« 2013年3月 | トップページ | 2013年6月 »

2013年4月

安倍政権とこれからの日本(島田晴雄講演録4/4)

Vl.展望と課題

現状を見てきたことを踏まえて、この後の展望と課題についてみていきたい。今後のシナリオには良いシナリオと悪いシナリオがある。

1.良いシナリオ
(1)株高・円安のメリットと波及効果
今進んでいる、株高・円高のメリットがある。まずキャピタルゲインが生まれている。輸出収益が増大し、投資や消費刺激効果がでてくる。産業界にも明るさがある。

(2)成長展望がメリットを持続・拡大
このような状況は、成長展望がしっかり見えてくれば、海外投資家も投資を持続させるだろう。円安傾向が持続する中で輸出企業の収益が拡大し、投資が刺激され、生産が拡大する。インフレ傾向が生じて、デフレ脱却し、投資・消費マインドがさらに向上する。

(3)参議院選挙の自民党勝利
このような中で参議院選挙が実施されれば、自民党が勝利する。そのように考えると成長戦略を6月に出すのは遅すぎる。4月か5月でないといけない。今は非常に危い状況である。競争力会議の中身も心配である。
うまいシナリオでは自民党が参院選で勝利し、そうすれば3年間は選挙がないので、本格的な改革に取り組める。1年ごとの選挙では何もできない。政権の改革戦略には、本来、3〜4年のtime horizonが必要である。ただし安倍さんの場合は、”歴史的改革(憲法、安保、教育など)”が国内と国際社会で誤解や不要な反発を招かないよう国家戦略と思想のしっかりした説明が必要となる。

(4)経済成長、財政再建、所得上昇、社会保障充実
経済成長が実現しはじめれば、あるいは「成長戦略」によって人びとがその期待を持てれば、消費税引き上げの環境整備、財政再建、所得上昇、そして社会保障充実の展望が開ける。消費税引き上げは短期的には、駆け込み需要を喚起するが、引き上げ後は反動減が予想される。経済成長展望はそのマイナスを緩和・吸収する。
財政再建の最大の基盤は、経済成長による税収増である。円安とインフレの進行そして積極財政下で金利の上昇も予期されるが、経済成長が見込めれば、そして実現していけば、金利の上昇による債務の膨張も税収増で吸収できる。
賃金・所得の上昇は経済成長が実現してはじめて可能になる。円安がインフレを促進し、その分、実質賃金は下がるが、経済成長による名目賃金の上昇でそれを吸収できる。
高齢化にともなって社会保障支出が大きく上昇するが、経済成長による税収増と所得上昇によってあるていど吸収できる。ただ、現行の社会保障制度や社会の制度・構造のままでは、社会保障費の増大負担は、相当な経済成長でも吸収しにくい増加になると見込まれ、抜本的な社会保障の構造、制度改革が急務となる。

(5)経済成長そして成長戦略が好循環のすべての鍵。
上記のように、経済成長はすべての難問を解決ないし緩和する鍵となる。逆に、現実的、説得的成長戦略が策定できなければ、また実際に、それが経済成長の実現につながらなければ、アベノミクスは成功しない。「成長戦略」の戦略的重要性は極めて高い。

2.悪いシナリオ
(1)成長展望不透明、株安、円安
成長戦略が説得的・現実的でない場合、外国機関投資家は、俊敏に判断して、利益を確定し、世界の次の獲物に資金を移動・投入する可能性が高い。「成長戦略」は6月に策定とされているが、その骨格や特徴は4月ないし5月には見えてくるものと思われる。外国機関投資家はそのあたりで退却か継続かの判断をするだろう。
退却の判断がなされた場合、株価は急速に低落し、それは投資、生産、消費行動を冷却し、経済低迷・縮小への悪循環につながるおそれが大きい。一方、金融緩和の期待感で進行した円安は、反転せず持続する可能性が高い。それは、原発休止の後遺症としてのエネルギー費用の膨張で、日本経済の貿易収支が構造的に赤字となり、それが経常収支にも影響するという構造変化の下で、構造的な円安傾向が定着する可能性が高いから。
円安は輸入価格の上昇をつうじて、食料品など生活物資の価格上昇を促進するインフレにつながり、実質賃金を低下させる作用がある。経済成長が実現せず、名目賃金と所得の向上が実現しないと、実質賃金と所得が現実に低下にするおそれがある。近年のデフレ経済では、名目賃金は上昇せずむしろ若干低下傾向にあったが、デフレの進行で、実質賃金はわずかながら上昇傾向にあった。インフレ下の実質賃金の低下は、国民生活をデフレ時代より悪化させるおそれがある。

(2)参院選後の混乱と不安定
効果的で現実的な「成長戦略」が提示されず、経済成長促進への人びとの期待が高まらない場合、7月の参議院選挙で、人びとは自民党にそれほど期待をもたなくなる可能性がある。それだけ民主党や第三極の政党に票が流れる可能性がある。民主党は2012年末の衆議院選挙では人びとの民主党への幻滅が大きかったため惨敗したが、参議院選挙で人びとが自民党に熱い期待を抱かない場合、民主党は旧閣僚級の有力な落選議員を多数抱えており、彼らが参院選挙区で健闘すれば、また、第三極に票がながれれば、自民・公明の与党は参議院で過半数をとれなくなるおそれが少なくない。そうなると、国会は依然として、「ねじれた」「決められない」政治を繰り返すことになる。画期的な力強い経済戦略と経済政策を矢継ぎ早に繰り出し、実行していかなければならない日本経済復活の正念場で、また”決められない政治”が再現すれば、日本はさらなる停滞と衰退に陥るおそれが大きい。

