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アベノミクスの2年間と日本経済の課題〜安倍政権の今後のために〜 Part 1

このたび、「アベノミクスの2年間と日本経済の課題〜安倍政権の今後のために〜」
というテーマで原稿を書きました。やや長いので以下、2回に分けて掲載させて戴きます。

l. はじめに


ll. 安倍政権3.0の出発と課題

 1. 2014衆議院選挙の結果

  ー2014年12月14日、投開票の結果

       新議席  公示前勢力  参議院

   自民   291   295    115
   公明   35    31     20
   民主   73    62     59
   維新   41    42     11
   共産   21     8     11
   
   合計   475   480    242

  ー絶対安定多数は266。投票結果は、与党で326、これを60議席上回った。
   自民の地滑り的勝利。官邸の求心力強力。

  ー民主党は73議席で前回選挙より11議席増やしたが、目標の100議席に及ばず、惨敗。

  ー安倍長期政権の可能性:
    この大勝の結果、安倍政権は、現段階ではこれから4年間、選挙せずにつづけられる
    可能性。戦後最長の長期政権となる可能性。

 2. 選挙結果の意味するもの

  ーしかし投票率は52.66%(過去最低)、2012選挙の59.32%より6.66ポイント低い。

  ーFinancial Times など海外論調:
   自民党は大勝したが、得票率は低く、野党が準備不足で混乱しており、他に選択の余地が
   無い消極的選択。安倍首相が選挙の争点を「アベノミクスへの信任を問う」としたが、
   安倍政権の政策が国民の信任を得たかは不明。

 3. 安倍政権3.0の課題
 
  ーアベノミクスをひきつづき推進する。
   原発再開、集団安保、憲法改正にも取り組める可能性。

  ー最大の課題は、経済を本当に浮揚させられるのか?
   経済成長を実現して、実質賃金の向上、財政問題、社会保障問題などの解決の糸口を
   つけられるのか?

  ー以下、安倍政権の経済戦略推進の経過を跡づけ、アベノミクスは本当に経済成長を実現
   できるのかを検討、検証する。また、本当に経済成長を実現するには何をすれば良いか
   若干の政策提案も試みたい。


lll. アベノミクスの展開

 1. 安倍政権の経済戦略構想

 (1)安倍政権の政策目標(悲願):失われた20年を取り戻すデフレ脱却
   ・菅義偉官房長官の「島田塾」での講演
   ・失われた20年、政治の怠慢、財政は財務省に、金融は日銀の任せきり
    政治の取り組み、良い意味での政治主導が欠けていたのではないか?

   ・デフレを脱却して日本経済を順調な成長軌道に乗せ、生活向上、財政再建、社会保障
    の充実を実現するにはどうすればよいか。

  (2)総理、官房長官、学者ら内輪の研究会
    ・浜田宏一、本田悦朗、岩田規久男氏ら。
     黒田東彦氏も(当時ADB総裁)もフィリピンからときどき参加。

    ・デフレは実質経済と貨幣供給のバランス。貨幣供給の不足。
     充分な貨幣供給を実現。ゼロ金利下では、日銀が大量のベースマネーを供給。
     安倍総理以下、リフレーション戦略によるデフレ脱却方針を確信。

   (3)黒田東彦 日銀総裁の実現:
    ・積極的なベースマネー供給主義に消極的な白川方明日銀総裁の交代を意図。
     白川総裁の持論:金融政策は人々の期待には影響できても実質経済は変えられない。
     金融政策で実質経済成長を実現するのは困難。実質経済成長は構造改革。
     リーマンショック以降、主要国の中央銀行が大量のベースマネー供給という
     積極的金融政策を展開するなかで、日本は極めて慎重。
     「日本はデフレ脱却の意思なし?」との国際金融市場での疑念。
     円買いが進展。円為替価値高く、輸出不調、経済停滞。

    ・白川総裁が2012年4月の任期満了を前倒して3月に副総裁と同時に退任を発表。
     日銀業務の円滑な執行のため。

    ・黒田東彦氏を推薦。2012年総選挙の結果、自民・公明与党が絶対安定多数の
     を確保していたので、黒田総裁の国会承認も迅速に実現。

 2. アベノミクス

  (1)安倍政権の経済戦略「アベノミクス」は3本の矢から構成される、とされた。
    ー金融政策(期待感)、財政政策(経済安定)、成長戦略(構造改革)
     をパッケージとする明解な経済戦略

  (2)第一の矢:金融政策
    ーデフレ脱却のために、積極的にベースマネーを供給。
    ーインフレを実現し、人々の期待をデフレからインフレ期待に変えるねらい。
 
  (3)第二の矢:財政政策
    ーデフレ経済をインフレ経済に転換するにはかなりの時間。
    ーその間、必要に応じて、積極的、機動的に財政出動。経済の安定を確保。

  (4)第三の矢:成長戦略
    ー人々のインフレ期待醸成。経済の制度改革と構造改革
    ー人々の勤労意欲、企業家の投資意欲の向上期待
    ー総合的な構造改革で実質経済の成長を実現。
    ー経済成長のメリット:
         ・雇用増進と所得向上実現
         ・財政再建促進
         ・社会保障充実


lV. 第一の矢:金融政策は人々の期待感を変えたか?

