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「人口縮小と地方創生への取り組み」安倍政権第二次成長戦略各論:その3

l. はじめに

ー最重要の政策課題
ー第二次成長戦略の中では後発項目
ー地方創生計画とその効果


ll. 人口減少と高齢化のトレンド

1. 人口減少と高齢化のトレンド

 将来人口推計(中位推計、合計特殊出生率 1.35)
         2010   2040   2060   2090  2110
 総人口(万人) 1.2806  1.0728  8674   5727  4286
 65歳以上人口   2948  3868   3464   2357  1770
 高齢化率%    23.0   36.1    39.9   41.2   41.3  
 生産年齢人口   8174   5787   4418   2854  2126
 0〜14歳人口   1684   1073    792   516   391
  Source: 増田寛也編著『地方消滅』中公新書 2014.
  出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2012年1月推計)より

2. 人口減少と高齢化の衝撃

ー社会的費用の増大:
 国民負担率: 現在:高齢化率(25%)で40%、2050年高齢化率40%で73%(大和総研)
 73%を50%に下げることは、次世代にそのまま負担を転嫁することになる。
 日本の社会の持続可能性に黄信号

ー経済・地域に深刻な影響
 ・労働力の減少によって現在の経済構造を前提にすればやがて経済成長が限界に。
  マイナス成長の常態化も。
 ・地域は、東京など大都市への人口移動がつづくと、人口減少全体の影響がより深刻に
  及ぶ地域(とりわけ地方)で過疎化と人口減少が加速し、存続困難な地域も出てくる。
  (増田レポート参照)


lll. 増田レポートとそのインパクト


1. 増田寛也レポート(日本創生会議)
 ー日本創成会議・人口減少問題検討分科会レポート:2014年5月8日
  「成長を続ける21世紀のために『ストップ少子化・地方元気戦略』」

2. 人口減少と人口移動で消滅する自治体
 ー人口の再生産力に注目:とくに「20〜39歳の女性人口」に焦点。
   なぜならこの年齢層が人口の再生産力の95%を決めるから。
 ー国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2013年3月推計)をベース
   2010年から2040年までの30年間で、20〜39女性人口が5割以上減少する市区町村は
   373(全体の20.7%)。ただし、社人研推計は人口移動率が将来一定に収束する前提。
 ー人口移動が収束しない(東京など大都市への流入がつづく)場合を前提にすると、   
   20〜39歳女性人口が5割以下に減る自治体数は、896(全体の49.8%)になる。
   これを「消滅可能都市」とした。
 ーこうした市町村が8割以上になるのが、青森県、岩手県、秋田県、山形県、島根県、
  5割以上になるのが24道県。さらに896のうち2040年に人口1万人切るのが29.1%。
  消滅の可能性高い。

3. 増田レポートの提言
 ー国民の希望出生率:合計特殊出生率で1.8を想定。その実現に注力。
 ー地方から大都市へ若者が流出する”人の流れ”を変え、東京一極集中に歯止め。
   ・地方の人口流出を食い止める「ダム機能」を構築しなおす。
     大都市に出た若者を呼び戻す機能の強化。それは若者に人気のある
     「地域拠点都市」を中核とした新たな集積構造をつくること。
   ・東京は今後は世界有数の「国際都市」として多様性を生かして国内よりも海外
     の人材や資源を大胆に誘致し、地方中核拠点都市圏との補完関係を構築。

  ー「長期ビジョン」と「総合戦略」
   ・「長期ビジョン」(20年ていど)立案し、具体政策もりこむ「総合戦略」策定。
   ・「第1次総合戦略」82015〜24年)、「第2次総合戦略」(2025〜34年)
   ・「総合戦略本部」(内閣):長期ビジョンや総合戦略を策定
    「地域戦略協議会」:「地域版長期ビジョン」「地域版総合戦略」策定。
  ーストップ少子化戦略:若者が結婚し、子供を生み、育てやすい環境づくり。
   ・若者の雇用・生活の安定
   ・結婚・妊娠・出産支援、子育て支援、働き方改革、多子世帯支援、男性の育児参加
    高齢者優遇制度の見直し

  ー地方元気戦略:魅力ある地域拠点都市振興
   ・新たな集積構造、コンパクトな拠点、ネットワーク
   ・地域資源を生かした産業、スキル、人材の地方シフト、農林水産業の再生
   ・地方に人を呼び込む:地方大学再編強化、地方企業へ就職支援、ふるさと納税推進

  ー女性・人材活躍戦略
   ・女性就労目標の達成
   ・働き方に中立な税、社会保障、
   ・女性登用(行政、民間企業に数値目標)
   ・高齢者の定義見直し、高齢者就業促進
   ・海外から高度人材を受け入れ。

