。
 ・そうした栄光が今なおメルケル神話を定着させているのかと思えた。
 ・ところが選挙の結果は、メルケル率いるCDU+CSUの大敗だった。各党の得票は以下の通り
           1.  CDU+CSU    32.9 %(―8.6%)     246議席(ー65議席)
     2.  社会民主党(SPD) 20.5%(―5.2%)  153議席(ー40議席)
     3.  AfD 12.6%(+7.9%)   94議席(+94議席)
     4.  自由民主党(FDP) 10.7%(+5.9%)  80議席(+80議席) 
     5.  左翼党(Die Linke)  9.2%(+0.6%)  69議席(+5議席)
     6.  同盟(Bundnis) 90+緑の党(Die Grunen)8.9%(+0.5%)  67議席(+4議席)
     ・CDU+CSUの大敗とは対照的にAfDの驚異的躍進が目立った。AfDは移民排斥を唱える
   ナショナリスト政党。ドイツの選挙制度では、連邦レベルで5%以上の得票率を得ないと
   国政に参画できない。AfDはそれまで地方の小政党だったが、今回の総選挙で一気に第3党
   に躍り出た。ドイツの選挙民がどれだけ移民受け入れの負担を忌避していたかが浮き彫り
   になった。対照的に、移民受け入れを唱えてきたメルケル氏に世論は背を向けた。
  ・CDU+CSUは第1党であってもそれだけでは過半数を取れないので政権は担当できない。
   これまで12年間連立を組んできたSPDが大連合を組んでくれれば政権を担えるが、Shultz
   氏率いるSPDは今回は頑ななに大連立を拒否した。大連立ではCDUの影に隠れて選挙民に
   アピールできない。これまでも独自性を出せなかったが、今、大連立を組むと、次の選挙
   では埋没どころか消滅さえしかねないという危機感をSPDは抱いていた。
 
  ・メルケル氏はやむなくFDP(自由民主党)とDie Grunnen(緑の党)と連立のための交渉
   を開始した。しかし、両党とも、CDUとは政策が大きく異なるので、連立交渉は不調に
   終わった。総選挙が済んで、3ヶ月近くが経とうというのに、連邦政権が組成できないと
   いう事態は歴史的にも空前の異常事態である。内外から決められないドイツの政治に対
   する批判は当然高まった。
  ・そうした中で、12月に入ると、シュルツ党首が、連立は必ずしも拒否はしないという姿勢
   に変化した。拒否はしないが、埋没を避けるために政策や人事で多くの要求を突きつけ
   た。何回も何時間にもわたるトップ交渉で調整が行われた。それだけでは済まず、地域
   組織や一般組合員の了承も得なくてはならなかった。2018.3.4に発表された最終的な党員
   投票の結果、ようやく大連合が了承された。総選挙から実に半年が経過していた。
  ・大連立内閣の構成は、多くのメルケル反対派が要職を占めており、メルケル首相の指導力
   はひどく低下していた。また、空費されたこの半年の間に、メルケル氏の求心力は著しく
   低下、ドイツの国際政治におけるプレゼンスも矮小化した。  
 
 2)ドイツ政治の立て直しと復権は?
  ・大連合はようやく成立したが、その前途には、選挙民の厳しい審判が待っていた。
   2018.10.14 南部バイエルン州の州議会選挙は、同地域を牙城とするCSUが大敗。
 
  ・得票率は、CDU+CSU37.2%(前回に比して-10.5%)、SPD9.7%(-10.9%)
   対照的に、緑の党17.5%(+8.9%)、AfD10.2%(+10.2%)
  ・さらに10.28のヘッセン州議会選挙でも、メルケル氏率いるCDU+CSUと大連合を
   組むSPDは大敗した。
  ・大連合再成立にいたるまでの半年以上かかった迷走はCDU+CSUとSPDという既存大政党
   に対する選挙民の失望を買い、さらに2015年にメルケル氏が主唱した難民の積極的受け
   入れ方針に対する国民の反発は深く潜行していたと言わざるを得ない。
  ・これらの選挙結果を受けて、10.29、メルケル首相は、CDU党首の座を降りること、
   しかし連邦政府首相の職務は2012年末の任期満了まで務めることを発表。
   メルケル氏は、CDU代表の後任候補としてメルケル氏が長年嘱望してきた
   Annegret Kuramp-Karrennbauer(AKK)氏を推すことを明らかにした。メルケル氏
   は残る任期を首相として政務を全うすることで、AKK氏が党務に注力できる環境を
   用意する?。
  ・AKKは、2018.12.7.CDU党大会での党首選で、決選投票の結果、党首に選出された。
   彼女の当面の仕事は、CDUの団結であり、最大の課題は、ドイツ連邦の政治的再集結。
   AKKはCDU幹事長に、政府の難民政策を批判してきた若手のツィーミャク氏を登用して
   党内融和を演出。メルケルの中道左派路線を継承するAKK氏には、左右の反発が一層
   強まることも予想され、ドイツの統合と復権の前途は容易ではない。

4. マクロン改革は実現可能か
 1)マクロン大統領誕生と果敢な改革
 ・2017年4月13日、フランス大統領選挙の第一回投票が行われた。その結果、驚くべき地殻
  変動が明らかになった。それはこれまでのフランス政治を支えてきた共和党と社会党という
  伝統的な大政党が大きく後退し、極右、極左や新興政党が躍進したこと。以下参照。
             マクロン       24%
             ルペン        21.3%
             フィヨン(共和党)  20.0%
             メランション(極左) 19.6%
             アモン(社会党)   6.4%
 ・誰も過半数を取れなかったので、マクロン氏とルペン氏による決戦投票が5月7日に行われた
  その結果は、大方の予想を超えてマクロン氏の圧勝となった。
     マクロン 66.1%(2075万票)、ルペン 33.9%(1064万票)
 ・エマヌエル・マクロン氏:39歳、オランド政権の経済相、中道系独立候補。対するマリー・
  ルペン氏が勝てば、彼女の主張にしたがってフランスもEU離脱をする可能性があった。
 ・マクロン氏の政策構想は大胆で画期的だが、実現可能性について、また大統領の実行力に
  ついて当初、内外から疑義が提起された。
  例えば、マクロン氏は EUを連邦型にしたいと主張。そのためにはEUの財政統合を進める。
  具体的にはEU予算、財務相を置き、銀行同盟で規制と監督を強化するなどである。
  これに対して、理想は良いが、膨大な予算負担と事務量が必要となり非現実的。例えば、
  EU予算のために、フランスは現在の国家予算の半分もの付加的負担が必要になるとの批判。
 ・また、国内改革できるか?硬直的労働市場、莫大な政府部門とその非効率性、それらを解決
  することが宿題なのではないか、といった批判。さらにマクロン氏は政治基盤がないので、
  そうした改革を主張して国民の支持得られるか?国民議会選挙で勝てるか、などの疑問。
 ・こうした懸念や批判を尻目に、マクロン氏は2017年6月の国民議会選挙では、大統領の
 「共和国前進」が308議席と過半数(総数577議席)を獲得、中道連合を入れると350議席で
  6割を占めた。既存の共和党は113席、社会党は29議席、極右ルペン党首率いる国民戦線は
  わずか8議席にとどまった。
 
 ・マクロン大統領は議会で過半数と獲得したので、公約の公務員削減、財政再建、労働
  時間規制の柔軟化などこれまで主張してきた大胆な構造改革を提案。これにより、生産性
  を高め、フランス経済の再生を図る方針を強調した。
2)マクロン大統領のEURO圏改革案
 ・マクロン大統領は2017年9月26日、ソルボンヌ大学での講演で、 EUの統合深化策について
  画期的な提案を行った。その要点は以下のとおりである。  
    ・各国共通防衛予算
    ・急進的技術革新担うEUの専門機関
    ・利益あげた国での課税(グローバル企業のタックスヘブン利用阻止のため)
    ・法人税率統一(低税率国で生産:social dumping防止)
    ・富裕層減税capital gainsに同一税率(flat rate)
 ・マクロン大統領の改革提案は急進的でプロビジネスである。マクロン氏は大統領当選
  当初、既存の政治基盤を持たず、また政治指導力も未知数だったので、同氏が主張する
  改革が実行・実現できるのかについて懐疑的な見解が多かったが、その後、マクロン氏は
  国内のパワーネットワークをかなり掌握しており、意外にしたたか、という評価が増えて
  いる。 
 ・国内政治で地歩を固めつつ、特に、ユーロ共通予算の編成とユーロ財務相ポストの新設
  など懸案の財政統合に踏み出すものと見られる。一方、ドイツの選挙後、求心力が低下した
  メルケル首相も、マクロン氏の唱えるEU条約改正への取り組みには一定の理解を示して
  いる。

3) マクロンの成果と課題
 ・マクロン大統領は、内政と外交で目覚ましい成果を挙げてきた。
 ・内政では、フランス経済の効率化の一環として、労働改革を提起。鉄道ストライキなど
  労働組合の激しい反発を受けながら、労働組合トップとの交渉で労働条件の弾力化など
  の合意を獲得して労働法大改正への糸口をつけた。
 ・就任1年で、テロ対策法など20本の法律制定もしくは改正を達成。
 ・いよいよ公務員の削減という大課題に取り組む。
 ・外交でも存在感。メイ首相が国内の反対でトランプ大統領を国賓として迎えららなかった
  のに対し、2018.4.14.パリ祭の機会にトランプ氏を国賓として迎え最大級の歓迎をする一方
  で、トランプ氏を前に、自国中心主義を批判、国際協調の重要性を内外にアピール。
 ・2018.11.11.第一次大戦勃発100周年記念式典をパリで開催。各国首脳を招いた席で
  「古い悪魔が再び目覚めつつある」とナショナリズムの台頭に警鐘。
 
 ・その一方で、問題も。
 ・閣僚の相次ぐ辞任。2018.10初頭、Gerard Collomb内務相、Nicolas Hulot環境相、Laura
      Fresselスポーツ相。マクロン氏の政治手法に反発。
 ・ミスや失言が不人気や批判を呼ぶ。:子供が”Manu”と呼んだのに対して大統領閣下と呼べ、
  と叱責。議会をベルサイユ宮殿に呼びつけて説諭、人々を”彼らは無意味だ”と批判。