 1. 第一の矢の成果:

   ー黒田東彦日銀総裁の”バズーカ”宣言
     ・着任早々、2013年4月3日、日銀会見
     ・2年間で2%のインフレ実現公約
     ・2年間で日銀のベースマネー供給を2倍に。
       130兆円→270兆円(2015年春までに)
     ・黒田総裁は、これを『異次元緩和』と表現。
    
    ー世界の機関投資家、投機筋が敏速な反応
      ・実際、Goldman Asset ManagementのJames, O’Neal会長は
       2012年11月15日、野田佳彦民主党党首の解散発言の直後、
       “Buy Abe, buy Japan” を世界の顧客とGoldmanのネットワークに配信。
      ・円供給急増を見込んで、大量の円先売り、大量の日本株式投資。

    ー円の為替レートは2ヶ月で2割低下→輸出企業の収益急増を示唆
    ー株価は、8000円(2012年11月)から15000円(2013年5月)
       そして17000円(2014年夏以降)に上昇。2倍以上。

    ー経済に活気。高額消費増大。明らかに株価上昇の影響
    ー異次元緩和は劇的な効果をもたらした。その限りにおいては“成功”と評価できる。

 2. 異次元金融政策と物価動向、インフレ期待は?

  (1)黒田総裁の国際公約、2015年春には2.0%インフレ達成は実現するか? 
    ーインフレ率着実に上昇。
    ・円安の進行(1ドル120円にも低下)によるエネルギー、食糧など輸入価格上昇
     が推進。 物価上昇率は2014年4月には1.5%まで伸び、2015年春には2%に達する
     との展望。
    ー黒田日銀総裁は、2015年には2%インフレ実現に自信。
    ー日銀のインフレ率の指標となる消費者物価指数(CPI)は、通常のCPIから生鮮食料品
     と消費税の影響を差し引いたもの。 
    
   (2)物価上昇率が急低下
    ー物価上昇率が2014年夏から低下、予想外の原油価格急落のインパクトか。
    ー夏までは、日銀は、2015年春には物価上昇率1.9%を予測。
     2%の近傍として国際公約は実現できると踏んでいた。

    ー2014年9月のCPI(生鮮食品と消費増税の影響除く。10月31日発表)は1.0%。
    ー10月に準備した『物価リポート』では内部データとして2015年春1.5%。
     『物価リポート』(2014年10月)は10月末に公表されるが、1.5%では、
     国際公約は守られるとはいえない。
    ー黒田総裁、日銀幹部に危機感。ひそかに大胆な追加緩和を準備。

   (3)インフレ期待は?
      インフレ期待は醸成されたか?
      人々の期待感醸成には時間? インフレ期待下での行動パターンはまだまだ。
      インフレ率低下(とくに国際原油価格の予想外の低落)で期待しぼむ?

 3. 黒田総裁の第二次バズーカ宣言と内外の反響

  (1)2014年10月31日、意表をついた第二次バズーカ宣言
   
    ー日銀発表の要旨:
     ・マネタリーベースをふやして、年80兆円とする。
     ・長期国債買い入れ量を30兆円増加して80兆円とする。
     ・リスク資産の購入を3倍。
    
    ー積極果敢な金融政策でインフレ実現、インフレマインドによる行動変化を後押し。
    ー消費税引き上げ前提のアベノミクス推進(経済成長実現)の環境整備がねらい?
    ・(大量追加緩和→円安誘導→物価上昇→インフレマインド喚起→成長促進)

  (2)大きなサプライズ効果
    ーアメリカ連銀が金融緩和政策(QE)の終了を宣言した直後。
    ーこれまで追加緩和の可能性に全く言及せずに、意表をついた大規模緩和の宣言。
    ー日本のみならず、アメリカなど世界株価も上昇。

  4. 財政赤字の日銀引き受けのリスク

  (1)財政規律低下のリスク
    ー黒田日銀の積極金融政策は、実質的に政府の財政赤字の日銀によるファイナンス。
     日銀による直接ファイナンスは財政法が禁じられているが、日銀が市場から国債など
     を買い上げる現行の方式は、大量購入した国債を市場売却できないような事態に
     なれば実質的に日銀ファイナンス。
    ー財政規律が失われる怖れ。

  (2)出口戦略
    ー日銀の異次元的金融緩和による莫大なベースマネー供給は無限にはつづけられない。
     経済成長など一定の条件が整った段階で終了する出口戦略が必要である。
    ー大量のベースマネーの供給で蓄積した日銀の資産は膨大であり、これを着実に
     縮小させるには、市場に無駄な混乱を招かないよう、計画的に周到かつ慎重に
     進める必要がある。
    ー田幡直樹氏は、アメリカ連銀の経験を参考に、日本がとるべき戦略の要点を
     判りやすく説いているが、資産規模が膨大になるので、出口戦略の実行には
     10年はかかるとしている。(田幡直樹「日銀の金融政策正常化」『日経新聞』
     (2014.11.24)

V. 第二の矢:積極財政がもたらすもの

  1. 目的:経済転換過程の安定化と円滑化
    ー経済構造転換過程は円滑、順調に進むとは限らない
    ー順調な成長過程実現に至る道程では、機動的は財政支出によるサポートが必要。
    ー実際、2013年度の財政支出は、経済成長を支えるうえで重要な役割。