(3)債務危機
円安、インフレ、積極財政による財政債務増加の下では、おそらく金利上昇が避けられないが、金利上昇は、財政債務を雪だるま式に膨張させる危険が大きい。現在、政府は1100兆円規模の総債務を抱えているが1%の金利上昇は債務を11兆円増加させる。3〜4%の上昇は総税収に匹敵する。経済成長が進まないと景気維持のためにさらに財政支出を迫られるが、それは国債価格低下、金利の上昇につながり、債務危機の悪循環を増幅し、債務危機の深刻化から経済危機への危険を孕む。日本の銀行は国債をたくさん抱えている中でバランスシートが毀損され、銀行破綻の危機が現実化する可能性がある。銀行破綻危機を見越して、キャピタルフライト(資本逃避)は早期から始まる可能性がある。それに加えて人材もフライとする可能性がある。

3.アベノミクスの成否を決める「成長戦略」
結局、これからの日本経済の方向、”アベノミクス”の成否を決めるのは「成長戦略」である。
日本経済の潜在成長力を実現する成長戦略には、(1)金融・財政などのマクロ経済政策、(2)経済開放などによる貿易・投資の環境整備、(3)競争政策やインフラ整備による産業活力の発揮支援、(4)農業、 医療、福祉など潜在的な成長産業の可能性を活かす構造改革、などいくつかの次元がある。
金融緩和をきっかけに円安傾向が定着すると思われるが、円安は輸出を伸長させ、株価の上昇に資する一方で、エネルギーや食糧の価格の上昇を招いて実質賃金を浸食するおそれがある。積極的な財政政策は景気の回復に必要だが、累積債務を増加させ、財政規律を弱め、国債価格の低下そして金利の上昇を招くおそれがある。
経済開放による貿易・投資の環境整備はグローバル競争時代の緊喫の課題だ。競争政策やインフラの整備による産業活動の支援は重要だが、効果は間接的で時間がかかる。
農業、医療、福祉など潜在的な成長産業の可能性を大きく引き出すには、これまでに集積・構築された既得権構造に切り込む大胆で周到な構造改革が必要だ。これは旧自民党時代の利権構造そのものなので、そうした構造改革ができるためには自民党は過去のしがらみに縛られない新しい政党に生まれかわらねばならない。安倍政権にはそれが問われる。それができれば成長戦略は本物になるだろう。国民はこの点を注視する必要がある。

4.教育改革こそ基本
最後に、このすべてを決めてくるのは教育政策だと申し上げたい。
かつては吉田茂氏から田中角栄氏まで素晴らしい政治家が政治をやり、目覚ましい発展を遂げることができた。しかし、日本の近年の政治は民主主義国としてはいかにも異常である。小泉政権以来、安倍、麻生、鳩山、菅、野田、安倍と6年間で平均1年しか持たない内閣が続いた。1年しか持たないトップでは、普通の会社も経営できない。1年しか持たない政権では腰を落ち着けた政策などできるはずはないし、問題のあったトップも居たが、政治家は気の毒である。やがてまともな人は政治家を志望しなくなるだろう。そうした政治の劣化で一番被害を被るのは無論、国民である。
日本は”民主主義国”を標榜しているので、すべてを決められる主権をもっているのは選挙民である。いいかえれば残念ながら、そのように政治を劣化させているのは主権者たる国民なのである。
自らもっと真剣に投票するなりして国家が国民の役に立つように民意によって変えていかねばならない。問題は、選挙民に、そのような選択を自分で考え選びとっていく思考態度や思考能力が身についているか、である。私見では、その点に重大な問題が潜んでいるように思う。 
たとえば、第三極政党をリードする「維新の会」は「維新八策」をかかげるが、これが日本を担う政党の綱領として信頼できるものかどうか、選挙民には真剣に検討する精神態度があるだろうか。総論の項目はともかく、各論の内容を投票の前に各論を検討する選挙民はいるだろうか。

(2)”考えない教育”は政治を支えない
日本の国民は”優秀”である。若者の半分近くが受験する「センターテスト」を見るがよい。50万人もの同じ年齢の若者が同じ時間に全国一斉に同じ試験問題に取り組む。翌日、新聞に問題と模範回答が掲示されるがこれらの問題は学者の私ですら容易には解けない。それほど難しい問題を決められた時間内に解く能力のある若者達は、本来、大変高度な知的能力を持った人びとと言えるだろう。
ところがその高い知的能力を持っているはずの国民が、いざ選挙となると 信じ難いほど短絡的なあるいはパブロフ反応的な態度で票を投ずる。あるいは、重要な選択の機会であるにもかかわらず全く投票しない。選挙民は自民党でも、民主党でも、橋下徹氏でもみのもんた氏でも誰でも良いが、誰かの簡単なメッセージを鵜呑みにしてほとんどその意味を理解することなく投票するように見える。また2012年末の総選挙の若年層のように、理解しにくければ投票しない。
その鍵は「これまでの日本の教育にある」というのが私見である。上述の ように戦後日本の教育は経済の復興と発展を急ぐあまり全員が同じことをいち早く覚えるように設計され実行されてきた。やってはいけないことは、疑問をもつこと、質問すること、議論をすることだった。なぜならそれでは学習に時間がかかり先進国に追いつけないからである。それが日本がまがりなりにも先進国となり、時代状況が全く変わった今でも忠実に守られ連綿とつづいているのだ。人びとは受験塾や学校で教え込まれたことは懸命に覚え回答する。しかし自分では疑問ももたず考えようとはしない。その態度がそのまま政治の選択に反映していると見るのは間違いだろうか。
自分で考え、問いかけ、議論する習慣が全くないから、政治の選択という重大な場面でも一言のメッセージを鵜呑みにして「パブロフの犬」のように条件反射のような投票をしてしまう。選挙民がそうなら政治家は真剣に議論しても意味がない。
また古川元久氏が言っていたことだが、日本の受験では、短時間のうちに良い総合点をとるように訓練されるので、まず問題を見て、解くのに時間のかかるような問題は後回しにする。そうした受験で成功してきた”最優秀”な青年達が役所に入るので、彼らは政策課題を前にして難しいものは後回し、もしくは手をつけない習性が、身に付いており、その結果、官僚達は難しい課題は先送りにするため改革は実行されないのだという。これも現代日本の教育制度の典型的な弊害だろう。

