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2018年12月

激動する世界と中国の課題(2)トランプ発貿易戦争をどう克服するか

Ⅳ. 対中追加関税の発動と中国の報復
 1.  第一次対中追加関税発動2018.7.6
  ー7.6 トランプ政権は、6日、中国の知財侵害に対する制裁関税を発動した。
   産業用ロボットなど340億ドル(約3.8兆円)分に25%の関税を課した。
   中国も同規模の報復に出る構え
   トランプ大統領は中国の出方次第では、中国からの輸入品全てに関税をかける
       可能性も示唆。

 2.  第二次対中追加関税発動2018.8.23.
   -8.23.  トランプ政権は、23日、知財侵害を理由に、中国への制裁関税の
            第二弾を発動。
    半導体や化学品など、279品目。160億ドル相当、に25%の関税上乗せ。
    中国も直ちに同規模の報復。

 3.  第三次対中追加関税発動2018.9.24.
   ー9.24、トランプ政権は、約2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に
            10%の追加関税を課す対中制裁関税第三弾を発動。
   ・中国も600億ドル相当の米国製品に5~10%を上乗せする報復関税と即日
            実施。
   ・両国の貿易戦争はお互いの輸入品の5~7割に高関税を課す危険水域に。

 4.  第四次対中追加関税の脅し
  -9.9  トランプ氏は9.7. 中国からの輸入品2670億ドル(約30兆円)相当に
         新たに関税をかける用意があると表明。第3弾の2000億ドル相当とは別。


Ⅴ.  米中対立と衝突の構図
  1.  目覚ましい中国の発展と市場主義への取り込みの期待
   ー1980年代、鄧小平の主導する改革解放戦略で目覚ましい発展。
    ・1980~2010までの30年間、GDP平均年率10%で成長
   ーアメリカと西側諸国は、発展する中国は、中産階級↑、
           自由選択→市場競争→民主主義と考え、自由主義・民主主義に同化すると
           期待。
   ー取り込み戦略(engagemen),  WTOへの参加を認めたのもその一環。
    中国の発展を支援。

  2.  中国の歴史的発展と大戦略
  (1)アヘン戦争以来の屈辱の歴史の超克
            ー中国は古代から近代まで東洋の圧倒的な超大国であり、文化の中心で
               あり、最大の覇権国だった。 
            ー中国は特に1840~42年のアヘン戦争と1856年のアロー号事件で、
               イギリスに事実上植民地化され、欧米列強が相次いで中国に利権を設定
               し、つづいて20世紀前半には日本によって蹂躙されるに至った。

          ー中国は1980年代以降、鄧小平の指導による積極的な開放改革戦略で
               目覚ましい発展を遂げた。鄧小平は事実上の超大国への道を急進する
               この期間、”韜光養晦(爪を隠して内に力を蓄える)という路線を堅持
               した。しかし、2012年、国家主席に就任した習近平は、中国の力を
               内外に誇示する戦略に転換した。

  (2)中国夢
    ー習近平は、盛んに”中国夢”を唱え、中国は今や、アヘン戦争以来170年の
               屈辱の歴史を乗り越え、中国人民にふさわしい世界の大国、強国になる
               のだと国民を鼓舞した。
     そのキャッチフレーズが”中国夢”である。

           ー習近平政権が追求する”中国夢”は、170年間の屈辱の歴史の克服と払拭
               そして欧米列強の歴史的横暴に対するリベンジであり、中国人民の国家的
               復権をめざすものである以上、それは実現せねばならぬ国家の基本戦略で
               ある。それを実現する最大の基礎は経済力、特に質の高い競争力に裏打ち
               された経済力である。その戦略の重要な一環として、中国政府は「中国製
               造2025」というビジョンそして工程表を提示した。

  (3)中国建国100年強国構想
          ー中国は、2021(共産党創設100周年)を念頭に、
       2020:小康社会の全面完成
       2035 :社会主義現代国家建設
       2049(中華人民共和国建国100周年):社会主義現代化強国。
      ・そのためには創新(イノベーション)が基本戦略

         (4)「中国製造2025」に象徴される経済強国化戦略
   ー中国国務院が2015.5発表の産業政策『「中国製造2025」は、次世代情報
            技術やロボットなど10の重点分野を設定、製造業の高度化をめざす。
         ー中国は建国100年の2049に「世界の製造強国の先頭グループ入り」を
             めざす。
          「中国製造2025」はその長期戦略の第一歩。
    ー発展途上国に多かれ少なかれ共通する国家主導発展戦略
      例:戦前・戦後の日本、19世紀のドイツ、韓国、シンガポールなど

  ○「中国製造2025」
   ー中国国務院が2015.5発表の産業政策『「中国製造2025」は、次世代情報
            技術やロボットなど10の重点分野を設定、製造業の高度化をめざす。

   ー中国は建国100年の2049に「世界の製造強国の先頭グループ入り」を
            めざす。
   「製造2025」はその長期戦略の第一歩。

   ○製造強国への工程表
     1. 第一段階(2015→2025):製造大国(規模)→製造強国の仲間入り
     2. 第二段階(2025→2035): →製造強国の中等水準
     3. 第三段階(2035→2049): →製造強国の先頭グループへ躍進。

