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2014年6月

アベノミクスと日本経済・2014年の軌跡:序説

1. はじめに

安倍政権が誕生してこの5月末で1年半を経た。安倍政権は、経済面ではいわゆる”アベノミクス”という一連の経済政策を掲げて、それまで20年近くもつづいたデフレを脱却し、経済成長と財政再建の双方を実現すべく注力している。安倍政権の戦略と政策は私達、日本国民の生活と仕事にとっても、日本経済の復活にとっても、また世界経済にとっても重要な意味をもつので、私は、安倍政権の誕生以来、定期的にその政策を観察し多少の論評を加えて、このブログに掲載してきた。

前回の掲載はほぼ半年前、つまり安倍政権誕生後、およそ1年後だった。そこでは、アベノミクスのいわゆる”3本の矢”の内容と成果そして問題点について観察しコメントした。とりわけ、第三の矢である”成長戦略”がどこまで進んだのかをやや詳しく紹介して論評した。

今回は、いわば私の定点観測として、その後の半年間で、成長戦略がどこまで進展したのかを観察し若干のコメントをしたいと思う。今の時点(6月初)でその作業をすることは実はあまり効果的でない。というのは安倍政権は6月下旬に、昨年6月に閣議決定した成長戦略『日本再興戦略』を点検強化した新成長戦略を発表することにしている。したがって、新成長戦略が発表されてから、紹介、論評した方が読者の皆さんとの情報共有という意味ではより効果的である。

にもかかわらず、私がこの時点で情報を整理しておきたいと思うひとつの理由は、このほど私が官邸から依頼されて、アメリカのgrass rootsでの日本理解を進めるために官邸が企画した『歩こうアメリカ、語ろうニッポン』というプロジェクトに参加し島田チームを率いて、6月中旬に、アメリカ各地を訪問し、さまざまな階層の人々と意見交換をすることになるので、その前に、私なりに安倍政権の経済戦略について現状までの経緯を整理しておくことの意義があるのでは、ということである。

そのために多くの資料を整理し、消化し、再構成しつつ、そうした詳しい吟味にもとづいて私なりの評価をしようと思ったが、実は上記の官邸の依頼によるPTの渡米が明日に
迫ったので、今はその作業の時間がなく、ここでは、帰国後に詳細に展開する私の議論の趣旨と項目を序説として示しておきたい。

1. 成長戦略進化の方向性と取り組み

安倍政権は2014年1月20日に開催された産業競争力会議の席上で、「成長戦略進化のための今後の検討方針」を明らかにした。そこでは検討方針確認の趣旨は、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」の実施努力をつうじて浮かび上がった問題点やさらなる可能性などについて総合的に検討し、2014年6月をメドに策定する新たな「成長戦略」のための基本的な方向と焦点を明らかにし、また、確実に実行するための方法論も再確認することにあった。

「検討方針」の主な項目は以下のとおりである。

l. 働く人と企業にとって世界トップレベルの活動しやすい環境の実現
 1. 女性の活躍推進と全員参加型社会実現のための働き方改革
 2. 日本社会の内なるグローバル化
 3. イノベーション・ベンチャー・ITの加速化と事業環境の向上

ll. これまで成長産業と見なされてこなかった分野のエンジンとしての育成
 1. 社会保障の持続可能性確保と質の高いヘルスケアサービスの成長産業化
 2. 農林水産業の成長産業化に向けた改革

lll. 成長の果実の地域・中小企業への波及と持続可能性のある新たな地域構造の創出

これらの大、中項はさらに24の小項目に分けて具体的な政策対象として描かれているが、それは次の機会に詳しく紹介することとしたい。

産業競争力会議は、経済税制諮問会議と密接に連携をとり、また、規制改革会議とも連動して、改革案を検討・構築していく。改革実現のために国家戦略特区を活用し、また改革案の策定と政策実施についてはKPIレビューを実施して、目標がどれだけ達成されたか、されなければ何が足りなかったのか、それを改善する政策担当者の責任を明らかにして確実に政策目標に実現をはかるという方法論が再確認された。

