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『激変する世界と日本の針路』(3)

本エッセイ「激変する世界と日本の針路」は、私が2019年1月28日に行った島田塾の年頭講演の講演メモを、今回から4回に渡って掲載するうちの第3回です。

Ⅴ.   北朝鮮の脅威と展望
ー北朝鮮問題は2018年の6月まで世界の最大の関心事だった。
・北朝鮮が米国に届くICBMの開発をほぼ完成させた?
・その事実を容認すれば、北朝鮮は”核保有国”になる。このやり方は世界に拡散する可能性が
 あり、世界全体の安全保障にとって重大な脅威になる。
・日本はアメリカの核の傘に守られて68年間、安全を享受してきた。日本にとっては、その核の
 傘が形骸化する恐れがあり、日本は戦後の米国に依存した安全保障戦略全体を見直さなければ
 ならないかもしれないという重大問題に直面する。
・2018.6.12のトランプ大統領、金正恩委員長の米朝会談以降、情勢はやや沈静化したが、朝鮮
 半島の”非核化”をめぐる本質問題は何も解決されていない。
・これまでの経緯を展望し、今後の展開と課題を考える。

 1. 核と弾道ミサイル開発に盲進する北朝鮮

 ー2017.11.29、北朝鮮は最新の火星15型弾道ミサイルの発射実験を敢行した。
  それはロフテッド軌道(真上に打ち上げ)で宇宙4800kmの高度に達した模様。
 ・韓国国防省の推定では、これは通常軌道だと1万3000kmほどは飛べる能力。
  その意味は重大だ。その飛距離は米国東海岸全域を射程内に収めることになるから。

 ー北朝鮮は真剣に核保有国をめざしている。核保有国とは仮想敵国から抑止されない
  核武力を持った国である。北朝鮮が核保有国化すると、アメリカは攻撃を抑制せざるを
  得ない。日本はアメリカの核の傘を抑止力とする日米防衛体制の下で平和を享受してきた
  ので、アメリカが北朝鮮の脅威に対して抑止力を使用しにくくなると日本の安全保障体制
  は根底から形骸化する恐れがある。

 ー北朝鮮が核保有国になると、イラン、サウジなどの紛争国やテロ集団など多くが北朝鮮の
  跡を追って核武装を求める可能性がある。今、北朝鮮の核保有国化を阻止しないと、世界
  の崩壊に繋がる核拡散は防ぎようがなくなる可能性がある。

 ー北朝鮮の創立者、初代労働党委員長の金日成の時代に、核ミサイル開発を構想したが
  国力がなく、夢物語だった。当時、友好国だったソ連、中国から技術面の支援が得られな
  かったのも困難の原因。1985年、北朝鮮はNPT(核不拡散条約)に加盟させられ、IAEA(国
  際原子力機関)の監視下に置かれた。
 
 ーしかし、冷戦終結(1980年代末)で、事態は大きく変化した。ソ連が崩壊し、同国の核
  ミサイル技術のノウハウが技術者と共に流出した。ちなみに核兵器の多くはソ連邦の一部
  (民族共和国)だったウクライナにかなり集中していたし、技術者も多かった。パキスタン、
  イラン、北朝鮮などは、これらの技術者の協力で核開発が可能になった面が大きい。新し
  い技術人材や資源を得て核開発に着手した北は1993年3月、NPTを脱退した。