           ○「中国製造2025」
    ⓵  次世代情報技術:
         集積回路と専用機器:半導体チップ国産化
          情報通信機器:新型コンピュータ、高速インターネット、第5世代
                          移動通信
          基本ソフト(OS)、業務用ソフト:ソフトの核心技術で飛躍
    ⓶  高度なデジタル制御の工作機械・ロボット
        高度な工作機械、ロボット 
    ⓷   航空・宇宙設備
        航空用機器:大型航空機開発、ヘリコプター、無人航空機
        宇宙用機器:次世代運搬ロケット、有人宇宙飛行、月面探査
    ⓸  海洋エンジニアリング・ハイテク船舶
       深海探査システム、海洋事業機器強化、豪華クルーズ船
    ⓹  先端的鉄道設備
         新材料、新技術、省エネ、デジタル化、スマート化、ネットワーク化
          で世界トップレベルの鉄道交通体系構築
     ⓺ 省エネ・新エネ自動車
        電気自動車、燃料電池車開発支援。自動車の低炭素化、情報化、
                  スマート化の核心技術掌握、自主ブランドをトップレベルに。
     ⓻ 電力設備
       超大容量水力発電、原子力発電、重量型ガスタービンの製造能力向上。
         新エネ、再生エネ、スマートグリッド用送電、変電機器開発
    ⓼ 農業用機材
       農業機器重点開発、大型トラクターなど。
    ⓽  新素材
       超電導素材、ナノ素材、グラフェン、生物学的基礎
    ⓾ バイオ医薬、高性能医療機械
      化学薬品、漢方薬、生物薬品の新製品開発。バイオ3Dプリンター開発、
                  応用。

 3.  ツキディデスの罠と覇権競争
   (1)ツキディデスの故事
     ーギリシャの歴史家ツキディデス、新興国アテネの覇権国スパルタへの
                  挑戦
     ・結局、ペロポネソス戦争に。アテネの勝利
     ・過去2000年間の覇権争いは半分以上が戦争に。

      (2)19正規のGreat Game:英国とロシアの覇権争い
     ・覇権国大英帝国へのロシア帝国の挑戦

    (3)20世紀後半の米ソ冷戦
      ・1950年朝鮮戦争ー冷戦開始、アメリカによる共産圏封じ込め、
       1991年ソ連崩壊。派遣闘争:40年かかってソ連崩壊

    (4)1980年代の日本の追い上げと日米摩擦
       ・1985年、日本のGDP/Nはアメリカを2年間上回った。
      ・アメリカは日本の発展戦略を問題視、・プラザ合意による円高↑の
                     強要
      ・日本、円高で競争力維持のため財政・金融で景気拡大政策→
                     過剰流動性→
      ・バブル↑→崩壊↓→失われた20年→日本の退潮

    (5)2018年以降の米中貿易戦争
                  ・1980~2010の中国、鄧小平の改革解放で大発展
      ・2012年以降、習近平主席の大国思想、新型大国関係

    (6)  ペンス米国副大統領演説(2018.10.4)と新冷戦の可能性
      ・Michael Richard Pence(Mike Pence)氏のHudson Instituteでの
                     講演
      ・新冷戦の開始を示唆?


Ⅵ. 大国中国の自己認識と世界の評価
  1. 中国は発展途上国か?
     1)失われた屈辱の180年
     ー1840年のアヘン戦争以来、欧米列強と日本に蚕食された屈辱の歴史
     ー今こそその屈辱の歴史を超え、本来の中国人民にふさわしい強く豊かな
                  国をつくる

    2)中国の格差構造:沿岸部と内陸部
      ー沿岸部は高度に発達、所得水準高く、世界の先進国と同等
      ー内陸部:経済発展の遅れ、所得水準低い、あたかも別の国。

    3)中進国の罠と人口減少の制約
     ー一人当りGDP 8000ドル、中進国としての発展段階へ
     ・賃金上昇、高まるコストを上回る技術革新、生産性向上急務=中進国の
                 罠 
     ー人口増加頭打ち、高齢化と人口・労働力の減少=成熟国の活力↓ 
     ・人口ボーナスから人口オーナス、技術革新、innovation, 生産性↑
                  重要     

 
  2. 誰が見ても「超大国」の中国
           1) 発展途上を主張するにはあまりに巨大な存在
     ・世界第二の経済大国、アメリカ経済の2/3、PPP(購買力平価)では上回る?
     ・中国成長6%、アメリカ成長3%:20年後には中国GDPがアメリカを上回る?

    2)国際機関での存在感主張
     ・IMF. WB, ADB(アジア開銀)などでトップはたは幹部役員を狙い
                  働きかけ
     ・自前の国際機関、AIIB,
    3)中国のアジア、ユーラシア、アフリカ戦略
     ・「一帯一路」”AIIB(アジアインフラ投資銀行)”

  3.   技術最先進国の中国
    1)巨大な先進情報企業と情報ネットワーク
    2)ユニコーンを生む起業のエネルギー
    3)技術導入と移転に関する特殊性
     ・後発国は先進国の技術導入、模倣によるcatch upは当然
     ・中国の技術水準はアメリカと同格?

