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アベノミクスは変質したのか?

 安倍首相が日本の指導者として良く努力していることを私は大いに評価している。安倍政権が掲げるアベノミクスは日本経済と国民の生活にとって重要な政策であり、世界でも注目が集まっている。

 しかし、安倍政権に期待するだけにアベノミクスのこれまでの結果と最近の方向性を見ると心配がつのる。

 アベノミクスの最大の目的は、20年間近く続いたデフレの脱却だった。そのために日銀が大量のベースマネーを供給してインフレを引き起こし、人々や企業にインフレマインドを持たせる異次元的金融緩和政策を断行した。この第一の矢は、為替レートを下げて企業の利益を増やし株価を上昇させることでは成功したが、原油価格の下落もあって、黒田日銀の懸命の努力にもかかわらず、2%のインフレは実現しそうもない。異次元の金融政策はその最大の目的を達せそうもない。

 膨大なベースマネー供給の今ひとつの目的は、為替レートを下げて輸出を伸ばし、経済成長を促進することにあったが、為替レートは下がっても輸出はほとんど増えず、成長に貢献していない。中国はじめ世界経済の低迷という不運もあったが、実は、これまでの円高の時代に、輸出を担う日本の大企業が海外に軸足を大きく移したため、円安でも輸出は増えないという構造変化があったことを政府は見逃したのではないか。

 第二の矢の財政は、機動的な財政支出で経済を支えたが、その結果、2020年に基礎収支の均衡を達成するという国際公約は守れない事がほぼ明らかになった。

 期待がかかるのが、第三の矢の成長戦略だ。成長戦略は2013年、2014年、2015年と3回発表された。2013年の戦略は3つのアクションプランを掲げたが、その内容はいささか希薄だった。2014年の戦略は、資本市場の改革、農業改革、労働改革など日本経済の体質改革に意欲的に取り組んで国際的にも評価されたが、こうした構造改革が成長に寄与するには10年も20年もかかる。不可解なのは2015年6月に閣議決定された成長戦略だ。これは率直に言って内容が空疎でむしろ退化している。

 金融政策に荷重がかかったアベノミクスは、社会保障や地域振興など長期政策は手薄だった。しかし人口減少や高齢化など長期問題の深刻さは国民の不安を高めているので、政権は「地方創生」や「一億総活躍」などのスローガンを掲げて対応に躍起になっているが、そうした“政策”で地方が創生できるのか、国民が活躍できるのか、その道筋は見えない。むしろ見えてくるのは、地方への補助金配分、国民各層への支援増大、とりわけ低所得高齢者への総額3600億円にのぼる給付、公明党の要求を丸呑みした消費税軽減税率制度など、経済よりも7月の参議院もしくは衆参同日選目当ての意図を感ぜざるを得ない。

 安倍政権を支持したい筆者としては、政権が私達をどこに導こうとしているのか急速に見えにくくなりつつある思いを禁じ得ない。ハフポストの場を借りて、これからこの大きな問題の各論をひとつひとつ考えていきたいと思う。

(The Huffington Postへの投稿より
http://www.huffingtonpost.jp/haruo-shimada/is-abenomics-deteriorated_b_9156136.html

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