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2015年1月

アベノミクス 2年間の経験とこれからの日本経済

昨年末の衆議院総選挙の結果、自民党が大勝し、安倍政権3.0がスタートしました。この政権は順調に行けば4年間選挙をしなくて良いので、4年間の長期政権となる可能性があります。野党の対抗勢力がない中、国民はこれから4年間、安倍政権に命運を付託せざるを得ません。

この総選挙はアベノミクスを信任する選挙とされましたが、他に選択肢のない中での選挙で、投票率も低く、アベノミクスが国民に信任されたかどうかは分からないというのが世界の論調です。

アベノミクスの鍵を握る第二次成長戦略は、複数のレポートからなる320ページもの複雑なもので、国民はこの成長戦略の中身そのものを理解していな恐れがあります。本エッセイでは、国民としてアベノミクスとりわけ成長戦略の中身を良く理解し、私たちの将来の問題を解決出来るものなのかどうか、そうでなければ私たちは何をする必要があるのか、といった課題を詳しく考えて行きたいと思います。

このエッセイは、私が年末から年始にかけて各地で行なった講演などの基礎になっていますので、御興味のある方はどうぞ御高覧下さい。


                                                                                                                                                                                                                                                         「アベノミクス 2年間の経験とこれからの日本経済」

l. はじめに


ll. 2014衆議院選挙と安倍政権の課題

 1. 2014衆議院選挙とその意味するもの
  ー2014年12月14日、投開票の結果
   ー絶対安定多数は266。投票結果は、与党で326、これを60議席上回った。
   自民の地滑り的勝利。官邸の求心力強力。
  
  ーしかし投票率は52.66%(過去最低)、2012選挙の59.32%より6.66ポイント低い。
  ーFinancial Times など海外論調:
   自民党は大勝したが、得票率は低く、野党が準備不足で混乱しており、他に選択の余地が
   無い消極的選択。安倍首相が選挙の争点を「アベノミクスへの信認を問う」としたが、
   安部政権の政策が国民の信認を得たかは不明。


  2. 安倍政権3.0の課題
 ー安倍長期政権の可能性:
    この大勝の結果、安部政権は、現段階ではこれから4年間、選挙せずにつづけられる
    可能性。戦後最長の長期政権となる可能性。国民は命運を託すことになる。

  ー経済を本当に浮揚させられるのか? これが最大の課題
   経済成長を実現して、実質賃金の向上、財政問題、社会保障問題などの解決の糸口を
   つけられるのか?


lll. アベノミクス2年の評価

1. 第一の矢:異次元金融緩和の成果とリスク

   ーデフレ脱却が安倍政権の最大の課題(strategic intent)
  菅義偉官房長官の島田塾講演
   ーデフレマインドをインフレマインドに変える必要。

   ー黒田総裁。異次元金融緩和:ベースマネー2年間で2倍、2年でインフレ2%達成
   ー投機筋の反応:円安と利益予想↑⇒株価急騰:株価 8000円から17000円
    企業利益↑、高額消費↑経済活気。
    アベノミクス第一の矢はそれなりの成果。
          
   ー人々の期待感はデフレマインドからインフレマインドに変わったか? まだ。
    投資やや↑ 消費まだ伸びず。
  
   ー日銀の国債大量購入は政府の財政赤字の日銀による肩代わり→財政規律の崩壊も。
    →国債暴落のリスク→金融機関売り急ぎで加速→金利高騰→財政雪だるま→財政破綻

  2. 第二の矢:積極財政の効果とリスク

   ー構造転換の過程で、経済を支え安定化。
   ー2013年初 20兆円緊急経済対策、大型年次予算、2013年秋、5兆円、消費税対策
    2015予算は96兆円(これまでで最大)
   ー経済下支えの効果(2013、2014)、消費税導入のショックを吸収効果
   ー財政再建計画は遠のく?
     2010年、財政再建計画:
    「PB6.7%(32兆、SNA)を2015に半減3.3%(16兆)、2020に均衡または黒字

   ー2014、2015年は税収増+消費税率↑でギリギリ計画軌道の予定
     安倍首相の2015年10月消費税10%へ引き上げ延期決定で、軌道はずれるおそれ。
     しかし安倍首相は財務省当局に、半減目標達成を厳命。
     年末策定の予算ベースでは基礎収支ー16兆円でギリギリ軌道上確保?。
     (税収54.5兆円を見込んで)
      
   ー消費税2015年に10%にしても、2020年ではまだ(ー1,8%)ー11兆円
     (内閣府試算2014年7月:経済再生ケース、2013〜22年実質2.0%、名目3.3%) 

      参考(再生ケース) 2010年 −6.7% ー32兆円
                2015年 ー3.2% ー16兆円
                2020年 ー1.8% ー11兆円
              (参考ケース: −2.9% ー16兆円 )     
             参考ケース: 2013〜2022年 実質1.3% 名目2.1%)

    ー2020目標年で達成できない見込み。市場、国際社会はどう見るか?
      ・2015年夏には経済財政諮問会議で可能性と課題検討
        成長加速、歳出削減(社会保障、地方財政)、歳入増(消費税2017年ほか)
      ・国際社会は、具体的な”信認に足る計画”取り組みを評価。

  3. 第三の矢:成長戦略への期待
   ー成長さえあれば
    ・生活向上:雇用↑⇒消費↑⇒投資↑⇒成長↑の好循環
    ・財政再建:成長↑⇒税収↑
    ・社会保障:所得↑⇒拠出↑と税収↑⇒社会保障充実

   ー成長戦略への国民の期待↑

                                                   lV. 「日本再興戦略」(2013年6月)

  1. 「日本再興戦略」の概要   
・第一次「再興戦略」2013.6.14.閣議決定
     ー3つのaction plan
     (1) 日本産業再興プラン
        ねらい:産業、人材(労働市場)新陳代謝すすめる
         「産業競争力法案」
         雇用政策:雇用維持から移動支援へ。
     (2) 戦略市場創造プラン
        健康、エネルギー、次世代インフラ、世界から稼げる地域育成
        
     (3) 国際展開戦略プラン
ねらい:FTA比率を現在の19%から2018年までに70%に。
          ー韓国は2014.11月、中韓FTA(米、EUFTA)で達成
         自由貿易の促進、TPP 、 RCEP (東アジア地域包括的経済連携)
          FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)など。

 2. 市場の反応と評価
    足下は2013年:2.3%、(四半期:l4.9、ll3.5、lll1.3、lV0.3)

     ー成長率急速鈍化: 政府の成長戦略は構造改革であって、即効性は期待できない。
      にもかかわらず、成長戦略発表後、成長率の急速鈍化に政権は危機感
                                                  
                                                   V. 「新成長戦略」への取組み

  1. 新成長戦略の方針
    ー安倍首相は、2014年1月20日の「産業競争力会議」席上で
    「成長戦略進化のための今後の検討方針」発表。第二次成長戦略策定方針言明。

     ー岩盤規制分野(農業、医療、雇用)にも踏み込む覚悟明示

    ー安部政権の正攻法の取り組み評価したい。
     その内容を紹介したい。

  「新成長戦略」
  (1)第二次成長戦略(『日本再興戦略 改訂2014』ほか)は2014年6月24日閣議決定
     ・産業競争力会議報告『日本再興戦略 改訂2014』は本文124p、概要19p
     ・「規制改革会議」『規制改革に関する第2次答申〜加速する規制改革〜』106p
     ・「経済財政諮問会議」答申『経済財政運営と改革の基本方針2014について』80p

     ーこれらは膨大かつ詳細な内容で、Financial Times とThe Economistは、「新成長
     戦略」発表直後の論評で、これは the third arrow ではなく、one thousand
needles と評した。

  2. 企業統治と資本市場の改革
   企業統治の透明性向上、株主の監視と発言力強化、高収益積極投資促進めざす改革。

  (1)会社法改正(2014年6月20日成立):企業は最低1人の独立社外取役を選任すべし。
  (2)ガバナンスコード(企業統治のための企業の行動規範)の策定(2015年株主総会まで
  (3) Stewardship codeの導入。機関投資家向けに定められた行動規範。株主の発言強化
  (4)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)130兆の運用の積極化:安定+高収益志向へ
  (5)JPX日経400インデックス:ROE向上への意識改革促進。

  3. 競争力強化法(2013年12月制定)
  ー新陳代謝促進、産業・企業と雇用

  4. TPP参加と交渉プロセス
 (1)TPPは10年ほど前に、環太平洋地域の4つ小国(NZ、チリ、ブルネイ、シンガポール)
  が高度で理想的な自由貿易圏構想として打ち出し、アメリカが2010年に参加。日本は
  2013年7月参加。現在の参加国は12。モノの貿易だけでなく、サービスや投資ルールなど
  21分野で高度な自由化を志向。
  
 (2)日本はこの高度な自由貿易圏に参加することで、貿易や投資の自由化のメリットを享受
  できることから、安倍政権の成長戦略の重要な柱と位置づけ。

 (3)交渉は総合的に進められ、焦点が絞られてきているが、その過程には曲折があった。
  2013年10月、首脳レベルで高度な合意形成をねらったシンガポールでの首脳会議に
  オバマ大統領が国内事情でドタキャン、各国の失望を買った。オバマ大統領の2014年4月
  のアジア歴訪の一環として4月下旬に日本を訪問する際に、高度な合意が得られるかとの
  期待感があったが、2日半にわたる閣僚レベルの高密度の交渉でも結着がつかず。アメリカ
  は日本が農産品5項目、とりわけ豚肉の関税撤廃に応じない事が障碍と喧伝しているが、
  アメリカ側にも自動車安全基準問題など障碍は多い。日米両大国がなんらかの合意に
  到達しないと他の国々が前進するモメンタムが働きにくい。

 (4)2014年11月のアメリカ中間選挙が、TPP進展の契機になるか期待されたが、TPPは題材
  にならず、オバマ民主党の大敗となり、議会調整が一段と困難に。通常、こうした貿易交渉
  を加速するには、アメリカでは大統領に議会がTPA(Trade Promotion Authority?)という
  貿易促進権限を付与する。これは通称、”Fast Track”(近道)と呼ばれるが、議会はこの
  権限をオバマ大統領に付与していない。TPA交渉参加国にしてみれば、大統領と合意が
  できても議会が否決することはあり得るわけでリスクが大きいことも障碍だ。

 (5)日本は粘り強い努力をつづけているが、TPPで何らかの合意を得て、成長戦略にはずみを
  つけたいところ。
  ー2015年1月13〜15、日米実務者協議。今春の結着目指し、交渉真剣度↑
   2016年は大統領選で議会はほとんど休会状態。
   日本は夏の参院選でその直前に関税大幅↓は避けたい。
   双方政治的理由で時間切迫。
  ーアメリカ輸入豚肉、日本関税大幅下げ。輸入量急増の際にセーフガードで関税↑
   日本車アメリカ輸入。問題あった場合に関税↑の紛争処理手続、など歩みより。

  5. 農業改革
 (1)農業の規制と既得権の岩盤を打破して活力ある農業者や企業が自由に農業活動をできる
   ようにすることで農業を成長産業にする。

 (2)減反政策の廃止。
   競争から隔離する減反政策をやめ、農家の生産性向上動機を支援

 (3)農協の改革。
    1)JA全中と県中央会の地域農協への指導権と監査権を廃止し、地域農協の自由度を 
     高める。
    2)JA全農を株式会社化し、経営を効率化。合理化と経営努力をさせ、安い農業資材など
     を供給し、また企業などと連携しやすくする。
    3)地域農協の金融事業を農林中金に譲渡・売却し、地域農協は代理店として手数料を得
     るだけで、不要なリスクを負うことなく農業活動に専念できるようにする。

 (4)農地制度・政策の改革
   ー農地政策の改革の主眼は、企業が農業に参入し活躍しやすい環境を農地の面で
    整備することであり、また、意欲と活力のある専業農家や企業などの担い手が農地
    の集約による生産性の向上を実現しやすくする環境を整備すること、にある。
   ー農業生産法人への出資規制緩和:企業25→50%まで出資可能に。それ以上は3年後検討
   ー農業委員会の委員の人選、ムラの仲間でなく市町村長の推薦、議会が決定。

  6. 働き方の改革
  (1)働き方の規制改革
    1)労働時間規制見直し:成果報酬の導入
       日本の労働者生産性低い。本来成果報酬のWCが時間による報酬。長時間労働。

    2)雇用契約と解雇の金銭補償
       解雇法制あまりに硬直的、環境変化に対応できず、効率低い。
       解雇可能にする代わりに金銭補償
       組合と中小企業経営者反対。解雇された労働者が犠牲者に。

    3)派遣期間、有期雇用法案
       同じ仕事を別の派遣労働者が担当可能に。派遣労働者のローテーション可能。
       派遣労働者の訓練・経験蓄積が可能に。継続審議

  (2)外国人材の活用
    1)関係閣僚会議(2014.4.4)
     外国人技能実習生の在留期間延長や帰国後の再入国を時限的に認める緊急措置を決定
     ・実習期間が終了した後、以下のいずれかを認める。
     ・法相が指定する「特定活動」としてそのまま2年間在留。
     ・帰国後1年未満で再来日し、最長2年間の「特定活動」。
     ・帰国後1年以上たった実習生が再来日し、最長3年間の特定活動。
      通算、最長で8年。
     この決定は第二次成長戦略に盛り込まれた。

    2)高度人材問題。労働力が長期的に減少し、技術水準が向上する日本がもっとも
      必要としているのは、“高度人材。” ただ、高度人材は、世界各国は皆、求めて
      おり、日本は高度人材を受け入れる環境では多くの面で競争力がない。高度人材
      を迎えるにふさわしい生活環境、言語環境、法制度などの整備が急務。

  7. 女性の活躍支援
   (1)子育て支援の充実
     ・学童の受け入れ枠を2014年の90万人から2017年度まで30万人増で120万人に。      
     ・全小学校区に「放課後子供教室」計2万ヶ所整備

   (2)税制の改革
     ー配偶者控除(専業主婦世帯の所得税を軽くする優遇税制、103万円の壁、実際は
      段階的に控除額を減らすので逆転減少は起きない)の見直し政府部内で検討開始。
      ー夫婦がそれぞれの所得に拘らず控除が一定になる「家族控除」検討。


  8. 人口減少と地方創生
   (1)人口減少と高齢化の衝撃
      ー社会的費用の増大、経済・地域に深刻な影響
       ・国民負担率:高齢化率25%で40%、2015年高齢化率40%で72〜73%。