 ー過去20年ほどの間に、下記のミサイルが開発された。
   ・スカッド(短距離弾道)最大射程 300~1000km
   ・ノドン(準中距離弾道)同1300km:日本全域
   ・テポドン1型(1500km):日本全域
   ・ムスダン(中距離弾道)2500~4000km →グアム
   テポドン2型(大陸間弾道)6000km
  ーしかしこれまで技術水準は低かったが、2017年5月頃からミサイル開発技術レベルが
   飛躍的に高まった模様。
   ・北極星1型。潜水艦から発射。SLBM: submarine launched ballistic missile
   ・北極星2型。2.21、5.12.発射。北極星1型を地上型に改良。固体燃料、移動自由
     発射位置特定しにくく、攻撃されにくい。実用性は高い。
   ・火星12型(グァムを射程)、ムスダンの後継、ロフテッド軌道で、5.14発射。
     なお、8.19、9.15にも発射。ロフテッド軌道。日本上空通過、襟裳岬沖。
   ・火星14型(ICBM) 7.4,  7.28発射。アメリカ本土ほぼ全域射程内に。
   ・火星15型(ICBM) 最大飛距離13000km。東海岸含むアメリカ本土全部。

2.  北朝鮮はなぜ弾道ミサイルと核の開発に執着するのか

  ・第二次大戦後74年がすぎ、朝鮮戦争勃発から59年が経過しているが、朝鮮戦争はまだ
   終わっていない。朝鮮半島では1953に南北朝鮮間で休戦協定が結ばれたが、未だ38度線
   の休戦ラインを境に南北は軍事的に対峙している。

  ・その現実の中で、国家体制存続の保証を取り付けるためアメリカに核ミサイル保有に
   よる核武力を認知させることが唯一の体制保障になるとの戦略に固執している。

  ・中国は、朝鮮戦争の際、人民解放軍の義勇兵(実際には中国軍)を大量に送り込み
   北朝鮮を助けた。この共闘は”血の同盟”と言われた。ソ連は、最新鋭のジェット戦闘
   機部隊を戦略的に派遣し、北朝鮮と中国の同盟軍を支援した。中ソの参加と支援が
   あって朝鮮戦争は初めて休戦に持ち込むことができた。

  ・そのソ連が、まずゴルバチョフ時代、北朝鮮を見限って韓国に接近し、1990年に韓国と
   国交回復をした。1992年には韓国ロシア基本関係条約が締結された。中国も1992年
   に韓国と国交を樹立。1998年には中韓協力パートナーシップ、2008年には戦略的
   パートナーシップを締結し、互いの経済交流を深めている。こうした動きは北朝鮮か
   ら見れば裏切りの驚愕。そうした中で北朝鮮は事実上、国際的に孤立化した。
3.    北朝鮮を誤解させたアメリカの対北戦略とトランプ大統領の登場

    ・北朝鮮が核開発に着手し始めた1994年、クリントン政権は北朝鮮と核開発の凍結・国交
   正常化の道筋をつける合意。それを反故にされたので、北への武力攻撃を考えたが、韓国
   で100万人規模の犠牲者が出るとの情報で中止。カーター特使を派遣して金日成とアメリカ
   の派兵停止と核開発の代わりに軽水炉援助の「米朝枠組み」合意。しかし、その後、北が
   核開発凍結を破棄。枠組みは崩壊。2003年から6カ国協議で北が時間稼ぎの食い逃げ
   外交。ブッシュJrJ大統領は北朝鮮をイラク、リビアと並べて「悪の枢軸」と非難しテロ
   支援国家に指定したが、2008年に取り下げ。オバマ大統領は、北への軍事力行使という
   オプションを完全に放棄し、”戦略的忍耐”。。

  ・こうした対応が20年以上も続いたため、北朝鮮の内部には一つの神話ができたのでは
   ないかという観測。それは、北朝鮮が何をしてもアメリカは武力攻撃はしてこない。
   「アメリカが北を怖がっているからだ」という考えがあったとすれば、それは妄想。
   ただ、日本がかつて、生産力が10倍も大きいアメリカを相手に太平洋戦争に挑んだ頃
   の日本のメディアの喧伝や軍部の戦略判断を思いやると、北朝鮮の”妄想は四半世紀の
   経験の基づいているだけ、日本のかつての経験より”実証的”かもしれない。
       ・2017.1.のトランプ大統領の登場を契機に、アメリアかはこれまで24年間の実質的放置か
   ら軍事力の行使も辞さない姿勢へ大きくを舵を切った。トランプ氏は独特のツィッターを
   使った”口撃”も繰り返しており、レトリックが激しい。例えば、2017.7に北朝鮮がグアム
   島攻撃を示唆した際には、「世界が見たこともないような炎と怒りに包まれるだろう」と
   述べ、また2017.9.19の国連演説では「防衛のためには、北朝鮮を完全に破壊する以外、
   選択肢はない」と公的に威嚇した。

