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トランプ発 貿易戦争(1) 

Ⅰ.   はじめに

 ー今、世界中が最も関心を持って注視しているのは、アメリカのトランプ大統領が中国はじめ
  世界諸国に一方的に仕掛けている高率の追加関税の問題ではないか。トランプ氏はこれまで
  世界で協議して合意してきたWTOの国際ルールも無視して”America First”を掲げ、無法な
  攻勢で世界に”貿易戦争”ともいうべき波乱を巻き起こしている。

 ーこの追加関税攻勢は、貿易量を萎縮させて世界経済を収縮させる危険があるが、それは当の
  アメリカにも消費や生産活動に必要な輸入品の減少と物価の高騰をもたらす弊害がある。
  中国は大国のメンツにかけて報復関税で応じているが、このチキンレースはいつまでつづく
  のか、これからどのように展開するのか、世界経済にどのような影響・衝撃をもたらすのか、
  収束あるいは終着点はあるのか、など切実な関心は高まるばかりである。そうした疑問に
  答える手がかりを得るために、これまでの貿易戦争の事実を詳細に辿って整理してみたい。

  ー2018年9月24日、トランプ政権は、中国に対して、制裁追加関税の第3弾を発動した。それは 
  約2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に10%の追加関税を課すものだが、中国も600億
  ドル相当の米国製品に5~10%を上乗せする報復関税と即日実施した。両国の貿易戦争は
  お互いの輸入品の5~7割に高関税を課す危険な領域に入った。今回、米国が発動したのは
  家具、家電など多くの消費財を含む5745品目。消費者への影響も大きい。

 ートランプ大統領はさらに、中国が報復をつづけるなら、この第3弾とは別に、中国からの
  輸入品2670億ドル(約30 兆円)相当に新たに関税をかける用意があると表明している。
  これまでの制裁関税にこれを加えると、総額5170億ドルの輸入品に追加関税をかけること
  になるが、それは2017年の中国の対米輸出総額5050億ドルを上回る。

 2.  どこまで行くのか
 ーこの貿易戦争はいったいどこまで行くのだろうか?アメリカと中国はこれまで3回にわたって
  高追加関税の応酬をしているが、アメリカは中国から年間5000億ドル強の輸入をしているの
  に対して中国はアメリカから1300億ドル程度の輸入である。

 ー今回、互いの第3弾までの応酬で、アメリカは中国からのほぼ半額に相当する輸入品に追加
  関税をかけることになるが、中国の報復関税はすでにアメリカからの輸入品の8割以上に
  及ぶことになる。言いかえれば、中国はこれ以上、関税で報復することは難しくなる。
  それでは中国はこのチキンレースに敗退するのか。事態はそう単純ではない。

 ー中国は、鄧小平氏の時代に開放改革戦略で目覚ましい成長を遂げたが、習近平主席は鄧小平
  氏の韜光養晦路線を脱却し、”中国夢”のスローガンのもとに、170年の屈辱の歴史を克服して
  あからさまに世界強国への路線に邁進しており、簡単に引き下がることはありえない。関税
  追加が難しければ、非関税障壁も不買運動もありうる。ちなみに、中国はアメリカ国債の
  世界最大の保有国なので、もしそれを売却にすれば、米国の金利の高騰、株価とドルの暴落
  など世界は大混乱になるからそれは禁じ手だが、脅しにはなるだろう。

 3.  世界経済へのインパクト
 ー米中の対決は、米中の経済だけでは収まらない。現代の世界は中国を大きな核とする”サプ
  ライ・チェーン”で包まれており、米中の関税報復合戦は、実は、このサプライ・チェーンに
  部品や製品を供給する世界諸国に影響する。

 ーまた、このところ、アメリカが金利引き上げを続けているため、リーマンショック後、
  アメリカをはじめ世界諸国の金融緩和、財政出動で世界に散布された資金がアメリカに
  還流しており、低所得国の通貨下落、債務国の債務膨張が進行している。貿易摩擦はそう
  した苦境を増幅しており、これらの国々の需要の収縮が世界経済の低迷に拍車をかける
  という負の悪循環が波及している。