4. 2013年「人口動態統計」
 ー厚生労働省は2014年6月4日、2013年「人口動態統計(概数)」を発表。
  子供の出生数は過去最小の102万9800人。
  人口の自然減(出生数ー死亡数)は23万8632人。
 ー合計特殊出生率は1.43、前年より0.02P上昇。しかし女性人口そのものが減少傾向
  にあるので、今後も少子化は進む傾向。出産時の母親の平均年齢は30.4歳、21年
  連続上昇。2013年生まれの子供、前年比、7431人減少。死亡126.8万人で戦後最多
 ー結婚件数は66万594組(8275組減少)戦後最小。
  初婚年齢、男30.9(前年30.8)、女29.3(前年29.2)晩婚化ひきつづき進む
 ー人口減少傾向鮮明。


lV. 50年後に1億人維持目標

1. 政府「有識者懇談会」提言 2014年5月13日
 ー政府(経済財政諮問会議)有識者委員会「選択する未来」(会長、三村明夫日商会頭)提言
 ー日本の人口を”2060年に1億人に維持すべし”と提言。
  日本人口は2010年に1億2806人、50年後には8674万人に減少の見込み。
2. 1億人維持するには出生率を2.07に引き上げる必要
 ー1億人を50年後に維持するためには、合計特殊出生率を現在の1.43から2.07(人口
  維持出生率)に引き上げる必要。
 
3. 1億人目標達成への対策
 ー有識者委員会は以下の対策を提案
  ・50年後に1億人の人口を維持
  ・出産・子育て支援を倍増
  ・外国人材の戦略的な受け入れ
  ・70歳まで働ける社会をつくる
  ・地方都市の集約と活性化

ーこの提言は経済財政諮問会議の「骨太報告」に盛り込まれ、安倍政権第二次成長戦略に
  組み込まれる予定。


V. 地方創生本部設置

1. 地方創生本部の設置
 ー2014年9月5日、「まち・ひと・しごと創生本部」(本部長、安倍晋三首相)
  設立。地方創生担当大臣、石破茂氏、内閣改造で就任
 ー有識者には、増田寛也、坂根正弘コマツ相談役、冨山和彦経営共創基盤CEOら。
 ー趣旨:地方の人口減少に歯止め、地方の活性化

2. 地方創生本部のつくりと活動
 ー創生本部事務局長、杉田和博官房副長官、
  総務、財務、国土交通など関係省庁から70人
ーその後(10月初旬)大臣補佐官に金融に詳しい伊藤達也議員。金融実務に詳しい
  民間人も登用。
  また10月1日、事務局常勤職員を87人に増員。うち4人は富山、山口、高知から。

3. 石破創生担当大臣に首相指示。
 ー安倍首相、2014年9月9日、首相官邸で、石破担当大臣に7項目の指示
 ・人口減少克服、人口の東京一極集中是正
 ・短期、中長期の政策目標を設定
 ・省庁の縦割りを排除
 ・税制、社会保障制度などの改革を検討
 ・地域の個性を尊重
 ・地方自治体間で連携
 ・地方の現場に積極的に出向く
 ー首相の意気込み:
  首相は2014年秋の国会を「地方創生国会」と位置づけ。
  施政方針演説(9.29)では、鳥取・大山の地ビール、島根・海士町のさざえカレーなど
  成功事例多数紹介。野党批判”全国物産展のようだ”

   ー石破大臣発言:
  ・自治体が自由に使える交付金提供。活性化策講ずる自治体に税制優遇(9.26)
  ・地方で起業する個人事業者に、税制・金融などで優遇策を実施したい。(10.5)

4. 創生本部初会合(2014年9月12日)
 ー石破創生相、基本方針提示
  ・若い世代の結婚・子育て支援、
  ・東京への人口流出歯止め、
  ・地域の広域連携による経済圏づくり

 ー短期・長期策
  ・中小企業への経営指導。大企業と中小企業の橋渡し。
  ・地方に多い中小サービス業の生産性改善
  ・若者の採用を増やす企業に交付金
  ・雇用の受け皿となる新産業の育成
  ・農地の集約を促す交付金
  ・企業などの新規参入を増やす規制緩和
  ・未開通で途切れた高速道路の整備
  ・人口減を前提とした行政機能の集約

5. 創生本部(2014.10.10)会合

  ー長期ビジョン目標(50年後に人口1億人維持)
  ・若い世代の就労・結婚・子育ての希望実現
  ・東京圏への過度の人口集中是正
  ・地域の特性に即した課題解決
  ー地方創生総合戦略の重点5分野
   1. 移住
    ・移住希望者の支援
    ・企業の移転、地方採用、遠隔勤務の促進
    ・地方大学の活性化
   2. 雇用
    ・地域産業の雇用創出、人材育成
    ・農業、観光、福祉の産業基盤の強化
   3. 子育て
    ・結婚から子育てまでの切れ目のない支援
    ・多子世帯、3世代同居の支援
   4. 行政の集約と拠点化
    ・拠点都市の公共施設・サービスの集約
    ・中山間地など小さな拠点での生活支援
   5. 地域間の連携
    ・拠点都市と近隣市町村の連携推進

6. 地方創生計画(ヴィジョン)の策定にむけて
 ー7月25日:「まち、ひと、しごと創生本部」の準備室設置
 ー8月末:2015年予算概算要求、1兆円
 ー9月:内閣改造で「地方創生相」新設。
     「まち・ひと・しごと創生本部」発足。
 ー10月:臨時国会に関連法案にの一弾提出
 ー12月:15年度税制改正に地方創生対策反映
 2015年
 ー1月:国が「長期ビジョン」と「総合戦略」を公表
     通常国会に関連法案第二弾を提出
 ー3月末まで:各都道府県が「地方ビジョン」と公表
 ー4月以降:各都道府県が「地方版総合戦略」を公表。