(3)画一教育が阻む次世代の人材力
いまひとつ、これからの日本を担う産業人の育成にとって今までの日本の教育は致命的な欠陥があることを指摘しておきたい。これまでの教育は日本がアメリカなど先進国を模範にして「追いつき、追い越せ」と頑張ってきた時代にはきわめて合目的的に機能した。しかし、アメリカにならぶ生活水準を達成し、新興国の台頭や情報化、環境問題の深刻化など新しい時代に生きていかねばならない日本を担う産業人の教育としてはこれまでの教育はまったくの時代錯誤だ。
その核心は、あらゆる問題には各々唯一の正解があるという教育が、これからの時代には基本的に通用しないということだ。先進国としての日本は新興国などのvolume zoneの市場や人びとを相手に、良質でも高価格の製品ではなく、彼らの経済活動をささえるsolutionsを提供することが重要になる。Solutionsには形がないので、それを提供するには相手との信頼関係を築くことが第一だ。そのためには相手の文化、歴史、価値観、宗教などの理解が肝要だが、戦後の日本の教育はliberal artsともいうべきそうした教育が欠如している。また信頼関係の築き方は人によって違うので、正解は一人一人にあり、それは現場の付き合いや真剣な議論の結果として学ぶしかない。そうした教育は今の日本には欠如している。

(4)新しい教育戦略の樹立を
「唯一の正解はない」という前提で、疑問を持ち、議論をし、現場を体験して、ひとりひとりが正解を求めるという教育がこれから求められる教育だ。文科省もそうしたことを標榜しているが、それを本気で実行しようとするとどのような問題にぶつかるだろうか。
ひとつは、そうした教育のできる人材が居ない、いまひとつは、これまでの教育を担って来た人びとを解職せざるをえない。初等教育から高等教育までの教師達、受験産業、文科省をはじめとする行政当局者など、合計すればおそらく150万人はくだらないだろう。彼らはこれまでやってきたことを信じて忠実に仕事をしてきた人びとであるが、彼らはこれまでのコンテンツと職域を守ろうとする人びとであるから、いわば既得権者である。しかしことさらそのことによって独占的に利得を得ようという”マフィア”ではない。しかしそれだからなおさら彼らを変えることは難しいだろう。
これは安倍政権の目玉のひとつである「教育再生会議」の最重要課題であろう。安倍政権がこれからの日本を本当に変えていこうと考えるなら、迂遠のようだが、この教育改革こそが最も重要な課題に思われる。

今日はご清聴ありがとうございました。

安倍政権とこれからの日本(島田晴雄講演録3/4)

lV.鍵握る成長戦略

1.成長なくして成功なし

このようにみてくると、今後のすべては成長戦略の成否にかかるといえる。
金融緩和による効果が持続するかは、成長するかにかかる。成長の展望なければ投資家は撤退する。財政再建の可能性も、成長すれば財政再建の展望が開ける。賃金・所得増は成長が条件であり、成長することにより投資が増え、生産が増え、雇用が増え、賃金・所得が増える。さらに、成長が実現すれば社会保障充実の基盤も得られる。だから、成長展望・成長実現がなければすべて実現しないといえる。

2.成長戦略をめぐる議論
政府の成長見通しによると、2011年度は名目-1.4%、実質0.3%とデフレである。2012年度の実績見込みも名目0.3%。実質1.0%とデフレが続く、2013年度の見通しは名目2.7%、実質は2.5%もデフレから脱する。2014年度については民間の予測などを見る限り、消費税の導入前の賭けみ需要があるが、14年10月の消費税引き上げにより消費抑制効果が表れる。
民主党での成長戦略の蹉跌がある。そもそも成長戦略なしでスタートし、菅首相の第三の道という奇論があった。唯一、古川元久元経財大臣(野田内閣)の理念として(フロンティア追求があり、例えば「国酒プロジェクト」でグローバル化見据えた産業や企業戦略などがあった。しかし実態は本質に切り込まない部門政策の羅列であり、ホッチキス作文といえる。
昨年出版した『盛衰』にも力説しているが、うわべのことのみを言っている。グリーンレボリューションで環境大国をめざす、ライフイノベーションで健康大国をめざす、国際立国、金融大国、農業6次産業化で輸出産業へ、労働は居場所と出番、トランポリン労働市場をつくるといっている。結局、何も実現しなかった。
産業競争力会議の論点
産業競争力会議の初会合で甘利経済財政再生相は、3つのポイントを出した。
1つは産業再興プラン。設備・研究開発投資を促す税制の優遇措置を含めた特区創設の検討。エネルギー、環境、医療など成長分野の規制改革をおこなう。
2つは国際展開戦略。アジアなどの成長力の取り込みをめざし、中小企業の海外展開を後押しする基金創設を検討する。海外投資の成果を国内成長にむすびつける投資協定や租税協定を締結する。
3つは新ターゲッティングポリシー。新市場を戦略的に創出・育成する。高齢化や原発低減など社会構造変化をふまえ新市場拡大期待分野を育成する。新しい市場として新エネルギーシステム、再生医療促進、新素材開発などをあげている。
これらの議論では個別のターゲットポリシーである。ターゲットを決めれば予算がつく。予算が付けば役人の仕事ができて、出世ができる。そういう構造になっている。
これに対して、竹中平蔵委員が問題提起をしている。個別産業支援でなく「企業・産業に自由を」つまり”規制改革が主役”の流れと主張した。2/25会議で、安倍さんが農業もしっかりやろうということになり、農業強化策も検討課題になる。最近の新聞で競争力会議の民間議員の間に不協和音が言われているが、官僚による分断作戦ともいわれている。