 4.  着地点はあるのか?
 ー貿易戦争が引き起こすこうした混乱や悪循環はどこかで収束するのか、着地点はあるのか。
  それは誰もが知りたい切実な問題だが、それは米中の指導者の認識や覚悟、また自国経済
  のみならず、世界経済の動向、また、不可測の事象など、多くの要因に左右される。この
  エッセイではその問題を考える手がかりを整理して提示したい。

 5.  日本の対応は?
  ーまた、この貿易戦争に日本はどう対応すれば良いのか。トランプ氏が世界に押し付けた
   鉄鋼とアルミニウムへの高追加関税の段階では、日本は高品質の鉄鋼をアメリカに輸出
   しているので、関税で価格が上昇しても数量への影響は限定的だったが、9月末になって
   トランプ大統領は、自動車への高追加関税を日本に対しても課税する姿勢を明確にした
   ので、トランプ氏が本気なら日本は重大な局面に入ることになる。この問題も考えたい。


Ⅱ.  トランプ氏のこだわり

 1.  2016選挙戦中の公約
  ートランプ氏は2016年選挙戦中から、保護主義的な主張を繰り返し強調していた。
  ー中西部や南部ラストベルトの選挙民にたいし、彼らの雇用機会(job)は中国や
   日本に騙し取られている。俺はそれを取り返してやる
   ”Your jobs have been ripped off and shipped off to China and Japan. I will
            get them back to you guys”
       ー以下のような主張:それは事実上の公約。選挙民はそれを信じて投票?
    ・NAFT見直し
    ・TPP離脱と二国間FTA主張
    ・中国を為替操作国と認定して45%関税
    ・米企業の海外移転を止めるための国境税
    ・対米黒字国に対しダンピングや非関税障壁など不公正貿易への対抗措置として高関税
     等々の保護主義主張。

 2.  トランプ流重商主義
   ートランプ氏の経済観は独特な重商主義。
   ・重商主義は16~18世紀の欧州の急速な経済発展期に、英国やオランダなど海洋国家が
    輸出を輸入以上に伸ばして国富を蓄積し、経済成長→発展を促進しようとする考え方。
    これはその後、帝国主義と植民地収奪の源流となった。トランプ氏はそれを現代の世界
    で追求しようとしているように見える。
   ・帝国主義時代の末期1930年代に、この考え方は列強の排他的関税戦略から第二次世界
    大戦の引き金となり破綻。戦後は、比較優位に基づく特化と開放的な貿易による世界
    経済の発展が、世界諸国の発展にもつながるという考え方が主流となり、開放的な
    国際貿易と国際協調による世界経済発展が志向され、大きな成果を挙げてきた。
   ・そうした国際協調による世界的な発展戦略を主導したのがアメリカだった。
   ・トランプ氏はそうした歴史も実績も理論も知らず、これまでのアメリカが主導して構築
    してきた国際協力の仕組みを破壊している。

 3.  異形のトランプ政権
  ートランプ政権は、これまでのアメリカ政治史上に類例を見ない特殊な政権。予測不能で
   かつ独裁的なトランプ氏が専横を振るう政権であり、その実態は互いの猜疑、密告、中傷
   と激しい勢力闘争で明け暮れている模様。その実態は、ベストセラーになったMichael
         Wolf “Fire and Fury”, Bob Woodward “Fear”などでも詳細に描かれている。

  ー貿易戦争の観点からは、この政権の中で、対中強硬派であるPeter Navaro 大統領通商
   補佐官とRobert Lighthauser USTR代表の役割が突出して大きいこと、また貿易交渉は
   閣僚レベルで合意しても、トランプ大統領にひっくり返されかねない不確実性が、とり  
   わけ留意すべき特質。