  4.   中国の国際世論影響戦略
    1)注目される中国のsharp power
     ・対象国の世論、政治への働きかけ、影響工作
     ・Pence氏の激しい批判。

            2)  孔子学院の展開
     ・孔子学院の狙いは?


Ⅶ.   米中は新冷戦に突入するか
  1.  ペンス副大統領演説(2018.10.2)は新冷戦の始まり?
   ーMichael Richard Pence(Mike Pence)氏のHudson Instituteでの講演
   ・1980年代以降の鄧小平主導「改革解放」戦略による中国の目覚ましい発展
    を踏まえて、米欧は中国の発展による自由化を期待し、中国をengage
            (取り込み)
    しようとWTO加盟も支持し、手を差し伸べてきたが、裏切られた。
            習近平政権は経済的に攻撃的、軍事力↑志向。
   ・アメリカは中国が不公正な貿易で米国に被らせた赤字を容認しない。
   ・中国共産党は「中国製造2025」を通じ、世界の先端産業の9割支配を
            めざしている。
   ・中国の覇権志向は失敗する。
   ・中国はここ数年、自国民への統制と抑圧を強化。少数民族への迫害↑。
            途上国に借金漬け外交を強要。台湾の孤立化を画策
   ・中国はトランプ政権の打倒を狙って、アメリカ国内政策と政治への干渉を
            強化。
    2018年中間選挙、2020大統領選挙へに向けた取り組み、ロシアをはるかに
            上回る。
   ・米通商政策の転換のために対中投資米企業に圧力。

       ーペンス演説は、トランプ政権のみならず民主党の中国警戒、強硬派も含め、
          米国のestablishmentの対中国観を集約・代表するものと受け取られている→
          新冷戦?

  2. 米中経済安全保障再考委員会(USCC)報告(2018.11.14)
  ー米議会の超党派諮問機関、米中経済安全保障再考委員会(USCC)は11.14、
         中国のハイテク技術が米国の安保上のリスクになると警告する報告書公表。

   ー経済:
   ・多国間枠組みでは中国の不正な商慣行を十分是正できない
   ・外資企業は中国の報復を恐れ知的財産権保護を主張しにくい。
   ・中国は国家主導でIoT関連開発。米企業や個人の情報流出も。
   ・中国がハイテク分野の国際標準で主導権握れば安全保障リスクに。
   ー安全保障:
   ・中国軍は2035愛でにインド洋や太平洋の全域で米軍に対抗勢力
   ・一帯一路を名目に整備した港湾は中国の軍事拠点にもなる。
   ・米政権は台湾の自己防衛に役立つ軍事協力をすべき。


Ⅷ. トランプ現象をどう見る?
 1. トランプ個人の特異性
  ・貿易戦争に象徴されるトランプ政権の激しい中国への批判と攻勢や、
         第二次大戦後のアメリカが主導してきた経済や安全保障面での国際協力・
         協調体制を否定するトランプ
   政権の態度は、トランプ氏個人の信条や性格に起因するものなのか、それとも
         もっと広く深い背景があるのか。
  ・トランプ氏の政策には、”Deal”を好むなどトランプ氏個人の手法などが色濃く
         反映されている面もあるが、トランプ政権が追求している方向性は、もっと
     広い背景に起因すると思われる。

 2. 世界で進む「トランプ」現象
  ・それは”トランプ現象”とも言うべき世界の大きな構造変化そして思潮の変化
         である。
  ・戦後世界の経済発展を促進した最大の力は技術革新であり情報化である。   
         それは”グローバリゼーション”と言う世界経済全体を包摂する大きな地殻変動
         に帰結した。
  ・グローバリゼーションの下では、情報化によって資源はもっとも効率的に配分
         される。
   例えば、もっとも安く作れるところで製品を作りもっとも高く売れるところで
         販売される。その結果、賃金などコストの高いアメリカなどから、工場は
         コストの低い発展途上地域に移転し、新しい技術についていけないアメリカな
         どの労働者が失職する。
  ・また、賃金の安い国や地域から賃金の高い国への移民が増加し、コストの高い
         国の労働者の雇用を脅かす現象が広まった。
  ・こうした世界の構造変化を背景に、技術革新と情報化に取り残された人々の   
         不満が高まり、それは2016年6月のBrexitに、そして同年11月のトランプ
         大統領選出という現象を生み出した。

 3. 同盟国を攻撃するトランプの愚
  ・トランプ大統領は、彼が仕掛ける貿易戦争で、カナダ、EU、日本、韓国、
         オーストラリアなどアメリカの伝統的な同盟国にも追加関税をかけたため、
         これら同盟国は困惑し、対米不信感が高まっている。
  ・中国にとって、アメリカの伝統的同盟国における対米不信の高まりは、
         中国がアメリカと対抗する上での機会を提供する。