3.産業政策か市場政策か
セクター別の政策は「picking the winners」と言われるが、役人は予算獲得、省庁益、族議員益がモメンタムである。最大のポイントは、政府は民間より現場と市場の知恵があるかといった点だ。民間より優れているはずがなく、政府がやっても意味がない。彼らは予算がほしいためにやっているに過ぎない。
成長の知恵と原動力は民間の活力であり、民間活力の源泉は市場競争である。勝てなければ負けるという真剣さで取り組んでいる。適正な市場競争の条件整備が政府の役割でありこれは競争政策である。
この点を踏まえて、規制改革会議の内容を見てみると、テーマとして混合診療、例外的に混合診療認める仕組みの範囲拡大や、労働時間規制の緩和など、市場競争の条件整備からずれたことをやっている。
競争条件を整備するためには規制緩和も重要であるが、それだけでなく、構造改革も必要である。特に、既得権が重層的に蓄積し構造化した領域では、一般的競争政策や規制緩和は限界がある。例えば、農業、福祉、医療、または社会保障(高齢者層が既得権)や教育(既得権層に既得権の意識なし)などである。
つまり既得権構造に切り込めるかといった点であり、それは通常の政治力では極めて困難な課題である。このすべての根源は自民党である。

4.旧自民党の体質を超えられるか
(1)旧自民党政権時代の光と影
既得権構造を構築した自民党は、もちろんその過程で大きな成果もあった。光と影を見てみよう。
自民党は1946年にでき、幾度の再編があり1955年に確立した。この時に右派社会党と左派社会党が合併し、それは困ったとして保守の連合がつくられ、自由民主党という名称となった。1955年の選挙に僅差で勝利し、そこよりいわゆる55年体制ができ、43年間1党独裁が続いた。
この43年間で成果もあった。1つは日米安保で平和確保したことだ。吉田茂首相、岸信介首相の成果である。敗戦を迎えた国が世界の中で一人前として認められるまでにどこまで苦労したかということが言える。
もう1つは傾斜生産方式である。戦後直後は工業生産をするなと占領軍に言われた。工業をすると武器を作るので農業を中心とした。その時に占領軍を説得して輸出を中心に工業を発展させるとして、説得した。その時に考えられたのは傾斜生産方式で東大の有沢教授が、レオンティエフが産業連関表を考える前に考え出した。工業製品を輸出するためには、機械の前には造船だ、造船の前には鉄鋼だ、鉄鋼の前には石炭だということで、炭鉱を整備し鉄鋼の近代化計画を進めてきた。
また、政策金融を進めたことも大きい。戦前には金融統制があり、金利統制がありリスクがすべて見えない形になっていた。戦後もしばらくはリスクを見えない形にして、当時の国民の半数は農民であったので、農民の資産を農協が一手に担い、農協→信用組合・信用銀行→地方銀行→都市銀行→政策銀行という形に資金が回るようにした。政策銀行から輸出産業へ戦略的に資金配分をするようにした。このようなことにより輸出産業が育成した。
技術導入と国産化もあった。技術導入についてもアメリカが製品化する前に、アメリカから技術を学び製品化した。このようなことを続け、世界第二の経済大国となった。

(2)旧自民党が蓄積した構造障碍
このような目覚ましい成果があった一方で既得権益が構築されることになった。
例えば、電力である。地域独占、包括原価方式は松永安左衛門がつくった。占領軍は競争的な電力供給体制を目指していたが、松永安左衛門はそれでは電力が安定しないと産業が育たないと言って、競争を排除するために利益を上乗せするとして、占領軍は認めた。昭和40年くらいには競争的にすればよかったが変えなかった。これは強大な利権、既得権構造構築であり今日まで続いている。バックアップしている利権政治家、電力会社、通産省がある。利権の関係者から成り立つマフィアであり、このために電力政策をうまくできず、自然(太陽)エネルギー活用、競争的分散供給体制を阻害している。
農業は、農村票固定化による政治が続いた。終戦直後農村票は少なくとも1500万票あったといわれている。それをすべて自民党が選挙の基盤とした。選挙のためには、農家は数が多ければ大きいほどいい、規模が小さければ小さいほど良いとして、生産性を向上する取り組みをしないが、米価を春闘と同じペースで上げていった。それでもみんながお米を食べなくなるので、減反政策を実施し、お米を作らないようにしたり作って売れなくても所得補償をする政策を始めた。昨年だけでも減反政策で6800億円ものがあてられた。政治基盤として農村が悪用された被害者ともいえる。
インフラ(建設)は自民党の伝統的選挙基盤(各地での集票、政治資金)である。長期財政計画という建設国債を発行した建設計画に基づき、選挙区で割り振りをして建設会社がこれを受ける代わりに、選挙応援をするという構造になっている。この構造は今も変わっていなく、民主党は「コンクリートから人へ」といったが変わっていない。
福祉については、全国4万人の社会福祉法人がある。伝統的な社会福祉法人は終戦直後内務省が解体されたときに、厚生省などいくつか分割したが、厚生省は土地を持っていないので福祉に関する施設を作れなかった。土地を持っている人が施設を作ると8割の補助金が出るようにしたが、憲法89条に「国家の支配に属さない団体に公金使えず」としているので、土地持ちの民間に補助金を出すことは許されない。そこで、国家の支配に属する民間団体として社会福祉法人を定義した。この人たちは民間参入を忌み嫌っており、利権構造がしっかりしている。ここが子育て、老人施設の民間開放を阻害しており、自民党の利権がくっついている。海外のエコノミストは女性の労働力を高めることをしているが、子育てをする女性がこのような環境であれば仕事と育児を両立できない。またサービス産業の最たる医療も同様な構造になっている。