 4.  2018年から関税攻勢本格化
  ートランプ氏は、2017年は選挙公約を実現するため多くの大統領令を発令し、世界にかなり
   無謀な結果と被害をもたらした。
  ーまた、彼が主張した経済政策では、大型減税、大規模インフラ投資、高関税による雇用
   機会の確保が主な3つの柱。このうち議会工作が必要な大型減税を実現するのに2017年
   の大半を費やした。関税戦略は2018年に入って本格的に着手した。特に2018年3月に
   言明した鉄鋼とアルミ輸入品に対する大幅追加関税がその端緒となった。

Ⅲ.   鉄鋼・アルミへの高追加関税

 1.  安保理由の制裁関税
  ー2018.3.1. トランプ氏は鉄鋼とアルミの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして
   輸入制限を発動する方針発表。鉄鋼25%、アルミ10%。

  ー米通商拡大法232条。これは1962年に制定。産品の輸入が米国の安全保障を脅かす
   恐れがある場合。これまで、79年の対イラン原油輸入禁止措置、82年の対リビア原油
   輸入禁止措置のみ。日本や欧州など同盟国にも適用する米国の主張に正当性があるか疑問。
  ー3.8 トランプ大統領は、鉄鋼とアルミの輸入制限する文書に署名。
  ・関税上乗せ措置は23日から発動。
    当面、カナダ・メキシコ除外(NAFTA交渉に関わるので)
  ・通商交渉や軍事負担でアメリカに譲歩した国は適用を除外する考えも。

 2.  同盟国へも課税
  ー中国の供給過剰に照準を合わせているが、一国だけ特定しても迂回輸出などで世界中に
   かかわるので、全ての国や地域に適用の考え。
  ・3.4.:与党共和党批判↑。特に国家経済会議コーン委員長は、政権内で関税反対の立場
   コーン氏辞任の観測も。(その後、辞任)      
  ・アメリカ産業界は負担増で競争力損なうと発動見送りを要求。
  ・中国、必要な対応とる(王毅外相)

 3.  諸国の批判・対応とトランプ政権の関税発動
  ー3.19  G20(財務相・中央銀行総裁会議)がブエノスアイレスで開幕。
     関税引き上げに批判集中。米国は強気で対決。
   ・主な輸入相手のEUやカナダなど7ヶ国・地域は関税適用を一時的に猶予。
    中国、日本は適用。
   ・日本政府は日本を適用対象から外すよう求めてきたが通らず。首脳の個人関係限界。

  -3.23. トランプ政権は、鉄鋼、アルミへの高付加関税による輸入制限を発動。
     対象は、最大で600億ドル(6.4兆円)
   ー3.22. トランプ大統領は知的財産権の侵害などを理由に中国製品に関税を課す
     大統領令にも署名。500億ドル相当の中国製品に高関税をかける制裁措置表明。
   ー米通商法301条に基づき、米国は外国による不公正な貿易慣行に対し、調査した
     うえで、一方的に制裁措置を発動できるとしている。
   ・これは1980年代から90年代初頭、主に日本市場の閉鎖性に制裁を加える手段として
    適用された。95年にWTO協定が成立し、WTO紛争処理に付託して紛争を解決する
    ことが義務付けられた。近年、米国は通商法301に基づく一方的な制裁を控えて
    きた。しかし、今回中国にたいして発動されている追加関税は、WTO紛争処理を
    経ずに一方的に発動されており、WTO協定に違反する可能性が高い。

  ー韓国文政権とFTA再交渉妥結を3.27発表。交渉開始から3ヶ月のスピード決着。
     内容:
     ・アメリカピックアップトラックの関税撤廃期限の延長
     ・米国安全基準適合車の韓国輸入台数枠を2倍に
     ・競争的な通貨切り下げを禁ずる為替条項導入。
     ・韓国の鉄鋼輸出の数量を制限するクォータ制導入。
       (事実上の数量規制はWTOのルール骨抜きの危険。価格競争力をつけても制限)