4)大衆の反発とマクロンの挫折?
 ・2018,11月末からパリを中心にフランス各地で大デモ勃発。毎週末、大動員。
  断続的に二ヶ月続く。12月はじめのデモでは死者3、数百人が重軽傷。デモ隊は
  一様に黄色のベストを着ているので、gilets jaunessと呼ばれる。政府は非常事態を宣言。
 ・彼らの直接の主張は、マクロン大統領が提起した”燃料税引き上げ”への反対。
  燃料税引き上げは、マクロン政権の財政健全化の一環。政府赤字のGDP比を3%以内に
  抑えるというEU財政規則遵守のため。しかしガソリン代の引き上げは、車依存度の高い
  庶民とくに農業者や商工業者には大きな負担。
 ・一方でマクロン大統領が就任早々に富裕層に有利な税制改正をしたことが社会的不満を
  蓄積していたところに、燃料税引き上げで、庶民の生活を不当に圧迫するとして不満が
  爆発。
 ・マクロン大統領はもともと富裕層や大企業を大切にし、庶民や労働者階層を犠牲にする
  とのイメージを持たれており、投票者の48%とされる反マクロン派の存在を軽視した
  とも言える。
 ・2018.12.4. マクロン政権は、2019.1に実施予定だった燃料税引き上げを撤回。
 ・この結果、財政赤字の3%以内実現は困難?おそらく3.2%に。これはEU諸国に対して
  財政基準の遵守を呼びかけてきた独仏主導路線の信頼が揺らぐ可能性。
 ・マクロン氏のEU、EURO改革は、財政統合が目玉。EU共通予算、EU財政相の設置
  などで、通貨統合だけの矛盾を克服しようという大構想。これは欧州統合をめざして
  尽力したJan Monetらが掲げた理想だったが、Charles de Gaulleの強い反対で実現
  できなかった。今回の燃料税撤回→財政赤字の抑制困難はマクロン氏の大構想追求
  を阻害するおそれがある。

5. Eurosceptism(反欧州主義)の台頭
 1)反欧州主義政党の台頭
 ・欧州で Eurosceptism(反欧州主義)の政党がこの1~2年で急速に台頭。EUの基本政策を
  批判。
   ギリシャで は20115.1.にはSYRIZA政権誕生。
   ポーランドでは2015.10.には「法と正義」(PiS)(EUの難民受け入れ分担
    政策を批判)が与党に返り咲き。
   オーストリアでは2017.12から自由党(移民受け入れを強く批判)が国民党との  
    連立政権。
   イタリーでは2018.3の総選挙でEUの財政規律を批判する「5つ星運動」が
    得票率1位。EUの移民対策を拒否している「同盟」との連立政権が2018.6誕生。
   ハンガリーではフィデス・ハンガリー市民連盟(EU懐疑政党としては早く2010
    から政権担当していた)が2018.4の議会選挙でも圧勝し、オルバン首相続投。
   ドイツでは移民受け入れ反対のAfDが社会民主党(SPD)を抜いて支持率2位(複数
    の世論調査)に浮上
・欧州で、ナショナリズム、ポピュリズムが勢力を増している背景には、ユーロ導入に
 かかわるEUの政策と移民問題がある。
・ユーロ導入は、生産性が低く通貨価値の低かった南欧諸国にとっては、高価値で安定した
 ユーロを得たことで、外資の借金もしやすくなり、不動産価値も上昇したが、政府債務が
 膨張。リーマンショックで外資が逃避したため、深刻な債務危機になった。
・EU当局は欧州金融安定化基金(EFSF)や欧州安定メカニズム(ESM)など救済機関と通じて
 ギリシャなど債務危機に陥った国に金融支援。その条件として、緊縮財政や年金カットなどを
 約束させた。この緊縮財政の結果、財政状態は改善したが、これらの国々の市民はEU統合の
 厳しい政策に強い不満を持つようになった。
・そこに2015年頃から、イラクやシリアなど中東各地での大量の難民が欧州目指して流入。
 それを受け入れる政策を主導したメルケル首相らEU執行部の政策に、最初の上陸地となる
 ギリシャやイタリア、経由地となるオーストリア、ハンガリーそして最終目的地ドイツでは
 大量の移民・難民にたいして激しい排他的感情が高まった。
2)イタリー政権の危険な動き
・今、反EUの急先鋒としてEU官僚支配、独仏主導の欧州統合に反旗を翻しているのがイタリア。
・「5つ星運動」党首のディマイオ副首相はイタリアの一人当たりGDPがユーロ導入時の水準を
 下回るユーロ圏唯一の国であることを念頭に「イタリアの歳出プランは欧州再生の処方箋」と
 主張し、2019年度予算では、前政権がEUに約束した財政赤字比率0.8%への引き下げを反故
 にし、逆に、その3倍の2.4%まで高める積極財政を採用し、1.5%の成長を達成すると強調。
・イタリーの財政難を市場は読んで、国債利回り↑。国債多量保有の銀行資産毀損。中小銀行は
 貸付能力↓、経済下押し圧力に。
・財政破綻→金融危機(金融機関資産毀損)のおそれ↑、
 イタリー経済はギリシャの10倍。EUの救済機構(EFSFやESMなど)やIMFなどで救済
 できるか? 悪性インフレ、金利↑、EURO↓など。
 EU崩壊のリスクも?
 →世界不況のトリガー?
6. EU瓦解の可能性と帰結
 1)2019.5.の欧州議会選挙
  ・欧州議会選挙は、2019.5.23~26に実施。議会選挙は加盟国単位でその期間内に実施。
   2018年現在 定員751(ほぼ加盟国人口比例)。2019選挙ではこれまで英国に割り当て
   の73議席のうち、27議席を他の加盟国に割振り。定数は705。
  ・欧州懐疑主義の潮流が認識されるきっかけは2014議会選挙。14年欧州議会選挙では英国で
   英国独立党(UKIP)、フランスで国民戦線(FN)、ギリシャで急進左派党(SYRIZA)がそれ
   ぞれ得票率で1位。イタリーでは新興政党「5つの星運動」が得票率2位。ドイツでも新興
   政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が得票率5位に。とりわけUKIPの躍進は注目された。
      ・欧州議会はEU閣僚理事会と並ぶ立法機関。EU閣僚理事会は加盟国の閣僚から
   構成。議会は、直接選挙で選出される議員(任期5年)で構成。当初は理事会の
   補佐機関だったが、「EUの決定はブラッセルの一部高級官僚で行われ市民の声
   が反映されていない」との批判を受けて、漸次権限が強化。2009,12発効の
   リスボン(EU)条約で、閣僚理事会と同等の権限を持つ立法府となった。
  ・欧州議会の政治会派の要件:「25人以上の議員参加、加盟国の1/4以上の参加。
   2018年現在、8会派。最大政治会派は、欧州人民党グループ(EPP)=中道右派。
   ついで、欧州議会社会民主グループ(S&D)=中道左派。
 2)EUの瓦解は始まったか?
  ・2019.5に実施される欧州議会選挙をひかえて、今、イタリーの極端なナショナリスト政党
  「同盟」党首サルビーニ副首相が最も力を入れているのが、EU各国のナショナリストや
   ポピュリストに呼びかけての国際ポピュリスト同盟の創設。国際ポピュリスト同盟が勝利
   すれば、欧州議会を反EUのシンボルと位置づけ、EU大統領などのトップ人事に積極
   的に介入する構え。サルビーニ氏は1月、PolandにPiSを訪問。「欧州の春」運動↑を宣言。
 
  ・欧州議会の7月開会を受けて2019.9月には欧州委員会の執行部(EUの政策立案機関)が
   刷新されるが。メルケル首相は、2014選挙を受けて委員長となったユンケル氏の後任に、
   EPP代表のマンフレッド・ウエーバー議員(ドイツ)を推しており、同時期に任期満了を
   迎えるドラギECB総裁の後任に、腹心のドイツ連銀総裁のイエンス・バイトマン氏を推す
   ことは諦めた模様。
  ・もしサルビーニの思惑通り、国際ポピュリスト同盟が欧州議会選挙で勝利すれば、欧州
   委員会や独仏はEUの安定のため、サルビーニなど各国のナショナリストやポピュリスト
   の意見に耳を傾けざるを得なくなる。
  ・中島精也氏は、この状況は「ナチズムの支配を許した90年前のワイマール共和国の悪夢を
   連想させ、戦後、自由と民主主義を謳歌してきた欧州政治の終わりの始まり」を示唆する
   としている『国際金融』(2019.1.1)。
 
Ⅳ.   習近平の中国と米中対抗
 1. 習近平第二期政権の志向するもの
  1)習近平 ”一強” 体制確立の意味と意図
   ・中国共産党第19回全国代表大会(党大会):2017,10.18~10.24開催。 
   ・初日18日:習近平総書記政治報告3時間20分
    「小康社会の全面的完成の決戦に勝利し、新時代の中国の特色ある社会主義の偉大
     な勝利を勝ち取ろう」
   ・新時代:2020年(2021年は中国共産党創立100年)までに小康社会の全面完成
   ・21世紀半ば(2049年は新中国建国100年)までの30年間を2段階に分けて
        「社会主義現代化強国」を実現する時代、と規定 
 
  ー「核心」志向:党規約に習思想を行動指針として明記、毛沢東を意識?
   ・2017年10月24日党規約修正案承認→その後、2018.3の全人代で憲法に規定。
   ・鄧小平氏が定着させた国家主席任期10年の慣行を廃止。習近平主席の”終身化?”
      ・丹羽宇一郎氏の異論(『習近平の大問題』)
        任期撤廃は、レームダック効果を避けるため。まだ体質改革は途上。   
 
  ー第19期中央政治局常務委員:
    習近平64:
     李克強62:首相←留任:胡錦濤に近い、共産党青年団
     栗戦書67(リージャンシュー):全人代常務委員長←中央弁公庁主任 習近平に近い
     汪洋62(ワンヤン):政治協商会議首席←副首相  胡錦濤に近い
     王りょう寧62(ワンフーニン):中央書記処書記←中央政策研究室主任江沢民ブレン
     趙楽際60(ジャオルオージー):中央規律検査委員会書記←中央組織部長王岐山後任
     韓正63(ハンジョン):筆頭副首相←上海市党委員会書記 江沢民の地盤、上海勤務
   ー独裁政治志向?→後継候補考えず?
    ・皆、60歳以上、江沢民も胡錦濤も若手(50歳代)登用を考え、引き上げてきた。
       ・丹羽宇一郎氏の異論:
         若手を中央政治局員に任命しなかったのは不思議でない。
         中央政治局員以外からの抜擢は十分あり得る。過去にも実例。
 