このように、日本は利権とマフィアの構造になっており、政(政治)・官(官僚)・業(業界)の鉄の三角形が構築されている。このような旧体質を超えられるかが大きな課題である。超えられれば成長フロンティアが見えてくる。

V.日本の中にある成長フロンティア

1.国内の成長フロンティア
海外成長フロンティアも重要だが、大きな国内潜在フロンティアがある。マクロの可能性として、インフレ期待、女性労働力の活用、サービス産業がある。しかし1人当たりGDPは1992年の世界一位から転げ落ちて、いまでは20位以下となっている。

2.40年間進化していない日本システム
なぜこのようになっているかというと、40年前にできた世界の奇跡と言われた日本システムが進化をとめているからだ。あらゆる仕組みが40年前から全く変わっていない。年金、社会保障、エネルギー、農業、医療、ビジネス、政治も変わっていない。
その間に環境は大きく変わった。例えば人口は若者人口が減少し、この段階で社会保障制度を抜本的に変えないといけない。社会保障の最大の利権はそれを受ける高齢者であり、国である。選挙に直結する。教育も変わっていない。これは150万人の教員と、受験業界と役所の利権である。
一方で、世界は情報化が進み、グローバル化が進み、国境がなくなり、ビジネスモデルが変わった。新興国の発展も目覚ましい。エネルギーコスト構造も変わり、1970年にはオイルが1バレル1ドルであったのが、今は100ドルを超えている。40年間でエネルギーコストが100倍になった時普通の技術構造、経済構造では対応できない。

このような中で何も変わらなければ、衰退するのは当然だ。既得権構造を解体し、機会を開放すれば大きく開く成長する可能性がある。

3.エネルギー
エネルギーについては、原発の問題において、エネルギーの安定供給に現状では原発は不可欠である。電力供給は変動に対応しているのは火力発電で、昼でも夜でも安定しているのは原発である。今は原発を止めているので火力を増やす必要がありその分エネルギーを海外から購入している。そのため円安に振れるのは構造的に明らかなことであり、この構造が続く限り円安は続くであろう。経済効率、経済成長のためにも現状では原発必要であるが、できる限り早く原発から脱する必要がある。私はそれを15年で出来ると考える。
なぜ原発が地震の多い日本の海岸に設置されたかというと安かったからだ。リスクがあるのに福島原発を設置している欺瞞がある。40年間何も事故が起きなかった方が不思議でならない。
原発については、すべて海岸線より30メートル上にあげて、送電線は2重、3重にする。事故が起きたときの訓練をする、情報をすべて公開する。福島原発の事故では大事故を想定していないことが問題であり、事故の対応でも現場の応急措置は問題がなく、東京から送られた電源車と原発のソケットが合わないことであった。大事故を想定した訓練を行おうとするとそういう事故があることを国民に伝えることになるからやめろ、ロボットの開発も同じようなことだからやめろということで、マフィアがすべてそのような行動をとった。
過去の事故と欺瞞を素直に国民に謝罪し、情報開示と共有をし、深刻事故を想定した訓練、津波対策高台配置など最善を尽くしたうえで、国民に原発の是非を問うべきであろう。そうすれば事故が起こる確率も1万分の1に小さくでき、国民の理解も得られるであろう。
また、原発を15年でなくして自然エネルギーを普及できるか。『盛衰』でも述べたように耕作放棄地に太陽光発電をつくれば、原発95基分に相当する電力が得られる。また風力も沖合にメガフロートをたくさん作ると決断すれば、世界中からお金を集めることができる。地熱についても、ニュージーランドは今70%を水力と地熱で賄っているが、近々90%になるであろう。日本では国立公園があるから駄目だといわれているが、国立公園法を変えてすべての国立公園に地熱発電をすれば、すべて自然エネルギーで電力をまかなえることがある。技術もサンシャイン計画当時は日本、最先端を行っていた。

4.農業
農業の自給率は40%といわれるがこれは農林水産省の欺瞞による。この統計は穀物だけであり、お米などである。野菜や果物に限れば90%は自給している。穀物の4割が自給であれば6割は輸入であるが、輸入しているのは家畜の飼料である。農業の総生産額は10兆円であるが、そのうち穀物は2兆円に過ぎない。残りは野菜と果物と畜産である。農林水産省の定義では外国の穀物で育った畜産は国産の定義に入れないので、国内の畜産は1割か2割である。人口が減っていくので農業が持たないと言われる。食糧安全保障の危機感を募らせ、予算獲得、政治力維持を狙いとしている。
農家人口減少は問題だろうか。日本は人口の1.6%が農家であるが、他の国を見ると日本の生産量の倍であるイギリス0.8%、アメリカ0.9%で輸出もしており、ドイツ1.0%にすぎない。農家は多くいらないのである。
今の農家の事態を見ると販売農家196万戸、稲作165万戸である。主にコメを作っている主業農家が30万戸、主業以外は135万戸である。135万戸の兼業農家が作っている生産量は全体のたった5%である。販売農家のうち売上1000万円以上が14万戸であり、全農業生産の6割以上を生み出している。そこに個別保障を入れたのは、農村票を固定化しているからだ。また農業を担う人材は高齢化している。彼らは農業をやめてもらったほうがいい。切り捨てるのではなく戦略を持ち、4つのうち1つを選んでもらえばよい。
一つは福祉農業だ。土地を全部人に貸したが家の前のちょっとした庭で野菜を作っている。毎日毎日ちょっとした庭で農作業をしながら、体調を整えたりすることができる。介護施設に入れることを考えると補助金がかかってしまうので、農業をしながら介護施設や補助金に依存しない体制を作る点でよいと思う。
もう一つは教育農業だ。都会の子供は親が子供に朝食を食べさせないので、骨粗しょう症気味の子供が増えているという。そういう親が子育てをするのではなく、農家に子供を預けて、そこで自然と触れ合いながら、よく遊びよく学ぶ。子供を農村に預けることだ。
あとは環境農業であり、観光農業だ。山の中で農業を行い、森林の保護や土砂崩れの防止をすすめれば環境としても貢献する。こういうところに対して補助金を出す。
このような戦略農業を進めていき、生産性の高い農家は徹底的に生産性を高めつつ、その他の農業は多くの国民から感謝される。生産性の高い農家は自由にできるとどんどん生産性が高まる。近年人口爆発により穀物の値段が急騰しているから、このようなことを日本が進めていくと日本が最大の農業輸出国になる。だからTPPに入っていないといけない。TPPに入っていないと農業製品を売ることができない。このように見ていかないといけない。