   (2)増田レポートとそのインパクト
     ー日本創生会議・人口減少問題検討分科会レポート(増田寛也):2014年5月8日   
     ー人口減少と人口移動で消滅する自治体
       ・人口移動が収束しない(東京など大都市への流入がつづく)前提。20〜39歳
        女性人口5割以下に減る自治体(消滅可能都市)数は、2010年→2040年で、
        896(全体の49.8%)になる。

   (3)50年後に1億人維持目標
    ー経済財政諮問会議有識者懇談会提言「選択する未来」 2014年5月13日
    ・日本の人口を”2060年に1億人に維持すべし”と提言。
      日本の人口は2010年に1億2806人、50年後には8674万人に減少の見込み。
    ・1億人維持するには出生率を2.07に引き上げる必要

   (4)地方創生本部と地方創生法
    ー地方創生本部の設置(2014年9月5日)「まち・ひと・しごと創生本部」設立。
    ー地方創生法成立(2014.11.17)
    ー1月:国が「長期ビジョン」と「総合戦略」を公表
     ・「長期ビジョン」:
       ・若者の希望が実現すれば、合計特殊出生率は1.8に向上可能。
       ・50年後に人口1億人を達成するには、2030年には1.8、40年には2.07必要。
       ・地方に雇用つくるため、地方移転企業に税制優遇。
     ・「総合戦略」:
       ・地方に若者向け雇用30万人創出。
       ・地方自治体が使いやすい交付金創設。
  
      通常国会に関連法案第二弾を提出
    ・3月末まで:各都道府県が「地方ビジョン」と公表
    ・4月以降:各都道府県が「地方版総合戦略」を公表。

  9. 社会保障
  ー「社会保障改革国民会議」2013年8月報告
    ・伝統的な年金、医療、介護に加えて拠出者の支援(雇用、子育てなど)が必要。

  ー政治レベルでは、比較的所得の高い層や企業などへの負担を高めるだけの制度変革。
  ー「社会保障プログラム法」12/5参院で可決、成立。
    ・医療:70〜74歳、自己負担2割に引き上げ:14年春から
        大企業健保の負担を重く:15年度にも
        国民健康保険を都道府県に移管:17年度までに
    ・介護:高所得者の自己負担2割に引き上げ:15年度から
        特養ホームの入所を厳しく:15年度から
        要支援者向けサービスを市町村に移管:15年度から
    ・年金:年金控除の縮小:時期見通せず
       受給開始年齢の引き上げ:時期見通せず 
 
  ー2014年5月「財政再計算」現行の年金制度は、
    (1)受給年齢引き上げ、高齢化の進展に即して
    (2)毎年、給付額を1%弱減らす「マクロスライド」の完全実施、
    (3)労働力参加率の向上と維持などが実現しないと持続可能性に疑問符。
    とりわけ世代間の格差が大きく拡大することが示された。
   ー本当の取り組みはこれから。

  10. 医療改革
   ー「規制改革会議」混合診療適用拡大志向。
   ー「患者申し出療養(仮称)」制度を当局と折衝して工夫。
    ・患者が希望すれば、抗がん剤など未承認新薬、医療機器など幅広く使える制度。
     既存の「保険外併用療養費制度」(例外的に薬や技術、施設を国が限って認める)
     の拡大適用に過ぎないという見方も。「新成長戦略」の趣旨は後退。
     国の審査を原則6週間と現行より短い期間とするとされているが、医師会などが主張
     する安全確保の建前で審査の遅れが常態化れば「混合診療」の趣旨は現場でさらに
     形骸化するおそれもある。

    ー厚生労働省は2014年11月5日、「混合診療」拡充の具体案を提示。
     原則として全国約100ヶ所の大病院で実施し、中小病院や診療所は患者を紹介する。
     6月の政府の「新成長戦略」では、診療所を含む身近な医療機関で受診できる方針。
     実質的には高度医療を担う中核病院にほぼ限られる公算。「新成長戦略」の趣旨
     からは一歩後退。医療機関の絞り込みは日本医師会の主張に沿った内容。
     医師会は開業医の収入源である保険診療の縮小につながると混合診療拡大論を警戒。

  11. 国家戦略特区
    ー「国家戦略特区法案」閣議決定(2013.11.5)法成立(2013.12.7)
    ・「国家戦略特別区域諮問会議」と「地域会議(国、地域、企業代表参加)」
    ・参考:民主党政権時の「国際戦略特区」は地域の提案を国が審査して採択する方式。
      今次政権の「国家戦略特区」は国、地域、地域産業界の代表が一堂に会して
      迅速な意思決定をはかることが主眼。
   
    ー地域選び:福岡、兵庫・養父市、新潟(2014.6.9)
    ・東京圏(含む成田市)で医療先行、3病院で混合診療計画(2014.12.9)

  12. 賃金引き上げ
   ー物価↑→賃金↑なら実質賃金低下?アベノミクス効果?。政労使会議で賃金↑要請。
   ー賃金決定は民間マター、しかしマクロ経済効果から政府要請の意義。所得政策の例。
   ー2014年春期賃上げ結果:大企業は2%ていど。中小企業は1%以下の賃上げ。
   ー政労使会議(2014.12.16)
    ・経済界は、賃金の引き上げに向けた最大限の努力を図る」(合意文書)
    ・政府は2015年度に外形標準課税の拡大を予定しているが、3%(2012年比)以上の
     賃上げをした企業には外形標準課税の負担軽減をはかる。

  13. 法人税引き下げ
    ー法人税率引き下げが成長戦略でも重要課題
      日本の法人実効税率は35.6%。他の主要国は 25〜30%。

   ー安部首相は成長戦略の一環として、国・地方をつうじて法人実効税率を2015年度
    から数年で20%台に引き下げるとかねて言明。
   ・この方針を実現するには、5年で29%台へと6%下げる必要。
 
   ー「2015年税制改革大綱」(2014.12.28日)
    国・地方の法人実行税率 現行34.62%を
   ー2015年度に2.51%(32.11)、2016年に3.29%(31.33)へ引き下げ。
    数年後に29%(20%台へ)
    外形標準課税などで税源確保。ただし賃上げ(3%以上)企業には配慮。

  ー官邸が慎重な財務省を押し切った?

                                                    Vl. 経済動向とアベノミクス

  (1)物価と賃金: 
    ・賃金上昇が物価に追いつかず、2013年後半から1年半実質賃金低下
    ・アベノミクスの異次元的金融緩和で円安になり、それが輸入物価を上昇させ、
     物価上昇がつづいているが、物価上昇に見合った賃上げがなかなか実現しない。
     このままでは、勤労者の実質賃金は低下し、アベノミクスは勤労者の生活向上
     に役立たないのではないか、との疑念が高まるおそれ。
    ・物価(CPI)は2013年7〜9月 0.9%、10〜12月 1.4%、2014年1〜3月1.5%
      と着実に上昇。
      これにたいし、名目賃金は2013年7〜9月 −0,4%、10〜12月 0.4%。
    ・さらに、消費税8%後は、物価は2014年4〜6月 3.6%、7〜9月 3.3%。
     ところが、名目賃金は 2014年4〜6月 0.8%、7〜9月 1.5%にとどまった。
 
     消費増税前でも賃金上昇は物価上昇に追いつかなかったが、消費増税後はさらに実質
     賃金は増税分だけ低下しており、国民に不満とアベノミクスへの不信感がひろがる。

  (2)円安でも輸出のびず
      (1)世界経済低迷、
      (2)日中関係の冷却化、
      (3)企業、量拡大追求せず。価格維持して利益増大傾向 
      (4)企業の世界投資進展。円安輸出の効果相殺

  (3)成長点火せず。
     2013年1〜3:6.0%、4〜6:3.0%、7〜9:1.6%、10〜12:−1.5%
     2014年1〜3月期 5.8%、4〜6月期 −6.7%、7〜9月期 −1.9%。

  (4)黒田第二次バズーカ発表:
     背景に物価上昇率急低下への危機感?
     2014年10月31日、黒田総裁、内外の意表を突いた突然の大規模第二次金融緩和発表
       ・マネタリーベースの増加ペースを年10〜20兆円ふやして、年80兆円とする。
       ・長期国債買い入れ量を30兆円増加して80兆円とする。
       ・リスク資産(上場投資信託ETF, 不動産投資信託REIT)の購入を3倍に。
     →2015年末、マネタリーベース350兆円。GDP比 7割。米国450兆円、2割。

     2)物価上昇率急低下への危機感
      ー物価上昇率が2014年夏から低下、予想外の原油価格急落のインパクトか。
      ー夏までは、日銀は、2015年春には物価上昇率1.9%を予測。
       2%の近傍として国際公約は実現できると踏んでいた。

      ー2014年9月のCPI(生鮮食品と消費増税の影響除く。10月31日発表)は1.0%。
      ー10月に準備した『物価リポート』では内部データとして2015年春1.5%。
       『物価リポート』(2014年10月)は10月末に公表されるが、1.5%では、
       国際公約は守られるとはいえない。
      ー黒田総裁、日銀幹部に危機感。ひそかに大胆な追加緩和を準備。

     3)舞台裏
      ー10月末になって黒田総裁は急遽、腹心の雨宮正佳理事や内田真一企画局長に緩和
       策の検討を指示。実務部隊には厳しい箝口令
      ー一方、対外的には動かぬ日銀を演出。10月28日の参議院財政金融委員会でも総裁
       はいつもの強気姿勢を淡々と貫いた。市場は31日も日銀に政策変更なしと織り
       込んだ。
      ー日銀政策委員会の票固め。民間エコノミストの木内登英、佐藤健裕氏らは
       もともと緩和には慎重。学者の宮尾龍蔵、白井さゆり氏は議論の結果賛成。
       企業出身の森本宣久、石田浩二氏は反対。結局、4時間の議論の結果、総裁、
       副総裁含め、5:4の薄氷の決定。    
    
    4)緩和発表の影響
      ー10月末にアメリカ連銀が超金融緩和の終了を宣言し、世界がその対応に身構えて
       いたタイミングの日銀バズーカは株式市場などで大歓迎。東証株価日経平均は
       700円上昇。NY株式市場は市場最高値記録。
      ー麻生太郎財務相は「良い決定」と大歓迎。消費税10%増税への後押しと理解?
       菅義偉官房長官は「日銀独自の判断」とコメント。消費増税含んで微妙。

 
    5)超金融緩和の出口戦略、田幡氏の提案
      ・ベースマネー莫大なので、時間をかけ(10年超?)市場の不安を最小化するよう
       慎重に実行。日銀所有国債の四半期別期日到来額を周到に準備して平準化、その
       再投資を停止して計画的に資産縮小。市場の理解。財政再建努力進める。
       田幡直樹氏「日銀の金融政策正常化:市場にやさしい資産縮小を」日経2014.11.24


  (5)消費税引き上げ問題
    ー予定通りの引き上げへの期待
     ・国際社会の専門家(IMFラガルド専務理事など)は予定通り引き上げすべしと忠告。
      日本政府の財政規律が日本の国債の信用そして世界経済への大きな影響を考慮。
    ー日本のエコノミストも多数は予定通りの引き上げを主張。
     ・成長率は低めだが、成長率は7〜9月が底で2015年にむけて回復。
      失業率3.6%(完全雇用水準)、鉱工業生産、投資も上昇傾向、
      景気はゆるやか回復軌道へとの見通し。
     ・財政規律回復、国際公約遵守のためにも、今、以上の好機なし。
      時間が経ってもめだって環境が良くなる保証もない。
    ー日銀、黒田総裁。かねてより公約遵守すべきとの立場。
     ・第二次緩和も消費増税の環境整備との観測。
        
    ー引き上げ延期の判断
     ・安倍首相は、増税の判断は11月にすると言明。
     ・安倍首相のブレーン、浜田宏一、本田悦朗氏はかねてより延期派。
      最近の経済状況みてさらに主張強める。
     ・オーストラリアからの帰途、首相は機中で遵守派の麻生財務大臣に7〜9月期の
      成長率データをみせた。そこには−1.9%。首相の胸中はその時点で延期。 
   
   (6) 唐突な選挙挙行:その背景と意味
    1)衆議院解散と選挙挙行の宣言
     ・安倍首相は11月18日夜、首相官邸で記者会見し、
      ・11月21日に衆議院を解散する
      ・2015年10月に予定していた消費税10%への増税は1年半延期。
       再延期はせずと言明。
      ・衆院選では「アベノミクスの是非を問いたい」とした。
      ・11月21日、衆議院本会議後の閣議で、12月2日公示、14日投開票を正式決定。 
 
    2)なぜ今、選挙なのか? 
    ・なぜ今、このタイミングで選挙なのか、多くの憶測と仮説。
    ・衆議院議員の任期がまだ2年あるのに、なぜ、と多くが疑問。
     以下がその表向きの理由と推測された。
    ・2015年10月に予定されていた消費税の10%への増税を2017年4月に延期するとの
     首相の決断は当然、国会で承認されねばならない法律の規定変更であるから、その
     前に国民の信を問う必要があるとの理由。
    ・小渕前経産相の政治資金問題などで内閣の評判が低下。仕切り直し選挙。
    ・内閣の人気が低下傾向にありまだ力のあるうちに解散?力が無くなってからでは惨敗
    ・これからは原発再稼働、集団自衛など国民の意見を2分するような課題が山積している  
     ので、その前に選挙で勝利して取り組む。
  
   3)選択肢なき特急(snap)選挙 
    ・安倍首相は「アベノミクスの是非を問いたい」としたが、野党は国民に問う政策
     なし。自民党の選挙公約はまさに総花でやっつけ仕事は明白。
    ・野党は、自民党のscandal探し以外、国民の訴える政策なし。しかも一部
     野党は分裂解散の惨状。公約はほとんど選択肢にならない。
    ・選択肢なき突然の選挙の国民は白けて、半数は投票せず。
    ・52.6%は史上最低の投票率。自民党・公明党の与党は絶対安定多数を60議席
     上回る圧勝だったが、国民の大多数が安部政権を信認したわけではない。海外
     メディアは異口同音にそれを指摘。