2. 成長戦略の推進と評価

安倍政権の発足から華々しく掲げられたアベノミクスは御高承のように「3本の矢」から成ると解りやすく説明された。第一の矢は「金融戦略」で、日銀がベースマネーを2年間ば倍増するとを約束するという画期的もしくは“異次元的”政策を打ち出すことで、市場の期待感を変え、日本経済を包んでいるデフレマインドを払拭して2年目には2%程度のインフレを定着させることを意図した。

その戦略は、まず内外の投機家、投資家の敏感な反応を喚起し、円レートの大幅な下落、それによる輸出企業の利益増大期待、そしてそれを反映する株価の上昇、さらにそれを見込んだ投機家による日本株への大量の資金投入で株価が半年で8割も上昇するというめざましい変化をもたらした。外資による翻弄はあったものの、2014年6月初の時点では、安倍政権誕生直前にくらべて株価は平均でほぼ倍増しており、第一の矢は緒戦では大成功を納めたと言えるだろう。

また、本来の目的であるインフレ期待の醸成については、円レートの低下による輸入価格の上昇が国内物価を引き上げ、日銀は2%インフレの定着が視野に入ってきたと判断している。しかしこれについては、輸入物価の上昇によるインフレは健全ではなく、本来は、円レートの低下が輸出と投資を増加させ、それが雇用を増やして賃金上昇につながり、そうした所得増価が消費増価となって需要がインフレを惹き起こすという望ましい循環はまで見えないという批判がある。これにたいして安倍政権の重要なadvisorである浜田宏一氏は、アベノミクスによって2013年に受給ギャップが確実に縮まってきており、その意味で、健全な成長プロセスの実現に向かいつつ有ると積極的に評価している(日本経済新聞2014.4.1)

そうした好ましいインフレの循環が起きないかぎり、今の景気は長続きせず、経済刺激のためにさらなる財政支出が求められ、また日銀が次の大幅緩和を迫られるような事態が招来されないとはいえない。そうなれば財政再建はより困難となり、また日銀が政府の財政赤字をファイナンスするとう意味で、財政規律の喪失がより明確となることであり、それは国債価格の急落という危機につながるおそれがある、という批判である。

こうした将来への懸念とアベノミクスへの批判は、2013年の前半にめざましい経済成長率を示した日本経済が7〜9月期、10〜12月期に目立って減速したためににわかに高まった。しかし、2014年にはいって1〜3月期が年率実質で5.9%という急成長を示したためアベノミクスへの期待感はまた持続している感がある。もっとも、この大幅な成長は明らかに消費税導入まえの”駆け込み需要”の反映であり、消費税導入後の落ち込みが4〜6月期でどれほどになるかでまたアベノミクスの効能があらためて問われることになるのだろう。アダム・ポーゼン氏は安倍政権が取り組んでいる政策項目はいずれも適切だが、政権がその目指すことを実現するためには、いままでより何倍も大きな力で、そして抜本的な構想で推進する必要があると強調している(Financial Times 2014.2.26)

実際、経済成長の中味を吟味してみると、消費は堅調であるものの、輸出は円安にもかかわらず、あまり伸びずに、むしろ成長にはマイナス要因となり、成長を牽引したのはおもに公共投資であったという結果が出ている。その意味では、第二の矢である機動的な財政が一定の役割を果たしたといえるが、しかし、財政支出の膨張は膨大な財政赤字に苦しむ日本の財政再建をさらに困難にしつつあることは明らかで、日本経済の健全な成長実現のためにはあまり肯定できることではない。

したがって、日本経済が経済成長と財政再建を両立するという健全な成長軌道を実現するために、内外の期待が高まるのが、成長戦略である。成長こそが日本経済を救う最大の課題であるということは共通の認識といえるが、私見では、”成長”があたかも政府の責任であるかのような議論は、本末転倒であるというほかはない。なぜなら、成長を実現するのはあくまで民間の経済活動であり、成長の根源であるinnovationを進めるのも民間の創意、工夫と活力である。政府の役割はそうした民間の活力は創造力が充分に発揮されるための環境条件、制度条件を整備することに過ぎない。吉川洋氏は1960〜70年代の高度成長は人口の増加もあったが、成長の最大の要因はinnovaitonだった。これからは人口減少時代だが、そうした時代にふさわしい社会のニーズを先取りしたinnovation実現すること、そうした民間部門のinnovationが実現しやすいように政府はその環境条件を整えるべきだと強調している。(日本経済新聞2014.4.7)デール・ジョルゲンソン氏は成長を実現するには時代を先取りした経済構造を創造することが必要で、そのためには経済社会が全体で自己改革、構造改革を進める必要があるが、それは時間のかかるプロセスであり、強い決意をもって粘り強く取り組む課題であるといましめている。(日本経済新聞「経済教室)2014.1.8)