5.医療・介護
医療は最大の成長産業である。日本では健康になれるのなら死んでもいいと考える人が多い(笑)。このような人たちに対してお金を使えるようなサービスを提供すればよい。
政府は、価格と数量の規制と統制をしている。価格と数量を規制すれば共産主義と同じである。それに高齢化し医療費が増大している。これをすべて官でまとめようとすると増税するしかない。民間を排除していることが問題だ。厚労省、医師会のマフィアによるものである。
価格規制の最たるものとして診療報酬制度がある。診療報酬制度とは、公定料金とその請求額を決めた表のことを言う。この制度では、病院の成果つまり治療を行った結果その病気が治ったのかといった点や、コストの情報はない。
基本的考え方は、市場機能を取り戻し、民間活力、成果重視することだ。価格規制と数量規制により市場機能が全く機能していないし、民間保険を認めていない。公的保険だけでやろうとするので数量規制や価格規制を取り入れようとするのだ。日本の医療費は200兆円に上るが、そのうち130兆円は自由診療によるもので、公的保険が適用されていない範囲だ。自由診療の部分は、特に公的に規制されているわけではないので、今後大きく成長する可能性があるし、サービスの開発、ノウハウの開発が進む。
このようなことを安倍さんができるか、問われている。

6.子育て・教育
子育てについては、女性の労働力参加、とりわけhigh skill女性の活用の遅れが言われている中で、社会福祉法人に独占させるのではなく、民間の参入をみとめればよい。
教育については、技術導入とキャッチアップ生産促進に貢献した教育は暗記型、均質・画一型であり、疑問・質問・議論は認められない。先進国になった今でも、画一、暗記型教育、問題発見、解決、説得できない。
このような教育システムは、昔は問題がなかった。第二次大戦で310万人が戦争で死に焼け野原になった中から、輸出で成功するまで目覚ましい発展を遂げたが、それはアメリカから技術を導入し、アメリカが製品化するより速いスピードで製品化し、売り出したことになる。なぜそうなったかというと教育に差がある。アメリカでは質問をする人がいるからどうしても時間がかかる。一方日本は教育自体が詰め込みであり指示に従うのであるから、スピーディーに生産ができる。
このような時代は田中角栄氏の時代で終わった。田中氏は工学部の定員を倍増し、教員の給与を倍にしたなど教育に力を入れているがその時代は終わった。今日本は最も成熟した時代であり、価格では世界に勝負できない。これからはソリューションを世界に売る時代である。ソリューションは売る人が説明しなければならず、売る人のハートをつかまないといけない。そのためには人間力が求められる。そして宗教や異文化を理解する必要がある。戦前については、欧米諸国からアジアを開放するためには、東南アジアのイスラム教の理解などを進めていたが、戦後はそのような研究は全くなくなってしまった。逆に言えばソリューションを売れるようになればかなりのポテンシャルがある。

7.ビジネスモデル
ビジネスモデルでは、閉鎖的な意思決定機構であり、取締役会は閉鎖的で社外取締機能せず、資本の論理は働かない。資本の論理が貫徹せず、非効率が放置される。例えば金余り企業や、ゾンビ企業の存続がある。
また供給が過剰となり過当競争が続く時代おくれの産業構造が続いているといわれる。

既得権構造を解体し、市場機会を開放すれば、日本の潜在成長力が発揮され、大きな成長展望が開ける可能性がある。

安倍政権とこれからの日本(島田晴雄講演録2/4)

lll.“アベノミクス”

次にアべノミクスについてみていきたいが、20年にわたりに続いているデフレがいかに深刻であるかを最初に触れたい。

デフレとはモノの値段が下がることで、今買うかという判断の時には、今買うより2,3年後に買った方が安く買えることになるので、消費は減少する。投資も、過去と同じように働いている限り売上げを上げられないので、投資をしようという意欲も起こらない。ただし、一時期円高であったので体力のある企業を中心に海外に投資することはあったが国内はほとんど投資されなかった。デフレである限り、持っているお金は使わない。そのままにしておけば貨幣価値が高まるからである。人間の体が収縮するような大きな問題に20年くらいかかっていたといえる。

1.金融
(1)長期デフレの原因論争
このような長期デフレが起こった原因として何があるか。先ほど紹介したリフレーショニストは、インフレもデフレも貨幣現象であるという。貨幣量が多ければ物の価値が上がり貨幣価値が下がり、インフレになる。貨幣量が少なければ、その逆で物の価値が下がり貨幣価値は上がり、デフレになる。デフレから脱却するためには貨幣量を増やせばいいが日銀はそういうことをしていないといわれている。