  2)第13期全国人民代表大会(全人代)
    ・第13期全国人民代表大会(全人代)第一回会議は2018年3月11日、国家主席・国家
     副主席の任期撤廃などを柱とする憲法改正案を出席者の99.8%の賛成で可決。
    ・3月17日、習近平氏は全人代出席者2970名の満票で国家主席に再任。王岐山氏は
      わずか1票の反対票で国家副主席に選出。王岐山氏は腐敗撲滅で辣腕を振るったが
      そもそも経済・金融のエキスパート。米国とも太いパイプ。
    ・経済面で注目は、劉鶴副首相(政治局員)。前職は国家発展改革委員会の副主任。
     大臣未経験者の第抜擢。習近平氏の信頼厚い?劉氏は、2013年11月中国共産党
     第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)が採択した「決定文書」を起草した
     中心メンバー。「資源配分において、市場が決定的な役割を果たす」と指摘。
  3)「韜光養晦」から対外覇権志向へ
   ー新型大国関係(太平洋を米中で支配?)を2013オバマ対話で提案。
   ー一帯一路:呼びかけとその後の展開
     一帯:インド洋→アラビア海→地中海 2ルート
     一路:中国→中央アジア→中東→欧州 2ルート  
   ーAIIB(Asian Infrastructure Investment Bank)の発足とその後、
    ・一帯一路基金(10兆円目標:事業規模は100兆円超える)
   ー南シナ海人工島問題
    ・南シナ海の南沙(Spratly)諸島や西沙(Paracell)諸島や多くの岩礁を、中国はこの
     海域全てに中国の主権があると主張して人工島の建設を進め、軍事施設も整備。
     南沙に近いフィリピンや西沙に近いベトナムと領有権紛争。フィリピンの訴えで
     2016.2.12.オランダ・ハーグの仲裁裁判所は国際法上の根拠なしと断定。中国
     はこの裁定に反論・無視。米国は近海に「航行の自由作戦」を展開。
  4)国内強権政治と情報統制
    ー突然の介入→経済に不確実性(洪氏の述懐)
    ・産業界には、トランプの主張をむしろ受け入れて、根底から統治構造を変えた方が
     中国の経済・産業発展には資するのではないか、との見方も。
    ー地方行政も怯えて停滞
     ・地方の経済・建設プロジェクトなどの契約・執行につねに共産党細胞(例えば
     上司の行動を部下が監視)の監視などがあり、業務執行が萎縮する傾向も。1
 2. 成長の鈍化と先進経済への挑戦
  1)成長鈍化の意味
      人口増鈍化趨勢、労働力制約で成長鈍化は不可避、想定内。
  2)二重のチャレンジ
     ・中所得国のディレンマ、成熟経済への
     (1)鄧小平以来の成長モデル脱却必要
       低賃金労働の無制限供給+改革開放路線下の外資導入(資本、技術、経営)
       ⇒輸出ドライブ→高度成長、1980s初頭→2010年代初頭まで30年間10%成長
     (2)中進国のディレンマ:高賃金(一人当たりGDP8000ドル超え)
       外資から見た魅力↓、生産性↑不可欠
       成熟経済の挑戦:高賃金で労働力供給縮小、高齢化の社会的費用↑、
       生産性向上を内発的イノベーションで。
     (3)「新常態」経済。習近平政権、2014年5月に提唱。
        イノベーション技術革新と国内経済構造転換で高生産性経済を実現。
        1.  経済成長は高速成長から中速成長へ
        2.  経済発展パターンは規模拡大と速さ重視の粗放型発展から質と効率を重視
         する集約型発展へ
        3.   経済構造は規模拡大・能力増強からストックの調整へ
        4.   経済発展の牽引役は伝統的な成長リード産業から新たな成長リード産業へ
      ・その後、中高速成長から「質の高い発展」に修正
        また「サプライサイド」の構造改革を強調。
  3)中国の二重構造:新しい中国と中国の構造問題
           (1)新しい中国
     ー先端技術=企業は世界最新レベル、情報化の目覚ましい進展
     ー世界イノベーション企業50(アメリカ調査企業)のうち、
       テンセント12、華為(ファーウェイ)技術45、レノボ50。
     ー世界IT大手10のうち中国4社
      Google, Amazon, Face bookにつぎ、アリババ、テンセント、百度、京東集団
 
     ーイノベーション中心、深圳の目覚ましい発展、特許出願は中国の46%
       シリコンバレーしのぐ活力。トランプの排外政策を嫌って人材は深圳に。
     ー深圳に倣って特区ブーム:1992年10月上海浦東新区、2006年5月天津濱海新区、
      2010年5月:重慶両江新区、2011年以降、新区ラッシュ、習近平政権肝いりで
      19番目に国家級新区。「雄安新区」展開。河北省保定市。
    (2)中国ハイテク企業発展の物語      
    ーアリババ集団
      ・浙江省杭州市の英語教師、馬雲 1999.3設立 企業間電子商取引仲介サイト
       ネットバブル崩壊→苦難の連続、資金難、リストラ
       転換点:2003.5. C2Cの陶宝(タオバオ)事業
       2003頃、C2Cの中国市場、eBAYが圧倒的、
       2004アリババ決済サービス支付宝(アリペイ)導入、当時eBAYが圧倒的シェア 
      ・買い手が代金をアリペイの口座に預け、送付された商品に問題なければアリペイ
       に支払い指示。欠陥なければ支払い。届けたのに支払い遅滞などの売り手の不安
       なし。支払ったのに商品届かないという買い手の不安も解消。
      ・eBAY シェア↓8%に→撤退
      ・当時法律なし。「問題起きれば僕が刑務所に」
      ・全額補償と手数料無料化ーアリペイの進化 
      ・2010.6. 中国人民銀行「非金融機関決済サービス管理弁法」で、第三者決済
       サービス機関にライセンス付与。
      ・11.11.独身の日。膨大取引量、当時大型システムはIBM, オラクルなど集中型。
       それではパンク。オープンソース、分散型アーキテクチュア
       2012自前のアリババクラウド完成でTモールの20%、2013で75%、
      ・技術革新と経営努力、政府は後追いで承認
    ーテンセント(騰訊控股)
     ・1998.11設立、オンライン・コミュニケーションアプリ(QQ)からスタート
      現在、スマホ向けアプリWeChat(微信):世界200カ国、ユーザー10億人以上。
      WeChat中心に総合関連サービス
    ・創業者 馬化騰、システムエンジニア出身。
    ・QQはイスラエルのMirabilis社のインスタントメッセンジャーICQのヒントで開発。
     中国語版開発。ICQは自宅のPCからの接続想定。中国のPC普及は遅れた現状。
     ユーザーの保存したいデータをサーバー保存。使い勝手↑、ソフトサイズ圧縮。
    ・2000.02. モバイルインターネット総合サービス  
    ・有料会員制サービス導入、商品マネジャー制度、社内競馬制度、
    ・2004.8. MSマイクロソフト、メッセージサービスMSNの研究開発センター中国設立
     QQのversion upでMSを圧倒。
    ・技術革新、市場ニーズに対応、経営努力、政府は後追い。
 
    (3)中国の構造問題 
     ー過剰設備、過剰生産、過剰債務、国有企業問題、不良債権=金融リスク
     ー過剰生産、過剰設備、過剰負債:4兆元経済対策(2008年)の構造的後遺症
     ・3中全会(習政権1期目改革:第18期中国共産党中央委員会第三回全体会議)
       高成長→中成長⇒供給側改革必要「市場に資源配分の決定的役割担わせる」
     ー国有企業の整理・改革は?
     ・しかし、その後、公共投資↑、国有企業補助金↑→改革に逆行?
     ・地方では、鉄道、道路、公共事業→債務↑
     ・国有企業改革?、実際は合併、独占↑、ゾンビ企業温存は権力基盤維持? 
     ー既得権との戦いは?ーむしろ逆行?→共産党の企業管理↑:
      ・実質国家管理強化:企業買収海外企業、合併企業から技術奪取
      ・ハードランディングは失業↑、社会・政治不安↑で避けるべき。
       しかし安定重視のあまり、政府指導で成長確保は??
      ・リコノミクスは消滅した?
 
     ー金融リスクの増大:4兆元経済対策(2008年)の金融的後遺症
      ・債務残高のGDP比は2008年末の141.3%から2018.3末には261.2%に。
       IMFも危険を懸念。
                  ・政府債務GDP比は2018年47.8%だが、国有企業が本来政府の債務を肩代わりして
       いると考えると、政府債務は、179.1%に達し、日本の220%の債務構造に近い?
       当面、中国の債務問題が暴発する可能性は低いとしても、中長期的には金融
       危機的状況が発生する可能性。
    4)経済減速への緊急対応
     ・米中貿易戦争の影響が出始め、景気減速懸念が高まったこともあり、
       2018.7.23.国務院常務会議は景気刺激策を発表。
        1. 財政政策の一段の積極化
         2.  金融政策の穏健中立から穏健への緩和
         3.  小型・零細企業へのサポート強化
         4. 建設中のプロジェクトの資金手当支援
      景気サポートのため、緒に就いたばかりのでレバレッジ政策が棚上げされる懸念も?
     ー中国経済:急減速。→公式発表 6.6. or 6.4.%、28年ぶり(天安門後の最悪期)
           実際はもっと低い?            
      ・貿易戦争の影響だけでない。貿易戦争の影響は2019春から。減速は2018秋から
      ・国有企業の問題、政府債務の肩代わり
      ・金融不良債権の累積~財政債務の悪化
      ・過度の介入、検閲→自由な企業活動、産業活力↓?
 
2. 米中貿易戦争とハイテク覇権闘争
1) 米中首脳会談と米側の要求
ー2018年12月1日、アルゼンチンでのAPEC総会に出席した習近平国家主席とトランプ大統領は、
 ブエノスアイレスのホテルで首脳会談。首脳会談の結果は、共同声明はなかったが、両国が
 それぞれ会談の要点を公表した。
・米国側の声明では、巨額の対中貿易赤字について中国側が農産品やエネルギー輸入を拡大
 すると約束。またサイバー攻撃や技術の強制移転など知財侵害について協議するため、12月1日
 から90日間は予定していた関税引き上げを猶予するが、90日間の満了となる2019年2月末日
 までに合意が得られなければ、中国からの輸入のすべてに対して高率追加関税を課けると通告
 した、との内容が公表された。
 中国側の声明では、中国からの対米輸出品に対する関税引き上げは90日間猶予されたこと以外
 に詳しい内容は公表されなかった。
ー90日内に解決に向けて合意すべき事項として米国側が求めている主な項目は以下の4点。
  (1)技術移転の強要:
   米国企業が中国の大きな市場で事業機会を得ようとして進出するとき、中国側では
  米中合弁企業を設立することを条件とし、その事業活動を通じて米企業の技術を中国側に
  提供することを強制すること。
 (2)知的財産権の保護
   中国側が米国企業の製品やノウハウを無断でコピーするなど知財権の侵害行為。
 (3)非関税障壁
   さまざまな規制などの非関税障壁を設け、米企業の中国市場での活動を阻害すること。
 (4)サイバー攻撃とサイバーによる窃取
   中国の人民解放軍を含む多くの組織が米国の企業などにサイバー攻撃をしかけ、企業
  秘密やノウハウを窃取すること。
2)華為技術副会長の逮捕
 2018.12.8. ファーウェイ(華為技術)副会長兼最高財務責任者の孟晩舟(Men Wanzhou)氏を
カナダ司法当局が逮捕。カナダ司法当局は、アメリカ司法当局の要請で逮捕したという。逮捕の理由はイラン制裁違反。ファーウェイが香港の設立したダミー企業「スカイコム」を通じ、イランに2009~2014にわたり米企業の通信機器を納入した疑い。
 孟晩舟氏は中国では中国産業界を代表する女性の経営者として英雄のように人気が高く慕われ
ている。しかも彼女は中国ハイテク産業をリードする世界企業であるファーウェイ社の創業者、
任正非会長の娘であり、中国政府首脳部の信任も厚い。彼女は従業員思いで知られ、ファーウェイ社員の士気は非常に高いという。この逮捕にたいし、中国政府はカナダ当局に猛烈に抗議。本件に直接関係のないカナダ人外交官2人を逮捕、また麻薬密輸容疑でカナダ人一人を中国で死刑判決。孟晩舟氏は11日夜に仮釈放、自宅で監視状態に置かれることになった。 
 米国はカナダとの「犯罪人引き渡し条約」にもとづいて、60日間すなわち2019.1末までに孟氏
の引き渡しをカナダ当局に強く要請。中国は、「もし引き渡せば重大な結果に繋がるだろう」と
カナダ当局に圧力。この1件は、米中両国が、第三国を巻き込んで、事実上の戦争状態ともいえるほどの緊張状態に入っていることを示唆。
 