  2. 積極財政と財政再建の展望
  (1)積極財政:
    ー2013年度:15ヶ月予算戦略
     ・2013.1.15. 緊急経済対策、総額20兆円、補正予算13.1兆円(2/26成立)
    ー2013年度本予算: 92.6兆円、
    ー消費税対応:5兆円、
    ー2014年度予算:99.2兆円、
    ー2015年度予算:98兆円規模。

  (2)財政再建の展望
     ー財政再建計画:2010年策定、
     ”2010年PB(6.7%)を2015年までに半減(3.2%)、2020年までに0または黒字”

     ー2014年、2015年度は再建計画の軌道をギリギリ維持と予測。
      ・2014年度 税収50兆円見込む(6.9兆円増収、ただし、うち4.5兆円は
       消費税↑による)消費税増収分、2014年度 2015年度、各年、4.5兆円増収。
       2013.8月の中期財政計画では国の一般会計のPB、両年 4兆円ずつ改善見込み。

     ー安倍首相、第二次消費増税延期の決断。
      ・安倍首相は2014年11月18日、2015年10月に予定されていた第二次消費増税
       8%から10%への増税を、2017年4月に延期すると宣言。同時に、衆議院解散宣言。
      ・予定されていた消費税増収分 4.5兆円が先送りされたため、2015年度は
       財政再建計画の軌道からはずれるおそれ。

 3. 財政規律喪失のリスク

 (1)財政再建計画は実現するか?
     ー2020年度、PBバランスを達成するには、10%の消費税では足りない。
     ー消費税だけでバランスさせるには、17%必要。

 (2)財政規律喪失のリスク
     ー2015年度から早くも財政再建計画の軌道から脱落するおそれ。
     ーこんごの展望は不透明。安倍首相は2017年までに経済成長率をたかめて
      消費税増税に環境を整備するとしているが、出来るか?
     ーMoody’s Investers Serviceは、安倍首相の第二次消費増税延期の発言をうけて、
      日本国債の評価をA1に格下げ。これはAa3の中国、韓国、台湾以下。
      オマーン、チェコ、イスラエル、エストニアと同格。
      財政再建の実現性が遠のいたとの評価。
      日本国債の償還可能性に”注意信号”

 (3)財政規律喪失の帰結
     ー財政規律が失われたと市場が判断すると日本国債の価格急落
     ー1200兆円の政府債務。利回りが1%上昇すると、12兆円の債務膨張。
     ー利回り=金利暴騰、財政破綻、人々の資産価値激減のおそれ。
     ーすでにcapital flight(資本逃避)進行。


Ⅵ. 第三の矢:成長戦略は機能したか?

 1. 成長戦略への期待
  (1)異次元的金融戦略、機動的財政戦略には大きなリスク
    ー財政規律の弱化もしくは喪失による国債価格の下落   
    ー利回り=金利の高騰、財政破綻、資産減価から喪失も

  (2)これらのリスクを吸収するのは経済成長。
    ー「経済成長戦略」への期待
    ー経済成長さえ実現すれば、
      ・雇用増進と所得向上実現⇒増収
        ・⇒財政再建促進
        ・⇒社会保障充実

 2. 第一次成長戦略

  ・第一次成長戦略の概要
  「日本再興戦略」(2013/6/14閣議決定)

 (1)成長戦略のねらいと目標
   ・今後10年間平均で、名目GDP 3%成長、実質2%程度の成長目指す
   ・新たなフロンティア創出
   ・女性、若者の能力活用

 (2)「三つのアクションプラン」
   1)日本産業再興プラン
   ー緊急構造改革プログラム(産業の新陳代謝促進)「産業競争力法」制定、実施。
    ー雇用制度改革・人材力の強化:過度な雇用維持から労働移動支援へ
   ー科学技術イノベーションの推進:「総合科学技術会議」の司令塔機能強化

   2)戦略市場創造プラン
    ー健康:国民の”健康寿命”の延伸
      ーエネルギー:クリーン・経済的なエネルギー需給の実現
    ー次世代インフラ
    ー世界から稼げる地域育成

  3)国際展開戦略プラン
  ー戦略的な通商関係の構築と経済連携の推進
   ・貿易FTA比率を現在の19%から2018年までに70%に高める
   ・TPPの取組からRCEP(東アジア地域包括的経済連携)、日中韓FTA、さらに
      FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)に拡大発展めざす。
    ・ちなみに韓国は70%達成(2014.11):アメリカ、EU, 中国とFTA締結による。
  ー海外市場獲得のための戦略的取り組み   
  ー我が国の成長を支える資金・人材等に関する基盤の整備

 3. 経済成長動向と第二次成長戦略への取り組み

  (1)経済成長動向
    ー第一次成長戦略は2014年6月14日、閣議決定、発表。
     ・2013年通年の成長率は2.3%。
     ・1〜3月期、4.9%、4〜6月期、3.5%、7〜9月期、1.3%、10〜12月期、0.3%
    ー成長率急速鈍化: 政府の成長戦略は構造改革であって、即効性は期待できない。
      にもかかわらず、成長戦略発表後、成長率の急速鈍化に政権は危機感

  (2)構造改革による岩盤規制の打破
    ー安倍首相は、2014年1月20日の「産業競争力会議」席上で「成長戦略進化のための
     今後の検討方針」発表。第二次成長戦略策定方針言明。
    ー岩盤規制分野:農業、医療、雇用などの構造改革に鋭意取り組む覚悟明示。