   4)安倍首相の野望と責任
    ・以上は、おもてむきの解散・選挙の理由。
    ・真の理由は安倍首相の自己納得と長期政権への野望ではないか。
     2012年の総裁選は石破茂氏が地方票で上回った。2012年末の総選挙は
     石破幹事長、2013年の参議院選挙も石破幹事長で勝利。自前の選挙で自信を?
    ・この大勝利で、自民党は1強。党内では安倍氏1強。環境条件に想定外の変化
     がなければ、安倍氏は6年間、総裁と首相を担う戦後最長政権。それを求めた?
    ・国民はその安倍政権にこれからさらに4年間という長期を付託せざるを得ない。
     安倍首相の国民に対する責任は重大。

                                                     Vll. 新たな経済成長の可能性

   1. アベノミクスへの世界的関心
   ー3本の矢でデフレから脱却できるか:壮大な実験
   ー日本経済の構造と体質改革への果敢な取り組みに関心 

  2. アベノミクスの”成長戦略”は経済体質改革戦略
   ー戦後体制の既得権、硬直性を克服する体質改革戦略
   ー財政破綻のリスクを回避または克服する成長が必要。
    成長戦略で描く実質2%、名目3%では足りない
     人口減少・高齢化経済でそれは可能か?
     成熟段階の日本では公共投資では成長しない。  

  3. 高度成長時代の経験から学ぶもの
   ー1950s後半から1970s前半、平均実質10%、
      うち労働力人口増加率は2%
       一人当たり生産性上昇率は8%
      ・8%の半分は量的拡大とキャッチアップ
         敗戦後のキャッチアップ願望
         インフラ整備(道路、鉄道、都市)
         工業化、規模の経済性(規格大量生産)

      ・8%の半分は質的改善、これはinnovation.
        質の成長は、人口縮小経済でも可能ではないか。

  4. 人口縮小・成熟経済の”諦観”?
     ー人口縮小時代:人口減少で労働力縮小−0.7% これを差し引くと実質潜在成長力は?
    ー潜在成長率見通し(内閣府調) 
                 2011〜15 2015〜20 2021〜25 2026〜30
      IMF     0.8
  三菱総研(2013.4)    0.5    0.6    0.5    0.4
      日経CT(2013.12)    0.6    0.6    0.6
      日生基礎研(2013.10)   0.8    1.1    1.2
      三菱UFJ R&C(2014.1) 0.9 0.7 0.6
      ○大和総研(2014.4)    0.7    1.3    1.3
      
      これは現在の経済構造、人々の価値観(消費、投資、活動)を前提
      innovationの可能性は果たして1.2〜2.0%しかないか?

     ーこれでは、金融リスクは吸収できない、
      財政再建も社会保障の充実もはかれない。

  5. 本当に失ったもの:失われた20年でなく、40年ではないか。
    ー本当に失ったのはデフレの20年ではなく、日本が進化を止めた40年間ではないか?

    (1)進化を止めた日本システム
      ・農業:農地、農協、1940s。減反 1970。
       ・医療:国民皆保険、皆医療、1960。
       ・エネルギー:原発1970s、
       ・都市:現状の近代都市化、1964東京オリンピック時。
       ・産業、企業戦略、企業統治:1970s高度成長時代
       ・政治、行政、教育:1960s〜1970s
      
     (2)その間の、内外のメガトレンドの変化
       日本:人口構造激変:富士山型→提灯型に
          社会保障の抜本改革必要だった。矛盾が噴出。機能不全、破綻?
        世界:IT,グローバル化:企業競争はグローバル、ボーダーレス化、開かれた企業
          地球環境ますます厳しく:1980s以降


Vlll. 新たな時代の可能性の実現

  1. 生かしていない資源と可能性
    ー日本は大きな可能性を持っているのに、生かしていない。世界の評価
    ー人材・技術・資金(企業内現預金 230兆円、国民金融資産 1200兆円、相続財産)

  2. シンガポールとドバイの”奇跡?” それに勝る”日本の奇跡”から学べ
  (1)シンガポール:1960年マレーシアから分断、食糧なし、資源なし LKY
地震調査から高層ビル、家賃払う仕事場:外資導入、賃金上昇↑競争力↓
      より高い付加価値、金融・コンサルティングサービス
      平均所得6万ドル、日本4万ドル

  (2)ドバイ:地理的有利性、アメリカ、ユーラシア、アフリカの中間点
       空港料ゼロ、外資企業法人税率↓
       今や、世界の中継地点、中継貿易、なんでも世界一
       ドバイ人口は1割。

  (3)最強の参考事例は日本
      ー戦争で、世界の権益全喪失、都市焼け野原、310万人死亡、国連敵国条項
      ・25年で世界第二の経済大国へ
       ー敗戦:戦前の軍事国家体制全否定、冷戦下のアメリカの支援、安保と経済
      ー戦後改革:軍の解体、農地改革、教育改革、財閥解体、労働組合法認
        
       ・軍隊・財閥の解体:独占需要⇒世界競争に、需要の価格弾力↑、
        産業界のコスト意識↑品質管理→生産性↑
       ・農地改革、教育改革→身分制撤廃→平等競争
        →資本主義(競争)と共産主義(平等)のメリット組み合わせ、国民意欲↑

       ・1950年代の改革:
          金融システム:国民資金の輸出部門への戦略的集中(階層金融システム)
          産業構造:傾斜生産、石炭→鉄→造船→機械→自動車→電機
          技術革新:技術導入と改善、生産性と品質改良、トヨタ方式
          強力な輸出立国、Ezra Vogel “Japan as no.1”
        ・戦前の日本のしくみを全否定して、新しい日本を創り出した。

  (4)異次元的な成長戦略を!
      ー成長の障碍は戦後システム。過度な平等と権利保護による硬直性と非効率
      ー戦後システムを全否定して、人々が能力を最大限に発揮できる新しい日本を
       ・戦後改革のシステムは戦前の身分制、軍国体制、反封建制の全否定
          農地解放:小作を自作農に。地主(企業)排除の土地制度
          教育:平等、規格大量生産型教育:catch upには有効。
          軍隊と財閥の解体:中小企業の競争社会
      ー新しい時代日本:グローバル化、情報化、環境、エネルギー革命
          企業改革:解放、グローバル化、起業促進
          innovation, 人材能力活用:教育改革、働き方改革、外国人材導入・活用
          農業改革:農地を企業と大農に。現場主体性支援(農協改革)、社会農業
          環境変化:自然エネルギー革命実現
          情報:  情報革命実現

 3. 異次元的成長戦略の提案

  (1) エネルギー(”第4次産業革命”、送電線)
  ー化石エネルギーは有限(50〜150年)、
  ー再生エネルギーの時代、”第4次産業革命”
  ー再生エネルギー技術(太陽光、風力)はもともと日本が先鞭
  ーその後、原発が圧倒。原発が高度経済成長支えたのは事実
  ー福島第一事故が原発リスク露呈。事故以降、人々の疑念払拭できず。
  ー徹底安全対策と説明。再稼働は「規制委」でなく政治家の責任
  ー再生エネ:太陽光、風力、地熱、バイオマス、小水力、潮波力
  ー点から面へ:化石、原発エネは点、再生エネは面、しかも遠隔・過疎地
  ー送電システム整備が急務。面積当たり収益は農業の数倍。地方再生の柱。
   (山崎養世氏:社団法人「太陽経済の会」会長、の提案) 

  (2) ITとイノベーション(産業革命、start up)
  ーIT、第三次産業革命(石炭、石油・・)、世界はflat(borderless)に。
     Tom Friedman “The World is Flat”
  ー通信、産業、生活、まだ無限の可能性
  ー効率化(企業、生活)、総合的生産性↑、成長の強力なドライバー
  ー教育、行政、社会インフラ、start up支援の環境整備急務(イスラエルに学べ)
   日本は先進国、新興国に遅れ。”のりしろ”は大。

  (3) 農業改革、(コンパクトシティと農地改革、社会農業)
  ー日本農業者、190万販売農家、165万米作(専業30万)
  ー農業は票田、政治の犠牲(政治米価、減反所得保障⇒競争から隔離)
  ー減反廃止、農地改革(企業所有可能に)、農協改革(権限縮小、地域農協自由)は正攻法
  ー生産・流通・販売の完全自由化→生産↑→価格↓、農地集約:大農家と企業所有
  ー135万軒→社会農業へ(健康農業、教育農業、環境農業、観光農業)
  ー農産品:生産性↑、価格競争力↑、品質競争力(遺伝子組み換えなし)↑、
   成長産業、投資↑、輸出↑。

  (4) 雇用ルール:成果報酬、同一労働同一賃金
  ー日本の労働生産性は低い(先進国)、報酬がすべて時間による。戦後平等改革の逆効果
  ー先進国:ホワイトカラー(経営候補者、創造的業務)は成果報酬、exempt.
  ー安倍政権の取り組み正しい。抵抗多く道半ば。white collar exemptの全面適用急務。

  ー若年者の悲惨:失業200万、フリーター400万、NEET80万、working poor 900万。
    1200万が不完全就業。訓練、熟練、安定、展望、希望なし。日本の将来担えるか?
    アベノミクスでも賃金上昇しない大きな背景。
  ー同一労働同一賃金の貫徹を(ILO条約100年前)。正規従業員(正社員)の過度な既得権
   見直し。
  ー地位による報酬差別撤廃。成果と能力による報酬。
  ー解雇法制改革:成績、勤怠による指名解雇可能に。
  ー労働市場情報提供、移動支援、キャリア形成情報提供、訓練支援。

  (5) 外国人材:移民法
  ー外国人材鎖国は世界でもユニーク。世界史:成熟国は外国人材で繁栄確保。 
  ー「実習研修制度」の拡充はvery small step
  ー移民法の制定を。日本は入国管理法、難民認定法のみ。諸国は移民法で優れた人材選別。
  ー日本人になるルール、基準の明示を。帰化をめざす外国人にルールなし。不透明。
  ー移民法は日本が必要とする優れた外国人を選別招聘する基本ルール

  (6) 出生率:
   ー「子育て支援、保育所拡充、配偶者控除制度改革」は重要。
   ー日本の支援、高齢者偏重。フランス、スエーデンの子育て支援に学べ。
    ・両国とも、保育所公的助成は手厚い。日本の約2倍
    ・フランス:家族手当(児童手当)日本の4倍。3人目が成人するまでの家族手当1300万円
          日本は300万円。多子促進政策。1人目から充実、3人目手厚い
          育児休業補償:父母どちらかが3年間育児休業補償受けられる
    ・スエーデン:妊娠・出産・性別雇用差別不可。雇用環境の平等化徹底、
           保育8割公費負担、ワークライフバランス普及 

   ー家族形成のために養子縁組の活用を。
   ー里親普及を:日本、乳児院(2歳まで)⇒児童保護施設18歳まで、社会参加困難、ホームレスに
     ○家庭で育てる必要、特別養子縁組なら可能。障碍:生みの親の親権放棄困難、相続など。

   ー代理母問題、医療倫理委員会、母として認めない。母は分娩した者。戸籍に代理母として記録
      民法、戸籍法、戸籍は日本独特、欧米や韓国にはない米国はSSNo. 所得・財産や納税記録も
      戸籍:中国から導入、大宝律令時代以来。家制度と戸籍制度で個人確認
      特別養子縁組なら可能。養子縁組は大人は活用(介護、相続のため)子供では普及していない

   ー児童相談所に矛盾する過大な負担:親権放棄要請と家族機能回復支援。
     諸外国では親権問題は裁判所。親権問題で家庭裁判所活用を。
 
  (7) 医療改革
  ーかつて最小コストで長寿国:人口構成若く、公衆衛生普及(幼児死亡低い)
  ー今、高コスト、財政難、経営難(8割赤字)、サービス低下(3時間3分、医師不足)
   高齢化でさらなる医師とサービス不足深刻化
  ーメガトレンド変化:高齢化、医療単価↑(技術進歩)、低成長(担税力↓)
  ー政策対応の誤り:価格(診療報酬制度)、数量(ベッド、医師、医学部規制)
  ー「混合診療」はsmall step
  ー解決策:
    1)情報化、包括支払い制度:DRGーPPS、日本 DPC
    2)outcome情報:評価、選別、競争可能に
    3)民間保険を7割に
    4)Drug lag, Device lag解消
    5)混合診療

  (8) 都市空間
  ー昼夜間人口比 東京:2.5
  ー建物平均高さ 東京:3.0F〜2.3F パリ:6F
  ー高さ制限:東京:260m、航空法300m
     アジア都市:500mのスカイライン
  ー容積率↑→都市空間↑→効率↑→快適↑→自由時間3〜4時間↑→QL↑

  (9) 教育
  ー規格大量生産型、cf.センターテスト
  ーcatch up 時代には効果
  ー今、先進国。先行例なし。問題発見、議論、実証、解決
  ー問題に唯一の正解なし。説得した者が正解
  ー150万人の旧型教育関係者(いわば既得権者)

  (10) 健康づくり
  ー「健康増進法」は効果あったか? 健康保険組合に義務づけ
  ー食事によるCalコントロール、筋トレ:楽しくできる方法開発できるか?