Ⅳ.   中国知財侵害への制裁関税

 1.  ナバロペーパー
  ーナバロ氏の主張
  ・世界貿易はペテン師にやり込められている。中国は最大のペテン師、米国にとって最大の  
   貿易赤字国。
  ・1947から2000年まで米国の平均成長率は3.5%。2002以降は1.9%、
   その一因は中国のWTO加盟だ。
  ・トランプ政権は我慢しない。貿易の不正がつづくなら防御的な関税を課す。

  ーナバロ・ペーパー(2016.9)
  ・貿易赤字解消でGDP押し上げ
  ・中国のWTO加盟で米成長率が低迷
  ・為替操作があれば報復関税課す
  ・中国が世界貿易で最大のペテン師
  ・関税は貿易不正をやめさせる交渉手段
  ・不正が止まらないなら関税を発動
  ・貿易赤字が減れば給料も↑インフレを相殺できる
  ・韓国、ドイツ、日本には原油や天然ガスの輸出増を要求。

 2.  USTRの調査報告書
   ーUSTRの調査では:1.中国進出の米企業が不当な技術移転を求められたり、
     2. 米企業の買収に中国政府の資金が使われたなどの「知的財産権の侵害」結論。
   ー技術移転の強制懸念:米政権が主張する中国の4 つの手口
     1.  外資規制で技術移転を強要:
       EVなどの中核技術を中国企業との合弁会社に移さないと事業できず。
     2.  技術移転契約で米企業を差別的扱い
       米企業が中国企業に技術供与契約を結ぶとき、中国企業間ではかけない厳しい
       規制をかける。
     3.   先端技術を持つ米企業を買収
        中国企業が特許侵害で争う米プリンター大手を買収。中国政府が資金支援。
     4.   米国企業にサイバー攻撃
        人民解放軍の攻撃を受け、鉄鋼や原発など米企業から情報漏洩。

    ー4.3.  USTR:知財侵害に対して発動する制裁関税の原案公表。1300品目
      制裁項目:生産機械、航空宇宙輸送機器、重工業、医療機器、部品、電化製品
      対象外:スマホ、PC,タブレット端末、AIスピーカー:消費者への影響考慮。
    ・4.5:中国製造2025を狙い撃ち
      産業用ロボット    105億ドル
      航空機、通信衛星    10
      船舶・タンカー    1600
                  鉄道車両、部品     2.5
       乗用車、商用車    20
       タービン・発電機   70
       農業機械       11
       化学品        92
       超音波診断装置など  47

 3.  ZTE事件
   ー4.16. ZTEに制裁。米企業との取引禁止。
   -4.27:米政府は、中国通信機器大手の中興通訳(ZTE)の制裁につづき、同最大手の
     華為(ファーウェイ)にも圧力↑。FWはZTEの5.5倍売り上げ。
     ZTEはイランとの違法輸出で米企業と7年間取引禁止。
     FWには、イラン違法輸出の疑い、スパイ活動懸念で米通信会社の調達禁止。
   ー5.14  トランプは習近平主席の要請を受けて、ZTEの米企業との取引禁止の見直し指令。
   ー5.25、トランプ氏は、ZTEへの制裁を見直すことで習近平主席と同意したと
     Fox TVが報道。ツィッターへの投稿では、13億ドル(1400億円)の罰金
     支払い条件に、米国企業との取引禁止を解く方針示した。しかし議会など
     では安全保障への懸念から反発強い。 
   ー6.6.  米政権は、ZTEへの制裁解除の見通し。ZTEはこの2ヶ月経営危機。中国スマート
    フォンメーカー問題が米側の交渉カードになった。米政府は中国側に、制裁解除の
    条件として最大14億ドル(1500億円)の罰金、現経営陣の退陣、米国による事業監視。
    (罰金:10億ドル=罰金、4億ドル=新たな違反時に没収する預け金)、また2017に
    9億ドルの罰金。合わせて23億ドル。 
   ー6.9  米国はZTE制裁解除の条件で、予想以上の成果で自信?
     ロス商務長官「過去最大の懲罰金」
    中国は今回の教訓を踏まえ、基幹技術の自前開発を急ぐ構え。