Vll. 第二次成長戦略(『日本再興戦略 改訂2014』)の内容と挑戦

 1. 取り組みの陣容と経過

   (1)産業競争力会議は、経済税制諮問会議、規制改革会議とも連携して改革案構築。

    ・産業競争力会議:
      甘利経済財政再生相議長、岡素之(住友商事相談役)、竹中平蔵(慶大)、
      長谷川閑史(武田薬品社長)三木谷浩史(楽天社長)、新浪剛史(ローソン社長)
      ら10人。

    ・「規制改革会議」:
      岡素之議長(住友商事相談役)、大田弘子議長代理(政策科学大学院教授)、 
      大崎貞和(野村総研)、翁百合(日本総研)ら14人。

     ・経済財政諮問会議:       
        議長:安倍晋三首相、民間議員:小林喜光(三菱ケミカルH)、佐々木則夫(東芝社長)
        伊藤元重(東大教授)、高橋進(日本総合研究所理事長)
        官房長官、経済財政相、財務相、総務相、経済産業相談、日銀総裁
       
   (2)第二次成長戦略(『日本再興戦略 改訂2014』ほか)は2014年6月24日閣議決定

     ・産業競争力会議報告『日本再興戦略 改訂2014』は本文124p、概要19p
     ・「規制改革会議」『規制改革に関する第2次答申〜加速する規制改革〜』106p
     ・「経済財政諮問会議」答申『経済財政運営と改革の基本方針2014について』80p

    ーこれらは膨大かつ詳細な内容で、Financial Times とThe Economistは、「新成長
     戦略」発表直後の論評で、これは the third arrow ではなく、
     one thousand needles と評した。

 2. 産業と労働の新陳代謝
   (1)「競争力強化法」の制定と実施:
      産業の新陳代謝を進めるため供給過剰の解消、未来志向の産業創出を促進
   (2)労働力の適材適所を促進:  雇用調整給付金を大幅削減。


 3. 企業統治と資本市場
   企業投資の透明性向上、株主の監視と発言力強化、高収益積極投資促進めざす改革。

   (1)会社法改正(2014年6月20日成立):企業は最低1人の独立社外取役を選任すべし。
   (2)ガバナンスコード(企業統治のための企業の行動規範)の策定(2015年株主総会まで
   (3) Stewardship codeの導入。機関投資家向けに定められた行動規範。株主の発言強化
   (4)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針の積極化:安定+高収益志向へ。
   (5)JPX日経400インデックス:ROE向上への意識改革促進。


 4. TPP交渉
   (1)TPPは10年ほど前に、環太平洋地域の4つの小国が高度で理想的な自由貿易圏構想として
    打ち出し、アメリカが2010年に参加。日本は2013年7月参加。現在の参加国は12。モノ  
    の貿易だけでなく、サービスや投資ルールなど21分やで高度な自由化を志向。
  
   (2)日本はこの高度な自由貿易圏に参加することで、貿易や投資の自由化のメリットを享受
     できることから、安倍政権の成長戦略の重要な柱と位置づけ。

   (3)交渉は総合的に進められ、焦点が絞られてきているが、その過程には曲折があった。
    2013年10月、首脳レベルで高度な合意形成をねらったシンガポールでの首脳会議に
    オバマ大統領が国内事情でドタキャン、各国の失望を買った。オバマ大統領の2014年4月
    のアジア歴訪の一環として4月下旬に日本を訪問する際に、高度な合意が得られるかとの
    期待感があったが、2日半にわたる閣僚レベルの高密度の交渉でも結着がつかず。アメリカ
    は日本が農産品5項目、とりわけ豚肉の関税撤廃に応じない事が障碍と喧伝しているが、
    アメリカ側にも自動車安全基準問題など障碍は多い。日米両大国がなんらかの合意に
    到達しないと他の国々が前進するモメンタムが働きにくい。

  (4)2014年11月のアメリカ中間選挙が、TPP進展の契機になるか期待されたが、TPPは題材
    にならず、オバマ民主党の大敗となり、議会調整が一段と困難に。通常、こうした貿易交渉
    を加速するには、アメリカでは大統領に議会がTPA(Trade Promotion Authority?)という
    貿易促進権限を付与する。これは通称、”Fast Track”(近道)と呼ばれるが、議会はこの
    権限をオバマ大統領に付与していない。TPA交渉参加国にしてみれば、大統領と合意が
    できても議会が否決することはあり得るわけでリスクが大きいことも障碍だ。

 (5)日本は粘り強い努力をつづけているが、TPPで何らかの合意を得て、成長戦略にはずみを
    つけたいところ。

 5. 農業改革

  (1)農業の規制と既得権の岩盤を打破して活力ある農業者や企業が自由に農業活動をできる
    ようにすることで農業を成長産業にする。

  (2)減反政策の廃止。
   ー減反政策は1970年に導入され、コメの市場価格維持のための生産調整(作付け面積の
    削減)に協力する農家には補助金を支給する政策。この政策によって農家は自由競争
    から遮断されるので、技術革新や経営改革などの努力によって競争に勝とうとする
    インセンティブをもちにくくなり、日本の農業の競争力強化の障碍になっていると
    考えられる。