・華為技術への嫌疑、憶測
  ZTEは中核技術とチップを持たない弱点につけ込み、チップの供給遮断の制裁で屈服
 巨額な賠償金、現在は米国派遣監視員の監視下。華為技術は技術的な弱点がないため、
 共産党や人民解放軍と密着しスパイ活動などのでっち上げ嫌疑で制裁模索。
  任正非会長は青年期に人民解放軍に服役、どの国でも当然。任会長の父親は文化大革命中、
 政治犯(反革命分子)だった。だから政治に距離を置き、技術畑に没頭。工兵部隊の技術者と
 して入隊したが、腕が認められず、除隊後、転々として「華為」を起業。政府の支援のある
 国有企業とは差別扱いをされたため、常に自力自立を説いた。創業初期、深圳の小屋(10数
 m2)に父母と同居し、ベランダで炊事、市場で捨てられた野菜や死んだ海老や魚をおかずに
した(中国ネット記事)。朱建栄『参考消息42号』(2019.1.5)
3)米国の中国ハイテク企業締め付け戦略
  米国の中国ハイテク企業攻撃の背景には、実は、2018年夏に米議会で超党派の多数で可決
 された根拠法がある。それは、「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」(2018.8. 上下
 両院で超党派の賛成多数で可決)。
  同法によれば、2019.8.13以降、下記5社製品を組み込んだ他社製品を政府などが調達するのを禁止する。さらに20.8.13以降は、5社製品を社内で利用しているだけで米政府とのいかなる取引も不可となる。この法律に基づき、米政府は、2020.8.から、ファーウェイなど中国ハイテク企業の製品を使用しているだけで米政府との取引禁止方針を打ち出す予定。市場から中国ハイテク企業排除の動きが進めばサプライチェーンにも重大な影響が出ると予想される。
 ちなみに、米国が特に安全保障上のリスクがあるとして警戒しているのは下記の5企業。
    ・ファーウェイ、
    ・ZTE(中興通訴)
    ・杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)監視カメラ大手
    ・浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)
    ・海能達通信(ハイテラ)
3.  習近平の”中国夢”と強国戦略
 1)アヘン戦争以来の屈辱の歴史の超克
      ・中国は古代から近代まで東洋の圧倒的な超大国であり、文化の中心であり、最大の覇権国
   だった。 
  ・中国は特に1840~42年のアヘン戦争と1856年のアロー号事件で、イギリスに事実上植民地
   化され、欧米列強が相次いで中国に利権を設定し、20世紀前半には日本によって蹂躙され
   るに至った。
     ・中国は1980年代以降、鄧小平の指導による積極的な開放改革戦略で目覚ましい発展を遂げ
   た。鄧小平は事実上の超大国への道を急進するこの期間、”韜光養晦”(爪を隠して内に
   力を蓄える)という路線を堅持した。しかし、2012年、国家主席に就任した習近平は、
   中国の力を内外に誇示する戦略に転換した。
  2)中国夢
   ・習近平は、盛んに”中国夢”を唱え、中国は今や、アヘン戦争以来170年の屈辱の歴史を
    乗り越え、中国人民にふさわしい世界の大国、強国になるのだと国民を鼓舞した。
    そのキャッチフレーズが”中国夢”である。
         ・習近平政権が追求する”中国夢”は、170年間の屈辱の歴史の克服と払拭そして欧米
               列強の歴史的横暴に対するリベンジであり、中国人民の国家的復権をめざすもので
               ある以上、それは実現せねばならぬ国家の基本戦略である。それを実現する最大の
               基礎は経済力、特に質の高い競争力に裏打ちされた経済力である。その戦略の重要
                な一環として、中国政府は「中国製造2025」というビジョンそして工程表を提示した。
  3)中国建国100年強国構想
          ー中国は、2021(共産党創設100周年)を念頭に、
       2020:小康社会の全面完成
       2035 :社会主義現代国家建設
       2049(中華人民共和国建国100周年):社会主義現代化強国。
      ・そのためには創新(イノベーション)が基本戦略
        4)「中国製造2025」に象徴される経済強国化戦略
   ・中国国務院が2015.5発表の産業政策『「中国製造2025」は、次世代情報技術や
     ロボットなど10の重点分野を設定、製造業の高度化をめざす。
             ・2005年、胡錦濤政権時、ハイテク産業育成のため「創新(イノベーション)」政策が
      強調されたが、それはハイテクだけに着目。ハイテクが発展するためにはそれを支える
      関連産業の発展が必要。李克強の国務院で策定された「製造2025」は関連産業を網羅。 
      米国などの専門家はそれを脅威と捉えた。
        ・中国は建国100年の2049に「世界の製造強国の先頭グループ入り」をめざす。
          「中国製造2025」はその長期戦略の第一歩。
   ・発展途上国に多かれ少なかれ共通する国家主導発展戦略
      例:戦前・戦後の日本、19世紀のドイツ、韓国、シンガポールなど
   ー参考:
   ・に製造強国への工程表
     1. 第一段階(2015→2025):製造大国(規模)→製造強国の仲間入り
     2. 第二段階(2025→2035): →製造強国の中等水準
     3. 第3段階(2035→2049): →製造強国の先頭グループへ躍進。
         ・「中国製造2025」
    ⓵  次世代情報技術:
    ⓶  高度なデジタル制御の工作機械・ロボット
    ⓷   航空・宇宙設備
    ⓸  海洋エンジニアリング・ハイテク船舶
    ⓹  先端的鉄道設備
      ⓺ 省エネ・新エネ自動車
      ⓻ 電力設備
    ⓼ 農業用機材
      ⓽  新素材
      ⓾ バイオ医薬、高性能医療機械
 
 4.  ツキディデスの罠と国際社会
  1)ツキディデスの故事
     ーギリシャの歴史家ツキディデス、新興国アテネの覇権国スパルタへの挑戦
     ・結局、ペロポネソス戦争に。アテネの勝利
     ・過去2000年間の覇権争いは半分以上が戦争に。
   2)19世紀のGreat Game:英国とロシアの覇権争い
     ・覇権国大英帝国へのロシア帝国の挑戦
  3)20世紀後半の米ソ冷戦
    ・1950年朝鮮戦争ー冷戦開始、アメリカによる共産圏封じ込め、
     1991年ソ連崩壊。派遣闘争:40年かかってソ連崩壊
  4)1980年代の日本の追い上げと日米摩擦
       ・1985年、日本のGDP/Nはアメリカを2年間上回った。
      ・アメリカは日本の発展戦略を問題視、・プラザ合意による円高↑の強要
      ・日本、円高で競争力維持のため財政・金融で景気拡大政策→過剰流動性→
      ・バブル↑→崩壊↓→失われた20年→日本の退潮
  5)2018年以降の米中貿易戦争
                  ・1980~2010の中国、鄧小平の改革解放で大発展
      ・2012年以降、習近平主席の大国思想、新型大国関係
      6)  ペンス米国副大統領演説と新冷戦の可能性
   ・Michael Richard Pence(Mike Pence)氏の(2018.10.4)Hudson Instituteでの講演
   ・1980年代以降の鄧小平主導「改革解放」戦略による中国の目覚ましい発展
    を踏まえて、米欧は中国の発展による自由化を期待し、中国をengage(取り込み)
    しようとWTO加盟も支持し、手を差し伸べてきたが、裏切られた。習近平政権
    は経済的に攻撃的、軍事力↑志向。
   ・アメリカは中国が不公正な貿易で米国に被らせた赤字を容認しない。
   ・中国共産党は「中国製造2025」を通じ、世界の先端産業の9割支配をめざしている。
   ・中国の覇権志向は失敗する。
   ・中国はここ数年、自国民への統制と抑圧を強化。少数民族への迫害↑。途上国に
    借金漬け外交を強要。台湾の孤立化を画策
   ・中国はトランプ政権の打倒を狙って、アメリカ国内政策と政治への干渉を強化。
    2018年中間選挙、2020大統領選挙へに向けた取り組み、ロシアをはるかに上回る。
   ・米通商政策の転換のために対中投資米企業に圧力。
       ーペンス演説は、トランプ政権のみならず民主党の中国警戒、強硬派も含め、米国の
   establishmentの対中国観を集約・代表するものと受け取られている→新冷戦?
  2. 米中経済安全保障再考委員会(USCC)報告(2018.11.14)
  ー米議会の超党派諮問機関、米中経済安全保障再考委員会(USCC)は11.14、中国の
   ハイテク技術が米国の安保上のリスクになると警告する報告書公表。
5.  米中対決と日本の役割
 ・米国と中国の貿易戦争は両国にとってもそれぞれマイナスであるだけでなく、両国を合わせ
  れば世界GDPの4割に及ぶ世界第一と第二の超大国の対決による経済の減退は、サプライ
  チェーンの阻害などさまざまな経路を通じて世界全体の経済にマイナスの効果を及ぼす。
 ・日本は米国とは安全保障の同盟国でありまた経済的に深い相互依存関係にある。また中国
  は日本の輸出産業にとって最大の市場であり、政治的にも近年は友好関係を進めようとの
  動きがある。米中の間に位置し、両国と経済関係が深く政治的にもそれなりの友好関係を
  持っている日本は、世界にマイナスの効果を生む米中の貿易戦争を緩和するために何らか
  の仲介の役割を果たせないか、と考えるのは自然。
 ・米中の対決は、基本的に”覇権闘争”であり、双方は容易に妥協はしないだろう。中国は
  輸入増や制度改革など多少の譲歩はするかもしれないが、中国夢の根本は変えないだろう。
  アメリカは覇権維持のために強硬な姿勢を貫いているが、トランプ大統領のDealによる
  関係調整はあるかもしれない。
 ・日本の仲介で、両国が方針を変えたり、妥協をしたりすることは考えられない。双方の
  妥協や譲歩を引き出すような力は今の日本には考えられないし、その余地もないだろう。
 ・今、日本に求められるのは、仲介よりも、米中との理解をもっと深めることではないか。
  アメリカは65年にわたる同盟関係の実績から、相互理解があるものと日本は前提している
  が、国際関係や国際政治はそれほど単純ではない。つねに理解を深める努力が必要。
 
 ・それは中国については一層重要な課題。中国は日本のとりわけ安倍政権を信頼していない。
  安倍首相も中国にたいしては心を開いて理解しようという態度は見せていない。中国も
  それを知っており、一定の距離を置いた付き合いになっている。
 ・米中の仲介といった分不相応な役割を夢想するよりも、日本の将来のために、あらゆる
  側面で中国と相互理解と相互信頼を深める努力が必要。果たして安倍首相にその意図や 
  覚悟があるか?
 