4.    北朝鮮を非核化できるか
 ・”すべてのオプション(手段)はテーブルの上にあるとして軍事攻撃も示唆。
 ・軍事攻撃の前に、国連などを使った外交非難と忠告。ならびに経済制裁による圧力

 ・軍事手段としては、(1)先制攻撃で国境付近の砲撃能力を壊滅、そしてミサイル発射
  装置の破壊、すべての攻撃能力の排除、(2)斬首作戦として金正恩への直接攻撃。但し、
  これはその後の混乱が大きい。(3)外科手術(surgical strike):まずサイバー攻撃で
  北朝鮮の情報機能を麻痺(手術の前段の麻酔に匹敵)させ、強力な戦力で北朝鮮の
  戦力を完全破壊、などが考えられ、計画された。
 
 ・一方、金正恩はこれまでの対米経験を踏まえ、米国の意思と能力を侮っていた可能性。
  米国が本気になるとどれほど怖いか、をトランプ政権とのやりとりの中で自覚。米国は
  軍備(Bi, Fシリーズ、ミサイル、空母)を持つだけでなく、毎年のように実戦している。
  実戦で鍛えられた戦力ほど強力なものはない(小泉首相)ことを自覚して直接交渉を
  模索した?
 
5. 米朝首脳会談への道

 ・冬季五輪が韓国平昌で開催される機会に、北朝鮮チームを招きたいと文在寅韓国大統領が
  懸命なラブコール。文在寅氏は人も知る熱烈な親北朝鮮派。北朝鮮は渡りに船と融和攻勢。
  南北朝鮮は急遽、合同チームで五輪参加。北朝鮮からは音楽隊の応援団も参加。

 ・訪朝した韓国特別使節団訪朝に北朝鮮金正恩委員長が直々の会談。金委員長がトランプ
  大統領に会いたい旨を語る。トランプ大統領が、金委員長の思いを伝えに訪米した韓国特別 
  使節団代表に3月8日、金委員長と会談の意向表明。トランプ氏は会うと即答。その件を
  特別使節団代表にWHのWest Wingで記者団にブリーフィングさせるという特別扱い。

 ・金正恩委員長が3.26~27、極秘裏に北京に習近平国家主席を訪問。習近平主席は、父親が
  厳しくかつ優しく諭し迎えるような対応だったという。金正恩の核ミサイル実験で何度も
  メンツを潰された習近平氏との関係修復。トランプ氏に会う前に後ろ盾が欲しかった?

 ・4/27、板門店で南北朝鮮首脳会談。30年ぶり。当日は快晴。文在寅大統領と金委員長が
  手を取り合って38度線を越えるという演出。全世界にTV実況中継。しかし、会談の結果
  は具体策なし。南北の合意は(1)非核化によって核のない朝鮮半島を実現する共同目標。
  (2)今年中に”終戦”を宣言し、休戦協定を平和協定に変換。その他。非核化の具体的
   段取りなどは米朝首脳会談に先送り。

 ・米朝首脳会談は6/12にシンガポールで開催決定。5/25、トランプ大統領が、金委員長
  のメッセージを問題として、突如、会談の中止を発表。トランプ氏独特の脅し取引。
  金委員長、文大統領の支援要請。5/27、金委員長、文大統領の再会談。また習近平
  主席をも訪問相談。
 