   ー政府は「競争力会議」等の提案をうけて、2014年11月、5年後(2018年)までに減反
    政策を廃止する方針を決定。段階的に減反補助金を削減し、浮いた財源を農業強化のため
    に有効に活用することとした。「競争力会議」は活力ある「認定農業者」に支給を提案
    したが、農水省などの抵抗で、中小農家一般に支給することになり、競争力強化の意図
    はこの面では後退している。

 (3)農協の改革。
   ー「規制改革会議」は2014年5月22日、の農協の抜本的な改革案を提示。その主な内容は
     1)JA全中と県中央会の地域農協への指導権と監査権を廃止し、地域農協の自由度を 
      高める。
     2)JA全農を株式会社化し、経営を効率化。合理化と経営努力をさせ、安い農業資材など
      を供給し、また企業などと連携しやすくする。
     3)地域農協の金融事業を農林中金に譲渡・売却し、地域農協は代理店として手数料を得
      るだけで、不要なリスクを負うことなく農業活動に専念できるようにする。
  
    ーこの大胆な改革案に対し、農協は強力な反対キャンペーンを展開したが、首相ら政府首脳
     は「これまでのような法定の中央会制度は変える」と考えは譲らず、自民党は「JA全中
     の廃止を柱にした農協改革案は大筋で容認するものの、JA全中に代わる一定の権限を持
     つ組織をつくる形」でJAグループの自己改革努力に期待する」との妥協案を示した。
     その後、めぼしい展開はまだない。

  (4)農地制度・政策の改革
    ー農地政策の改革の主眼は、企業が農業に参入し活躍しやすい環境を農地の面で
     整備することであり、また、意欲と活力のある専業農家や企業などの担い手が農地
     の集約による生産性の向上を実現しやすくする環境を整備すること、にある。

    ーそのためには、1)現在の農地法の規定下では、企業が農業をするためには参加
    しなくてはならない「農業生産法人」をもっと活用しやすくすること、そして
    2)農地の売買、貸借、利用を現場で管轄する「農業委員会」が閉ざされたムラ
    のしがらみに支配されずに、開放的に公正に判断ができるようにする。

    ー1)農業生産法人については、これまで企業は25%までしか出資できなかったが、
     その上限を50%未満とする。100%出資を可能にするか、は5年後に検討。
     2)農業委員会については委員を農家の互選でなく市町村長が任命し、議会の同意を
     得て決めることした。

    ー一方、政府は、農地の集積・集約化、有効活用で、農業生産コストに削減を促進
     するため、農地中間管理機構(通称、農地バンク)を設立。農地バンクが管理する
     農地を、産業競争力会議や規制改革会議は、農業法人、大規模農家、企業などに提供
     すべきと提案。農水省は地元農村の意向を尊重し、地元で協議し、公募すべきと主張。
     ここでも農業の競争力強化は一歩後退。

 6. 労働規制、女性の活用、外国人労働者

 (1)働き方の規制改革

  1)労働時間規制見直し:成果報酬の導入
   ー安倍首相は「労働時間制度の新しい選択肢を示す」「働いた時間でなく、成果に給与を
    払う ”ホワイトカラーエグゼンプション”の導入」の検討指示。産業競争力会議(2014年
    5月28日)、専門職を中心に週40時間を基本とする労働時間規制をはずす方針提案。
   ー厚生労働省は大幅な見直しには慎重。労働組合は際限のない”奴隷労働”になるおそれがある
    と反対。
   ー今後、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で、具体的な制度設計を詰めて、1年
    以内に結論を得る。具体策で骨抜きのおそれも。

   2)雇用契約と解雇の金銭補償
    ー産業競争力会議は欧米では慣行化している解雇の金銭補償のルールを法定すべしと
     提案。厚労省は5.28の産業競争力会議で、新制度の導入は見送ると主張。民間議員は、
     こんご検討して、1年以内に結論を出すべきと主張。
    ー2015年4月をめどに、内閣官房、厚労省、法務省が合同で有識者会議を儲け、新制度
     の枠組みをつくる。労働政策審議会(労使代表参加)で詳細を詰め、早ければ2016年
     の通常国会で関連法の改正をめざす。

    3)派遣期間、有期雇用法案
    ー労働者派遣法改正案。人が入れ替われば、同じ仕事をずっと派遣社員に任せられる。
     派遣期間の上限をなくし、派遣社員をローテーションなどして質効率を高める。
     この法案は条文にミスがあると野党が指摘して廃案。(2014.6.20)

    ー改正派遣法案は、2014年10月末から衆議院で再度、審議入りしたが、野党の反対
     が強く、時間切れで、先送りされた。改正派遣法案は、野党からは派遣を固定化する
     との批判があるが、その都度、職場を変わるよりも、同じ職場でローテーションも
     可能になる改正法案は、派遣労働者の技能蓄積にメリットがあり、また、勤労者の
     半数が制約の少ない派遣就労を希望している現実から見ても先送りは残念。

    ー有期雇用労働者特措法案。専門職の有期雇用を最長5年から10年に延長。
     定年後の再雇用は有期雇用の期限なし。

 (2)女性の活躍支援

   1)子育て支援の充実
   ー子育て支援策
     産業競争力会議(2014.5.28)で子育て支援策提示
      ・学童の受け入れ枠を2014年の90万人から2017年度まで30万人増で120万人に。      
      ・全小学校区に「放課後子供教室」計2万ヶ所整備
    