 

『激変する世界と日本の針路』(1)

本エッセイ「激変する世界と日本の針路」は、私が2019年1月28日に行った島田塾の年頭講演の講演メモを、今回から4回に渡って掲載するうちの第1回です。

Ⅰ.   はじめに

 ー世界は激動ー戦後70年つづいた世界史の転換点
 ー何が起きているのか、全体像の理解必要
 ・トランプの現状破壊、貿易戦争、Brexit, EU危機、中国、北朝鮮、ロシア、安倍政権
 ・世界と日本の景気・経済展望
   景気減退 or 後退? ソフト、ハードランディング? クラッシュ?
 ーそのうえで、日本経済の行方、日本の針路を考えよう。

Ⅱ.   トランプ政権下の米国の実情と問題
1. トランプ発貿易戦争
  ・今、世界が最も関心をもち、心配しているのは貿易戦争
  ・世界の景気後退の引き金引くおそれ
  ・冷戦の再来の可能性
  ・その経緯と内容を理解し、意味を考えよう。

 1)鉄鋼・アルミへの追加関税
  ・トランプ氏は2016の選挙中から、中国や日本などからの工業製品の輸入に高関税をかけて
    アメリカ労働者の雇用を守ると公約。しかし、2017年中は大型税制改革などの議会対策
    に忙殺されて関税問題に取り組めなかった。

  ・2018.3.1. トランプ氏は鉄鋼とアルミの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして
   輸入制限を発動する方針発表。鉄鋼25%、アルミ10%。その理由は耳を疑う。

   ・その根拠は、米通商拡大法232条。これは1962年に制定。産品の輸入が米国の安全保障を脅かす
     恐れがある場合。これまで、79年のイラン原油輸入禁止措置、82年のリビア原油輸入禁止措置
     のみ。日本や欧州など同盟国にも適用する米国の主張に正当性があるか疑問。 

  ・3.22. トランプ大統領は知的財産権の侵害などを理由に中国製品に関税を課す
     大統領令にも署名。500億ドル相当の中国製品に高関税をかける制裁措置表明。
   ・その根拠は米通商法301条。同法は米国は外国による不公正な貿易慣行に対し、調査した
     うえで、一方的に制裁措置を発動できるとしている。

  2)中国知財侵害への制裁関税
  ・WHの貿易政策担当の補佐官として対中国強硬論を展開しているナバロ(Peter Navaro)氏
   は、アメリカは中国の不公正貿易のおかげで莫大な貿易赤字を被り、経済成長が阻害
   されてきた、と非難。

 
  ・2018年3月に公表されたUSTRの調査では、中国に進出した米企業が不当な技術移転を求め
   られたり、米企業の買収に中国政府の資金が使われたなどの「知的財産権の侵害」がある
   と結論。4つの手口を詳細に指摘。
       ⓵   外資規制で技術移転を強要:
     ⓶   技術移転契約で米企業を差別的扱い
     ⓷     先端技術を持つ米企業を買収
     ⓸   米国企業に人民解放軍がサイバー攻撃:鉄鋼や原発など情報収奪。

   ・5月に2回、米中通商協議:
    アメリカの高圧的な要求。中国側(劉鶴副首相代表)は、輸入増大などでアメリカの
    赤字削減に努力すると提案。ムニューチン代表(財務長官)がそれを評価して、付加関税
    執行をしばらく猶予すると発表。

   ・ところが6月に入りトランプ氏が中国からの2000億ドル(約22兆円)相当の製品に対し
    10%の追加関税措置検討すると発表。”トランプ氏のチャブ台返し”  背景に、WH内
    での対中強硬派の巻き返し。

   ・中国は姿勢を二転三転させる米国に不信感↑。米国が仕掛けた貿易戦争に、中国側は
    トランプ政権の要求にある程度譲歩し、同時に米国のestablishment層の中国叩きをかわ
    そうと対応をしてきたが、ここで中国の対米認識が大きく変わり、6月に入って中央外事
    工作会議では韜光養晦論を軌道修生し「以戦止戦」の方針を決めたとされる。

   ・その後、関税戦争は3次にわたる米中の関税引き上げ応酬の実戦段階に:
   ・7.6 トランプ政権は、産業用ロボットなど340億ドル(約3.8兆円)分に25%の第一次
    制裁関税を発動。中国も直ちに応酬。
   ・8.23. 制裁関税の第二弾を発動。半導体や化学品など、279品目。160億ドル相当。 
    中国も直ちに同規模の報復。
   ・9.24 トランプ政権は、約2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に10%の追加関税
    第三弾を発動。中国も600億ドル相当の米国製品に5~10%を上乗せする報復関税を
    即日実施。
   ・中国の対米輸出は約5000億ドル。アメリカはその半分に高制裁関税。中国のアメリカ
    からの輸入は1300億ドル。中国はすでにその8割に付加関税。余地ほとんどなくなる。
   ・トランプ氏は、中国からの輸入品2670億ドル(約30兆円)相当(残り全部)にさらに
    関税をかける用意があると脅し。
 
  3)NAFTAからUSCM?へ
   ・アメリカ、メキシコ、カナダ3国は、これまでNAFTA(北米自由貿易協定)。
   ・メキシコとカナダからはアメリカに関税なしで輸出できたので、両国だけでなく日本や
    EUなどからも両国に企業が進出し、北米を中心に貿易量が増え、世界経済の発展に寄与
   ・トランプ氏は、他国がアメリカの市場を利用して儲け、アメリカは被害を被っている、
    としてNAFTAの全面改訂を要求。
   ・メキシコ大統領選で現職大統領が負けた残任期間につけこんでメキシコと改訂合意。
   ・同様の改訂をカナダに要求。応じなければカナダを除外すると脅して改訂合意取り付け
   ・カナダ、メキシコからの対米輸出に数量制限、低賃金輸出の禁止など全面改訂。
    WTO違反のおそれ。
   ・これは両国に大規模に進出している日本企業にも大きな影響。企業戦略見直し必至。

  4)自動車追加関税の脅し
   ・トランプ氏は5月に自動車にも安全保障を理由に制裁関税をかける検討に入ると言明。
   ・日本やEUは鉄鋼関税ではそれほど大きな影響はないが、自動車は甚大な影響。
   ・EUの強い反発に、トランプ政権は7月、自動車以外の関税や非関税障壁ゼロをめざす
    交渉開始を条件に、自動車関税は当面猶予。
   ・日本とは9月、TAG(Trade Agreement of Goods、物品協定)の交渉開始で合意。
    協議中は自動車への関税はかけない。
   ・トランプ対日貿易問題に乗り出す可能性、日本G20議長国になる6月が山場?

  5)中国不公正貿易非難と圧力
   ・米中貿易戦争の背景には、トランプ氏だけでなく米国指導層の対中認識の大きな変化。  
   ・10.2. Mike Pence氏のHudson Instituteでの講演が象徴的。
    ・ペンス氏は、中国が不公正な貿易で巨利を得、アメリカに敵対的な戦略をとっている
     と強く非難。
    ・ペンス演説は、トランプ政権のみならず民主党の中国警戒・強硬派も含め、米国の
     establishmentの対中国観を集約・代表するものと受け取られている→新冷戦の開始?
    ・米議会の超党派諮問機関、米中経済安全保障再考委員会(USCC)は11.14、中国の
     ハイテク技術が米国の安保上のリスクになると警告する報告書公表。

 3. トランプの選挙公約とその実践
  1)トランプの選挙公約
   ・トランプ氏は2016年選挙戦中から、保護主義的な主張を繰り返し強調していた。
     例えば、中西部や南部ラストベルトの選挙民にたいし、彼らの雇用機会(job)は中国や
     日本に騙し取られている。俺はそれを取り返してやる(”Your jobs have been ripped
     off and shipped off to China and Japan. I will get them back to you guys”)
   ・具体的には:
    ・NAFT見直し
     ・TPP離脱と二国間FTA主張
     ・対米黒字国に対し不公正貿易への対抗措置として高関税、など。
 
  2)アメリカ第一主義
  ・トランプ氏は”America First(アメリカ第一主義)を至上命題とする。これはトランプ
    流のナショナリズムであり、排外主義、保護主義であり、国際協調の否定でもある。
  3)オバマ全否定とオバマケア撤廃
  ・トランプ氏は、オバマケア(医療保険制度改革法)、TPP, イラン核合意、気候変動に
   関するパリ協定、金融規制のDodd-Frank法、キューバとの国交回復などオバマ前大統領
   の業績を全て否定している。
  ・トランプ氏は、とりわけオバマケアを目に仇にした。アメリカは先進国なのに、これまで
   国民皆保険がなかった。オバマケアは皆保険をめざした。トランプ氏はこの撤廃をめざし
   たが、共和党内の反対派説得など議会工作につまずいて撤廃ができず、修正案に留まった。
   しかし、2017年末の税制大改革の中で、オバマケアで課された保険加入義務違反に対する
   罰金の廃止盛り込まれ、オバマケアは実質的に骨抜きになったとされる。

  4)イラン核協定離脱
  ・これまで30年間、核開発疑惑のため米国の経済制裁を受けていたイランが、今後10年間
   核開発をしないと約束するなら、経済制裁を解除するというイラン核合意が、オバマ前
   大統領の肝いりで、イランと米欧6カ国で2015年に協定された。
  ・トランプ大統領はイランは合意を守っていないと非難し、米国は合意協定から離脱し、
   経済制裁を再開。イランと取引する諸国に対しても制裁を課すとしたために、多くの
   国々が、原油や金融取引から撤退。イランは猛反発。緊張が高まっている。