6.  米朝首脳会談とその結果
 ・6.12. 米朝首脳会談。全過程をネットで中継する演出。会談の結果、共同声明。内容乏しい。
  要点は二つ(1)トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束、(2)金委員長 
  は朝鮮半島の完全非核化への確固で揺るぎのない約束を再確認した。

 ・この会談結果には、重大な欠陥がある。それは最大課題であったはずの非核化の具体案、
  手続き、スケジュールなどについて一切言及がなかったこと。非核化については”確固で
  揺るぎない約束の再確認”という口約束にもならない文言が声明文に書き込まれただけ。

 ・しかも会談後、記者会見したトランプ氏は上機嫌で、北朝鮮は正しい方向へ進めば素晴
  らしい国になる、北朝鮮の今後の経済発展のためには韓国と日本が経済支援をすれば良い、
  米韓軍事演習は費用もかかるので、やらなくても良い、などとアドリブでコメントし、
  関係者を驚愕させた。

 ・会談は今後もやろうという含みを残し、これからの詳細な詰めは、Pompeo国務長官と
  北朝鮮の担当高官の協議で行うこととされた。トランプ大統領は、最大の関心は11月の
  中間選挙であり、米朝会談の成果は、”もうアメリカに北朝鮮のICBMは飛んでこない”
  と胸を張ることであったのかも。

 ・2018年年末にかけて、金委員長から会談の打診があり、トランプ氏も関心を示しているが、
  Pompeo長官らとの事務レベルの折衝では、北朝鮮は(1)非核化については具体的な対応
  を示さず、(2)経済制裁の停止が前提、という主張で、米朝はかみ合わず、どのような展開
  になるか不透明。北朝鮮は金日成・クリントン大統領の折衝以来、約束を守ったためしが
  ない交渉巧者であることも多いに念頭に置くべきか。

 ・2019年2月末をめどに、2回目の米朝首脳会談を、ベトナムで開催する方向。両者の思惑。
  トランプ氏:壁問題など制約される内政の不評を、外交で得点ねらう?
  金正恩氏:第一回首脳会談で政体保証や米韓演習中止を引き出し、さらなる成果を?
 ・米朝会談の結果、核・ミサイル実験の危険は↓。しかし非核化のプロセスには時間が
  かかる?

7.  北朝鮮問題の今後と日本の役割

 ・北朝鮮の核・ミサイル開発は、世界の安全保障体制に重大な危険をもたらすと懸念された。
  危険をとり除く鍵は、北朝鮮の”非核化”である。2018.6.12の米朝会談への世界の期待は、
  トランプ氏が北朝鮮の非核化についてどこまで具体的な約束を取り付けるかに注がれた。
  米朝会談では、上述のように具体的な約束はとりつけられなかったが、非核化が問題の核心
  であることに変わりはない。
 
 ・その後の米朝交渉では、北朝鮮は経済制裁の停止を要求する一方、非核化については具体的
  な対応を示していない。北朝鮮は非核化についてはこれまでも約束破りを繰り返してきた狡猾
  な交渉者なので米朝の折衝も成果を挙げられるかは不明。

 ・北朝鮮は、今回の一連の交渉で、朝鮮半島に「終戦」をもたらしたいとしている。終戦が
  確定すれば、日本に対して正式に賠償請求ができると期待しているのだろう。日本と韓国は
  朴正煕大統領の時代、日本は平和条約を結んで多額の援助をし賠償問題には決着を着けた。
  それがこれまでの日韓の理解だったが、文在寅大統領は、慰安婦問題、徴用工問題などで
  も、決着済みの問題を一方的に蒸し返して日本に大きな賠償を迫るという挙に出ている。
  終戦で南北平和条約が結ばれれば、北朝鮮はかつての日本の”侵略”にたいして法外な賠償
  を求めてくる可能性がある。

 ・2018.6.12の米朝首脳会談後の記者会見で、トランプ氏は北朝鮮の今後の経済発展のため
  には日本や韓国が経済援助をすれば良い、と口走った。日本がそうした援助をするため
  には、どのような条件が必要か?