     ー女性を働きやすくする。
      ・上場企業は役員のうち女性比率の開示義務
      ・フレックス制度の充実

     ー働いても損しないしくみ:配偶者控除の縮小
    
     ー認可保育所以外も補助。政府は消費増税で生まれる財源のうち7000億円
      (10%引き上げ後)をつかって認可保育所なみの保育サービスをより多くの人々
       (待機児童は2.2万人と推計)が使えるようにする。対策費6200億円計上。

    2)税制の改革
      ー配偶者控除(専業主婦世帯の所得税を軽くする優遇税制、103万円の壁、実際は
       段階的に控除額を減らすので、逆転減少は起きない)の見直し政府部内で検討開始。
      ー政府税調所得税改革の議論開始。(2014.10.6)
       ・配偶者控除と基礎控除の仕組みを見直して夫婦の控除額がそれぞれの年収に
        かかわらず一定になる「家族控除」の仕組の導入を政府提案。

 (3)外国人材の活用

    1)技能実習制度の拡充
    ー産業競争力会議(2014.1.20)外国人労働者の受け入れ環境の整備明記。
     最長3年の技能実習制度の期間延長や介護分野への拡大検討方針。
    
    2)関係閣僚会議(2014.4.4)
    ー外国人技能実習生の在留期間延長や帰国後の再入国を時限的に認める緊急措置を決定。
    ・実習期間が終了した後、以下のいずれかを認める。
    ・法相が指定する「特定活動」としてそのまま2年間在留。
    ・帰国後1年未満で再来日し、最長2年間の「特定活動」。
    ・帰国後1年以上たった実習生が再来日し、最長3年間の特定活動。
     通算、最長で8年。

    3)産業競争力会議(2014.6.10)
     ー外国人受け入れ拡大策策定→「成長戦略」に盛り込む
      ・技能実習生:(製造、建設、農業、13.7万人)・期間を3年から5年程度に。
     
      ・新しい在留資格:(業種や地域を指定)
        ・家事手伝いを国家戦略特区で先行受け入れ
        ・メーカーの海外子会社の従業員の受け入れ
        ・特定の国家資格をとった留学生は就職可能に

      ー専門家:(13.3万人)
        ・年収や学歴が高い人材を優遇するポイント制度を拡大

     4)高度人材問題。労働力が長期的に減少し、技術水準が向上する日本がもっとも
       必要としているのは、“高度人材。” ただ、高度人材は、世界各国は皆、求めて
       おり、日本は高度人材を受け入れる環境では多くの面で競争力がない。高度人材
       を迎えるにふさわしい生活環境、言語環境、法制度などの整備が急務。

 7. 人口減少と地方創生

 (1)人口減少と高齢化の衝撃

  ー社会的費用の増大:
   国民負担率:現在:高齢化率(25%)で40%、2050年高齢化率40%で73%(大和総研)
   73%を50%に下げることは、次世代にそのまま負担を転嫁することになる。
   日本の社会の持続可能性に黄信号

  ー経済・地域に深刻な影響
   ・労働力の減少によって現在の経済構造を前提にすればやがて経済成長が限界に。
    マイナス成長の常態化も。
   ・地域は、東京など大都市への人口移動がつづくと、人口減少全体の影響がより深刻に
    及ぶ地域(とりわけ地方)で過疎化と人口減少が加速し、存続困難な地域も出てくる。

 (2)増田レポートとそのインパクト
   1)増田寛也レポート(日本創成会議)
    ー日本創成会議・人口減少問題検討分科会レポート:2014年5月8日
    「成長を続ける21世紀のために『ストップ少子化・地方元気戦略』」

   2)人口減少と人口移動で消滅する自治体
    ー人口移動が収束しない(東京など大都市への流入がつづく)前提。20〜39歳女性人口
     5割以下に減る自治体(消滅可能都市)数は、896(全体の49.8%)になる。

   3)増田レポートの提言
     ー地方から大都市へ若者が流出する”人の流れ”を変え、東京一極集中に歯止め。
     ・地方の人口流出を食い止める「ダム機能」を構築しなおす。

 (3) 50年後に1億人維持目標
    ー経済財政諮問会議有識者懇談会提言「選択する未来」 2014年5月13日
    ・日本の人口を”2060年に1億人に維持すべし”と提言。
     日本の人口は2010年に1億2806人、50年後には8674万人に減少の見込み。
    ・1億人維持するには出生率を2.07に引き上げる必要

 (4)地方創生本部設置
   ー地方創生本部の設置(2014年9月5日)「まち・ひと・しごと創生本部」設立。
    (本部長、安倍晋三首相)地方創生担当大臣、石破茂氏、内閣改造で就任
    ・有識者には、増田寛也、坂根正弘コマツ相談役、冨山和彦経営共創基盤CEOら。
  
   ー地方創生総合戦略の重点5分野
    ・移住、雇用、子育て、行政の集約と拠点化、地域間の連携

   ー地方創生計画(ヴィジョン)の策定にむけて
    ・7月25日:「まち、ひと、しごと創生本部」の準備室設置
    ・8月末:2015年予算概算要求、1兆円
    ・9月:内閣改造で「地方創生相」新設。
      「まち・ひと・しごと創生本部」発足。
    ・10月:臨時国会に関連法案にの一弾提出
    ・12月:15年度税制改正に地方創生対策反映