(2)背景:リーマンショック後の世界の金融戦略
もう一つの背景として、世界中に起こったリーマンショックの影響だ。リーマンショックはアメリカ初のデリバティブの崩壊で、アメリカの経済が止まり、人間の体に例えると一時血液循環が停止したような状態だ。
世界にはGDPはすべて足すと1京円でありお金は2京円あるといわれているが、デリバティブは6京円あったといわれる。リーマンショックの時にこれだけの規模のお金が失われたので、実体経済にはものすごいインパクトがあった。そのように実体経済が収縮した時に各国政府は財政支出を大きく行ったため、世界はものすごい赤字になり、債務危機になった。
経済政策には財政政策と金融政策の2つがあり、財政政策をやりつくしたのであとは金融政策に頼ることになり、金利操作をして公定歩合を下げてお金をマーケットに出すことをした。リーマンショック後には金利を引き下げとうとうゼロ金利になり金融政策も機能しなくなった。その時日本がすでに行ってきた量的緩和という、市場に出回っている金融商品などを購入しその代金を市場に流すことでベースマネーを増やす政策を行った。世界中でも財政政策として政府が支出することもできず、金融政策でもゼロ金利である中では、量的緩和しかないという話になり、アメリカでも日本語の量的緩和を訳してQuantitative Easing略してQEと呼ばれる。今は第3弾のQE3が実施され、1年間に140兆円もの金融商品を購入し、アメリカではデフレに陥らないようにしている。

(3)特異な日銀の慎重姿勢
各国は膨大な量的緩和を行う中で、日銀の慎重姿勢は特異である。スタンダードプアーズのチーフエコノミストであるPaul Sheardは、リーマンショックから2012年10月時点までの各国のベースマネーの増加率を報告している。それによると、アメリカは250%、イギリスは320%であるのに対し日本は36%にすぎない。少しは増やしてはいるが各国が大きく増やしている中では後ろに下がっているようでデフレと闘う意図がないのではとみられる。
日銀は特異な日銀理論を持ち出していると、浜田宏一教授は著書『アメリカは日本経済の復活を知っている』で白川総裁を批判している。浜田教授によると、日銀は、金融政策でデフレ脱却は困難であるとして、構造改革による潜在成長力拡大が必要であり、理由は不明であるがバランスシートの拡大に消極的であるという。構造改革による潜在成長力拡大が必要というのは正論であると思うが、日銀は動かなくて目立つのは世界中の共通認識だ。

(4)“無制限な金融緩和”の呼びかけと海外投資家の反応
この中で安倍総理が無制限に金融緩和をするといったので、世界中の期待感がどっと高まっている。リフレーショニストの立場から言うと、金融緩和をすると経済がよく期待感が高まるので、今のうちに投資をしないといけないということになり投資も増える。こういうことで経済も成長すると考えられる。
ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授は、これまで日本の経済・金融政策を辛口で批判してきたが、アベノミクスについては現時点(1/15)では完全に肯定できる、これまで最も停滞していた国が安倍戦略で見事な復活ができることを世界に示すかもしれないといっている。一方、安倍氏は経済への関心が乏しいのか、正統派の批判である国債大量増発による金利高騰の危険といった点を無視しているのかも、と皮肉をこめていっている。
Peter Tasker氏はフィナンシャルタイムズで、日本は金融緩和による円安と日銀との政策協調で復活するかもと持ち上げている。これまでわずかの国しか成功しなかった戦略を今度こそ成功させるかもしれないといっている。
2012年11月から2013年2月まで、海外投資家は16週間連続で日本株を買い越しであり、累計買越額は4.2兆円と相当なものである。小泉郵政解散後の16週に達成した5.8兆円に迫る。これだけ期待感が高いといえる。
一方で海外からは警戒の指摘もされている。ドイツ連銀バイトマン総裁は日銀の独立性を危険にさらすと主張し、メルケル首相は、日本は金融政策で為替を円安に誘導しているとダボス会議で主張しているが、G7の共同声明では「財政・金融政策は為替レートを目標にしない」というごく当たり前の内容になった。
その後にロシアでG20の会合があり、通貨戦争になる様相があり、そこに対して、麻生蔵相は、日本の金融緩和はデフレ脱却が目的であり、通貨操作の意図はないと反論し、政府・日銀の金融緩和支持している。直前まで、ロシア、中国や新興国を中心に日本を意識した「通貨安競争」の批判が噴出していたが、共同声明では、「金融政策は国内物価の安定と景気回復を支援するために実行すべし。為替レートを競争力強化の目的には使わない」と日本政府が主張している内容となった。
また、バーナンキFRB議長も2月27日の米上院銀行委員会の中で、日本の積極的金融緩和はデフレ脱却の試みで為替操作ではないと証言しているため、事なきを得た。
世界中の論争では心配している声も聞こえる。フェルドスタインという有名な経済学者は、円安(通貨安)と物価上昇は金利上昇をまねき、金利上昇の危険、財政再建困難になると指摘している。経済が成長すれば問題ないとリフレーショニストは主張しているが、本当に経済が成長するのかというのが問題だ。