 ・北朝鮮と日本の間には、拉致問題をはじめ、深い溝がある。日本が経済援助を可能に
  するような相互理解や相互信頼は醸成できるのか。本格的な研究が必要だろう。 

Ⅵ.   プーチン・ロシアの現況と北方領土問題

 1.  プーチン第四期政権の展望と課題

  ー2018.7. 島田村塾ロシア研修訪問
     ー プーチン政権 第一、第二期(2000→2008)
   ・原油、LNG価格などエネルギー価格の持続的上昇による高度経済成長、年7%
    2000~2008で、GDPは83%増大、所得↑、中間層↑、貧困率↓。
   ・2008年訪問時のエピソード:”プーチンストップ” ピロシキ屋のプーチン絶賛

  ーメドベージェフ政権(2008→2012)
   ・2008年9月、リーマンショック⇒2009年GDP ー7.9%
   ・しかし平均4%程度の成長は確保

  ープーチン第三期政権(2012→2018)

   ・メドベージェフ政権時代に憲法改正、大統領任期を4→6年に。
   ・首相から大統領就任、全国で批判噴出、大規模デモ↑
   ・Hillary Clinton国務大臣が支持を公言したことをプーチン氏は根に持つ。
     Hillary Clinton(オバマ政権(2008→2016)氏らの扇動と認識。
   ・2014年3月、クリミヤ併合、西側諸侯はアメリカ主導で経済制裁
    →2015、2016年は経済縮小(マイナス成長)、2017年はようやく1.5%

  ープーチン第四期政権(2018→2024)
   ・経済戦略:大統領令の国家目標
    (1)経済成長、経済安定
     世界5大経済大国(韓国や英国抜く)、インフレ4%以下、世界平均以上成長率達成
    (2)人口増加、国民生活水準向上
     人口持続的自然増、寿命78才へ(現在72、M67、F77)2030までに80才。
      実質所得の持続的↑。インフレ以上の年金伸び確保、貧困半減。
    (3)快適な生活環境:住宅環境と自然環境改善

   ・総合構造改革が必要、Alexei Kudlin前財務相主導の戦略策定センター
     これまでも同様な目標→プーチン戦略体現していたが実現していない。
    ・第一次2010年発展戦略(2000策定)、第二次2020年発展戦略(08策定)
     ・第三次発展戦略諸機関で論争が、今回の第四次2024発展戦略(2018策定)に続く?

  ー年金問題で支持率急落
    ・メドベージェフ首相、2018.7.年金支給開始年齢引き上げ発表
      M:60→65(2028まで)、F:55→63(2034まで)、国民反発、全国デモ。
      プーチン支持率、80%→60%へ。
    ・年金問題でプーチン大統領が条件緩和
     2018.8.29. プーチン大統領は国民の反発を意識して、これまで提示していた
     年金支給の開始年齢引き上げ 55才→63才を、55歳→60歳とすると修正。
     それでも国民の不満は高まったまま。
    ・ロシアは財政赤字はわずかだが、貧弱な社会保障にしわ寄せ。

 2. プーチンロシアの他国評価と自己認識
  1)西側諸国のイメージとプーチン政権の自己認識に大きな乖離
   ・西側諸国から見ると、プーチン政権の外交戦略は、攻撃的、侵略的、非民主主義、
    人権無視。スパイ活動など。 深刻な脅威。当然、制裁(経済、軍事)の対象。
    そもそもNATO(北大西洋条約機構)は冷戦時代以来のロシア(旧ソ連)の
    軍事的脅威に対抗するために創設された。