   2015年
    ・1月:国が「長期ビジョン」と「総合戦略」を公表
      通常国会に関連法案第二弾を提出
    ・3月末まで:各都道府県が「地方ビジョン」と公表
    ・4月以降:各都道府県が「地方版総合戦略」を公表。

  (5)地方創生法
    ー地方創生法成立(2014.11.17)
    ー長期ビジョン」と「総合戦略」とりまとめ(2014.12.21)12月27日、閣議決定へ
    ー「長期ビジョン」:
     ・若者の希望が実現すれば、合計特殊出生率は1.8に向上可能。
     ・50年後に人口1億人を達成するには、2030年には1.8、40年には2.07必要。
     ・地方に雇用つくるため、地方移転企業に税制優遇。
    ー「総合戦略」:
     ・地方に若者向け雇用30万人創出。
     ・地方自治体が使いやすい交付金創設。

 8. 税制改革

  ー法人税率引き下げが成長戦略でも重要課題
    日本の法人実効税率は35.6%。他の主要国は 25〜30%。
   ・安倍首相こだわり。「復興特別法人税」を2013年度末に1年前倒しで廃止。
     租税特別措置など意義の低下したものなど廃止して財源つくれるか検討。

  ー法人税引き下げへの道筋。
   ・安倍首相は成長戦略の一環として、国・地方をつうじて法人実効税率を2015年度
    から数年で20%台に引き下げるとかねて言明。
   ・この方針を実現するには、5年で29%台へと6%下げる必要。
   ・2015年度はこの4割にあたる2.5%引き下げに踏み込むが、2.45%くらいが決着点か?
  
  ー法人税引き下げの財源問題
   ・この先、29%へむけて3.5%下げるのは容易でない。1%下げると法人税は4700億円
    減収。6%なら3兆円の減収に相当。
   ・財務省は実効税率引き下げには恒久財源が必要との立場。
   ・2015年度の引き下げには外形標準課税強化で1.2兆円の財源確保を予定。
    その先には、2015年度には外形標準課税拡大を見送った中小企業への課税拡大、
    中小企業への法人軽減税率の軽減幅の縮小も課題。ただ、来年の地方選で難問。

 9. 医療改革

 ー医療は、人口の高齢化のメガトレンドの中で、その費用が加速度的に増大しており、医療費
  の適切な抑制は、日本という国家の持続性を担保するうえでも重要な課題となっている。
  その他にも医療には、多くの問題が山積しているが、患者の満足度向上、健康増進、
  医学の進歩、医療費の適正配分など多くの観点からこれまでもその必要性が叫ばれてきた
 「混合診療制度」の解禁が安倍政権の下で、これまで以上に真剣に議論されている。

 ー混合診療制度とは、特別な高度医療など国の医療保険(健康保険)の適用外にある診療を
  受けても、医療保険適用の分野ではひきつづき保険適用を享受しつづけることができる、
  というもので、外国人が聞いたら、「当たり前」と思うことだが、日本ではこれまでそれが
  許容されなかった。つまり医療保険適用外の治療を受けたら、本来、医療保険適用のはずの
  治療も自由診療扱いになって国民の共通の権利である医療保険を受けられなくなるという
  制度なのである。安倍首相は「混合診療」の解禁に強い意欲をもっており、規制改革会議など
  の場をつかって、粘り強く解禁の方向への議論と検討を進めている。

 ー厚生労働省は2014年11月5日、「混合診療」拡充の具体案を提示。
  原則として全国約100ヶ所の大病院で実施し、中小病院や診療所は患者を紹介するのが
  おもな役割になる。6月の時点では、政府の「新成長戦略」をふまえて、診療所を含む
 「身近な医療機関」で受診できるようにする方針を掲げていたが、実質的には高度医療を
  担う中核病院にほぼ限られる公算が大きくなった。「新成長戦略」の趣旨からは
  一歩後退。医療機関の絞り込みは日本医師会の主張に沿った内容。医師会は表向き混合診療
  拡大に異を唱えないが、開業医の収入源である保険診療の縮小につながると混合診療
  拡大論を強く警戒している。

 ー混合診療を拡大するために「規制改革会議」などが当局と折衝を重ね、「患者申し出療養
 (仮称)」という制度を工夫。患者が希望すれば、抗がん剤など未承認の新薬や医療機器など
  を幅広く使えるようにする制度。また、これまでにも、日本には「保険外併用療養費制度」
  があり、例外として、実施できる薬や技術、施設を国が限って認める制度。今回の厚生労働省
  の対応はこの既存の制度の拡大適用に過ぎないという見方もある。ここでも「新成長戦略」
  の趣旨は後退。さらに、国の審査を原則6週間と現行より短い期間とするとされているが、
  医師会などが主張する安全確保の建前で審査の遅れが常態化するような制度運用が行われ
  れば、「混合診療」の趣旨は現場でさらに形骸化するおそれもある。
 
 10. 社会保障改革

 (1)社会保障給付費(税金と保険料)107兆円(2011)
     年金53兆、医療34兆。
     国と地方の負債は1000兆円。次世代から膨大な借金をしている現制度は
     次世代の生存権を脅かし、日本社会が持続できなくなるおそれ。