 4. どちらが世界を味方につけるか
  ・アメリカは、第二次大戦後、ソ連が主導する共産圏を包囲する形で地政学的に
         展開している国々に、経済発展のための援助と安全保障協力を提供し、
         これらの国々を同盟国としてきた。冷戦体制時代にアメリカが構築したこれら
         同盟国とのネットワークはアメリカの伝統的資産である。
  ・一方、中国はアメリカのような形で同盟国を構築してはこなかった。
         冷戦時代、ソ連と密接な関係は持ったが、それは時に対立・対抗関係も含み、
         同盟関係とはいえない。
   また、鄧小平時代は”韜光養晦”の方針の下、国際政治面では積極的な主導権を
         取ることはなく、あえて同盟国のような味方をつける戦略は撮らなかった。
  ・トランプ発貿易戦争に代表される米中の”覇権闘争”が不可避になりつつある
         現状では、
   米中のどちらが国際社会でより多く有力な味方を確保するかが重要な鍵になる
         ように思う。

 5. 中国に求められる世界説得力
     ・このような状況下で中国に求められるのは、世界の諸国が中国とともに歩みた
        いと思うようにする説得力だろう。
  ・説得力の中核となるのは、社会を構成し、経済を主導する価値観。


Ⅸ. 中国の世界説得力
1. 欧米の価値観
 1)フランス市民革命が起源:自由、平等、博愛
 ・現在の欧米主要国の統治の価値観は18世紀末のフランス革命に淵源がある。
      フランス革命では絶対王政の貴族政治で抑圧されてきた人民が、そうした体制
      からの解放を求め、貴族政治の打倒をめざして革命を起こした。その基本理念
      が、自由、平等、博愛である。

 2)人権、市場競争、民主主義
 ・フランス革命は旧体制の多くの国々に影響をもたらし、封建的な絶対王政に代わ
      る近代国民国家が多く誕生した。現在の欧米主要国は、フランス革命に淵源を
      持つ近代思想を”人権、自由な市場競争、民主主義”として共通の価値観として
      いる。

2. 現代中国の価値観
 1)コミンテルン流の共産主義
 ・現代の中国すなわち中華人民共和国は1949年に毛沢東率いる共産党によって
      建国された。
 ・毛沢東は、1930年代から40年代にいたる蒋介石率いる国民党との対抗の中で、
 ソ連が国際共産主義敷衍活動として推進していたコミンテルン運動から多くを学び、影響を受けた。

 2)中国型の社会主義
 ・その後、毛沢東はソ連型の共産主義ではなく中国の土壌の上で独自の社会主義を
      構築していった。

 3)鄧小平以降の社会主義市場経済
 ・鄧小平は毛沢東体制を克服して、現代中国の目覚ましい発展を主導したが、   
      そこでは中国型の社会主義は維持するものの、経済発展のためには欧米諸国や
      日本のような競争原理にもとづく市場経済を導入する必要を強く認識し、
      ”改革開放”の旗印の下に中国型の社会主義市場経済体制を樹立し、年率10%成長
       を30年間つづけるという世界史的な成果を達成した。

3.  中国は世界の普遍的主導原理を創れるか?
 1)市場主義経済は世界に共通
 ・中国の社会主義市場経済に取り込まれている”市場経済”の考え方は、今やロシア
      をはじめ多くの国々で肯定され、世界に共通の価値観となっているといえる。

 2)中国型社会主義市場経済は中国特殊型
 ・一方、中国は”共産党主導の社会主義”という理念は堅持しており、これは中国の
      統治概念の基本だが、世界の多くの国々に共有される概念ではない。

4.  中国の古典思想の歴史的蓄積と知恵
・中国が現在の統治概念を堅持しつつも、世界の多くに国々に理解され共有されうる
    思想を提示できるか。その一つの鍵は、中国の古典思想に求められるように思う。
    中国には2500年前に儒教思想を明示した孔子の「論語」をはじめ、孟子、老荘
    思想、朱子学、陽明学などの深い思想の歴史がある。これらの思想は、ひとつには
    朱子学に代表されるような帝王の心得としての思想であるが、これら全てに貫かれ
    るのは ”仁” の概念に象徴される万物の調和と共存の考え方である。
・それをそのまま説くのではなく、現代社会や経済のあり方に対して、現代的具体的
   な調和と共存の理念を再構築して世界に訴えることは可能であり有意味であると
   考える。中国や日本のアジア思想の本質を現代世界の問題解決のために新たに提起
   する価値があるのではないか。


追記:
上海で、12月12日午後、上海交通大学での3時間半にわたる講演とパネル討論そして200人ほどの聴衆との質疑など大変有意義な意見交換、また、翌日13日には上海森ビル内「雲間美術館」の会議室で上海を中心とした各界の有識者との3時間にわたる討論の機会がありました。この機会における情報共有と意見交換が大変有意義だったので、私の北京の友人が好意で私が時折書く短文をWeChatの私の購読アカウント『島田中文説』に中国語に翻訳して掲載してくれるので、下記の文章を送って中国語での掲載を依頼したところ、当局から削除の措置をうけたと友人から連絡がありました。このわずかな体験で中国の関係当局がこのような問題に非常に神経質になっていることと、中国の情報管制の凄さを実感した次第です。以下に参考のために、私が投稿した日本語の短文を掲示します。