アベノミクスの2年間と日本経済の課題〜安倍政権の今後のために〜 Part2

Vlll. 経済動向と衆議院選挙

 1. 経済動向とアベノミクスへの懐疑論

 (1)物価と賃金
  ーアベノミクスの異次元的金融緩和で円安になり、それが輸入物価を上昇させ、
   物価上昇がつづいているが、物価上昇に見合った賃上げがなかなか実現しない。
   このままでは、勤労者の実質賃金は低下し、アベノミクスは勤労者の生活向上
   に役立たないのではないか、との疑念が高まるおそれ。
  ー物価(CPI)は2013年7〜9月 0.9%、10〜12月 1.4%、2014年1〜3月1.5%
   と着実に上昇。
   これにたいし、名目賃金は2013年7〜9月 −0,4%、10〜12月 0.4%。
  ーさらに、消費税8%後は、物価は2014年4〜6月 3.6%、7〜9月 3.3%。
   ところが、名目賃金は 2014年4〜6月 0.8%、7〜9月 1.5%にとどまった。
 
   消費増税前でも賃金上昇は物価上昇に追いつかなかったが、消費増税後はさらに
   実質賃金は増税分だけ低下しており、国民に不満とアベノミクスへの不信感が
   ひろがりつつある。
  
 (2)為替と輸出
  ーアベノミクス効果で円安が進行しているが、それに見合って期待されたほど
   輸出が伸びず、それが経済成長を促進するどころか、成長を鈍化させる要因に
   なっている。これは明らかのアベノミクスの期待とは異なる現象でアベノミクス
   の成功を阻害している。

  ーその理由として、1)円安が輸出価格の引き下げにつながるには時間がかかる、
   2)2013年頃から新興国経済が低迷しはじめ、世界の貿易需要が低下している、
   3)尖閣列島問題を契機に日中関係が緊張・悪化し、対中輸出と投資が減退して
   いる、などが挙げられているが、さらに、日本の大企業が円高の時代に、そして
   重税などを嫌って、この10年くらい生産活動の重心を大きく海外に移している
   ことも大きな構造要因と考えられる。企業活動の海外展開が進めば、円安が 
   日本企業の輸出を促進する効果は減殺されるからだ。

 (3)点火しない成長

  ーアベノミクスが開始されてからの経済成長の実績は、2013年の前半には株高景気を反映
   して、半年間ほど経済成長は高まったが、それ以降は、沈滞ぎみ。2014年1〜3月期は
   消費増税前の駆け込み需要で成長は再び高まったが、その後は、大きな反動減のあと、
   成長が回復する兆しがみえない。

  ー実質経済成長率は
   2012年10〜12月期 −0.9%、
   2013年1〜3月期 6.0%、4〜6月期 3.0%、7〜9月期 1.6%、10〜12月期 −1.5%
   2014年1〜3月期 5.8%、4〜6月期 −6.7%、7〜9月期 −1.9%。

  ーGDPの6割を占める消費の低迷が成長促進を妨げている。消費増加の最大の要因は所得
   の増加であり、実質賃金が減少する状況では消費増加は期待しにくい。一方、貯蓄や
   資産が消費につながるためには、将来不安の減少や新しいライフスタイルが実現する
   などの要因が必要と考えられる。これらをどのように実現するかが、人口減少・高齢化
   の進行するこれからの日本を活性化する大きな課題だろう。

 2. 黒田第二次バズーカ発表
 (1)日銀の追加緩和発表
  ー2014年10月31日、黒田総裁、内外の意表を突いた突然の大規模第二次金融緩和発表。
  ー主要内容:・マネタリーベースの増加ペースを年10〜20兆円ふやして、年80兆円とする。
        ・長期国債買い入れ量を30兆円増加して80兆円とする。
        ・リスク資産(上場投資信託ETF, 不動産投資信託REIT)の購入を3倍に。

 (2)物価上昇率急低下への危機感
    ー物価上昇率が2014年夏から低下、予想外の原油価格急落のインパクトか。
    ー夏までは、日銀は、2015年春には物価上昇率1.9%を予測。
     2%の近傍として国際公約は実現できると踏んでいた。

    ー2014年9月のCPI(生鮮食品と消費増税の影響除く。10月31日発表)は1.0%。
    ー10月に準備した『物価リポート』では内部データとして2015年春1.5%。
     『物価リポート』(2014年10月)は10月末に公表されるが、1.5%では、
     国際公約は守られるとはいえない。
    ー黒田総裁、日銀幹部に危機感。ひそかに大胆な追加緩和を準備。

 (3)舞台裏
    ー10月末になって黒田総裁は急遽、腹心の雨宮正佳理事や内田真一企画局長に緩和策
     の検討を指示。実務部隊には厳しい箝口令
    ー一方、対外的には動かぬ日銀を演出。10月28日の参議院財政金融委員会でも総裁は
     いつもの強気姿勢を淡々と貫いた。市場は31日も日銀に政策変更なしと織り込んだ。
    ー日銀政策委員会の票固め。民間エコノミストの木内登英、佐藤健裕氏らはもともと
     緩和には慎重。学者の宮尾龍蔵、白井さゆり氏は議論の結果賛成。企業出身の
     森本宣久、石田浩二氏は反対。結局、4時間の議論の結果、総裁、副総裁含め、
     5:4の薄氷の決定。    
    
(4)緩和発表の影響
    ー10月末にアメリカ連銀が超金融緩和の終了を宣言し、世界がその対応に身構えて
     いたタイミングの日銀バズーカは株式市場などで大歓迎。東証株価日経平均は700円
     上昇。NY株式市場は市場最高値記録。
    ー麻生太郎財務相は「良い決定」と大歓迎。消費税10%増税への後押しと理解?
     菅義偉官房長官は「日銀独自の判断」とコメント。消費増税含んで微妙。
    ー2015年末のマネタリーベースは350兆円。(アメリカは450兆円)
     GDP比Mは、欧州1割、アメリカ2割。日本は7割と突出。将来の出口戦略が大課題。

 3. 消費税引き上げ問題
 (1)予定通りの引き上げへの期待
   ー国際社会の専門家(IMFラガルド専務理事など)は予定通りに引き上げすべしと忠告。
    日本政府の財政規律が日本の国債の信用そして世界経済への大きな影響を考慮。
   ー日本のエコノミストも多数は予定通りの引き上げを主張。
     ・成長率は低めだが、成長率は7〜9月が底で2015年にむけて回復。
      失業率3.6%(完全雇用水準)、鉱工業生産、投資も上昇傾向、
      景気はゆるやか回復軌道へとの見通し。
     ・財政規律回復、国際公約遵守のためにも、今、以上の好機なし。
      時間が経ってもめだって環境が良くなる保証もない。
    ー日銀、黒田総裁。かねてより公約遵守すべきとの立場。
     ・第二次緩和も消費増税の環境整備との観測。

  (2)引き上げ延期の判断
    ー安倍首相は、増税の判断は11月にすると言明。
    ー安倍首相のブレーン、浜田宏一、本田悦朗氏はかねてより延期派。
     最近の経済状況みてさらに主張強める。
    ーオーストラリアからの帰途、首相は機中で遵守派の麻生財務大臣に
     7〜9月期の成長率データをみせた。そこには−1.9%。首相の胸中は
     その時点で延期。

 4. 唐突な選挙挙行:その背景と意味
 (1)衆議院解散と選挙挙行の宣言
   ー安倍首相は11月18日夜、首相官邸で記者会見し、
   ・11月21日に衆議院を解散する
   ・2015年10月に予定していた消費税10%への増税は1年半延期。
    再延期はせずと言明。
   ・衆院選では「アベノミクスの是非を問いたい」とした。
   ー11月21日、衆議院本会議後の閣議で、12月2日公示、14日投開票、を正式決定。

 (2)なぜ今、選挙なのか
   ーなぜこのタイミングで選挙なのか、多くの憶測と仮説。
   ・衆議院議員の任期がまだ2年あるのに、なぜ、と多くが疑問。
    以下がその表向きの理由と推測された。
   ・2015年10月に予定されていた消費税の10%への増税を2017年4月に延期するとの
    首相の決断は当然、国会で承認されねばならない法律の規定変更であるから、その
    前に国民の信を問う必要があるとの理由。
   ・小渕前経産相の政治資金問題などで内閣の評判が低下。仕切り直し選挙。
   ・内閣の人気が低下傾向にありまだ力のあるうちに解散?力が無くなってからでは惨敗。
   ・これからは原発再稼働、集団自衛など国民の意見を2分するような課題が山積している  
    ので、その前に選挙で勝利して取り組む。

 (3)選択肢なき特急(snap)選挙
   ・安倍首相は「アベノミクスの是非を問いたい」としたが、野党は国民に問う政策
    なし。自民党の選挙公約はまさに総花でやっつけ仕事は明白。
   ・野党は、自民党のscandal探し以外、国民の訴える政策なし。しかも一部
    野党は分裂解散の惨状。公約はほとんど選択肢にならない。
   ・選択肢なき突然の選挙の国民は白けて、半数は投票せず。
   ・52.6%は史上最低の投票率。自民党・公明党の与党は絶対安定多数を60議席
    上回る圧勝だったが、国民の大多数が安部政権を信認したわけではない。海外メディア
    は異口同音にそれを指摘。

 (4)安倍首相の野望と責任
   ・以上は、おもてむきの解散・選挙の理由。
   ・真の理由は安倍首相の自己納得と長期政権への野望ではないか。
    2012年の総裁選は石破茂氏が地方票で上回った。2012年末の総選挙は
    石破幹事長、2013年の参議院選挙も石破幹事長で勝利。自前の選挙で自信を?
   ・この大勝利で、自民党は1強。党内では安倍氏1強。環境条件に想定外の変化
    がなければ、安倍氏は6年間、総裁と首相を担う戦後最長政権。それを求めた?
   ・国民はその安部政権にこれからさらに4年間という長期を付託せざるを得ない。
    安倍首相の国民に対する責任は重大。


lX. アベノミクス2年間の評価

 1. アベノミクスへの世界的関心

 (1)アベノミクスへの世界的関心の高まり

   ーアベノミクスへの世界の関心が高い
    世界の代表的経済紙であるFinancial Timesなどでも、連日のように日本経済とりわけ
    アベノミクス関連の大きな記事が掲載されている。
   ー半世紀前の1970年代前半に、戦後の廃墟を乗り越えて高度成長を達成しつつあった日本
    経済は、「日本の奇跡」として世界の注目の的となったが、今回のアベノミクスへの
    関心はそれ以来。

  (2)関心の焦点

   ーなぜ関心が高まるのか?
   ーアベノミクスは3本の矢、すなわち、金融政策、財政政策、構造改革政策という性質も
    役割も異なった政策を組み合わせて総合戦略で、理論的にも明解で判りやすい。
   ー1990年代後半から20年近く長期デフレと低成長に陥っていた日本経済がアベノミクス
    によって復活するかどうかは経済実験としても世界的に意味がある。
   ー成功すれば、今後の世界諸国の経済政策にとっても参考になるし、失敗しても反省材料
    として参考になる。

 2. 日本経済の構造と体質改革への果敢な取り組み
   ーアベノミクスの第一の矢:「異次元的な金融緩和」は市場に大量のベースマネーを提供
    することで、円売りを誘発して円レートを下げ、輸出企業の利益増大を促進するとともに
    輸入価格上昇によってインフレを促進し、人々や企業にインフレ期待を醸成するねらい
    があるが、これは円安、株高を実現したことで、一定の成果を収めた。

   ー機動的な財政政策は、デフレ経済からインフレ経済への転換過程で、経済成長を
    安定的に下支えする効果があった。もっとも、財政再建の実現は一層困難になる。

   ー成長戦略は、とりわけ、第二次成長戦略では、いわゆる「岩盤規制」分野にも
    鋭意切り込んでおり、構造改革に対する取り組みは評価できる。

   ー例えば、農業における減反政策の廃止、農協の過度な権限を削減する改革、農地を
    大農家や企業が購入するなど農地の流動化を進める政策
   ー雇用における報酬決定を労働時間だけでなく成果によって決められる制度の導入の
    試み。もっとも厚生労働省や組合などの抵抗と反対で、その適用範囲は限られる。
   ー医療における「混合診療」解禁への取り組み。もっとも適用される病院はわずかな
    大病院に限られる。
   ー企業統制における社外取締役導入の一般化の取り組み。
   
   ー上記で詳述したように、このほかにも多くの構造改革に安倍政権は鋭意取り組んで
    いる。これらの改革は、戦後の歴代政権が充分には取り組めなかったもので、安倍政権
    の果敢な取り組みは大いに評価される。

   ーこれらの改革は、日本が敗戦後、占領軍のもとで”平等主義”もしくは“民主化”
    のために推進したものだが、今日では成熟期を迎えた日本経済を活性化する努力を阻害
    する要因になっていたり、また、高度成長時代に定着した制度がやはり現代のグローバ
    ル化時代の要請に逆行する要因になっていたりする、いわば閉鎖的で硬直化した
    経済構造の体質を変える改革といえる。

   ーいいかえれば、閉鎖的で硬直化した経済組織や経済構造を、開放的で競争的で効率的で
    努力する人々や企業がその成果を獲得しやすい経済構造にする改革である。

 3. 成長戦略は不在?

  (1)アベノミクスの”成長戦略”は経済体質改革戦略

   ー安倍政権が取り組んでいるこれらの構造改革は、日本経済が新しい時代に成長するため
    には必要な”経済体質の改革”だが、それはいわば必要条件であって、これらの改革が
    直ちに経済成長を誘発するものではない。

   ー人々は政府の「成長戦略」が経済成長を早期に誘発してくれるものと期待している。
    アベノミクスの第一の矢は、日銀が決定すればすぐに実行できる。それは人々の期待感
    を変える効果があるが、必ずしも実質経済の成長を導くものではない。しかも、大規模
    な「異次元緩和」は政府債務を事実上、日銀がファイナンスすることによって政府の
    財政規律を弱めるリスクがつきまとう。

   ー積極的な財政政策による機動的な財政支出は財務省の幹部が短時間で実行できる。
    そして積極的な財政政策は経済の安定を下支えする効果はあるが、大規模は財政支出
    の実施は膨大な財政債務をかかえた日本の財政再建計画を危うくするリスクがある。

   ーこれらのリスクを吸収するものとして「経済成長戦略」に国民の期待が集まる。
    たしかに成長があれば、人々や企業の所得が増え、税収がふえることによって
    財政再建はしやすくなり、財政規律も維持しやすくなる。政府の「成長戦略」
    に人々は成長→増収を実現する即効薬的効果を期待しがちである。

   ーしかし、安倍政権が鋭意取り組んでいる構造改革政策は、多くの制度、法律を変えて
    経済構造を改革し、それをつうじて、人々の働き方や企業行動を変えようというもの
    で、そうした構造改革を実現するには国民の多くが参加して、法律、制度、構造、行動
    パターンを変えるというプロセスを実行するのであるから、おそらく短期間に効果を
    期待することは非現実的である。これらの改革には数年、10年、あるいは20年かかる
    であろうし、その効果が出てくるにはさらに時間がかかるだろう。

   ー安倍政権が取り組んでいる「成長戦略」は、端的に言えば、経済の体質を変える構造
    改革であって、多くの人々が期待しているような短期に効果が期待できる「成長
    戦略」ではない。多くの人々が期待しているような短期に効果が期待できる「成長
    戦略」はアベノミクスには不在なのではないか。

(2)人口縮小・高齢化経済に成長戦略はあり得るか?