  5)パリ協定離脱
  ・地球温暖化対策の国際的枠組みとして、初めて最大のCO2など排出国である中国や
   アメリカを含む195カ国が署名した画期的な「パリ協定」が2015年に締結された。
  ・トランプ氏は2016年の選挙選中から「米国に不利益、他国の利益で非常に不公平」
   と非難していたが、2017.6.1.脱退を表明。
  ・国際社会からも、また米国の産業界からも批判を浴びている。
  6)WTO批判と攻撃
  ・トランプ大統領は、WTOが中国などを利するのみで、適正に機能していないと選挙選中
   から批判。
  ・2017.8.27. 9月に任期切れとなる上級委員の再任拒否を伝達。
  ・WTOの紛争解決手続きは二審制。一審に相当する紛争処理委員会で決着がつかなければ、
   上級審に提訴できる。上級委員は定員7人。選任は全150加盟国の同意が必要。アメリカの
   反対で再任が妨害されているため、2018年12月には上級委員は一人。審査は3人で行われ
   るので、上級審は機能不全。
  ・多くの国がトランプ政権の追加関税を提訴しているが、アメリカには及ばない状況。WTO
   の機能は事実上停止状態。

  7)移民(不法)排斥とメキシコとの国境に壁建設
  ・トランプ大統領は就任直後に、イスラム系7カ国に対しアメリカ入国禁止大統領令。
  ・ワシントン、SF、ホノルルなど連邦地裁から差し止め命令。2017.6.最高裁は禁止令を禁止
   の範囲を狭めた条件付きで容認。
  ・メキシコからの不法移民を排除するために国境に壁を建設するとの選挙公約。
  ・費用はメキシコが負担せよとの要求はメキシコが拒否。
  ・かなりの部分はアメリカ負担で建設されたが、2018.11の中間選挙で民主党が下院で多数
   を握ったため、2019年度の壁建設予算は議会で阻止。トランプ大統領は壁予算が承認され 
   ねば、予算署名を拒否するとして、一部政府機関が2ヶ月以上機能停止状態。
  ・「壁」にこだわるのは目に見える選挙公約。民主党は取り締まり強化が重要と主張。
 
 4. 猜疑と”恐怖”のホワイトハウス
  1)異形の大統領
  ・既成の政治と政治家そしてワシントンの権力に倦怠感と嫌悪感を持っていたアメリカ国民
   が選んだトランプ氏は、これら既成勢力や機構と無関係なマヴェリックな実業人。
  ・内外の政治の経緯や制度に無知。当然かも。そして不勉強
  ・政治手法としてDealと直接交渉を好む。不動産業者としての体験。Multilateralism忌避
  ・独特な直感。
  ・Tweet で数億人に直接伝える手法は斬新。政治の情報伝達の歴史を変えた。
   既存メディアの否定。既存マスメディアでは政治発言は幾重にもscreenされ編集される。
  ・公約は強力に追求。そして実現。一定の成果。
 
  2)内幕本が伝えるWHの実態
  ・Michael Wolf " Fire and Fury”、Bob Woodward “Fear”内幕本がベストセラーに。
  ・トランプ氏、自分のスタッフに才能や力量より、忠誠心のみ求める。
  ・強力な権力信仰。権力の核心はFear(恐れ)と言ってはばからない。
   人事や決断の予測不可能性が恐怖を生む。Jurasic Park のティラノサウルスの恐怖に似る
  ・WH内は、独裁者の下で、互いの猜疑、裏切り、中傷、権力闘争。
  ・ちなみに、Steve Banon氏は、2016年のトランプ選挙戦略を立案推進したデマゴーグ
   (扇動家)。WHでは”ラスプーチン”のような権勢を振るった、女婿クシュナー氏らと対立
   2017.8にWHを去った。その状況は”Fire and Fury”に詳しい。
 
 3)追放される常識派と国際協調派
     ・Gary David Cohn(NEC)委員長が、2018年3月6日、トランプ氏の高率関税賦課の
  方針に反対して辞任した。トランプ氏はの後任に、Larry Kudlow氏を指名。Kudlow氏は
  保守系の知名度の高いTV評論家。レーガン政権時代にホワイトハウス入りの経験も。近年
  は、インフレなき経済成長を説く。大型減税で企業は投資↑→生産性向上→物価↓で
  インフレなき成長可能との主張でトランプ政策を支持。
 ・ Rex Tillerson国務長官が、3月13日、解任された。Tillerson氏はトランプ氏のツィツター
  で解任を知ったという。 Tillerson氏は2017年夏にトランプ氏をmoron(低能)と評した
  として物議を醸した。国際協力を否定するトランプ氏と馬が合わなかった。
 ・Jim Mattis国防長官は、海兵隊大将の経歴。mad dogの異名を持つが、8000冊の蔵書に
  親しむ読書家で真摯、思慮深い人物。同盟国の重要性をトランプ氏に説き続けた。2018.
  12. ISに勝利したのでシリアから撤兵を決めたトランプ氏の決断に辞表。トランプ氏は
  2019.2末の解任を1.1に早めた。WHで唯一、信頼できる”大人”が去ったと惜しまれた。
  後任はPatrick Sharahan氏。
 
4)極端な自国中心派が牛耳る国家戦略
 ・Tillerson氏の後任にMike Pompeo氏を指名。彼はComey氏の後任としてCIA長官に任命
  されていた。Pompeo氏はイラン核合意は最悪の協定として批判、CIAによる拷問を容認。
  イスラム教徒の入国禁止も支持しており、トランプ氏は”思考回路を共有できる”としている
 ・3月23日、安全保障担当の最高補佐官Herbert R. MacMaster前陸軍中将を解任。後任に
  John Bolton元国連大使を3月22日に任命。Bolton氏はBush Jr.政権で国務次官や国連大使
  を歴任。北朝鮮やイラクへの攻撃を主張するなど超タカ派のネオコン(新保守主義者)。
 ・Peter Navaro氏、WHの貿易担当補佐官、強硬な反中国派。Harvard大経済学博士という
  がトランプ氏の重商主義を信奉して理論化するという扇動者?
 ・Robert Lighthauser氏、USTR代表、対中交渉の責任者。中国を不公正貿易国と見立てて
  非難、攻撃。

 5. ロシア疑惑とトランプ再選の可能性
  1)トランプのロシア疑惑は明らか
   ーサイバー攻撃(機密情報入手)、フェイク(偽)ニュースのネット散布。
   ・スイング州での獲得選挙人:トランプ290人、クリントン227人
     スイング州獲得票数:Hillary 7万票差のみ。全国全票数:Hillary: 290万票多
   ・ネット効果は少なくとも100万人? ロシア妨害効果明らか。
   ーオバマ大統領は、この件、確信しており、9月の杭州でのG20で、プーチン氏に
     「大統領選へのサイバー攻撃での干渉をやめない場合、深刻な結果を伴う」と
      直接警告したことを12月に明らかにした。
   ・2016.12.7、米政府は民主党全国委員会に対するサイバー攻撃について「ロシア
      政府が指揮した」と断定し、名指しで非難声明。
   ・2016.12.29. ロシアのサイバー攻撃での米大統領選への干渉に対し、ロシア外交官
      35人の国外退去の制裁措置を発表。
   ートランプ氏の対応:Mike Flynn補佐官解職:ロシアとの接触を偽証したとの理由。
   ・James Brien Comey Jr.CIA長官解職:フリン捜査やめよとの圧力(司法妨害)に
    抵抗したため。

  2)Mueller調査の進展
   ・2017.5.17. Mueller、Robert特別検察官任命。Mueller氏はベトナム戦勇士として国民的
    人気、FBI長官として関係者から信頼が厚く、8年任期を10年に延長奉職。
    Mueller特別検察官は精力的に調査活動を開始。
    8月には調査結果に基づき、トランプJrやマナフォート氏の疑惑につき大陪審を招集。
    10.30:Paul Manafort,  George Papadopoulos(トランプ選対幹部)起訴
    12.3. フリン偽証罪で追訴、また本丸の選挙妨害についてもロシア在住の被疑者13人
    を起訴、Trump Jr.のロシア弁護士との接触など疑惑解明を続けている。
   ・2018年には、Mueller検察官の地道で綿密な調査はさらに進展。様々な疑惑の解明
    につながる事実が明らかになるにつれて、フリン元補佐官、マナフォート元選対部長
    さらにトランプ氏の最側近として彼を支えた弁護士のCohen氏など起訴された重要
    関係者が次々に、司法取引に応じており、重要事実の関連が明らかになりつつある。
   ・Muelller検察官の調査で、トランプ氏のロシアと組んだ選挙妨害工作、司法妨害、
    ロシア関連の資金洗浄、女性スキャンダルの隠蔽工作などの実態が解明されつつ
    あり、それらを踏まえて、最終報告書が近日中にまとめられ、公表されると見込まれ
    ている。

  3)大統領弾劾の手続き
   弾劾(impeachment)の手続きは:
    1. 下院本会議が過半数で弾劾訴追を決定→上院へ      
    2.  上院:最高裁長官が議長。弾劾裁判。下院が議決した弾劾訴追項目を審議。それぞれ
     の項目につき、有罪か無罪の採決。2/3以上が有罪に賛成すれば大統領は罷免される。
   ・2018年11月8日の中間選挙の結果は、下院では民主党が改選前の193議席から41議席を
    増やして234議席を獲得、共和党は改選前の235から199へと減らした。民主党は過半数
    を大きく確保したので、弾劾訴追を決定することができる。実際ペロシ下院議場は
    2019年1月の新議会会期冒頭に”弾劾の選択は排除しない”と発言している。
 
   ・一方、上院は、共和党が中間選挙で議席を増やし、これまでの51:49から53:47へと
    その差を4議席に増やしたので、、トランプ氏は中間選挙結果は”最高”と自賛した。
    ”弾劾”は上院の”裁判”で決まるので、彼は弾劾は回避できたと安堵した?
   ・しかし、Mueller Reportが発表されると、その中でトランプ氏のあまりに醜い反国家的
    行状が明らかになり、それが国民の眼に広く晒されると、民主党はもとより、共和党
    の議員の中にも、果たしてそうした大統領を支え続けることが、彼らがこれから選挙民
    の支持を確保する上でプラスになるのかどうか、疑問が生まれる可能性がある。Report
    の結果によっては、トランプ氏の弾劾もあり得ない訳ではない。
 
   ・ペロシ議長はじめ民主党の執行部は、しかし、今、トランプ氏を弾劾しても、制度的に
    はペンス副大統領が昇格するだけで、トランプ路線は継続される。それよりも、この
    2年はトランプ氏を泳がせておいて、2020年の選挙でホワイトハウスを奪回することが
    望ましいとの思惑もあるとされる。
 
  4)大統領再選の可能性
   ・トランプ氏は、ロシアゲートを回避できれば、2020大統領選で再選される
    可能性が少なくない。
   ・トランプ氏には選挙民の約4割の根強い支持者層があり、また選挙公約を
    トランプ流に実現してきたことがその支持をより強固にしていると見られる。
   ・さらに民主党には多くの顕在と潜在候補者がいるが、求心力のある候補者が見当たら
    ないことがある。ただ、アメリカでは、大統領候補者は1年半あればつくり出せると
    される。多くの候補者の絞り込みのプロセスで選挙民の共感が得られれば、民主党
    のWH奪還も不可能ではないかもしれない。