 (2)「社会保障制度改革国民会議」報告 8/6清家会長が安倍首相に提出
     これまでは年金、医療、介護、
     これからは雇用、子育て支援、低所得者問題と格差対応必要
     国民健保を都道府県に移管、
     高所得者に応分の負担を
     現役世代を家族政策(子育て支援)と就労で支援

 (3)「プログラム法案」
   ー自民党「社会保障制度特命委員会」「プログラム法案」の骨子了承 12.8.19
   ー政府、さらに詳細な法案決定 13.10.16. 国会提出

   ー「社会保障プログラム法」12/5参院で可決、成立。
     ・医療:70〜74歳、自己負担2割に引き上げ:14年春から
         大企業健保の負担を重く:15年度にも
         国民健康保険を都道府県に移管:17年度までに 
         病床機能の再編:17年度までに
     ・介護:高所得者の自己負担2割に引き上げ:15年度から
         特養ホームの入所を厳しく:15年度から
         要支援者向けサービスを市町村に移管:15年度から
     ・年金:年金控除の縮小:時期見通せず
       受給開始年齢の引き上げ:時期見通せず 

 (4)今日の年金制度は、第二次大戦後、日本の人口構造が若者が多く高齢者が少ない典型的
  なピラミッド型をしていた時代の設計され構築されたもので、高齢化が進み、人口
  構成がピラミッドどころか逆三角形に近い形に変質している今日そして将来に向けて、
  その持続性が当然問われざるを得ない。これまでにも持続性を高めるためにいくつかの
  画期的制度改革が行われてきたが、いずれも日本の人口高齢化と若年層の減少という
  メガトレンドの下では対応できずにきた。

 (5)2014年5月に行われた財政再計算の結果、現行の年金制度は、受給年齢に
  引き上げ、高齢化の進展に即して毎年、給付額を1%弱減らす「マクロスライド」
  の完全実施、労働力参加率の向上と維持などが実現しないと持続可能性に疑問符が
  つき、とりわけ世代間の格差が大きく拡大することが示された。年金改革については、
  2013年7月に「社会保障制度改革国民会議」が答申を出し、年金は年金だけでなく
  雇用や子育て支援など年金制度を維持する現役層に手厚い支援をすることをふくめ
  社会全体の持続力を高める改革が必要であることを説いたが、その後、政治レベル
  では、上記のように、比較的所得の高い層や企業などへの負担を高めるだけの制度
  変革でお茶を濁してきた。今回の財政再計算の結果は、そうして対応だけでは何の
  解決にもならず、抜本的な改革が必要であることが示唆されたが、本当の取り組みは
  これからである。

 11. 国家戦略特区

   ー「国家戦略特区法案」閣議決定(2013.11.5)法成立(2013.12.7)
    ・「国家戦略特別区域諮問会議」
    ・特区ごとに「国家戦略特別区域会議」(通称:特区統合推進本部)
  
   ー国家戦略特区で想定している改革の種類
   ー大都市を対象とする改革案
    都市再生・まちづくり: 容積率、用途規制見直しなど
    教育: 公立学校運営の民間開放(公設民営学校の設置)
    雇用: 雇用条件の明確化、有期雇用の特例
    医療:国際医療拠点で外国人医師の診察解禁、保険外併用療養、医学部新設など
   ー地域選び:(2014.1から)首都圏、大阪など近畿圏、沖縄、新潟など候補
    ・福岡、兵庫・養父市まず指定(2014.6.9)
    ・指定された新潟でローソン農業参入
    ・東京圏(含む成田市)で医療先行、3病院で混合診療計画(2014.12.9)

 12. 賃上げ要請

 (1)政府の賃上げ要請キャンペーン
    ・成長実現には時間かかる。物価上昇先行すると実質所得低下のおそれ。
     それは消費増加によって成長を促進する条件を損なう。
     またアベノミクスへの国民の支持が低下するおそれ。
    ・8月頃から政府、賃上げを促す法人減税の拡充を検討
     9月26日、政府・与党「企業減税最終案」賃上げ促進減税の条件、
      2013年度にくらべ2%以上賃上げ企業に減税措置。2017年まで。

  (2)「政労使会議」9月20日から開始。
    ー経済財政諮問会議民間議員 日本総研 高橋進氏らが提案  
      オランダ政労使「ワッセナー会議」にヒント。
        同会議は、企業は賃上げ、政府は法人減税、労働者は雇用流動性を約束。
    ー日本でも1973年超インフレ収束のために政労使で賃上げ抑制の経験。  
      今回は経済成長の準備条件として生産性に見合った賃上げ呼びかけ
          
    ー政労使会議 2013.12.20最終回
      合意文書「定期給与など安定的な所得の上昇による対応を検討」明記。
     ・経団連「経営労働委員会報告」で、”業績改善企業はベア容認”記述。

  (3)2014年春期賃上げ結果:
     大企業は2%ていど。中小企業は1%以下の賃上げ。

  (4)政労使会議(2014.12.16)
    ー経済界は、賃金の引き上げに向けた最大限の努力を図る」(合意文書)
    ー政府は2015年度に外形標準課税の拡大を予定しているが、3%以上の賃上げ
    (2012年比)をした企業には外形標準課税の負担軽減をはかる。

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