   ー安部政権の構造改革による「成長戦略」は、経済の体質を、開放的、競争的、効率的
    な構造に変えることによって、人々や企業の期待感や行動パターンを変え、それによって
    自律的に生産性が向上し経済が成長することを期待する戦略と言える。私見ではそれは
    全うな経済戦略の王道である。しかし、それは政府依存に慣れた人々の期待感とは
    大きく乖離するだろうし、構造改革にかかる時間を人々は待ちきれず、アベノミクスを
    評価しなくなるだろう。

   ーそれでは、ここで短期に成果の期待できる経済政策を実行すべきなのだろうか。
    日本経済が今、世界でもっとも多額な政府債務に苦しんでいる状況は、実は、
    日本の政府がバブル崩壊以降、即効性の期待できる成長政策として、建設国債に
    よる公共工事を繰り返してきたことに大きな原因がある。小泉政権以来、さすが
    に公共工事は大幅に削減されたが、近年は、高齢化の社会的費用の増大が財政負担
    の膨張要因になっている。

   ー公共投資は、日本が戦後の高度成長時代にもインフラ整備のために大いに推進し
    それが成長を加速させた。1980年代以降のバブル崩壊後は、成長を下支えするために
    公共工事を大規模に展開したが、それが今日の膨大な財政債務を蓄積する原因に
    なった。公共投資は開発途上経済では経済効率を高めて成長を加速させる要因になる。
    中国やブラジルなどはその典型である。しかし日本のように先進・成熟段階に入る
    と公共投資による乗数効果は著しく低下する。日本は道路や鉄道の普及率は世界でも
    突出して高く、成長に対する限界効果はほとんどない。

   ー一方、高齢化は高齢者福祉のための“社会的費用”が加速度的に増大させ、そのための歳出
    がたしかにGDPの構成要素として拡大する。この点に着目して菅直人政権の時代に、
    システムは国民の負担増によって福祉費用を賄うしくみになっており、投資が
    技術革新などをつうじて生産性を向上させ、その結果、国民の所得水準と国富がふえる
    循環はそこでは機能しない。今は菅首相の「第三の道」を信ずる人は誰もいない。

   ーこうした現状で、経済成長を実現する政策を構想するとなれば、安倍政権の構造改革
    戦略のほかに何があり得るであろうか。安倍首相は、2014年末の総選挙のために用意
    された政権公約のタイトルを『景気回復、この道しかない』としたが、たしかに日本
    経済が直面する所与の状況の中では、経済構造を改革することで、人々や企業の期待感
    と行動パターンを変えて、成長を期待するという戦略は、正攻法であり、普通に考えれば
    ”それしかない”かもしれない。

   ーしかし、その方法では現在の安部政権が掲げる「成長戦略」がすべて実行されたとして
    も、以下に指摘するような人口縮小と高齢化という大きな制約の下では、日本の抱える
    財政赤字や社会保障問題を解決するほどの成長を達成することは不可能のように思える。

   ーこれからの日本の最大の構造問題は、人口の縮小と高齢化である。人口の縮小は
    経済成長の実現を大きく制約する。日本が高度成長していた時代には、経済は年々、
    実質10%の成長を達成していた。そのうち、8%は一人当たり生産性の上昇であり、
    2%は労働力人口の増加率だった。ところが日本では、2009年から人口が全体でも
    減少しはじめ、これからは毎年、0.7%前後のペースで縮小していく。今後期待できる
    一人当たり生産性の上昇率は、専門家の推計ではせいぜい1%程度であり、労働力
    増加率(減少率)を加味すると、期待しうる実質潜在成長率は、0.3%ていどにしか
    ならない。

   ーこのような経済の長期展望のもとで、アベノミクスの第一、第二の矢のリスクを吸収
    できる成長戦略は果たして構想できるだろうか?

X. 日本再生の真の課題

 1. 失われた期間は20年か40年か?

(1)失われた20年間
  ーこれからの日本経済の中長期の潜在成長率がせいぜい0.3%程度と上述したが、これは
   過去20年ほどの日本経済の実績をふまえて推計したもの。その20年は”失われた20年で
   あり、その期間の日本経済の構造や技術進歩率を前提にし、人口の減少と高齢化を加味
   して推計すればそうした値になるのは驚く事ではない。

  ー「高度成長期」といわれた1950年代後半から1970年代前半にかけては、日本経済は
   実質で毎年10%ていど成長した。生産年齢人口の伸び率は年率で2%ていどだったから、
   それを差し引くとそれでも一人当たり生産性上昇率は8%になる。

  ー8%の生産性上昇率を可能にした要因は、1)規模の経済性をフルに享受できるタイプの
   鉄鋼、造船、自動車、電機・電子機器など製造業が著しく成長した時代、2)戦後の復興
   意欲が高かった時代、3)アメリカなど先進国にキャッチアップする過程で、技術革新の
   学習速度が早く、若い労働力の技術適応力が高かったこと、などがある。今日の日本
   では、それらの要因はほとんどあてはまらない。今日の日本は、1)産業構造は成熟化し、
   比重の高いサービス業では規模の経済性はあまり働かない、2)先進国となって成熟化した
   日本にはキャッチアップの有利性はない、3)労働力は高齢化し技術吸収力、学習力は低下
   している。

  ー高度成長期の日本と今の日本では、キャッチアップ過程と成熟段階の大きな違いがある
   ことは事実だが、成熟段階の経済でも、成熟段階ならではの新しい成長があり得るの
   ではないか。若い人材は体力があり、学習力が高いが、熟年の人材には経験と知恵と
   資産と人脈という貴重な資源がある。それらを活用した新しい成長モデルがあり得る
   のではないか。いいかえれば、人口の縮小と高齢化が進む日本経済を大きく活性化する
   “異次元的”成長戦略ないし成長モデルはあり得るのではないか。

  (2)失われた40年間
  ーいまひとつ、“失われた20年間”はたしかに経済が長期デフレに陥って低迷した時代
   だったが、日本はもっと重要な活力を、過去40年にわたって失ってきたのではないか。
   ちなみに、現在の日本経済のサブシステムをしらべてみると、ほとんどのシステムが
   1960年代もしくは1970年代初頭までにできあがっており、それ以降に、抜本的な
   革新がない。

  ーたとえば、農業、医療、社会保障、エネルギー産業、都市、産業、企業構造、企業統治、
   企業戦略、教育、行政、政治などほとんどのサブシステムの原型は、1960年代から
   1970年代初頭までに完成している。その後、40ないし50年が経過しているが、
   その間に、日本内外のメガトレンドは大きく変化した。日本では人口構造が富士山型
   から釣り鐘型にそして逆三角形型に逆転している。ところが社会保障や医療保険などの
   システムは1960年代に完成したものを踏襲してきており、人口構造の逆転に対応して
   いない。世界では、情報化、グローバル化、人口変動、環境変動が起きたが、日本の
   産業も企業も教育もそうした環境変化への適応がおくれたため矛盾が爆発している。

  ーこれだけの大きな環境条件の変化に、システムが適応しなければ、経済の活力や創造力
   が失われるのは当然の帰結だ。1990年代の失われた20年間の背景には、さらに深刻な
   失われた40年間があるのではないか。

 (3)求められる環境変化への本格適応と自己改革
  ー環境変化にたいする自己適応や自己改革を怠った、もしくは成功しなかったことが、
   経済低迷や成長可能性の低下の原因であるとすれば、逆説的だが、内外の環境変化に
   適応し自己改革を進めれば、日本経済は新しい時代にふさわしい先進成熟経済として
   の創造力と活力を実現し、それが日本経済の潜在成長力を大きく高めることにつながる
   ことも充分可能なのではないか。

 2. 戦後改革に比肩する根本改革が求められる日本

  ー私達の課題は、それがどれほどの自己改革なのかを想像し、構想し、スケッチし、
   ブループリントを描くことである。おそらくそのヒントは他国の経験に、そして
   何よりも日本の戦後改革に求めることができるように思う。

 (1)外国の例:
  ードバイ:地理的有利性、アメリカ、ユーラシア、アフリカの中間点
       空港料ゼロ、外資企業法人税率↓
       今や、世界の中継地点、中継貿易、なんでも世界一
       ドバイ人口は1割。

    ーシンガポール:1960年マレーシアから分断、食糧なし、資源なし LKY
        地震調査から高層ビル、家賃払う仕事場:外資導入、賃金上昇↑競争力↓
       より高い付加価値、金融・コンサルティングサービス
       平均所得6万ドル、日本4万ドル

  (2)日本の戦後改革に学べ
    ー最強の参考事例は日本
      ・戦争で、世界の権益全喪失、都市焼け野原、310万人死亡、国連敵国条項
      ・25年で世界第二の経済大国へ
       ・敗戦:戦前の軍事国家体制全否定、冷戦下のアメリカの支援、安保と経済
       ・戦後改革:軍の解体、農地改革、教育改革、財閥解体、労働組合法認
          →身分差別と独占社会→平等と競争社会→国民の勤労意欲↑民間企業↑
       ・1950年代の改革:
          金融システム:国民資金の輸出部門への戦略的集中(階層金融システム)
          産業構造:傾斜生産、石炭→鉄→造船→機械→自動車→電機
          技術革新:技術導入と改善、生産性と品質改良、トヨタ方式
          強力な輸出立国、Ezra Vogel “Japan as no.1”

 5. 日本の可能性と再生の真の課題

   安倍政権が推進している構造改革による成長戦略は、経済の体質と構造を変えることに
  よって人々や企業の考え方と行動を変え、その結果として経済成長を実現しようという真に
  まっとうな正攻法である。

   しかし、人口が縮小し高齢化が進むこれからの日本経済を活性化するには、これまでの
  延長線上の戦略では、日本が必要とする経済成長は実現しにくいように思う。丁度、敗戦後
  の廃墟の中から私達の先輩達がまったく新しいいわば異次元の取り組みで奇跡の復興と成長  
  を実現したように、人口縮小と高齢化の進む日本経済にめざましい成長を実現するには
  まさに“異次元的は成長戦略”の実行が求められるのではないか。以下、そのためのヒントを
  いくつか指摘したい。

 (1)成熟国に必要な革新力と健康増進
   ー成熟国は、公共投資で成長させることはできない。キャッチアップ段階にない成熟国に
    求められるのは 1)前人未到を実現する革新力、そしてとくに2)高齢成熟国の最大の課題
    は高齢化の社会的費用膨張をいかに抑えるか、である。

   ー技術革新を促進するためにはアベノミクスで計画しているように科学技術促進戦略の
    司令塔をつくることも、また政府の予算をふやすことも必要だが、問題は、技術開発
    やシステム開発の現場で、ひとびとがどれだけ本当に才能を極限まで生かして創造を
    実現するかという人的要素が革新を実現するための鍵になる。

   ーこの人的要素は、予算を増やしたり、教育を進めるだけでは、実現しにくい。それらは
    必要条件ではあるが成果をあげる充分条件ではない。アメリカのような混合民族の国
    は多様性と透明な競争を組み合わせて革新力を強化してきた。日本にはそれらの条件
    は乏しい。しかし、明治維新や敗戦後などの異常な危機に直面して日本人はその革新力
    を爆発させた。常識的には低迷と縮小が予想されるこれからの日本を革新するには
    過去の経験も参考にしつつ異次元的取り組みを工夫する必要がある。

   ーいまひとつは健康増進。高齢化の社会的費用は莫大で、高齢人口比25%の現在4割の
    国民負担率はそれが40%になる2050年には7割を超えると見込まれる。この費用を
    抑えることが、国にも社会にも個人にも急務である。この費用を最小化する最大の
    要因は健康増進だ。かつて厚生労働省の辻哲夫次官は国民のメタボを抑制するため
    に「健康増進法」を制定し、健康保険組合にメタボ症候群の組合員の特別指導を
    義務づけた。しかし行政経費がかかる割には効果はあがっていない。

   ー中高年者の健康増進の最大の秘訣は、カロリー抑制と筋肉トレーニングである。
    これを義務にすれば人間の心理として拒否反応が働く。いかにして楽しく結果と
    して国民のカロリー抑制と筋トレを実現させるか、科学と政策の革新的かつ総合的
    取り組みが求められる。

  (2)人材・労働力の活用

   1)若年労働力
    ー現在、日本の若年労働力は半数くらいは悲惨な状況にある。失業者150万人、
     フリーター400万人、ニート(Not Employed, Educated or Trained) 80万人、
     ワーキングプア、900万人がその状況を物語る。

    ーこの状況は、高度成長が終わり、バブルが崩壊してから深刻化した。背景には
     日本企業の年功序列に象徴される正社員優遇、既得権者優遇主義、そして成績や業績
     などの理由で指名解雇ができない頑迷な解雇法制がある。

    ー高度成長期に効果があり定着した古い日本的雇用慣行を変え、ILOが100年前から
     提唱している「同一労働同一賃金」を実現することだ。日本は雇用の地位で報酬が
     決まる異様な雇用制度だが、これを能力、努力、成果で報酬と処遇が決まる制度に
     根本から変える必要がある。

    ーその結果、正社員であろうとパートであろうと関係なく、働きで報酬が決まるように
     なり、労働市場は流動化して、適材適所が実現するだろう。こうしてはじめて不利に
     差別された若年層にも公平な雇用機会が与えられる。

    2)女性の活躍
    ー安部政権は女性の活用を大目標にかかげ、その環境整備として子育て支援、役所や
     企業での女性登用促進、働く女性に不利な税制の改革などを推進している。これら
     はいずれも重要だが、上述したようにまだ緒についたばかりの段階。
   
    ー政府の旗ふりも政策も重要だが、女性が活躍するには、それ以上に、企業、社会、
     家庭の価値観の転換が必要だ。この大転換をどう実現するか、日本の異次元的
     取り組みが求められる。

    ーいまひとつ、結婚を絶対的制度としない社会をつくること。結婚はしたい人がすれば 
     良いという人生の選択肢のひとつとすべきだ。そうすることで女性は多様にライフ
     スタイルを選択できる。どのような人生を選択するとしても子供は平等な社会的
     保護とサービスを受けられるようにする。社会的、行政的に嫡子、嫡外子の区別を
     無くす。フランスとスエーデンは、かつて少子化に悩んだが、結婚を相対化する
     ことと、子育て家庭(母子、父子家庭含む)への徹底的行政支援で、人口増加
     に成功していることを参照すべきだ。

  3)外国人。
    ー日本は将来、深刻な人口減少が予期されているのに、外国人労働力の導入を頑に拒ん
     でいる珍しい国だ。ローマ帝国以来、人口減少に直面した先進国で外国人材を導入
     せずに繁栄した国はない。

    ー日本は外国人材に対して、国政選挙権以外のあらゆる生活権(傷害、医療、失業
     補償、年金、社会保障、教育、居住など)を提供して、優れた外国人材を迎え  
     受けるべきだ。