「トランプ発貿易戦争と中国の対応」

私は、12月12日、13日に上海で、上海交通大学の特別講座ならびに森ビルで特別セミナーをしました。その議論の要点を以下に紹介したいと思います。

トランプ大統領が12月1日のブエノスアイレスでの習近平首席との首脳会談で、付加関税の実施については90日の猶予を与えるが、それまでに中国の知的財産権の侵害を改める合意が得られなければ、来年2月末日以降、高付加関税をかけると言明しました。その後、アメリカは、カナダ司法当局にファーウェイ副会長の孟晩舟氏を逮捕させるという暴挙に出ました。

今回、上海ではこれら一連の問題をどう理解し、どう対応するかというテーマを中心に議論をしました。

アメリカが、中国がまだ発展過程の段階なら黙認できるが、アメリカと並ぶ超大国になった現在、不公正貿易は許されないと主張していることについては 、中国の人々からは、中国はGDP総額は大きいが一人あたり所得は世界の30番そこそこで、まだ発展途上にあるとの意見が多く出されました。

また、米中対立問題を克服するのに、日中の一層緊密な連携が必要との意見も出されました。その関連で、日本政府がファーウェイの製品を買わないと言明したことが、今の時点では日中関係に水を差すのではないかとの意見もあり、重要な指摘と思いました。

米中貿易戦争は世界の歴史的大転換を象徴する事件であり、その行方は長期的には米中のどちらが、より多くの国々の理解と支持を得るかにかかっているという指摘がありました。

アメリカは過去半世紀以上に渡って安全保障と経済援助で、多くの同盟国を作ってきましたが、トランプ大統領は同盟国にも付加関税をかけて信頼を失っています。

中国は「一帯一路」戦略で、多くの国に投資をしていますが、その一部は借金で苦しみ、南シナ海や魚釣島では近隣諸国と緊張が高まっています。

アメリカの「アメリカ第一主義」で世界が失望している今は、中国が友邦を増やすチャンスですが、そのためには、中国が国際社会が受け入れやすいより普遍的な共存の原理を提唱し、それを行動で示すことが鍵と思われます。

 
 

激動する世界と中国の課題(1)トランプ発貿易戦争をどう克服するか

Ⅰ. はじめに

 2018年12月12日に私は上海交通大学日本研究センター特別セミナーで表記のタイトルで講演した後、交通大学の教授5人とパネルで議論また聴衆の有志と質疑応答をし、同13日には上海森ビルで開催された島田義塾特別セミナーで有識者の皆さんと議論をした。その概要をこのブログ上で今回から2回にわたって紹介したいと思う。

Ⅱ. 米中首脳会談の宿題

1. 米中首脳会談(2018.12.1):その期待と不安

  2018年12月1日、APEC総会に出席した習近平国家主席とトランプ大統領は、総会の開かれたアルゼンチン、ブエノスアイレスのホテルで首脳会談を行った。首脳会談の結果は、共同声明はなかったが、両国がそれぞれ会談の要点を公表した。

 米国側の声明では、巨額の対中貿易赤字については中国側が農産品やエネルギー輸入を拡大すると約束した。またサイバー攻撃や技術の強制移転など知財侵害について協議するため、12月1日から90日間は予定していた関税引き上げを猶予するが、90日間の満了となる2019年2月末日までに合意が得られなければ、中国からの輸入のすべてに対して高率追加関税を課けると通告した、と言う内容が公表された。

 これに対して、中国側の声明では、中国からの対米輸出品に対する関税引き上げは90日間猶予されたこと、また、中国が台湾を孤立せるよう国際的に圧力をかけていると米国が非難している問題について、米国は「一つの中国」政策を引き続き是認するなどの点が公表された。

また会談で、米国は「中国製造2025」(ハイテク産業育成策)の撤回を要求したが、この問題については中国は譲れていない。米国が中国が南シナ海の軍事拠点化を図っていると非難している問題について中国は軍事目的を否定。さらに、中国の「一帯一路」戦略で被投資国が”借金漬け”になっている問題については、アメリカはインド太平洋地域へのインフラ投資の

強化もしくは支援で対抗している。

 このように両国の公表内容は大きく異なっており、双方が国民に対してこの首脳会談が成功であったと主張できる内容になっていることは留意される。

2. 貿易戦争の一時休止と米国の90日内の強硬要求

 それでは、90日内に解決に向けて合意すべき事項として米国側が求めているものは何か。

それは以下の5項目に大別される

   (1)技術移転の強要:

   米国企業が中国の大きな市場で事業機会を得ようとして進出するとき、中国側では

  米中合弁企業を設立することを条件とし、その事業活動を通じて米企業の技術を中国側に

  提供することを強制すること。

 (2)知的財産権の保護

   中国側が米国企業の製品やノウハウを無断でコピーするなど知財権の侵害行為。

 (3)非関税障壁

   さまざまな規制などの非関税障壁を設け、米企業の中国市場での活動を阻害すること。

 (4)サイバー攻撃とサイバーによる窃取

   中国の人民解放軍を含む多くの組織が米国の企業などにサイバー攻撃をしかけ、企業

  秘密やノウハウを窃取すること。

 (5)サービス、農業

   サービス業や農業に存在する米企業等に対するさまざまな障碍。

 