 4.  第一回米中通商協議(2018.5.3~4)
   -5.3~4:ムニューシン財務長官、ライトハイザー通商代表、ロス商務長官ら。
     訪中して通商協議。公式交渉
      ー5:3~4の通商交渉で米国が中国に突きつけた要求は馬鹿げている(M.Wolf
        FT 5.9)。
       ・1000億ドルの赤字(imbalance)を2018.6.から12ヶ月以内に削減
        さらに1000億ドル(11兆円)を2019.6から12ヶ月で削減。
       ・中国は過剰生産につながるあらゆる補助金を全面撤廃。
       ・中国は米企業から不当に技術を獲得するすべての手段を撤廃 
       ・中国は米国の輸出規制法に同意する。
       ・中国はWTOに対する関税や知財に関するすべての訴えを取り下げる。
       ・中国は米国が採択するあらゆる政策に対する報復をしない。
       ・中国は米国のハイテク分野への投資に対する米国の制限や処罰に反対せず
       ・米企業の対中投資に対して中国は完全な自由を提供する。
       ・2020.7までに、中国はハイテク以外の分野での関税を米国と同等に引下げる。
       ・協定は四半期ごとにモニターされる。もし米国が中国は忠実に協定を実行して
        いないと判断すれば、さらなる制裁や罰則を科す。中国はそれに反対しては
        ならず、受容すべし。
       ーこのような要求は、独立国に対するものではない。不平等条約の再来か?
        中国は即刻、拒否すべし。諸国は協力して米国の狂気の要求を阻止し、自由
        貿易を確保すべし

 5.  第二回米中通商協議と”手打ち”
    -5.17~18:第二回の貿易協議(於ワシントン)
       ・中国から劉鶴副首相招かれて参加
       ・米貿易赤字削減では、中国側が天然ガスや農産物の輸入拡大案を示し、
        一定の進展。
       ・中国が求めた国有通信機器大手ZTEへの米制裁緩和は結論出ず、溝深い。
        ZTEの利益は米国の制裁で激減。
       ・トランプ氏はZTEの制裁緩和に関して習近平主席から要請があったと暴露。
        共和党はトランプ氏のそうした取引による緩和を批判。トランプの奇怪な
        Uターン(FT5.15)
       ・5.21. 第二回の貿易協議。貿易赤字削減では歩み寄り。ハイテクは対立続く。

    ー5.20.:第二回の交渉を踏まえ、中国側がアメリカ農産物や石油関連産品の購入↑
        などで2000億ドルの赤字削減に努力する前提で、アメリカは、1500億ドル
        分の輸入に対する関税付加を、しばらくhalt(休戦)とするとムニューシン
        財務長官が発表。これに対してトランプ政権内部のタカ派からは、曖昧な
        口約束で信頼できない、などと批判も。

 6.  対米国際批判とトランプの対中チャブ台返し
      ー6.1. G7財務相、中央銀行総裁会議は、鉄鋼・アルミの輸入制限を↑した米国に
     非難集中。日本などはWTOルール違反と指弾。米国と6ヶ国は1:6に分裂。
  ー6.2 G7 財務相、中銀総裁会議は6.1~6.2で閉幕。通商政策をめぐる深刻な対立。
    対米批判は、鉄鋼、アルミの輸入制限につづき、日欧の基幹産業の自動車に
    および始めたから。米国は同盟国にも強硬姿勢。G7南欧発市場リスクなど素通り。
    6/8~9の首脳会議も波乱必至。
    →実際、波乱。トランプ主張。6ヶ国批判、
   ・異例の議長声明。カナダモルノー財務相「全員一致の懸念や失望」とする議長声明。6.6.
   ー6.6. EUは、米国の鉄鋼・アルミへの追加関税に対し、報復として280億ユーロ分の米国
   からの輸入品に追加関税かけることを確認。