    ーそのための基本条件として、世界諸国が法定している「移民法」を制定すべきだ。
     移民法はおそらく戦前の民族差別がトラウマになって日本ではタブー視されている 
     が、異次元的活性化のためには避けて通れない。これがなければ、外国人材はど
     日本が必要とする優れた人材を選別することができる。 

 (3)エネルギー、農業、医療の抜本改革
    
    ーエネルギー、農業、医療はいわゆる岩盤規制と既得権で固まった分野であるが、
     抜本的な改革によって最も強力な成長分野にすることができる。

     1)エネルギー
      ー50基、かつて30%、高度成長
      ー今、CO2↑, 3〜4兆円↑、貿易赤字
      ー抜本安全対策、
      ー自然エネルギー:太陽光、風力、地熱、バイオ(林業の発展)
            水力(小水力)、波力(潮力)
      ー省エネ、見える化、苦汗省力でなく都市計画と技術

    2)農林水産業
      ー農業:”自給率40%、農村疲弊”の欺瞞
       穀物自給:野菜、果物、畜産
      ー農村: 196万軒、165、30、135万軒
      ー政治米価、減反、
      ー自由化、社会農業:
      ー価格低下、遺伝子組み換えなし、世界輸出農業へ。

    3)医療
     ー昔、国民皆医療、皆保険、最長寿国
     ー今、3時間待って3分医療、たらい回し、医師不足、赤字、保険財政↓
     ーメガトレンド:高齢化、医療技術↑、成長鈍化(担税力)
     ー規制:価格:診療報酬、薬価、
         数量:ベッド規制、地域計画、医学部規制
     ー解決策:情報化、包括支払い制度:DRGーPPS、日本 DPC
       outcome情報
       混合診療
       民間保険を7割に
       Drug lag, Device lag解消

アベノミクスの2年間と日本経済の課題〜安倍政権の今後のために〜 Part 1

このたび、「アベノミクスの2年間と日本経済の課題〜安倍政権の今後のために〜」
というテーマで原稿を書きました。やや長いので以下、2回に分けて掲載させて戴きます。

l. はじめに


ll. 安倍政権3.0の出発と課題

 1. 2014衆議院選挙の結果

  ー2014年12月14日、投開票の結果

       新議席  公示前勢力  参議院

   自民   291   295    115
   公明   35    31     20
   民主   73    62     59
   維新   41    42     11
   共産   21     8     11
   
   合計   475   480    242

  ー絶対安定多数は266。投票結果は、与党で326、これを60議席上回った。
   自民の地滑り的勝利。官邸の求心力強力。

  ー民主党は73議席で前回選挙より11議席増やしたが、目標の100議席に及ばず、惨敗。

  ー安倍長期政権の可能性:
    この大勝の結果、安倍政権は、現段階ではこれから4年間、選挙せずにつづけられる
    可能性。戦後最長の長期政権となる可能性。

 2. 選挙結果の意味するもの

  ーしかし投票率は52.66%(過去最低)、2012選挙の59.32%より6.66ポイント低い。

  ーFinancial Times など海外論調:
   自民党は大勝したが、得票率は低く、野党が準備不足で混乱しており、他に選択の余地が
   無い消極的選択。安倍首相が選挙の争点を「アベノミクスへの信任を問う」としたが、
   安倍政権の政策が国民の信任を得たかは不明。

 3. 安倍政権3.0の課題
 
  ーアベノミクスをひきつづき推進する。
   原発再開、集団安保、憲法改正にも取り組める可能性。

  ー最大の課題は、経済を本当に浮揚させられるのか?
   経済成長を実現して、実質賃金の向上、財政問題、社会保障問題などの解決の糸口を
   つけられるのか?

  ー以下、安倍政権の経済戦略推進の経過を跡づけ、アベノミクスは本当に経済成長を実現
   できるのかを検討、検証する。また、本当に経済成長を実現するには何をすれば良いか
   若干の政策提案も試みたい。


lll. アベノミクスの展開

 1. 安倍政権の経済戦略構想

 (1)安倍政権の政策目標(悲願):失われた20年を取り戻すデフレ脱却
   ・菅義偉官房長官の「島田塾」での講演
   ・失われた20年、政治の怠慢、財政は財務省に、金融は日銀の任せきり
    政治の取り組み、良い意味での政治主導が欠けていたのではないか?

   ・デフレを脱却して日本経済を順調な成長軌道に乗せ、生活向上、財政再建、社会保障
    の充実を実現するにはどうすればよいか。

  (2)総理、官房長官、学者ら内輪の研究会
    ・浜田宏一、本田悦朗、岩田規久男氏ら。
     黒田東彦氏も(当時ADB総裁)もフィリピンからときどき参加。

    ・デフレは実質経済と貨幣供給のバランス。貨幣供給の不足。
     充分な貨幣供給を実現。ゼロ金利下では、日銀が大量のベースマネーを供給。
     安倍総理以下、リフレーション戦略によるデフレ脱却方針を確信。

   (3)黒田東彦 日銀総裁の実現:
    ・積極的なベースマネー供給主義に消極的な白川方明日銀総裁の交代を意図。
     白川総裁の持論:金融政策は人々の期待には影響できても実質経済は変えられない。
     金融政策で実質経済成長を実現するのは困難。実質経済成長は構造改革。
     リーマンショック以降、主要国の中央銀行が大量のベースマネー供給という
     積極的金融政策を展開するなかで、日本は極めて慎重。
     「日本はデフレ脱却の意思なし?」との国際金融市場での疑念。
     円買いが進展。円為替価値高く、輸出不調、経済停滞。

    ・白川総裁が2012年4月の任期満了を前倒して3月に副総裁と同時に退任を発表。
     日銀業務の円滑な執行のため。

    ・黒田東彦氏を推薦。2012年総選挙の結果、自民・公明与党が絶対安定多数の
     を確保していたので、黒田総裁の国会承認も迅速に実現。

 2. アベノミクス

  (1)安倍政権の経済戦略「アベノミクス」は3本の矢から構成される、とされた。
    ー金融政策(期待感)、財政政策(経済安定)、成長戦略(構造改革)
     をパッケージとする明解な経済戦略

  (2)第一の矢:金融政策
    ーデフレ脱却のために、積極的にベースマネーを供給。
    ーインフレを実現し、人々の期待をデフレからインフレ期待に変えるねらい。
 
  (3)第二の矢:財政政策
    ーデフレ経済をインフレ経済に転換するにはかなりの時間。
    ーその間、必要に応じて、積極的、機動的に財政出動。経済の安定を確保。

  (4)第三の矢:成長戦略
    ー人々のインフレ期待醸成。経済の制度改革と構造改革
    ー人々の勤労意欲、企業家の投資意欲の向上期待
    ー総合的な構造改革で実質経済の成長を実現。
    ー経済成長のメリット:
         ・雇用増進と所得向上実現
         ・財政再建促進
         ・社会保障充実


lV. 第一の矢:金融政策は人々の期待感を変えたか?

 1. 第一の矢の成果:

   ー黒田東彦日銀総裁の”バズーカ”宣言
     ・着任早々、2013年4月3日、日銀会見
     ・2年間で2%のインフレ実現公約
     ・2年間で日銀のベースマネー供給を2倍に。
       130兆円→270兆円(2015年春までに)
     ・黒田総裁は、これを『異次元緩和』と表現。
    
    ー世界の機関投資家、投機筋が敏速な反応
      ・実際、Goldman Asset ManagementのJames, O’Neal会長は
       2012年11月15日、野田佳彦民主党党首の解散発言の直後、
       “Buy Abe, buy Japan” を世界の顧客とGoldmanのネットワークに配信。
      ・円供給急増を見込んで、大量の円先売り、大量の日本株式投資。

    ー円の為替レートは2ヶ月で2割低下→輸出企業の収益急増を示唆
    ー株価は、8000円(2012年11月)から15000円(2013年5月)
       そして17000円(2014年夏以降)に上昇。2倍以上。

    ー経済に活気。高額消費増大。明らかに株価上昇の影響
    ー異次元緩和は劇的な効果をもたらした。その限りにおいては“成功”と評価できる。

 2. 異次元金融政策と物価動向、インフレ期待は?

  (1)黒田総裁の国際公約、2015年春には2.0%インフレ達成は実現するか? 
    ーインフレ率着実に上昇。
    ・円安の進行(1ドル120円にも低下)によるエネルギー、食糧など輸入価格上昇
     が推進。 物価上昇率は2014年4月には1.5%まで伸び、2015年春には2%に達する
     との展望。
    ー黒田日銀総裁は、2015年には2%インフレ実現に自信。
    ー日銀のインフレ率の指標となる消費者物価指数(CPI)は、通常のCPIから生鮮食料品
     と消費税の影響を差し引いたもの。 
    
   (2)物価上昇率が急低下
    ー物価上昇率が2014年夏から低下、予想外の原油価格急落のインパクトか。
    ー夏までは、日銀は、2015年春には物価上昇率1.9%を予測。
     2%の近傍として国際公約は実現できると踏んでいた。

    ー2014年9月のCPI(生鮮食品と消費増税の影響除く。10月31日発表)は1.0%。
    ー10月に準備した『物価リポート』では内部データとして2015年春1.5%。
     『物価リポート』(2014年10月)は10月末に公表されるが、1.5%では、
     国際公約は守られるとはいえない。
    ー黒田総裁、日銀幹部に危機感。ひそかに大胆な追加緩和を準備。

   (3)インフレ期待は?
      インフレ期待は醸成されたか?
      人々の期待感醸成には時間? インフレ期待下での行動パターンはまだまだ。
      インフレ率低下(とくに国際原油価格の予想外の低落)で期待しぼむ?

 3. 黒田総裁の第二次バズーカ宣言と内外の反響

  (1)2014年10月31日、意表をついた第二次バズーカ宣言
   
    ー日銀発表の要旨:
     ・マネタリーベースをふやして、年80兆円とする。
     ・長期国債買い入れ量を30兆円増加して80兆円とする。
     ・リスク資産の購入を3倍。
    
    ー積極果敢な金融政策でインフレ実現、インフレマインドによる行動変化を後押し。
    ー消費税引き上げ前提のアベノミクス推進(経済成長実現)の環境整備がねらい?
    ・(大量追加緩和→円安誘導→物価上昇→インフレマインド喚起→成長促進)

  (2)大きなサプライズ効果
    ーアメリカ連銀が金融緩和政策(QE)の終了を宣言した直後。
    ーこれまで追加緩和の可能性に全く言及せずに、意表をついた大規模緩和の宣言。
    ー日本のみならず、アメリカなど世界株価も上昇。

  4. 財政赤字の日銀引き受けのリスク

  (1)財政規律低下のリスク
    ー黒田日銀の積極金融政策は、実質的に政府の財政赤字の日銀によるファイナンス。
     日銀による直接ファイナンスは財政法が禁じられているが、日銀が市場から国債など
     を買い上げる現行の方式は、大量購入した国債を市場売却できないような事態に
     なれば実質的に日銀ファイナンス。
    ー財政規律が失われる怖れ。

  (2)出口戦略
    ー日銀の異次元的金融緩和による莫大なベースマネー供給は無限にはつづけられない。
     経済成長など一定の条件が整った段階で終了する出口戦略が必要である。
    ー大量のベースマネーの供給で蓄積した日銀の資産は膨大であり、これを着実に
     縮小させるには、市場に無駄な混乱を招かないよう、計画的に周到かつ慎重に
     進める必要がある。
    ー田幡直樹氏は、アメリカ連銀の経験を参考に、日本がとるべき戦略の要点を
     判りやすく説いているが、資産規模が膨大になるので、出口戦略の実行には
     10年はかかるとしている。(田幡直樹「日銀の金融政策正常化」『日経新聞』
     (2014.11.24)

V. 第二の矢:積極財政がもたらすもの

  1. 目的:経済転換過程の安定化と円滑化
    ー経済構造転換過程は円滑、順調に進むとは限らない
    ー順調な成長過程実現に至る道程では、機動的は財政支出によるサポートが必要。
    ー実際、2013年度の財政支出は、経済成長を支えるうえで重要な役割。

  2. 積極財政と財政再建の展望
  (1)積極財政:
    ー2013年度:15ヶ月予算戦略
     ・2013.1.15. 緊急経済対策、総額20兆円、補正予算13.1兆円(2/26成立)
    ー2013年度本予算: 92.6兆円、
    ー消費税対応:5兆円、
    ー2014年度予算:99.2兆円、
    ー2015年度予算:98兆円規模。

  (2)財政再建の展望
     ー財政再建計画:2010年策定、
     ”2010年PB(6.7%)を2015年までに半減(3.2%)、2020年までに0または黒字”

     ー2014年、2015年度は再建計画の軌道をギリギリ維持と予測。
      ・2014年度 税収50兆円見込む(6.9兆円増収、ただし、うち4.5兆円は
       消費税↑による)消費税増収分、2014年度 2015年度、各年、4.5兆円増収。
       2013.8月の中期財政計画では国の一般会計のPB、両年 4兆円ずつ改善見込み。

     ー安倍首相、第二次消費増税延期の決断。
      ・安倍首相は2014年11月18日、2015年10月に予定されていた第二次消費増税
       8%から10%への増税を、2017年4月に延期すると宣言。同時に、衆議院解散宣言。
      ・予定されていた消費税増収分 4.5兆円が先送りされたため、2015年度は
       財政再建計画の軌道からはずれるおそれ。

 3. 財政規律喪失のリスク

 (1)財政再建計画は実現するか?
     ー2020年度、PBバランスを達成するには、10%の消費税では足りない。
     ー消費税だけでバランスさせるには、17%必要。

 (2)財政規律喪失のリスク
     ー2015年度から早くも財政再建計画の軌道から脱落するおそれ。
     ーこんごの展望は不透明。安倍首相は2017年までに経済成長率をたかめて
      消費税増税に環境を整備するとしているが、出来るか?
     ーMoody’s Investers Serviceは、安倍首相の第二次消費増税延期の発言をうけて、
      日本国債の評価をA1に格下げ。これはAa3の中国、韓国、台湾以下。
      オマーン、チェコ、イスラエル、エストニアと同格。
      財政再建の実現性が遠のいたとの評価。
      日本国債の償還可能性に”注意信号”

 (3)財政規律喪失の帰結
     ー財政規律が失われたと市場が判断すると日本国債の価格急落
     ー1200兆円の政府債務。利回りが1%上昇すると、12兆円の債務膨張。
     ー利回り=金利暴騰、財政破綻、人々の資産価値激減のおそれ。
     ーすでにcapital flight(資本逃避)進行。


Ⅵ. 第三の矢:成長戦略は機能したか?