  これらの問題を解決するための具体的な合意が90日間すなわち2019年2月末日までに成立しなければ、1月から課す

  2000億ドル分の中国製品への追加関税を10%から25%に引き上げるとトランプ氏は言明している。

3.   華為(Huawei)技術副会長孟晩舟(Men Wanzhou)氏逮捕の波紋

 2018.12.8. ファーウェイ(華為技術)副会長兼最高財務責任者の孟晩舟氏をカナダ司法当局が逮捕。カナダ司法当局は、アメリカ司法当局の要請で逮捕したという。逮捕の理由はイラン制裁違反。ファーウェイが香港の設立したダミー企業「スカイコム」を通じ、イランに2009~2014にわたり米企業の通信機器を納入した疑い。

 孟晩舟氏は中国では中国産業界を代表する女性の経営者として英雄のように人気が高く慕われている。しかも彼女は中国ハイテク産業をリードする世界企業であるファーウェイ社の創業者の娘であり、中国政府首脳部の信任も厚い。彼女は従業員思いで知られ、持株の多くを従業員に分け与えたとされ、ファーウェイ社員の士気は非常に高いという。この逮捕にたいし、中国政府はカナダ当局に猛烈に抗議し、カナダ人関係者を別件で逮捕するという対抗策をするなどし、孟晩舟氏は11日夜に仮釈放、自宅で監視状態に置かれることになった。

 この1件は、米中両国が、第三国を巻き込んで、事実上の戦争状態ともいえるほどの緊張状態に入っていることを意味している。トランプ大統領が知財侵害の解決策を中国側に提案させるために高率追加関税の賦課を90日間猶予して交渉に入ろうとした矢先の事件で、交渉と妥協がかなり難しい状況になったことを推察させる。

 4.  米国の中国ハイテク企業締め付け戦略

  米国の中国ハイテク企業攻撃の背景には、実は、2018年夏に米議会で超党派の多数で可決された根拠法がある。それは、「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」(2018.8. 上下両院で超党派の賛成多数で可決)。

  同法によれば、2019.8.13以降、下記5社製品を組み込んだ他社製品を政府などが調達するのを禁止する。さらに20.8.13以降は、5社製品を社内で利用しているだけで米政府とのいかなる取引も不可となる。この法律に基づき、米政府は2020.8.から、ファーウェイなど中国ハイテク企業の製品を使用しているだけで米政府との取引禁止方針を打ち出す予定。市場から中国ハイテク企業排除の動きが進めばサプライチェーンにも重大な影響が出ると予想される。

 ちなみに、米国が特に安全保障上のリスクがあるとして警戒しているのは下記の5企業。

    ・ファーウェイ、

    ・ZTE(中興通訴)

    ・杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)監視カメラ大手

    ・浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)

    ・海能達通信(ハイテラ)

Ⅲ. トランプ発貿易戦争

 ここでこのような事態が発生するまでの経緯を「トランプ発貿易戦争」として特に中国に焦点を合わせて簡単に振り返っておこう。

1. トランプ氏の2016選挙戦中の公約と実行

 トランプ氏は2016年選挙戦中から、保護主義的な主張を繰り返し強調していた。例えば、中西部や南部ラストベルトの選挙民にたいし、彼らの雇用機会(job)は中国や日本に騙し取られている。俺はそれを取り返してやる(”Your jobs have been ripped off and shipped off to China and Japan. I will get them back to you guys”)

   彼は貿易に関して以下のような主張を繰り返したが、それは事実上の公約であり。選挙民はそれを信じて投票したと思われる。その要点は:

    ・NAFT見直し

    ・TPP離脱と二国間FTA主張

    ・中国を為替操作国と認定して45%関税

    ・米企業の海外移転を止めるための国境税

    ・対米黒字国に対しダンピングや非関税障壁など不公正貿易への対抗措置として高関税

     等々の保護主義主張。

 トランプ大統領が主張した経済政策では、大型減税、大規模インフラ投資、高関税による雇用機会の確保が主な3つの柱。このうち議会工作が必要な大型減税を実現するのに2017年の大半を費やした。関税戦略は2018年に入って本格的に着手した。特に2018年3月に言明した鉄鋼とアルミ輸入品に対する大幅追加関税がその端緒となった。


2.   トランプの時代錯誤の「重商主義」

 トランプ氏の経済観は独特な重商主義。重商主義とは16~18世紀の欧州の急速な経済発展期に、英国やオランダなど海洋国家が輸出を輸入以上に伸ばして国富を蓄積し、経済成長→発展を促進しようとする考え方。これはその後、帝国主義と植民地収奪の源流となった。トランプ氏はそれを現代の世界で追求しようとしているように見える。

 帝国主義時代の末期1930年代に、この考え方は列強の排他的関税戦略から第二次世界大戦の引き金となり破綻。戦後は、比較優位に基づく特化と開放的な貿易による世界経済の発展が、世界諸国の発展にもつながるという考え方が主流となり、開放的な国際貿易と国際協調による世界経済発展が志向され、大きな成果を挙げてきた。

 そうした国際協調による世界的な発展戦略を主導したのがアメリカだったが、トランプ氏はそうした歴史も実績も理論も知らず(あるいは知らぬふり?)、これまでのアメリカが主導して構築してきた国際協力の仕組みを破壊している。