   ー6.15. トランプ氏は、15日、知財侵害を理由に500億ドル(約5.5兆円)相当の
    中国製品への追加関税は、一部を除き、7.6に発動すると発表。
   -6.15. 中国国務院、米国産の農産物、自動車、エネルギーなど659品目(500億ドル相当
    に25%追加関税発表。  
   ー6.18 トランプ氏は、6.18.、中国からの2000億ドル(約22兆円)相当の製品に対し、
    10%の追加関税措置検討すると発表。6.16発表の500億ドル相当の報復関税に
    対する報復。

 7.  米政権内の強硬派主導
  ー5月以降、重ねた交渉では、トランプ政権内の強硬派が勢いを増し、中国では定まらぬ
   米側の姿勢やハイテク摩擦への発展に態度を硬化させている。

  ートランプ氏と習近平氏に、2017.4.そして11月の会談で、巨額商談が成立したはず。
   しかしその後も増え続ける貿易赤字に不満を深めたトランプ氏は、2018.3. 、関税発動
   を表明。5月からムニューシン財務長官や劉鶴副首相らによる高官協議で最後の譲歩迫る。
   交渉は、ムニューシン氏(穏健派)とライトハウザー氏の対立。

  ー当初強い発言権はムニューシンら穏健派。5月中旬2回目の協議後、米国の対中輸出増を
   盛り込んだ共同声明をまとめ『貿易戦争は一時保留」と宣言。ただし口約束。

  ー強硬派ライトハウザー氏はWHで関税の必要性を力説。メディアが「勝者は中国」など
   と書き立てると、弱腰批判を嫌うトランプ氏は対中交渉の進捗に不満表明。政権は強硬派
   に傾斜。中国の産業振興策「中国製造2050」に照準。巨額の補助金を使った米ハイテク
   企業の買収停止要求。人民解放軍を使ってサイバー攻撃をしているとまで主張。

 8.  中国の”以戦止戦”覚悟
  ー中国は姿勢を二転三転させる米国に不信感↑。6月初旬の最後の公式協議で、中国は
   農産品やエネエルギーの輸入拡大策を提示。しかし追加関税の撤回が条件とくぎ。米側の
   前言撤回を恐れ。米中が探った6月中旬の協議は流れ、互いに関税リストを公表。

 ー米国が仕掛けた貿易戦争に、中国側はトランプ政権の要求にある程度譲歩し、同時に
  米国のestablishment層の中国叩きを交わそうと行った対応をしてきたが、しかし、その後
  中国の対米認識が大きく変わり、6月に入って、中央外事工作会議では韜光養晦論を軌道修正
  し、そして対米方針では、「以戦止戦」の方針を決めたと見られる(朱建栄「視点・論点7
  以戦復降 vs  以戦止戦」(2018.8.20)

 ー中国側の一連の証言から、米中間の貿易交渉で3回も一旦合意されたが、その都度、米側に
  食言され、更に圧力を加えられたことで強い警戒感を持ち、対米認識と作戦の方針を変える
  に至った。

 9.  自動車関税の脅しと各国の対応
   -5,23. トランプ政権は、23日、安全保障を理由に、自動車や部品に追加関税を課す
    輸入制限の検討に入ると発表。乗用車関税25%↑を検討?対米輸出の多い日本に打撃。
    市場規模が大きい自動車にまでの一方的な輸入制限はWTO違反の恐れ大。
   ー5.30  トランプ政権が、ドイツ車に追加関税をかけるかどうか安保への阻害効果が
    あるか調査に入ることを支持したことに対し、ドイツでは閣僚から強い反発。

   ー6.23.  EUは6.22. 米国の鉄鋼・アルミ関税への対抗措置として、鉄鋼製品やオート
    バイ、ウィスキーなど28億EURO(3600億円相当)規模の輸入品に25%の報復関税を
    発動。オートバイ(ハーレイダビッドソンなど)やウィスキーは共和党議員の選挙区狙い