 6. トランプ政権の経済政策とアメリカ経済
 ・トランプ政権が重視する三大経済政策:大減税、大インフラ投資、関税政策
 
 1)大減税とアメリカ経済
 ・トランプの大型税制改革は2017年末に上・下両院の折衷法案として成立。
 ・その内容は:
      ・法人税率21%(34%→21%)
      ・個人所得税:最高税率39.6→37%へ。税率区分3段階→7段階へ。基礎控除↑
      ・資金還流税制:海外留保金に一時重税。海外子会社からの配当課税廃止
      ・投資促進税制:固定資産取得の即時償却
      ・減税規模 10年で1.5兆ドル。
 ・アメリカ経済は、2008年から10年間、景気上昇を続けており、2017~2018年はほぼ
  完全雇用状態。トランプ政権の拡張型の経済政策の下で、名目経済成長率は2018年央か
  ら米国経済の潜在成長率(約2%)を大きく上回る4%前後の成長を記録している。そう
  した加熱状態の経済に、大規模減税が実施されれば、労働需給は逼迫し、インフレを加速
  する。また、減税で歳入が減るので、財政赤字は増加する。
 ・FedはYellen議長時代、2015.12にそれまでのゼロ金利政策を解除し、慎重に金利正常化
  をはかったが、トランプ政権下でインフレの加速が懸念される中で、Powell議長率いる
  Fedは経済安定を維持するために、FFレート引き上げペースを早め、2018年末には2.25
  ~2.5%レンジまで引き上げた。2019年にはさらに利上げ。

 2)大インフラ投資と財政赤字
 ・トランプ氏は、アメリカの老朽化したインフラを更新するためとして、2018.2に
  大規模なインフラ投資計画(Infrastructure Initiative)を発表。
 ・10年間で1.5兆ドル規模の財政出動。
   共和党案:連邦2000億ドル、残りは州、地方政府、民間セクターで。
   民主党: 連邦の負担過少と批判
 ・現段階(2019年初)では、計画の詳細は詰められていないが、この大規模財政出動が実行されると、それはインフレを助長すると同時に、財政赤字を膨張させる。

 3)高付加関税政策
 ・トランプ政権は2018年後半から中国はじめアメリカへの主要輸出国に対して、安全保障上
  あるいは不公正貿易などの理由で、高付加関税をかけ始めた。高関税政策は、輸入財の価格 
  を押し上げ、供給量を減らすので国内需給を逼迫させ、インフレを助長する。
  GMは高関税によるコスト高で5工場閉鎖、1,5万人リストラ。トランプ激怒。GMは合理的。
 ・米国の輸入はGDP12%程度。高関税による経済下押しリスクはそれほど高くない? 
 
 4)インフレ、高金利、株安、ドル高と景気後退
 ・こうした状況でインフレが進むと、Fedは経済安定化のために利上げを重ねざるを得
  ない。トランプ氏は利上げを続けるPowell Fedが ”狂っている” と中央銀行の独立性を
  無視した危険な批判を繰り返しているが、金利でコントロールしなければ、アメリカ経済
  はインフレが昂進して悪質なスタグフレーションに陥るだろう。
 ・しかし、金利の引き上げは、株安を招き、また期待成長率とリスクプレミアムの高い
  トランプ政権下のアメリカ経済では長期金利が高まらざるを得ない。長期金利の上昇
  はドル高を促進し、それはアメリカ経済の輸出競争力を削ぐだけでなく、弱小の新興国から
  の資金のアメリカへの流出によって通貨下落や、ドル建て負債を抱えた国々の破綻を招く
  など、世界レベルでの景気後退と経済縮小を招くおそれが高い。
 ・トランプ政権が第二期に入ると、その三大経済政策が全開するので、こうした悪夢の
  シナリオが実現する可能性が一層高まるだろう。
 
 ・リスク: 
   インフレ↑→金利↑→長期金利↑
     →輸出減退
     →弱体国:トルコ、アルゼンチンなど。通貨↓、インフレ↑、金利高騰↑
     →債務国:経済↓、破綻、default, 通貨↓失業↑
     ⇒世界経済収縮

Ⅲ.    混迷する欧州と伏在する危機
 1. Brexitの経緯と顛末
  ・Brexit問題は欧州のみならず世界の緊急かつ重大な関心。
  ・離脱期限の2019.3末までに円滑な離脱ができず、No Deal Brexit(合意なき離脱)になる
   と英国、欧州だけでなく世界経済に甚大な衝撃と経済活動阻害の後遺症。

  1)世紀の愚策:キャメロン首相による国民投票
  ・2016年6月23日に行われた国民投票の結果は、Brexit派が51.9%対48.1%僅差で勝利。
  ・青年層、高学歴層、ロンドンなど大都市の市民は残留、地方在住、低学歴者、中高齢者層
   はほどんど離脱投票。多くの知識層は残留を当然と考えて投票に行かなかった?
  ・国民投票の背景。2015年の総選挙を前に、英国独立党の急伸や保守党内の対立に悩んだ
   キャメロン首相が1975年のウィルソン首相(労働党首)がEC加盟を国民投票にかけた成功
   経験に倣い、国民の関心の外部化をはかって国民投票を約束?
  ・2015.5.の総選挙は、保守党が大勝。国民投票は約束の2017でなく2016.6.23に前倒し実施
  ・国民投票の前にキャメロン首相はEU当局と交渉、一定の理解と譲歩を得たので残留が得策
   と考えて国民に分厚いパンフレット配布してアピール。詳細すぎて選挙民の理解超えた?
  ・キャメロン首相が頼みにしていたBoris Johnson ロンドン市長やMichale Gove氏が離脱派
   の旗手になったのはキャメロン氏には痛手。離脱派は反移民を感情的に訴え、離脱すれば
   EU から金が戻るとの虚偽の喧伝をして国民を扇動した。

  2)義務感で硬直したメイ首相
  ・国民投票で負けたキャメロン氏は首相を降板。キャメロン内閣で内相を4年担当した
   Theresa May氏が消去法で首相になった。対抗馬が辞退などしたため、議員選挙も
   党員選挙も経ずに2016.7.首相になった。
  ・首相就任後しばらく(8~9月)はメイ首相の発言は旗色不鮮明だった。彼女はもともと
   残留派だったので、国民投票は実は法的には参考意見に過ぎないという理由で、ウヤ
   ムヤにするのでは、との観測も一部にはあった。それができたら大政治家かも。
  ・しかし、彼女はやがて「国民投票の結果は明白であり正当だ。離脱は離脱(Brexit is
    Brexit)との立場を明確にするようになった。メイ首相は10月の保守党大会で強硬離脱
  (hard Brexit)の旗色を鮮明にした。彼女はもともと残留派だったが、首相になるやその
   職責上、自分の信条とは正反対の”強硬離脱”に政治生命をかけるようになった。
  ・2017.3.29 リスボン条約50条に基づき、メイ首相はEU本部に”離脱”を正式に通告した
   離脱期日は、2年後の2019.3.29となる。
  ・予備交渉のためブラッセルを訪ね、離脱条件を打診した際、彼女はBrexit Bill(手切れ
   金?)が莫大であることを知る。英国の欧州への寄与や特殊性を訴えて、減額を要請
   したが、メルケル首相に ”Rule is rule” と撥ね付けられて帰国。
  ・メイ首相はそこで、総選挙という賭けに出る。1. 圧倒的多数をとってEUにたいする交渉力
   を強めること、2. 総選挙を経た首相になること、が動機?下馬評は保守党の圧勝が大勢。
   ところが選挙結果は、予想外に保守党の大敗。メイ氏の賭けは完全に裏目にでた。選挙を
   動かしたのは若者の投票行動と言われた。労働党の若者におもねる授業料無償化、福祉増
   額などの公約が若者を引きつけたとの解釈もあるが、2016.6の国民投票にまさかBrexitに
   なるとは思わず、投票に行かなかった若者が投票したことが大きいのではないか。
  ・6/8の英国総選挙でメイ首相率いる保守党は12議席も議席を減らし、318議席と過半数
  (326議席)をも割り込んだ。労働党は逆に229から262議席へと議席を大幅に増やした。
   そこでメイ首相は下院で10議席を有する北アイルランド保守政党の民主統一党(DUP)に
   擦り寄り、閣外協力で合意を得て、ようやく政権は継続できることになった。しかし、
   このことがいわゆるアイルランド国境問題として、その後メイ首相を苦しめつづけること
   になる。
  ・2017年の年末に向けて、離脱条件の交渉が大詰めを迎えた。離脱には大別して三つの条件
   をクリアーすることが必要だった。
   1)Brexit Bill(手切れ金=離脱請求書)、英国がEUに負っている債務の清算分。
   これは(EU予算の未払い分、EU官僚の年金負債、EIB(欧州投資銀行)融資の保証分など)
   であり、当初EUは600億ユーロ(8兆円)を要求したが英国が特別扱いを要求。困難な交渉
   の結果、12月に入ってようやく英国側が400億~450億ユーロ(5~6兆円)を英国が受け
   入れたので原則合意が得られた。

   2)在英のEU市民と在EUの英国市民の権利保護

   3)英国とアイルランドの国境問題の解決
    アイルランド問題は17世紀の宗教革命から今日まで続く対立と紛争の歴史に血塗られた
   困難な問題である。現在はアイルランド共和国(南、カソリック多い)と北アイルランド
  (英連邦、北部地域、プロテスタントが多い)に分割されている。
    南北ともこれまではEU加盟国だったが、英国の離脱で、北が英国領である限り非加盟と
   なる。 EUは南北国境をヒト、モノ、カネの自由流通を保証することを離脱の条件として
   要求している。 メイ首相は2017.12.13~14のEU首脳会議に向け、それを受け入れる意向
   を提示した。
    これにたいし、12.8.北アイルランドDUP(民主統一党)のフォスター党首は閣外協力
   の撤回も辞さずと強硬に反対。自由流通・移動だとアイルランド共和国側から移民が北に
   無制限に入国することを排除できない。国境問題は今後の通称協議で継続審議ということ
   で、12月13.14のEU首脳会議の段階では玉虫色で一応決着した。アイルランド国境問題は
   その後も関係者が納得する解決策が見出せず、現在までBrexit問題の桎梏になっている。
    EU首脳会議(Brussels)では、英国はenough guaranteeを示したとして離脱条件に
   関するE.Commission Recommendationを承認した。以上が、英国のEU離脱条件に
   関する原則合意である。それをふまえて、Brexitは、本丸の通商条件の交渉に入ること
   になる。