3. 成長戦略の取り組み

政権は、2014年に入って、これまでよりさらに総合的に、また深く、より力強く成長戦略の多くの項目について改革努力を進めてきている。以下では、その主な項目
とそこでどのような改革に取り組んできているかを簡単に紹介しよう。ここでは頭出しの紹介にとどめて、詳論は次の機会に譲りたい。

(1)企業統治と資本市場の改革
これは日本経済の成長力をたかめるために、企業の活力を強化する制度改革である。日本企業はこれまでの長期デフレの下で、資金を投資などに活用せずに内部に蓄積する傾向があった。最近では企業の内部留保金はGDPの6割にも相当する300兆円にも達しているとされる。企業が合理的な判断として積極的に資金を活用して投資したり、従業員の報酬や株主の配当を厚くしたりするような環境条件、制度条件を整える必要があると安倍政権は判断し、社外取締役の設置を義務づける、収益率や企業統治の高さなどを考慮した新たな株式指数(JPX日経400)の公表、機関投資家の受託者責任に関する原則(日本版stewardship)の策定、GPIF(年金積立金管理運用独立法人)の資金運用を債券だけでなく株式などリスク資産にも配分する、法人税を引き下げるなどの制度改革を精力的に行ってきている。

(2)法人税の引き下げ
日本の法人課税は諸外国に比べて著しく高い。これが日本企業の企業活動を抑制するばかりでなく外国企業が立地先として日本を選択しなくなっている大きな原因のひとつであることはつとに指摘されてきたところだが、高齢化と人口減少傾向の下で個人課税が所得税を高めるだけでなく消費税も増税せさるを得ない状況になってきている中で、企業には減税するということはなかなか国民の支持が得難い状況があった。しかし、安倍政権は敢えてこの困難な課題に取り組み、とりわけ安倍首相の強いリーダーシップの下で、現在30%強の法人税(国税)を5年以内に20%台にするという目標を掲げて議論と調整が行われている。

(3)働き方
日本の勤労者の働き方は労働時間法制の下で、正規のフルタイム労働者は一日の標準老移動時間が8時間と定められており、勤務時間がそれを超えれば超過時間手当(残業手当)が支払われる仕組みになっている。欧米諸国では普及しているwhite collar exemption(頭脳労働者はこうした労働時間規制が適用されず報酬は成果に応じて支払われるので、勤労者は自分の働く時間を自由に選択できる)は日本ではこれまで認められていなかった。しかし誰にも一律に適用される日本の労働時間制度がとくに頭脳労働者の生産性を低めてきたのではないか、との問題意識の下に、フレックスタイム制、成果報酬、など働き方に選択の余地を増やして生産性向上をはかりやすい制度環境を整備しようと熱心な議論が重ねられてきており、半世紀以上も固定していた労働時間制度にある程度の制度改革が行われる見通しになってきている。

(4)女性の活用
日本の女性の労働力参加率は平均では60%を越えており、欧米に遜色はない。しかし日本の特異性は、年齢階層別のパターンが子育て期にはいると労働力率が極端に落ちるいわゆるM字型サイクルを描くことである。子育てを終えた女性はまた労働市場に復帰するが、すでに職業キャリアは途中で断絶しているのと、中年以降には能力や技能をフルに生かせる職業に就き難いので女性の職業能力が生涯をつうじて生かされないという点である。この障碍を克服するには子育て支援の社会的インフラを大きく整備することが必要で、安倍内閣では待機児童ゼロ作戦や小学校低学年の学童保育の定員を30万人増やすなどの施策を掲げている。