   ー6.24.  米政権の自動車関税引き上げに日本政府とメーカーは苦慮。ロス長官は事前調査
    を8月までに完了の予定。
   ・米国の2017自動車販売台数は1730万台。うちに本社は677(4割)。
    うち345万台(5割)は米国現地生産。177万台(3割)は日本からの輸出。
    残り2割155万台は、カナダなど日本以外から対米輸出。
    現地生産に振り向ける余地も限られており、WTO提訴しても時間がかかる。
   ・関税25%引き上げルト、影響額は2.3兆円(大手6社の営業利益総額4.5兆円の5割強)

        ー7.2  トランプ氏の自動車関税は、全面的な貿易戦争につながる恐れあり、とEUが警告。


Ⅴ.   対中追加関税の発動と報復

 1.  第一次対中追加関税発動2018.7.6
  ー7.6 トランプ政権は、6日、中国の知財侵害に対する制裁関税を発動した。産業用ロボット
    など340億ドル(約3.8兆円)分に25%の関税を課した。中国も同規模の報復に出る構え
    トランプ大統領は中国の出方次第では、中国からの輸入品全てに関税をかける可能性
    も示唆。
      米中が6日発動する関税の主な対象品目
    米国:818品目(340億ドル):
     自動車、産業用ロボット、半導体、医療機器、
    中国:545品目(340億ドル)
     自動車、大豆、牛肉など農産物、水産、ウィスキー

  ー中国政府は、これに対し、8/3夜、米国から輸入する600億ドル(6.7兆円)分の製品に、
    最大で25%の関税をかける報復措置を発表。品目によって追加関税率は異なるが、
    最大の25%適用する品目にはLNGや砂糖など。

 2.  トランプー欧州の一時休戦
   ー2018.7. トランプーユンケル欧州委員長会談(ワシントン)で新たな貿易交渉合意
    ○新たな貿易交渉開始
    ・自動車のぞく工業製品の関税・非関税障壁などゼロめざす。
    ・農産物、政府調達は交渉対象に含まず。
    ・高官協議で具体策詰め、120日以内で報告

    ○貿易戦争開戦を回避
    ・米国は自動車への追加関税を貿易交渉中は棚上げ。
    ・米の鉄鋼・アルミ追加関税をEUによる報復関税の解決めざす。
    ○EUは米国産大豆・LNGの輸入を増やす。
    ○不公正は貿易慣行是正、WTO改革で連携強化
   ーこれはそれまで高まっていたトランプ政権とEUとの貿易戦争への懸念を、新たな合意を
    めざす交渉過程で一時、鎮静させる意味がある。

   ーその後、フォローアップとして、9.11.  米欧高官会議 9.10.ブリュッセル
     米国からライトハイザー通商代表、EUから通商政策担当マルストローム欧州委員。
     関税ゼロなどの協議、米欧間の主張早くも食い違い。
            ・多くの技術的課題を克服できるか、11月の決着をめざす。      

 3.  第二次対中追加関税発動2018.8.23.
   -8.23.  トランプ政権は、23日、知財侵害を理由に、中国への制裁関税の第二弾を発動。
    半導体や化学品など、279品目。160億ドル相当、に25%の関税上乗せ。
    中国も直ちに同規模の報復。

   ・第二弾関税
      米国(279品目)半導体、プラスチック製品、ゴム製品、鉄道車両・部品
      中国(333品目) 古紙、自動車、銅クズ、アルミくず。

 4.  第三次対中追加関税発動2018.9.24.
   ー9.24、トランプ政権は、約2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に10%の追加関税
     を課す対中制裁関税第三弾を発動。
   ・中国も600億ドル相当の米国製品に5~10%を上乗せする報復関税と即日実施。
   ・両国の貿易戦争はお互いの輸入品の5~7割に高関税を課す危険水域に。