3.   ホワイトハウスの内情

 トランプ政権は、これまでのアメリカ政治史上に類例を見ない特殊な政権。予測不能でかつ独裁的なトランプ氏が専横を振るう政権であり、その実態は互いの猜疑、密告、中傷と激しい勢力闘争で明け暮れている模様。その実態は、ベストセラーになったMichael Wolf “Fire and Fury”ならびにBob Woodward “Fear”などでも詳細に描かれている。

 

 貿易戦争の観点からは、この政権の中で、対中強硬派であるPeter Navaro 大統領通商政策補佐官とRobert Lighthauser USTR代表の役割が突出して大きいこと、また貿易交渉は閣僚レベルで合意しても、トランプ大統領にひっくり返されかねない不確実性が、とりわけ留意すべき特質。

4. 鉄鋼・アルミへの高率付加関税(2018.3.)

 2018.3.1. トランプ氏は鉄鋼とアルミの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして輸入制限を発動する方針発表。鉄鋼25%、アルミ10%。

 米通商拡大法232条。これは1962年に制定。産品の輸入が米国の安全保障を脅かす恐れがある場合に適用される。これまで、79年の対イラン原油輸入禁止措置、82年の対リビア原油輸入禁止措置のみ。日本や欧州など同盟国にも適用する米国の主張に正当性があるか疑問。

 3.8 トランプ大統領は、鉄鋼とアルミの輸入制限する文書に署名。関税上乗せ措置は23日から発動。当面、カナダ・メキシコは除外(NAFTA交渉に関わるので)するとした。通商交渉や軍事負担でアメリカに譲歩した国は適用を除外する考えも。

 3.23. トランプ政権は、鉄鋼、アルミへの高付加関税による輸入制限を発動。対象は、最大で600億ドル(6.4兆円)に及ぶ。それに先立つ3.22.には、トランプ大統領は知的財産権の侵害などを理由に中国製品に関税を課すと発表。大統領令にも署名し、500億ドル相当の中国製品に高関税をかける制裁措置を表明した。

  米通商法301条では、米国は外国による不公正な貿易慣行に対し、調査したうえで、一方的に制裁措置を発動できるとしている。これは1980年代から90年代初頭、主に日本市場の閉鎖性に制裁を加える手段として適用された。

 しかし、95年にWTO協定が成立し、WTO紛争処理に付託して紛争を解決することが義務付けられた。したがって近年、米国は通商法301に基づく一方的な制裁を控えてきた。しかし、今回中国にたいして発動されている追加関税は、WTO紛争処理を経ずに一方的に発動されており、WTO協定に違反する可能性が高い。

5. 中国を不公正貿易国とする制裁関税(2018.5)

1)  ナバロペーパー

 ホワイトハウスで、貿易政策担当の補佐官として対中国強硬論を展開しているナバロ(Peter Navaro)氏はこれまで以下のような中国非難を繰り返してきたことで知られている。

 

 曰く、世界貿易はペテン師にやり込められている。中国は最大のペテン師、米国に最大の  貿易赤字を蒙らせている国。1947から2000年まで米国の平均成長率は3.5%だったが、2002年以降は1.9%に低下している。その一因は中国のWTO加盟だ。中国がWTOに入って大手をふるって世界規模で輸出を不公正に拡大してきたからだ。そうした不正をトランプ政権は我慢しない。貿易の不正がつづくなら防御的な関税を課す。

 こうしたナバロ氏の主張は2016年9月に発表された文書「ナバロ ペーパー」に簡潔にまとめられている。

 その要点は以下:

    ・貿易赤字解消でGDP押し上げ

        ・中国のWTO加盟で米成長率が低迷

        ・為替操作があれば報復関税課す

        ・中国が世界貿易で最大のペテン師

        ・関税は貿易不正をやめさせる交渉手段

        ・不正が止まらないなら関税を発動

        ・貿易赤字が減れば給料も↑インフレを相殺できる

        ・韓国、ドイツ、日本には原油や天然ガスの輸出増を要求。

   ナバロ氏は中国をペテン師と罵倒しているが、私見では、ナバロ氏こそ正真正銘のペテン師に思える。Bob Woodward氏のベストセラーとなった近著『Fear』では、ナバロ氏が、トランプ大統領の直感を素晴らしいと評価し、彼の直感を理論的に正当化するのが自分の経済学者としての役割だ、と主張するくだりが詳細に紹介されている。経済学者は理論→実証→政策のサイクルを経て確認された学説を説くのが本来のあり方である。国際経済の分野ではそうした知的・実践的蓄積の上で、各国がその得意分野に特化(比較優位)して、不得意な分野は輸入等で補う解放的な自由貿易が世界の所得を拡大することが、理論的にも実証的にも確認されている。トランプ氏の荒唐無稽な主張はアヘン戦争時代の”重商主義”まがいの主張であり、そのような有害な理屈を正当化するのが自分の”学者?”としての使命とうそぶくナバロなる人物こそ正真正銘のペテン師と言わざるを得ない。彼の履歴はハーバード大学経済学博士ということになっているが、それは果たして本当なのだろうかと疑いたくもなる。

 

2)USTRの調査報告書(通商法301条に基づく対中報告書:2018.3)   