  ・プーチン政権の自己認識は全く異なる。正反対
     西側諸国による政治的、思想的脅威。それはロシア国民の一体感と団結を
     崩す恐れ。裏庭から侵食。自己防衛のために強圧的、攻撃的手段も必要。

 3. プーチンロシアの攻撃的な安保・外交戦略の例
   ・チェチェン共和国への攻撃(1994~96、1999~2000) 
   ・グルジア(ジョージア)のバラ革命(2003)
   ・ウクライナのオレンジ革(2004)
    ⇒これらはカラー革命と呼ばれ、ロシアは包囲されているとの被害者意識↑?
     Hillary国務長官が後ろ盾と警戒。
   ・グルジア攻撃(2008.8 北京オリンピック時)南オセチア、アブハチア独立宣言           
   ・クリミヤ併合(2014.3)   
   ・東ウクライナ容喙(2014)  
   ・シリア、ISへの政治、軍事介入(2009)
     オバマ大統領が、アサド政権がRed Line(化学兵器を民間人に使用)を超えたのに
      攻撃を逡巡した時、プーチンはすかさず介入して指導力発揮
   ・アメリカ大統領選(2016)へのサイバー介入の疑い
     ロシア側の意図:Hillary Clintonだけは排除すべし?
     Hillaryでなければ良い。トランプは利益取引型(Deal)なので与し易いかも。
     トランプ陣営は皆素人。フリン補佐官、クシュナー、トランプJrなど
     プーチン陣営はトランプ側の実力評価せず、相手にせず。
 
    ー欧州選挙(2017)への介入の疑い。ロシア、EUの弱体化画策
     マクロン大統領(2018.1)偽ニュースから民主主義守る法制度導入表明
     米英仏がロシアの情報工作対策に乗り出す。
     クレムリンのプロパガンダ(政治宣伝)機関と批判される国営対外発信メディア
      「RT」や「スプートニク」の監視強化、包囲網を狭める。
 
    ・プーチン(2018.3.1)年次教書発表:
      通常の倍2時間演説、40分、兵器詳説
      新型ICBM開発発表、複数核弾頭搭載。米国ミサイル防衛網(MD)も突破。      
 
    ・英国で元スパイの毒殺未遂事件(2018.3)
 
    ・周辺小国への脅威(ジョージア、マケドニア、バルト三国)
       プーチン第四期。経済低迷は不可避。大国意識と強い指導者のアピール
       対外(周辺小国)への強圧的行為に出る危険意識。

    ー西側諸国のロシア脅威感
      ・民主主義否定、
      ・人権否定
      ・国際法違反:力による現状変更(1928パリ不戦条約違反)
      ・経済制裁の正当化と執行

    ー抜きがたい地政学的被害者意識
     ・西側諸国の介入、浸透、侵蝕への警戒、恐怖感
     ・NATO軍事包囲網への対抗
     ・ロシアの価値観、国家主義、一体感の侵蝕。政権基盤の弱体化
     ・ロシアの懸念と論理は理解できるか、共有できるか。ロシア理解には必要?

 4.  プーチン・安倍会談と北方領土問題
    ー安倍首相は就任以来、ロシアとの北方領土解決に熱心に取り組んで来た。
     プーチン大統領との会合は、2019.1会談で25回目。
           ー本題の北方領土問題は、WWII後、ソ連はSF平和条約に調印しなかったため、
     日ソは別途、二国間での平和条約締結をめざし、1955年に交渉を開始。しかし領土
     問題では決着がつかず、翌1956年10月にモスクワで平和条約でなく日ソ共同宣言に
     調印。共同宣言では歯舞群島と色丹島を平和条約が締結さらた後に引き渡すと
     された。日本は鳩山首相、ソ連ブルガーニン首相らが出席。