 1. 成長戦略への期待
  (1)異次元的金融戦略、機動的財政戦略には大きなリスク
    ー財政規律の弱化もしくは喪失による国債価格の下落   
    ー利回り=金利の高騰、財政破綻、資産減価から喪失も

  (2)これらのリスクを吸収するのは経済成長。
    ー「経済成長戦略」への期待
    ー経済成長さえ実現すれば、
      ・雇用増進と所得向上実現⇒増収
        ・⇒財政再建促進
        ・⇒社会保障充実

 2. 第一次成長戦略

  ・第一次成長戦略の概要
  「日本再興戦略」(2013/6/14閣議決定)

 (1)成長戦略のねらいと目標
   ・今後10年間平均で、名目GDP 3%成長、実質2%程度の成長目指す
   ・新たなフロンティア創出
   ・女性、若者の能力活用

 (2)「三つのアクションプラン」
   1)日本産業再興プラン
   ー緊急構造改革プログラム(産業の新陳代謝促進)「産業競争力法」制定、実施。
    ー雇用制度改革・人材力の強化:過度な雇用維持から労働移動支援へ
   ー科学技術イノベーションの推進:「総合科学技術会議」の司令塔機能強化

   2)戦略市場創造プラン
    ー健康:国民の”健康寿命”の延伸
      ーエネルギー:クリーン・経済的なエネルギー需給の実現
    ー次世代インフラ
    ー世界から稼げる地域育成

  3)国際展開戦略プラン
  ー戦略的な通商関係の構築と経済連携の推進
   ・貿易FTA比率を現在の19%から2018年までに70%に高める
   ・TPPの取組からRCEP(東アジア地域包括的経済連携)、日中韓FTA、さらに
      FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)に拡大発展めざす。
    ・ちなみに韓国は70%達成(2014.11):アメリカ、EU, 中国とFTA締結による。
  ー海外市場獲得のための戦略的取り組み   
  ー我が国の成長を支える資金・人材等に関する基盤の整備

 3. 経済成長動向と第二次成長戦略への取り組み

  (1)経済成長動向
    ー第一次成長戦略は2014年6月14日、閣議決定、発表。
     ・2013年通年の成長率は2.3%。
     ・1〜3月期、4.9%、4〜6月期、3.5%、7〜9月期、1.3%、10〜12月期、0.3%
    ー成長率急速鈍化: 政府の成長戦略は構造改革であって、即効性は期待できない。
      にもかかわらず、成長戦略発表後、成長率の急速鈍化に政権は危機感

  (2)構造改革による岩盤規制の打破
    ー安倍首相は、2014年1月20日の「産業競争力会議」席上で「成長戦略進化のための
     今後の検討方針」発表。第二次成長戦略策定方針言明。
    ー岩盤規制分野:農業、医療、雇用などの構造改革に鋭意取り組む覚悟明示。


Vll. 第二次成長戦略(『日本再興戦略 改訂2014』)の内容と挑戦

 1. 取り組みの陣容と経過

   (1)産業競争力会議は、経済税制諮問会議、規制改革会議とも連携して改革案構築。

    ・産業競争力会議:
      甘利経済財政再生相議長、岡素之(住友商事相談役)、竹中平蔵(慶大)、
      長谷川閑史(武田薬品社長)三木谷浩史(楽天社長)、新浪剛史(ローソン社長)
      ら10人。

    ・「規制改革会議」:
      岡素之議長(住友商事相談役)、大田弘子議長代理(政策科学大学院教授)、 
      大崎貞和(野村総研)、翁百合(日本総研)ら14人。

     ・経済財政諮問会議:       
        議長:安倍晋三首相、民間議員:小林喜光(三菱ケミカルH)、佐々木則夫(東芝社長)
        伊藤元重(東大教授)、高橋進(日本総合研究所理事長)
        官房長官、経済財政相、財務相、総務相、経済産業相談、日銀総裁
       
   (2)第二次成長戦略(『日本再興戦略 改訂2014』ほか)は2014年6月24日閣議決定

     ・産業競争力会議報告『日本再興戦略 改訂2014』は本文124p、概要19p
     ・「規制改革会議」『規制改革に関する第2次答申〜加速する規制改革〜』106p
     ・「経済財政諮問会議」答申『経済財政運営と改革の基本方針2014について』80p

    ーこれらは膨大かつ詳細な内容で、Financial Times とThe Economistは、「新成長
     戦略」発表直後の論評で、これは the third arrow ではなく、
     one thousand needles と評した。

 2. 産業と労働の新陳代謝
   (1)「競争力強化法」の制定と実施:
      産業の新陳代謝を進めるため供給過剰の解消、未来志向の産業創出を促進
   (2)労働力の適材適所を促進:  雇用調整給付金を大幅削減。


 3. 企業統治と資本市場
   企業投資の透明性向上、株主の監視と発言力強化、高収益積極投資促進めざす改革。

   (1)会社法改正(2014年6月20日成立):企業は最低1人の独立社外取役を選任すべし。
   (2)ガバナンスコード(企業統治のための企業の行動規範)の策定(2015年株主総会まで
   (3) Stewardship codeの導入。機関投資家向けに定められた行動規範。株主の発言強化
   (4)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針の積極化:安定+高収益志向へ。
   (5)JPX日経400インデックス:ROE向上への意識改革促進。


 4. TPP交渉
   (1)TPPは10年ほど前に、環太平洋地域の4つの小国が高度で理想的な自由貿易圏構想として
    打ち出し、アメリカが2010年に参加。日本は2013年7月参加。現在の参加国は12。モノ  
    の貿易だけでなく、サービスや投資ルールなど21分やで高度な自由化を志向。
  
   (2)日本はこの高度な自由貿易圏に参加することで、貿易や投資の自由化のメリットを享受
     できることから、安倍政権の成長戦略の重要な柱と位置づけ。

   (3)交渉は総合的に進められ、焦点が絞られてきているが、その過程には曲折があった。
    2013年10月、首脳レベルで高度な合意形成をねらったシンガポールでの首脳会議に
    オバマ大統領が国内事情でドタキャン、各国の失望を買った。オバマ大統領の2014年4月
    のアジア歴訪の一環として4月下旬に日本を訪問する際に、高度な合意が得られるかとの
    期待感があったが、2日半にわたる閣僚レベルの高密度の交渉でも結着がつかず。アメリカ
    は日本が農産品5項目、とりわけ豚肉の関税撤廃に応じない事が障碍と喧伝しているが、
    アメリカ側にも自動車安全基準問題など障碍は多い。日米両大国がなんらかの合意に
    到達しないと他の国々が前進するモメンタムが働きにくい。

  (4)2014年11月のアメリカ中間選挙が、TPP進展の契機になるか期待されたが、TPPは題材
    にならず、オバマ民主党の大敗となり、議会調整が一段と困難に。通常、こうした貿易交渉
    を加速するには、アメリカでは大統領に議会がTPA(Trade Promotion Authority?)という
    貿易促進権限を付与する。これは通称、”Fast Track”(近道)と呼ばれるが、議会はこの
    権限をオバマ大統領に付与していない。TPA交渉参加国にしてみれば、大統領と合意が
    できても議会が否決することはあり得るわけでリスクが大きいことも障碍だ。

 (5)日本は粘り強い努力をつづけているが、TPPで何らかの合意を得て、成長戦略にはずみを
    つけたいところ。

 5. 農業改革

  (1)農業の規制と既得権の岩盤を打破して活力ある農業者や企業が自由に農業活動をできる
    ようにすることで農業を成長産業にする。

  (2)減反政策の廃止。
   ー減反政策は1970年に導入され、コメの市場価格維持のための生産調整(作付け面積の
    削減)に協力する農家には補助金を支給する政策。この政策によって農家は自由競争
    から遮断されるので、技術革新や経営改革などの努力によって競争に勝とうとする
    インセンティブをもちにくくなり、日本の農業の競争力強化の障碍になっていると
    考えられる。

   ー政府は「競争力会議」等の提案をうけて、2014年11月、5年後(2018年)までに減反
    政策を廃止する方針を決定。段階的に減反補助金を削減し、浮いた財源を農業強化のため
    に有効に活用することとした。「競争力会議」は活力ある「認定農業者」に支給を提案
    したが、農水省などの抵抗で、中小農家一般に支給することになり、競争力強化の意図
    はこの面では後退している。

 (3)農協の改革。
   ー「規制改革会議」は2014年5月22日、の農協の抜本的な改革案を提示。その主な内容は
     1)JA全中と県中央会の地域農協への指導権と監査権を廃止し、地域農協の自由度を 
      高める。
     2)JA全農を株式会社化し、経営を効率化。合理化と経営努力をさせ、安い農業資材など
      を供給し、また企業などと連携しやすくする。
     3)地域農協の金融事業を農林中金に譲渡・売却し、地域農協は代理店として手数料を得
      るだけで、不要なリスクを負うことなく農業活動に専念できるようにする。
  
    ーこの大胆な改革案に対し、農協は強力な反対キャンペーンを展開したが、首相ら政府首脳
     は「これまでのような法定の中央会制度は変える」と考えは譲らず、自民党は「JA全中
     の廃止を柱にした農協改革案は大筋で容認するものの、JA全中に代わる一定の権限を持
     つ組織をつくる形」でJAグループの自己改革努力に期待する」との妥協案を示した。
     その後、めぼしい展開はまだない。

  (4)農地制度・政策の改革
    ー農地政策の改革の主眼は、企業が農業に参入し活躍しやすい環境を農地の面で
     整備することであり、また、意欲と活力のある専業農家や企業などの担い手が農地
     の集約による生産性の向上を実現しやすくする環境を整備すること、にある。

    ーそのためには、1)現在の農地法の規定下では、企業が農業をするためには参加
    しなくてはならない「農業生産法人」をもっと活用しやすくすること、そして
    2)農地の売買、貸借、利用を現場で管轄する「農業委員会」が閉ざされたムラ
    のしがらみに支配されずに、開放的に公正に判断ができるようにする。

    ー1)農業生産法人については、これまで企業は25%までしか出資できなかったが、
     その上限を50%未満とする。100%出資を可能にするか、は5年後に検討。
     2)農業委員会については委員を農家の互選でなく市町村長が任命し、議会の同意を
     得て決めることした。

    ー一方、政府は、農地の集積・集約化、有効活用で、農業生産コストに削減を促進
     するため、農地中間管理機構(通称、農地バンク)を設立。農地バンクが管理する
     農地を、産業競争力会議や規制改革会議は、農業法人、大規模農家、企業などに提供
     すべきと提案。農水省は地元農村の意向を尊重し、地元で協議し、公募すべきと主張。
     ここでも農業の競争力強化は一歩後退。

 6. 労働規制、女性の活用、外国人労働者

 (1)働き方の規制改革

  1)労働時間規制見直し:成果報酬の導入
   ー安倍首相は「労働時間制度の新しい選択肢を示す」「働いた時間でなく、成果に給与を
    払う ”ホワイトカラーエグゼンプション”の導入」の検討指示。産業競争力会議(2014年
    5月28日)、専門職を中心に週40時間を基本とする労働時間規制をはずす方針提案。
   ー厚生労働省は大幅な見直しには慎重。労働組合は際限のない”奴隷労働”になるおそれがある
    と反対。
   ー今後、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で、具体的な制度設計を詰めて、1年
    以内に結論を得る。具体策で骨抜きのおそれも。

   2)雇用契約と解雇の金銭補償
    ー産業競争力会議は欧米では慣行化している解雇の金銭補償のルールを法定すべしと
     提案。厚労省は5.28の産業競争力会議で、新制度の導入は見送ると主張。民間議員は、
     こんご検討して、1年以内に結論を出すべきと主張。
    ー2015年4月をめどに、内閣官房、厚労省、法務省が合同で有識者会議を儲け、新制度
     の枠組みをつくる。労働政策審議会(労使代表参加)で詳細を詰め、早ければ2016年
     の通常国会で関連法の改正をめざす。

    3)派遣期間、有期雇用法案
    ー労働者派遣法改正案。人が入れ替われば、同じ仕事をずっと派遣社員に任せられる。
     派遣期間の上限をなくし、派遣社員をローテーションなどして質効率を高める。
     この法案は条文にミスがあると野党が指摘して廃案。(2014.6.20)

    ー改正派遣法案は、2014年10月末から衆議院で再度、審議入りしたが、野党の反対
     が強く、時間切れで、先送りされた。改正派遣法案は、野党からは派遣を固定化する
     との批判があるが、その都度、職場を変わるよりも、同じ職場でローテーションも
     可能になる改正法案は、派遣労働者の技能蓄積にメリットがあり、また、勤労者の
     半数が制約の少ない派遣就労を希望している現実から見ても先送りは残念。

    ー有期雇用労働者特措法案。専門職の有期雇用を最長5年から10年に延長。
     定年後の再雇用は有期雇用の期限なし。

 (2)女性の活躍支援

   1)子育て支援の充実
   ー子育て支援策
     産業競争力会議(2014.5.28)で子育て支援策提示
      ・学童の受け入れ枠を2014年の90万人から2017年度まで30万人増で120万人に。      
      ・全小学校区に「放課後子供教室」計2万ヶ所整備
    
     ー女性を働きやすくする。
      ・上場企業は役員のうち女性比率の開示義務
      ・フレックス制度の充実

     ー働いても損しないしくみ:配偶者控除の縮小
    
     ー認可保育所以外も補助。政府は消費増税で生まれる財源のうち7000億円
      (10%引き上げ後)をつかって認可保育所なみの保育サービスをより多くの人々
       (待機児童は2.2万人と推計)が使えるようにする。対策費6200億円計上。

    2)税制の改革
      ー配偶者控除(専業主婦世帯の所得税を軽くする優遇税制、103万円の壁、実際は
       段階的に控除額を減らすので、逆転減少は起きない)の見直し政府部内で検討開始。
      ー政府税調所得税改革の議論開始。(2014.10.6)
       ・配偶者控除と基礎控除の仕組みを見直して夫婦の控除額がそれぞれの年収に
        かかわらず一定になる「家族控除」の仕組の導入を政府提案。