Vl. 地方創成戦略の趣旨と評価

1.地方創生戦略は何をするのか
 ー地方創生戦略の趣旨は良く、意義は大きい。
 ー何をめざすのか?成功事例?海士町?地域の実情、地域の主体性、藤原忠彦氏コメント、
 ー地域の主体性:道州制?
 ー予算獲得競争、バラマキのおそれ?
   例:国交省、2015年度予算に「地方創生」関連予算として、約2兆4500億円計上予定。
    (ちなみに、国交予算概算要求は当初予算比16%増の6兆6870億円)

2. 女性が仕事と子育てを両立できる社会構築が基本。
 ー都会で女性が仕事をしつつ子供を生み育てやすい環境整備を
 ー子育て環境整備にもっと社会支援を、フランス、スェーデンに学べ(日本の3倍)

3. 若干の提案

(1)移住・交流、健康戦略
 ー人口減少のメガトレンドの中で、地方が空洞化し、ついには地方の自治体が消滅することが
  懸念されている。そうした事態を回避するために、多くの施策が、地方創生戦略の中で
  構想されているが、大都市住民の地方との交流や移住は有用な施策である。なぜなら、
  大都市にとってはそうした人口流出はわずかであっても、人口規模の小さな地方にとって
  は大きな活性化の助けになりうるからである。

ー筆者はこの8年ほど、総務省の関連団体である「移住・交流推進機構(JOIN)会長として
  その運動を支援してきているが、都市住民にとって、親戚などのいない未知の地方について
  の情報や手がかりがないことがネックになっている。情報提供が重要な鍵である。


ーまた、熟年、高年の大都市住民にとって、地方の魅力はなんといってもきれいな空気、水、
  都会のストレスからの解放である。しかし、同時に、住居、商店街、娯楽、教育、介護、
  病院などの生活インフラも必須である。

 ーこうした事業や実験は多く行われており、総合的、綿密な調査による知見の蓄積を
  活用して適切な施策が実行されることが望ましい。 

(2)コンパクトシティと農地改革
  ー高齢化の社会的費用が膨張する中で、旧来型の広域に分散した住民の居住形態に固執すること
  は行政経費はじめ地域で負担する社会的費用が膨大になるおそれ。高齢者が適切に集中する
  居住区に住むコンパクトシティはそうした社会的費用を削減することができ、限られた資源 
  をより有効に効率的に使うことを促進する。

 ー過疎化の進む農村地域などでは、これまで農業に従事していた高齢者を市街地あるいは
  集中的な居住区に住んでもらうことで、耕作者のいなくなった農地を集約してより効率的
  で生産性の高い農業を推進することができる。現在、政府は、農業の生産性向上のために
  農地の集約化、企業参入の環境条件整備を進めているが(農業生産法人への出資規制の
  緩和、農業委員会の役員選任方式の改革等)、コンパクトシティの推進はこうした農業
  の改革に大きく資する可能性がる。

(3)エネルギー戦略の大転換
  ー原発からの離脱、化石燃料からの離脱の一方で、再生可能な自然エネルギーへの転換
   が叫ばれている。従来の原発は化石燃料の発電所は、工場生産型であり、消費地に
   近い拠点に設置されていた。これに対して、自然エネルギーは、太陽光、風力、地熱
   バイオマス、小水力などいずれも大きな面積を必要とする、いうなれば、点ではなく、
   面のエネルギー転換装置が特徴で、大きな面積を活用できる過疎地が立地に適している。

  ーこうしたエネルギー生産は固定価格買い取り制度の下では、たとえば、稲作の面積あたり
   の収穫高を上回る収益があがる。言い換えれば、自然エネルギーへの戦略転換は、従来、
   過疎地であったような遠隔の地方に大きな経済収益をもたらす可能性が大きく、地方創生
   戦略でも大きな役割を果たしうる。

 ーここで重要なことは、北海道や東北といった風力発電のような自然エネルギー資源を
   豊にもった地域で造出された電力を、いかに大量に効率よく東京などに伝達するか
   ということである。すなわち、大規模で効率的な送電インフラが必須の条件になる。
   山崎養世氏は、高速道路を送電インフラに使うことを提案しているが、有用な提案 
   である。

(4)情報の活用

  ー大都市にひとびとが集中するのは情報集積の吸引力が大きい。しかし、近年進展
   しつつある個人型の情報共有ネットワークの発展は、地域を超えた情報の共有
   を可能にしつつある。国内では、テレワークなどの労働形態が普及する可能性
   がある。

  ーさらにこうした情報技術や活用の方法またネットワークは、国境をこえて展開し得るし、
   また実際、急速に発達している。地方は国内大都市に対する地方にとどまることなく、
   グローバル社会での、事業拠点としての役割が出てきている。この可能性を活用すべきだ。

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