    ー1993年10月、エリツィン首相来日、細川首相との間で「東京宣言」に調印。宣言では 
     「両国は過去の遺産は克服すべき。北方四島の帰属について真剣に交渉。この問題を
     解決することにより平和条約を早期に締結するよう交渉を継続する」とした。東京
     宣言後、両国の空気は改善し、1998年4月の橋本・エリツィン会談では、領土問題
     は解決寸前に近づいた。そこでは橋本首相が「日ロ間で締結する平和条約で、領土
     問題は別途日ロ間で合意するまで、日本はロシアが四島で施政権を行使することを
     認める」と提案。エリツィン大統領はこ「面白い」としたが、同行の報道官がこれを
     国に持ち帰って検討するよう進言し、その場で合意はならなかった。もし合意して
     いたら領土問題は大きく前進した可能性。この時期はロシアが経済的苦境にあり、
     日本と協力的な関係を欲したいた稀有のタイミングだった。

    ーエリツィンから大統領職を引き継いだプーチン氏は領土問題に関心が深くまたもっとも
     勉強した大統領。彼はロシアは交渉には応じるし、解決への意思もある。しかし
     ロシアには受け入れ可能な妥協が必要。いわば柔道の「引き分け」のようなもの
     が必要、との考え。

    ー安倍首相は領土問題に強いこだわりがあり、2016年5月、プーチン氏に「双方が
     受け入れられる解決策」に向け「新たな発想のアプローチ」で交渉を加速する提案。
     プーチン氏も賛成し、それ以降、頻繁に接触。同年12月にはプーチン大統領を自らの
     故郷の山口県長門市と東京に招き会談。両国で「共同経済活動」を検討する合意。

    ー領土問題は、平和条約や経済協力も合わせ、双方が合意できるような形を創出する
     必要。交渉上の立場には互いの経済条件も影響。当面は返還の可能性は乏しい?
     また返還にはメリットもデメリットもある。しかし、国境や領土問題は法と正義に
     照らして主張しつづけるべき。

    ー2018.9.12ウラジオストックで開催中の「東方経済会議」に出席していたプーチン
     大統領は、安倍首相、習近平氏と同席のパネルで、まったく前触れなしに「日本と
     無条件で平和条約を締結してはどうか」と爆弾発言。
    ・日本は領土問題を解決してから平和条約を結ぶという立場。換言すれば、領土問題
     の解決は平和条約の前提条件、という立場なので、プーチン氏の発言をそのまま
     受け入れるわけにはいかない。日本政府は同氏の真意を分析中。

    ー2018.9.16. 日露両政府と企業は、82件の経済協力に関する合意文書を交わした。
     8項目の協力分野:医療、都市づくり、中小企業交流、エネルギー、ロシア産業
     多様化、極東の産業振興、先端技術、人的交流。日本側企業にはなお慎重論も。

    ー2018.11.14。安倍首相とプーチン大統領は、シンガポールで会談。安倍首相は1956
     の日露共同宣言を基礎に平和条約交渉を進めていく考えを示した。同共同宣言には
     平和条約締結後、歯舞、色丹2島の引き渡すとされている。プーチン大統領は引き渡し
     ”主権”の返還を意味しないとの立場。安倍首相は2021年の任期中に歴史を一歩進め
     たい、との思い。
    ー2018.12.1.安倍首相はプーチン大統領と会談。平和条約と領土交渉は今後、外相
     以下事務当局の交渉で詰めていく方針合意。日本政府の4島返還主張は消えた?
     安倍首相サイドは「2島+アルファ」の思惑?

   ー2019.1. 14:事務レベル交渉:河野外相、ラブロフ外相。
    ・ロシア側主張:大戦の結果、北方4島はロシア領土。ロシア主権を前提にすべし。
    ・日本側主張:4島は歴史的に日本固有の領土。56年共同宣言は平和条約後、歯舞、色丹
     返還を明記。
   -2019. 1. 22安倍ープーチン会談(25回目)
     ・平和交渉と日露経済協力に重点、領土問題は?
     ・2019.6にまた首脳会談、それをめざして息長く準備
 

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