   ・今回、米国が発動したのは家具、家電など5745品目。
   ・第三弾で制裁対象は中国からの年間輸入額(約5000億ドル)の半分に拡大し、
     消費者への影響も大きい。

   ートランプ政権が制裁関税を乱発するまで、米国の平均関税率(関税収入/輸入金額)
     は1.5%程度で最低水準。対中関税第三弾で3.5%、2019.1.に追加関税が10%から
     25%に上がると平均関税率は5%近辺に。
 5.  第四次対中追加関税の脅し
  -9.9  トランプ氏は9.7. 中国からの輸入品2670億ドル(約30兆円)相当に新たに関税
    をかける用意があると表明。第3弾の2000億ドル相当とは別。
    これまでの第一弾と第二弾で、500億ドル相当に25%。第3弾2000億と第4弾2670
    を足すと計5170。中国からの輸入品(2017年5055)全てに追加関税が課される。
  ー9.24.:トランプ氏は中国が報復すれば全ての輸入品に関税をかけると脅し。

 6.  貿易戦争と世界経済への衝撃
   ー1930年前後の大恐慌を悪化させたスムート・ホーリー法の再来を不安視も。
     同法では、2万品目に追加関税。平均関税率が14%→20%に急上昇。
     トランプ氏が示唆するように、中国からの全輸入品に追加課税すれば、
     平均関税率は6%に達し、大恐慌時と並ぶ。自動車の追加関税まで実施すれば、
     平均関税率は10%を超える前例のない貿易制限となる。

    ー最悪シナリオは、世界景気の大幅減速。貿易戦争深刻化すれば、米中経済とも
     1%近い成長減速見込まれる。駆け込みで堅調な中国の輸出も、冬以降は腰折れ
     しかねない。

    ーIMFは、貿易戦争で、米国と中国の実質経済成長率が、2019年にそれぞれ最大で
     0.9%程度下押しと分析(9.24)。

 7.  日本にも貿易で圧力?日本の対応
   -9.8  トランプ政権は日本にも強硬姿勢↑。安倍首相が、貿易で米国を出し抜いて不当な
     利益を得てきたのに笑顔を見せられる関係はもう終わりだ!
   -9.9. これまでにない強い表現で日本に市場開放迫る姿勢。WSJに電話「日本が米国に
     対価をどれだけ払うべきか伝えれば、安倍首相との良好な関係は終わるだろう」
     これまでは中国問題があったから日本との交渉はおいておいたが、中国との貿易戦争
     が長期戦になることを見据え、日本と本格交渉を志向?

   ー9月末にNYで国連総会が開催され、諸国の首脳が集結した。NYで、トランプ氏は
    安倍首相と二度会談した。一度はトランプタワーの私的な食事。二度目は国連の場  
    で正式な首脳会談。首脳会談の結果、両国は、FTAではなく、物的な貿易に限定した
    交渉を開始することで合意した。それは脳産品と自動車と考えられる。

   ートランプ氏に最大の目標は、11月の中間選挙に勝つことであり、そのために選挙民に
    アピールできる成果を日本との交渉で引き出したいということだ。トランプ氏の面目
    も保ちながら、日本が国益に沿った解決をするにはどうすれば良いか。中川淳司氏は
    の提案が参考になる(貿易戦争の行方 日経18.9.7)

   ーそれは、1. 日本の農産物市場の開放。TPP11が発効すれば、TPPから離脱した米国
    農産物は不利になる。トランプが選挙で支持されるには日本の農産物市場開放必要。
    TPPの水準を上回らない市場開放に応ぜよ。それは米国のTPP復帰の地ならしにもなる。
    2.  知財、投資、国有企業規制、電子商取引 4分野で、実質的にTPP復活と同等の
    ルールを提案せよ。これらは米国の中国対策に理解を示すことになる。3  自動車、
    部品分野はじめ日本企業の対米投資拡大による米国の雇用創出に資する。

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