 (3)外国人材の活用

    1)技能実習制度の拡充
    ー産業競争力会議(2014.1.20)外国人労働者の受け入れ環境の整備明記。
     最長3年の技能実習制度の期間延長や介護分野への拡大検討方針。
    
    2)関係閣僚会議(2014.4.4)
    ー外国人技能実習生の在留期間延長や帰国後の再入国を時限的に認める緊急措置を決定。
    ・実習期間が終了した後、以下のいずれかを認める。
    ・法相が指定する「特定活動」としてそのまま2年間在留。
    ・帰国後1年未満で再来日し、最長2年間の「特定活動」。
    ・帰国後1年以上たった実習生が再来日し、最長3年間の特定活動。
     通算、最長で8年。

    3)産業競争力会議(2014.6.10)
     ー外国人受け入れ拡大策策定→「成長戦略」に盛り込む
      ・技能実習生:(製造、建設、農業、13.7万人)・期間を3年から5年程度に。
     
      ・新しい在留資格:(業種や地域を指定)
        ・家事手伝いを国家戦略特区で先行受け入れ
        ・メーカーの海外子会社の従業員の受け入れ
        ・特定の国家資格をとった留学生は就職可能に

      ー専門家:(13.3万人)
        ・年収や学歴が高い人材を優遇するポイント制度を拡大

     4)高度人材問題。労働力が長期的に減少し、技術水準が向上する日本がもっとも
       必要としているのは、“高度人材。” ただ、高度人材は、世界各国は皆、求めて
       おり、日本は高度人材を受け入れる環境では多くの面で競争力がない。高度人材
       を迎えるにふさわしい生活環境、言語環境、法制度などの整備が急務。

 7. 人口減少と地方創生

 (1)人口減少と高齢化の衝撃

  ー社会的費用の増大:
   国民負担率:現在:高齢化率(25%)で40%、2050年高齢化率40%で73%(大和総研)
   73%を50%に下げることは、次世代にそのまま負担を転嫁することになる。
   日本の社会の持続可能性に黄信号

  ー経済・地域に深刻な影響
   ・労働力の減少によって現在の経済構造を前提にすればやがて経済成長が限界に。
    マイナス成長の常態化も。
   ・地域は、東京など大都市への人口移動がつづくと、人口減少全体の影響がより深刻に
    及ぶ地域(とりわけ地方)で過疎化と人口減少が加速し、存続困難な地域も出てくる。

 (2)増田レポートとそのインパクト
   1)増田寛也レポート(日本創成会議)
    ー日本創成会議・人口減少問題検討分科会レポート:2014年5月8日
    「成長を続ける21世紀のために『ストップ少子化・地方元気戦略』」

   2)人口減少と人口移動で消滅する自治体
    ー人口移動が収束しない(東京など大都市への流入がつづく)前提。20〜39歳女性人口
     5割以下に減る自治体(消滅可能都市)数は、896(全体の49.8%)になる。

   3)増田レポートの提言
     ー地方から大都市へ若者が流出する”人の流れ”を変え、東京一極集中に歯止め。
     ・地方の人口流出を食い止める「ダム機能」を構築しなおす。

 (3) 50年後に1億人維持目標
    ー経済財政諮問会議有識者懇談会提言「選択する未来」 2014年5月13日
    ・日本の人口を”2060年に1億人に維持すべし”と提言。
     日本の人口は2010年に1億2806人、50年後には8674万人に減少の見込み。
    ・1億人維持するには出生率を2.07に引き上げる必要

 (4)地方創生本部設置
   ー地方創生本部の設置(2014年9月5日)「まち・ひと・しごと創生本部」設立。
    (本部長、安倍晋三首相)地方創生担当大臣、石破茂氏、内閣改造で就任
    ・有識者には、増田寛也、坂根正弘コマツ相談役、冨山和彦経営共創基盤CEOら。
  
   ー地方創生総合戦略の重点5分野
    ・移住、雇用、子育て、行政の集約と拠点化、地域間の連携

   ー地方創生計画(ヴィジョン)の策定にむけて
    ・7月25日:「まち、ひと、しごと創生本部」の準備室設置
    ・8月末:2015年予算概算要求、1兆円
    ・9月:内閣改造で「地方創生相」新設。
      「まち・ひと・しごと創生本部」発足。
    ・10月:臨時国会に関連法案にの一弾提出
    ・12月:15年度税制改正に地方創生対策反映

   2015年
    ・1月:国が「長期ビジョン」と「総合戦略」を公表
      通常国会に関連法案第二弾を提出
    ・3月末まで:各都道府県が「地方ビジョン」と公表
    ・4月以降:各都道府県が「地方版総合戦略」を公表。

  (5)地方創生法
    ー地方創生法成立(2014.11.17)
    ー長期ビジョン」と「総合戦略」とりまとめ(2014.12.21)12月27日、閣議決定へ
    ー「長期ビジョン」:
     ・若者の希望が実現すれば、合計特殊出生率は1.8に向上可能。
     ・50年後に人口1億人を達成するには、2030年には1.8、40年には2.07必要。
     ・地方に雇用つくるため、地方移転企業に税制優遇。
    ー「総合戦略」:
     ・地方に若者向け雇用30万人創出。
     ・地方自治体が使いやすい交付金創設。

 8. 税制改革

  ー法人税率引き下げが成長戦略でも重要課題
    日本の法人実効税率は35.6%。他の主要国は 25〜30%。
   ・安倍首相こだわり。「復興特別法人税」を2013年度末に1年前倒しで廃止。
     租税特別措置など意義の低下したものなど廃止して財源つくれるか検討。

  ー法人税引き下げへの道筋。
   ・安倍首相は成長戦略の一環として、国・地方をつうじて法人実効税率を2015年度
    から数年で20%台に引き下げるとかねて言明。
   ・この方針を実現するには、5年で29%台へと6%下げる必要。
   ・2015年度はこの4割にあたる2.5%引き下げに踏み込むが、2.45%くらいが決着点か?
  
  ー法人税引き下げの財源問題
   ・この先、29%へむけて3.5%下げるのは容易でない。1%下げると法人税は4700億円
    減収。6%なら3兆円の減収に相当。
   ・財務省は実効税率引き下げには恒久財源が必要との立場。
   ・2015年度の引き下げには外形標準課税強化で1.2兆円の財源確保を予定。
    その先には、2015年度には外形標準課税拡大を見送った中小企業への課税拡大、
    中小企業への法人軽減税率の軽減幅の縮小も課題。ただ、来年の地方選で難問。

 9. 医療改革

 ー医療は、人口の高齢化のメガトレンドの中で、その費用が加速度的に増大しており、医療費
  の適切な抑制は、日本という国家の持続性を担保するうえでも重要な課題となっている。
  その他にも医療には、多くの問題が山積しているが、患者の満足度向上、健康増進、
  医学の進歩、医療費の適正配分など多くの観点からこれまでもその必要性が叫ばれてきた
 「混合診療制度」の解禁が安倍政権の下で、これまで以上に真剣に議論されている。

 ー混合診療制度とは、特別な高度医療など国の医療保険(健康保険)の適用外にある診療を
  受けても、医療保険適用の分野ではひきつづき保険適用を享受しつづけることができる、
  というもので、外国人が聞いたら、「当たり前」と思うことだが、日本ではこれまでそれが
  許容されなかった。つまり医療保険適用外の治療を受けたら、本来、医療保険適用のはずの
  治療も自由診療扱いになって国民の共通の権利である医療保険を受けられなくなるという
  制度なのである。安倍首相は「混合診療」の解禁に強い意欲をもっており、規制改革会議など
  の場をつかって、粘り強く解禁の方向への議論と検討を進めている。

 ー厚生労働省は2014年11月5日、「混合診療」拡充の具体案を提示。
  原則として全国約100ヶ所の大病院で実施し、中小病院や診療所は患者を紹介するのが
  おもな役割になる。6月の時点では、政府の「新成長戦略」をふまえて、診療所を含む
 「身近な医療機関」で受診できるようにする方針を掲げていたが、実質的には高度医療を
  担う中核病院にほぼ限られる公算が大きくなった。「新成長戦略」の趣旨からは
  一歩後退。医療機関の絞り込みは日本医師会の主張に沿った内容。医師会は表向き混合診療
  拡大に異を唱えないが、開業医の収入源である保険診療の縮小につながると混合診療
  拡大論を強く警戒している。

 ー混合診療を拡大するために「規制改革会議」などが当局と折衝を重ね、「患者申し出療養
 (仮称)」という制度を工夫。患者が希望すれば、抗がん剤など未承認の新薬や医療機器など
  を幅広く使えるようにする制度。また、これまでにも、日本には「保険外併用療養費制度」
  があり、例外として、実施できる薬や技術、施設を国が限って認める制度。今回の厚生労働省
  の対応はこの既存の制度の拡大適用に過ぎないという見方もある。ここでも「新成長戦略」
  の趣旨は後退。さらに、国の審査を原則6週間と現行より短い期間とするとされているが、
  医師会などが主張する安全確保の建前で審査の遅れが常態化するような制度運用が行われ
  れば、「混合診療」の趣旨は現場でさらに形骸化するおそれもある。
 
 10. 社会保障改革

 (1)社会保障給付費(税金と保険料)107兆円(2011)
     年金53兆、医療34兆。
     国と地方の負債は1000兆円。次世代から膨大な借金をしている現制度は
     次世代の生存権を脅かし、日本社会が持続できなくなるおそれ。

 (2)「社会保障制度改革国民会議」報告 8/6清家会長が安倍首相に提出
     これまでは年金、医療、介護、
     これからは雇用、子育て支援、低所得者問題と格差対応必要
     国民健保を都道府県に移管、
     高所得者に応分の負担を
     現役世代を家族政策(子育て支援)と就労で支援

 (3)「プログラム法案」
   ー自民党「社会保障制度特命委員会」「プログラム法案」の骨子了承 12.8.19
   ー政府、さらに詳細な法案決定 13.10.16. 国会提出

   ー「社会保障プログラム法」12/5参院で可決、成立。
     ・医療:70〜74歳、自己負担2割に引き上げ:14年春から
         大企業健保の負担を重く:15年度にも
         国民健康保険を都道府県に移管:17年度までに 
         病床機能の再編:17年度までに
     ・介護:高所得者の自己負担2割に引き上げ:15年度から
         特養ホームの入所を厳しく:15年度から
         要支援者向けサービスを市町村に移管:15年度から
     ・年金:年金控除の縮小:時期見通せず
       受給開始年齢の引き上げ:時期見通せず 

 (4)今日の年金制度は、第二次大戦後、日本の人口構造が若者が多く高齢者が少ない典型的
  なピラミッド型をしていた時代の設計され構築されたもので、高齢化が進み、人口
  構成がピラミッドどころか逆三角形に近い形に変質している今日そして将来に向けて、
  その持続性が当然問われざるを得ない。これまでにも持続性を高めるためにいくつかの
  画期的制度改革が行われてきたが、いずれも日本の人口高齢化と若年層の減少という
  メガトレンドの下では対応できずにきた。

 (5)2014年5月に行われた財政再計算の結果、現行の年金制度は、受給年齢に
  引き上げ、高齢化の進展に即して毎年、給付額を1%弱減らす「マクロスライド」
  の完全実施、労働力参加率の向上と維持などが実現しないと持続可能性に疑問符が
  つき、とりわけ世代間の格差が大きく拡大することが示された。年金改革については、
  2013年7月に「社会保障制度改革国民会議」が答申を出し、年金は年金だけでなく
  雇用や子育て支援など年金制度を維持する現役層に手厚い支援をすることをふくめ
  社会全体の持続力を高める改革が必要であることを説いたが、その後、政治レベル
  では、上記のように、比較的所得の高い層や企業などへの負担を高めるだけの制度
  変革でお茶を濁してきた。今回の財政再計算の結果は、そうして対応だけでは何の
  解決にもならず、抜本的な改革が必要であることが示唆されたが、本当の取り組みは
  これからである。

 11. 国家戦略特区

   ー「国家戦略特区法案」閣議決定(2013.11.5)法成立(2013.12.7)
    ・「国家戦略特別区域諮問会議」
    ・特区ごとに「国家戦略特別区域会議」(通称:特区統合推進本部)
  
   ー国家戦略特区で想定している改革の種類
   ー大都市を対象とする改革案
    都市再生・まちづくり: 容積率、用途規制見直しなど
    教育: 公立学校運営の民間開放(公設民営学校の設置)
    雇用: 雇用条件の明確化、有期雇用の特例
    医療:国際医療拠点で外国人医師の診察解禁、保険外併用療養、医学部新設など
   ー地域選び:(2014.1から)首都圏、大阪など近畿圏、沖縄、新潟など候補
    ・福岡、兵庫・養父市まず指定(2014.6.9)
    ・指定された新潟でローソン農業参入
    ・東京圏(含む成田市)で医療先行、3病院で混合診療計画(2014.12.9)

 12. 賃上げ要請

 (1)政府の賃上げ要請キャンペーン
    ・成長実現には時間かかる。物価上昇先行すると実質所得低下のおそれ。
     それは消費増加によって成長を促進する条件を損なう。
     またアベノミクスへの国民の支持が低下するおそれ。
    ・8月頃から政府、賃上げを促す法人減税の拡充を検討
     9月26日、政府・与党「企業減税最終案」賃上げ促進減税の条件、
      2013年度にくらべ2%以上賃上げ企業に減税措置。2017年まで。

  (2)「政労使会議」9月20日から開始。
    ー経済財政諮問会議民間議員 日本総研 高橋進氏らが提案  
      オランダ政労使「ワッセナー会議」にヒント。
        同会議は、企業は賃上げ、政府は法人減税、労働者は雇用流動性を約束。
    ー日本でも1973年超インフレ収束のために政労使で賃上げ抑制の経験。  
      今回は経済成長の準備条件として生産性に見合った賃上げ呼びかけ
          
    ー政労使会議 2013.12.20最終回
      合意文書「定期給与など安定的な所得の上昇による対応を検討」明記。
     ・経団連「経営労働委員会報告」で、”業績改善企業はベア容認”記述。

  (3)2014年春期賃上げ結果:
     大企業は2%ていど。中小企業は1%以下の賃上げ。

  (4)政労使会議(2014.12.16)
    ー経済界は、賃金の引き上げに向けた最大限の努力を図る」(合意文書)
    ー政府は2015年度に外形標準課税の拡大を予定しているが、3%以上の賃上げ
    (2012年比)をした企業には外形標準課税の負担軽減をはかる。

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