 2018年3月に公表されたUSTRの調査では、中国に進出した米企業が不当な技術移転を求められたり、米企業の買収に中国政府の資金が使われたなどの「知的財産権の侵害」があると結論している。

 技術移転の強制が行われてきたという米政権の懸念を同報告書は4 つの手口として紹介している。

  ⓵   外資規制で技術移転を強要:

       EVなどの中核技術を中国企業との合弁会社に移さないと事業できず。

 ⓶   技術移転契約で米企業を差別的扱い

       米企業が中国企業に技術供与契約を結ぶとき、中国企業間ではかけない厳しい

       規制をかける。

 ⓷     先端技術を持つ米企業を買収

        中国企業が特許侵害で争う米プリンター大手を買収。中国政府が資金支援。

 ⓸   米国企業にサイバー攻撃

        人民解放軍の攻撃を受け、鉄鋼や原発など米企業から情報漏洩。

3) 第一回米中通商協議(2018.5.3~4)

  2018.5.3~4:ムニューシン財務長官を団長とし、ライトハイザー通商代表、ロス商務長官らを含む交渉団が訪中して通商協議をした。これがトランプ氏が中国への制裁関税を発表してからの第一回の公式交渉だった。

  その通商交渉の内容をつぶさに検討した世界的に高名な評論家Martin Wolf氏(Financial   

 Times コラムニスト)は、米国が中国に突きつけた要求は馬鹿げていると激しく非難している(FT 2018.5.9)。


 彼が指摘する米国の要求の要点は:

 

   ・1000億ドルの赤字(imbalance)を2018.6.から12ヶ月以内に削減

    さらに1000億ドル(11兆円)を2019.6から12ヶ月で削減。

   ・中国は過剰生産につながるあらゆる補助金を全面撤廃。

   ・中国は米企業から不当に技術を獲得するすべての手段を撤廃 

   ・中国は米国の輸出規制法に同意する。

   ・中国はWTOに対する関税や知財に関するすべての訴えを取り下げる。

   ・中国は米国が採択するあらゆる政策に対する報復をしない。

   ・中国は米国のハイテク分野への投資に対する米国の制限や処罰に反対せず

   ・米企業の対中投資に対して中国は完全な自由を提供する。

   ・2020.7までに、中国はハイテク以外の分野での関税を米国と同等に引下げる。

   ・協定は四半期ごとにモニターされる。もし米国が中国は忠実に協定を実行していないと

     判断すれば、さらなる制裁や罰則を科す。中国はそれに反対してはならず、受容すべし。

  このような要求は、独立国に対するものではない。不平等条約の再来か?中国は即刻、拒否

  すべし。諸国は協力して米国の狂気の要求を阻止し、自由貿易を確保すべし、と主張している。

4)  第二回米中通商協議と”手打ち”とトランプのちゃぶ台返し

 2018.5.20.:第二回の交渉を踏まえ、中国側がアメリカ農産物や石油関連産品の購入増加などで2000億ドルの赤字削減に努力する前提で、アメリカは、1500億ドル分の輸入に対する関税賦課を、しばらくhalt(休戦ー一時保留)とするとムニューシン財務長官が発表。これに対してトランプ政権内部のタカ派からは、曖昧な口約束で信頼できない、などと批判も。

    2018.6.1. G7財務相、中央銀行総裁会議は、鉄鋼・アルミの輸入制限を強化した米国に非難集中。日本などはWTOルール違反と指弾。米国と6ヶ国は1:6に分裂。

 2018.6.18 トランプ氏は、6.18.、中国からの2000億ドル(約22兆円)相当の製品に対し、10%の追加関税措置検討すると発表。6.16発表の500億ドル相当の報復関税に対する報復。

5) 米政権内の強硬派主導

 2018.5月以降、重ねた交渉では、トランプ政権内の強硬派が勢いを増し、中国では定まらぬ米側の姿勢やハイテク摩擦への発展に態度を硬化させている。

 強硬派ライトハウザー氏はWHで関税の必要性を力説。メディアが「勝者は中国」などと書き立てると、弱腰批判を嫌うトランプ氏は対中交渉の進捗に不満表明。政権は強硬派に傾斜。中国の産業振興策「中国製造2050」に照準。巨額の補助金を使った米ハイテク企業の買収停止要求。人民解放軍を使ってサイバー攻撃をしているとまで主張。

6) 中国の”以戦止戦”覚悟

 中国は姿勢を二転三転させる米国に不信感↑。6月初旬の最後の公式協議で、中国は農産品やエネエルギーの輸入拡大策を提示。しかし追加関税の撤回が条件とくぎ。米側の前言撤回を恐れ。米中が探った6月中旬の協議は流れ、互いに関税リストを公表。

 米国が仕掛けた貿易戦争に、中国側はトランプ政権の要求にある程度譲歩し、同時に米国のestablishment層の中国叩きを交わそうと行った対応をしてきたが、しかし、その後中国の対米認識が大きく変わり、6月に入って、中央外事工作会議では韜光養晦論を軌道修正し、そして対米方針では、「以戦止戦」の方針を決めたと見られる(朱建栄「視点・論点」以戦復降 vs  以戦止戦」(2018.8.20)。


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