また、日本の家族税制には、配偶者控除という特異な制度があり、妻が年収103万円を越えると世帯所得にかかる税率が変わり、結果として手取り賃金がそれ以下の時間の就労より減るという逆転現象があった。それは主婦の限界就労を妨げる効果があるので、そうしたことのないように夫婦二人が受けられる控除額が同額となるような「家族控除制度」の導入が検討されている。

(5)外国人雇用
日本は出生率が低位に推移しているため、5年前から全人口は現象に転じ、近年は毎年0.6%ほど減少している。日本の人口は現在の2.17億人から2050年頃には9000億人ほどに減少すると見込まれており、労働力は現在の6500万人から2050年には労働力参加率の動向にもよるが、5000万人前後に縮小すると予想されている。これは大きな労働力の減少であり、多くの国ではこうした状況下では、外国人労働力を迎えることで人口のバランスをはかってきた。日本はこうした事態が前々から予想されたにも拘らず文化的、民族的など多くの理由からか、外国人労働者受け入れには極め慎重であった。しかしすでに多くの分野で労働力不足が深刻化している現状の下で、外国人労働者受け入れの枠組みを柔軟化しようとの議論が熱心に行われ、研修実習制度の中で、研修後の実習(事実上の労働)期間をこれまでの3年から5年に延長するなど制度改訂が実現される方向である。

いまひとつ重要なのは、技術者、研究者、経営者などの高度人材の受け入れである。彼らは世界の条件の良いところを選んで就労する傾向があるので、彼らを惹き付けられるような総合的な環境条件の整備も課題である。後述する「国家戦略特区」などもそうした条件を先行的に整備する場として活用する余地がある。

(6)医療
医療は、人口の高齢化のメガトレンドの中で、その費用が加速度的に増大しており、医療費の適切な抑制は、日本という国家の持続性を担保するうえでも重要な課題となっている。その他にも医療には、多くの問題が山積しているが、患者の満足度向上、健康増進、医学の進歩、医療費の適正配分など多くの観点からこれまでもその必要性が叫ばれてきた「混合診療制度」の解禁が安倍政権の下で、これまで以上に真剣に議論されている。

混合診療制度とは、特別な高度医療など国の医療保険(健康保険)の適用外にある診療を受けても、医療保険適用の分野ではひきつづき保険適用を享受しつづけることができる、というもので、外国人が聞いたら、「当たり前」と思うことだが、日本ではこれまでそれが許容されなかった。つまり医療保険適用外の治療を受けたら、本来、医療保険適用のはずの治療も自由診療扱いになって国民の共通の権利である医療保険を受けられなくなるという制度なのである。安倍首相は「混合診療」の解禁に強い意欲をもっており、規制改革会議などの場をつかって、粘り強く解禁の方向への議論と検討を進めている。

(7)年金
今日の年金制度は、第二次大戦後、日本の人口構造が若者が多く高齢者が少ない典型的なピラミッド型をしていた時代の設計され構築されたもので、高齢化が進み、人口構成がピラミッドどころか逆三角形に近い形に変質している今日そして将来に向けて、その持続性が当然問われざるを得ない。これまでにも持続性を高めるためにいくつかの画期的な制度改革が行われてきたが、いずれも日本の人口高齢化と若年層の減少というメガトレンドの下では対応できずにきた。

2014年5月に行われた財政再計算の結果、現行の年金制度は、受給年齢に引き上げ、高齢化の進展に即して毎年、給付額を1%弱減らす「マクロスライド」の完全実施、労働力参加率の向上と維持などが実現しないと持続可能性に疑問符がつき、とりわけ世代間の格差が大きく拡大することが示された。年金改革については、2013年7月に「年金制度改革国民会議」が答申を出し、年金は年金だけでなく雇用や子育て支援など年金制度を維持する現役層に手厚い支援をすることをふくめ社会全体の持続力を高める改革が必要であることを説いたが、その後、政治レベルでは、比較的所得の高い層や企業などへの負担を高めるだけの制度変革でお茶を濁してきた。今回の財政再計算の結果は、そうして対応だけでは何の解決にもならず、抜本的な改革が必要であることが示唆されたが、取り組みはこれからである。