 3)アイルランド国境問題
 ・南北アイルランド問題は、300年以上も続いた紛争の歴史。1998年4月にいわゆる
     Good Friday Agreement(ベルファスト合意)で一応の決着がつくまでに、戦後だけで 
  も紛争で3000人もの犠牲者が出た。英国とアイルランド共和国がEUに加盟してからは
  南北アイルランドには事実上、国境がなくヒト、カネ、モノが自由に行き来した。英国
  がEUから離脱すると、南北の間にはまた国境ができる。それは紛争に苦しんだアイル 
  ランドの人々は感情的に許容できない。
 ・しかし国境のチェックがなければ、南の共和国から北アイルランドに移民が自由に
  やってくるし、密輸も横行する。それは認められない。Brexit実行後、英国はこの
  アイルランド国境で、厳格な国境管理のない国境という稀有の状態を実現しなくては
  ならない。
 ・問題は、それをどのような形でいかに具体的かつ現実的に実現するかである。
  メイ政権は、後述するように2018年7月はじめに発表した政府白書(通称Chequer’s Plan)
      で、厳格な国境管理を回避する具体策としてITの先端技術を駆使して、関税事務所や関税
  手続きの目に見える作業なしで、事実上、関税業務を実現させる新しい入国審査や関税業務
  のあり方を提案した。しかし、これはこれまでには世界のどこでも実施されていない未踏の
  空想的な技術であり、現実性・具体性がないとしてEU首脳から全く評価されなかった。
 ・EU当局は、メイ政権が具体案を示せずに時間が浪費されることにしびれを切らし、2020
  年末までの「移行期間」については、北アイルランドだけを関税同盟に残すという案を
  提示したが、これに対しては、メイ首相が、それは英国を分断するに等しいので、全く
  認められない、と拒否した。
 ・具体的な解決策が見つからずに窮地に追い込まれたメイ首相は、2018年11月になって、
  英国の分断を回避し、かつ厳格な国境管理をしないで済む方策として、北アイルランドを含む
  英国全土をしばらくの間(当面は「移行期間」)、関税同盟に残すという対案を提案した。
 ・関税同盟に当面残留することについて、英国労働党は肯定的な反応を示したが、メイ政権内
  および与党保守党の強硬離脱派は激しく反発している。離脱後の英国が当面(明確な期限は
  未定)関税同盟に残留することは、その間、英国はEUの諸規則の制約を受けることになり、
  EUからの国家主権の完全回復を求めて選択された国民投票の趣旨に完全に反するという理由
  である。

2. 離脱案の提案、再提案と英国政治の葛藤
1)Checker’s planとEU首脳の批判
 ・2018年7月はじめ、メイ首相は、離脱後のEUとの通商関係に関する英国政府(メイ政権)
  の基本方針を取りまとめた。これは98pにおよぶ文書で、将来の通商関係に関するメイ政権
  の方針を体系的に記述している。メイ首相は、彼女の別荘Chequer's Houseに内閣の関係
  閣僚を招いてこの案を提示・説明したことから、この文書は「白書」もしくはChequer's
  planと通称されることになった。
・その内容は、基調としてEUと特権的な関係(privileged link)を保持することを謳っている。
 英国はモノについての自由貿易域(free trade area)を維持し、アイルランド国境を含め国境の
 すべてにおいていかなる摩擦も回避するようIT技術を活用して精緻に構築された仕組みによって
 EUの関税同盟のメリットを享受する。しかし、英国のGDPの80%を産出するサービスについて
 は英国とEUとの間により緩やかな関係を提案。すなわちサービスについては英国は自律的に
 ルールを設定できる自由度を確保する、という趣旨。
・この案にたいし、EU当局者は、英は「いいとこ取り」と警戒。EUの首席交渉官(chief
  negotiator)であるMichel Banier氏は、英国はモノの取引だけで単一市場型のメリットを享受
 して、サービスやヒトの移動の分野をそうした扱いから除外することは許されないと警告し、
 英国とEUがあたかも合同の関税領域にいるような状況つくるIT技術の実現性についても疑問を
 呈した。
・一方、英国の離脱強硬派は、白書の提案では、英国が離脱後もEUのルール作成に関与でき
 ないままEUルールに一方的に縛られることになるので、主権を取り戻すためのBrexitの趣旨に
 全く反するとして激しく批判した。それは深刻な事態に発展した。メイ政権発足当初から、
 Brexit問題を担当してきたDavid Davis離脱相が7.8夜、さらにBoris Johnson外相がその15
 時間後に辞任を表明したのである。
・EU首脳部は、2018.9.20~21にかけ、10月の定例首脳会議の一ヶ月前に臨時のEU首脳会議を
 Saltzburgで開催し、メイ首相を招いて、より率直に英国案について、EU加盟国首脳の意見を
 伝え、改善を求めようとした。EU首脳達はChequer's planを検討した上で、「提案はいいとこ
 取りで、その主張はEUの単一市場を掘り崩すものと厳しく批判。メイ首相はEU首脳は彼らの
 批判に反発。結局、10.18~19に予定されていたEU首脳会議での最終決着は事実上断念され、
 懸案は11/17~18の臨時首脳会議に持ち越されることになった。

  2)再提案と英国政治の障害
 ・膠着した事態の打開をはかるため、メイ首相は新しい協定案は2018.11.14に公表した。
  協定案は585pにおよぶ文書で離脱協定案、市民の権利、北アイルランド問題など広範な
  課題を網羅している。
 ・その要点は、英国はすべての財政的責任を果たし、離脱の結果、EU加盟国の負担が増える
  ことのないようにする。英国は、400兆ないし450兆ユーロの負債を完済し、英国在住のEU
  市民に充分な権利を保障する。
 ・2020年末までで合意された「移行期間」はEUと英国双方の合意で延長することができる。
 ・北アイルランド問題(30job):北アイルランドへのbackstop(安全策)は英国全土がEUの
  関税同盟に残留することで保証される。これは、メイ首相のred lineであるアイルランド海峡
  や国境で税関審査をしないことを保証する。
 ・公平なビジネス機会を保証するため、英国はEUの競争法などのルール、EU労働法、環境規制
  そして税制を遵守する。
 ・この新協定案が公表されると、Dominic Raab 離脱担当相が辞任を宣言。彼は、メイ首相の
  案は英国の誠実さへの脅威であり、保守党の公約違反であり国民の信頼を裏切ると批判。
  Raab氏につづいてEsther McVey労働・年金相、さらにSuella Barverman離脱担当副大臣
  またShailesh Vara北アイルランド担当相も相ついで辞任した。
 ・これに対してメイ首相はこの新提案をひっさげて、たとえ保守党が激動してもやり抜く覚悟。
  11.25の緊急EU首脳会議で、離脱協定案とともに正式決定したい、決意を強調した。そして
  11月25日、BrusselsでEU緊急首脳会議が開催され、メイ首相が提出したEU離脱新協定案は
  正式に承認された。 

 3. No Deal Brexit(合意なき離脱)の衝撃とこれからの展開
  1)移行期間なしの離脱の甚大な破壊効果
 ・2018.12の英国議会(下院)では、メイ首相の新提案が野党ならびに与党強硬離派の
  反対が多く、承認に見通しが立たないので、採決は2019年1月に延期された。そこで
  どのような展開になるか、現時点では見通しは立たないが、もし適切な合意が得られる
  ずに、No Deal Brexitになると何が起きるか、産業界はじめ各界でその懸念が高まっている。
 ・合意なき離脱となると、EUと合意している2020年末までの「移行期間」も無効になるので、
  突然、英国は海図なき荒海に漂流することになる。
 ・目に見える衝撃として、2019.3末から19.3末から急遽、英仏国境で通関手続き必要となる。
  準備期間や施設が足りない。港湾当局はトンネルを2分足止めでも27km超の渋滞となると
  想定。英国に立地する多くの工場は物流が事実上ストップし、サプライチェーンは機能不全
  となる。その結果、英国産業の空洞化が進み、それは世界経済の縮小に繋がる。
 ・また金融面では、英中銀は、合意なしの離脱の場合、英国に集中している想定元本ベースで
  最大41兆ポンド(約6000兆円)のデリバティブが不安定な状態におかれると警告。合意なき
  離脱となるとその天文学的な契約の書き換えや見直しが急遽要請されるので、英国や欧州
  のみならず世界の金融取引の大きな部分が麻痺状態になり、世界経済に深刻な影響を及ぼす。

 2)その後の展開
 ・メイ首相の次のハードルは、欧州首脳の承認を得た離脱案を、英国議会の下院で承認
  を得ること。当初、議決は2018年12月中旬に実施される予定。首相は、英国にとって
  この最終案を承認をすることの重要性を説き、また否決することの破壊的な影響の深刻
  さについて議員諸氏に熱烈に説いて、一人でも賛成票を増やすことに注力した。
 ・12月上旬にメイ首相の不信任案が議会に提出されたが、それは否決され、メイ氏は
  首相として信任された。
 ・しかし投票予定日の直前になって、票読みをした結果、反対派が、野党ばかりでなく
  与党の強硬離脱派や閣外協力をするはずの北アイルランドのDUP(民主統一党)
  なども加わり、はるかに多数になることが見込まれたので、メイ首相は投票を一ヶ月
  ほど延期する決断。
 ・投票は、2019年1月15日に予定されたが、メイ首相は、なんとか賛成を増やそうと
  「否決すれば、我々はuncharted water(海図なき荒海)に漂流することになると警告。
 ・1月中旬の状況は、メイ首相の牽引力の低下のもとで、議会による新たな離脱案の提出や
  国民投票のやり直しなどの意見が浮上しているが、投票の結果、どのような展開になるか
  現時点では極めて不透明。「合意なき離脱」の混乱も否定できない状況。
   ・2018.1.15夜、メイ首相の離脱案に対する下院の投票が行われた。結果は、賛成202
  反対432という歴史的大差で、首相の離脱案は否決。反対票の中には、保守党の造反票
  が118も含まれていた。
 ・翌日、労働党が提出した内閣不信任案にたいし採決が行われたが、ここでは不信任案
  は僅差で否決され、メイ首相は続投することになった。
 3)今後のシナリオ
 ・首相の再修正案提出:1/21にメイ首相が再修正案を提出して採決を求める。

 ・1/21:メイ首相、微修正、現状打開策示せず。
      アイルランド安全策(backstop)、当面(強調)英国全土関税同盟残留
      強硬離脱派は絶対反対
 ・再度の国民投票:これを求める声が高まっているが、メイ首相は国民の信頼を裏切るとして、
   断固拒否をしている。首相が信任されている以上、再投票は困難。
 ・ただ、労働党は党首以下再投票支持。与党内にも少数の支持。この動きが広まる可能性も。
 ・EUと再交渉:EUは再交渉には応じないとしており、これも困難。
 ・議会の一部に修正案模索の動き、大きな動きになっていない。
 ・3月29日までに、大多数の関係者が納得できる名案が見つかるか。不透明で困難。
 ・合意なき離脱のおそれ。
  →英国:経済に数%のマイナス可能性
  →EU:1~2% マイナス、世界経済:1%前後のマイナス
  →世界不況のトリガーのおそれ大

« 2018年12月 | トップページ | 2019年2月 »