(8)TPP
TPPは10年ほど前に、ニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイなど環太平洋の4つの小国が、高度で理想的な自由貿易圏構想として打ち出した。アジアで成長の市場機会を確保したいアメリカがこれに興味をもって4年前に参加し、それ以後、さみだれ的に数カ国が参加し、日本は昨年7月にようやく参加し、現在、参加国は12である。

TPPはモノの貿易だけでなくサービスや投資ルールなど21分野で高度な自由化をしようという野心的な試みである。日本は7月の参加以来、熱心に交渉を2国間ならびに多国間で進めてきた。昨年末までには多くの分野で自由化交渉のステップを進め、問題領域がだいぶ狭まってきた。

アメリカは自分の強い分野で他のメンバー諸国に強力に自由化を迫ってきている。たとえば、ベトナムやマレーシアなどのアジアの中進国には、知的所有権の保護、また国有企業の解消などを迫っている。アメリカの強い映画や音楽、またアジアでは国有企業が担っている通信やインフラなどの分野でアジア市場を席巻したい。日本にたいしては欧州製にはるかに遅れをとっているアメリカ車の販売拡大を押しつけ、また牛肉、豚肉などアメリカが圧倒的に強い分野での関税撤廃を要求している。

昨年10月に、こうした残された重要分野は、閣僚や交渉官でなく、大統領や首相レベルの首脳会談で合意の方向を確定しようというアメリカの呼びかけで首脳がシンガポールにあつまったが、オバマ大統領は本国の財政問題で共和党と折り合いがつかずに暗礁に乗り上げたため、3日前になって突然、欠席を通告して、TPPは求心力を失い年内の号機形成は不可能になった。新年になり、各国はそれでも熱心に交渉を再開して突破口をさぐろうとしたが、2月の閣僚交渉も成果がなく、オバマ大統領が日本などを歴訪する4月最終週に世界の関心が集まった。しかし安倍首相、オバマ大統領の間では、2.5日に渡って集中的な討議を閣僚などスタッフにさせたにも拘らす、合意を得ることができなかった。

障碍は主として、牛・豚、とりわけ豚肉の関税撤廃をいうアメリカの自己中心的要求に日本が応じられなかったことと世界では報道されている。アメリカはこのほかに日本で売れないアメリカ車をアメリカの安全基準で売れと迫っている。日本では欧州車が良く売れているのが、なぜかを研究しようともしないアメリカの態度は一方的としか言いようがないが、なぜか世界では、日本が最後で譲らないからTPPが前進しないかのような論調が多いのが妙である。

日本では、安倍政権はTPPを最大の成長戦略と位置づけてその成功のためにできるだけの努力をしてきている。たとえば、元来、保護貿易の牙城とされてきた農業においてさえ、政治リスクを賭けて「減反政策」という外堀を埋め、この半年は、「JA全中」(農協改革)、「JA全農」(農業法人改革)、農業委員会改革、という本丸攻めに取り組んでいる。

これだけの国内改革をするのだったら、豚肉という比較的規模の小さい分野での高度に政治的な妥協を、たとえばアメリカや関係諸国に恩を着せて、関税を全撤廃する代わりに、国内では当面、養豚業者の所得を全部保障し、関税撤廃にいたるプロセス20年くらいと要求し、その期間内に日本農業を根本的に近代化するといった戦略的対応もあるいは可能なのではないか、とも思えるし、そうした提案をする識者も居る。

TPP交渉に真剣に取り組む安倍政権の首相はじめ関係者の努力を大いに評価すると同時に、場合によっては異次元的政治決断で世界に恩を売るといった離れ業を演じても良いのではとも思う。

4. これからー新たな成長戦略へ

ここまで書いてきて深夜になったので、ここで筆を置くこととする。第3の節で書き残したのは、農業と国家戦略特区である。これらについては次に機会に詳述することとする。

私はこれからアメリカのふたつの都市で、チームを率いて、対日理解促進のための遊説に出かけます。6月下旬に帰国しますが、その頃には、新しい成長戦略が発表されていると思う。次のエッセイは、その「成長戦略」の概要を紹介するとともに、ここに至る安倍政権と関係者の努力の軌跡を辿りながら、成長戦略の各政策の意味を詳しく私なりに説明し、吟味し、評価したいと思う。

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