(5)日銀の政策対応
政府と日銀がアコード(協定)を締結した。デフレ脱却に向けて政府・日銀の連携を強化し、日銀は物価上昇率のターゲットとして2%を「できるだけ早期の実現」をめざし、金融緩和をつづけるとしている。これまでは1%のゴール、日本語ではメドと訳されているにすぎなかったが、今回はターゲット(日本語では目標)として明記し、これを達成的ない時は責任を取ると責任の所在を明確にした。世界中の中央銀行ではターゲットという言葉を使い、実行できない時には説明責任が発生し、中央銀行総裁は一生懸命に説明する。
白川さんは一枚上で、アコードの内容を見る限り上を見ている。まず、買い入れは小幅増にすぎない。2014年の買い入れ資産残高は現状では10兆円増の111兆円に過ぎないので、無期限緩和とはいうものの、国債には満期償還があるので、毎月13兆円の購入というのは基金規模をちょうど維持する程度にすぎない。また、政府と日銀の共同責任を負うとした点として、政府と日銀がデフレ克服に向け一体として取り組むとしている。これは世界的にみても前例がない。そのため海外から見てはあまり期待が持てる内容ではなく、市場は失望し、株高円安はわずかであった。

(6)日銀総裁人事
白川方明総裁が予定より早く辞任を表明した時には、株価は急騰した。また次期日銀総裁に黒田さんの名前が出たときには、新体制でさらに(真に)積極的な金融緩和が実施されるという市場の期待感反映し、さらに株価が高騰した。
日銀の人事案は3月15日に提示される。みんなの党は大蔵省出身に難色を示していたが、黒田さんには賛成であり、維新の会は意見集約がまだである中、民主党にも容認論が広がり人事が認められる可能性である。
3月4日と5日に国会でヒアリングがあり、黒田総裁候補は次のよう言っている。
・2%の物価目標を1日も早く実現することが最重要な使命になる。
・日銀の金融資産買い入れは規模、対象など物価目標達成のためにはまだ不十分。
・デフレ脱却のためには「何でもやる姿勢」を打ち出したい。
・2%達成のタイムスパン、2年程度を念頭。
・買い入れ長期国債、今の1〜3年から5年以上も視野、損失リスクあるETF(上場投資信託)なども考慮。
・「無期限緩和(国債など期限を切らずに毎月一定額買い入れ)」を実施予定である2014年よりも前倒し実施も検討する。
副総裁候補である岩田規久男氏はリフレーショニストで有名であるが、2%目標、2年以内に達成したいと考えており、達成できなければ”辞職”が最高の責任の取り方としている。
次期日銀正副総裁候補について国会同意を得られる野党側の同意意向がほぼ確認され、黒田、岩田、中曽候補は3/15までに国会で同意される見通しである。
海外の反応については、黒田新総裁の誕生がほぼ確定的になったことに海外は強い関心があり、黒田候補が政府の積極的な金融緩和政策を強く裏打ちする発言をとらえて、本当に2%物価上昇を実現するには、黒田氏が否定しているが、驚くほどラディカルな手段が必要であると考えている。20年間もデフレで沈んでいた国を変えるためにはものすごくラディカルな手段が必要であり、それをやらないと本当に日本経済は衰退していく。
しかし金融緩和をやったとしてもリスキーである。金融緩和をしても成長が付いてこないと、インフレが進み金利が高騰し債務危機に陥る可能性がある。
日本政府と日銀が明確な行動をとったことは評価できる。そうしなければ日本経済は早晩、衰退してゆく可能性が大きい。しかし、この時点でとられる思い切った行動は、内外に多くの副作用、逆作用をもたらすおそれがあり、きわめて”risky"といわざるを得ないというのが海外の論調

2.財政
財政については、安倍政権の第二の矢である、財政出動を機動的にすることにつながる。
今年の1月15日に緊急経済対策を閣議決定している(2012年度補正予算)。事業規模は20兆円超であり、うち国の補正予算13.1兆円である。復興・防災対策として3.7兆円、暮らしの安心・地域活性化として1.9兆円、成長による富の創出として3.0兆円を盛り込んでいる。官民ファンドで海外展開、科学技術、新事業支援を行い、官民で外債購入を行う。地方向けの交付金1.4兆円などを盛り込んでいる。2月26日に参院1票差で可決している。
これは財政再建からさらに遠くなることを意味する。
財務省は財政再建目標を立てて、菅政権の時には財政のプライマリーバランスを2010年6.7%から2015年に半減3.2%にし、2020年には黒字を目指すとしている。これは歴代の総理が認めている公約である。小泉さんの2006年骨太方針では5年間で16.5兆円の収支改善を目指していたが、13兆円の補正予算を組んだために財政再建目標に近づけるために、今後は2013年、14年の2年間で17兆円の収支改善が必要という試算を財務省が発表した。桁違いに厳しい課題となっている。
その中で2013年度予算では、新規国債発行が42.8兆円と、税収見込みの43.1兆円より下回り、4年ぶり税収と国債発行額の逆転現象が解消された財政再建予算であると言われた。
その中には国債抑制の小細工がある。国債整理基金を取り崩し、7兆円取り崩して借り換え債の発行抑制している。また、ふつう物価上昇局面では長期金利は上昇し、想定金利は上げるのが自然であるが、想定金利を2.0から1.8%に下げている。
財政規律回復に疑義の危険がある。ギリシャよりも赤字が大きく、もし財政規律後退と市場が受け止め、国債価格下落したときに金利上昇、債務危機の悪循環が起こる可能性がある。日本が債務危機になった時にIMFでも救うことはできないので、世界に対して大きな影響を与える。

3.成長戦略
このようにならないためには経済が成長すればいいのであるが、成長戦略は6月に策定される予定である。
成長戦略を策定する産業競争力会議は、1月23日に初会合があり、そこで甘利経済財政再生相はターゲッティングポリシーを打ち出したが、竹中平蔵氏は成長戦略の1丁目1番地は「規制改革」であるというペーパーを出した。個別産業支援でなく「企業・産業に自由を」つまり”規制改革が主役”の流れであるといい、どっと受けた。これは役人の反論を変えた。予算を付けたプロジェクトを行うのが役人の仕事であるが、規制改革では予算を獲得することにつながらないからだ。
TPPについて、安倍総理は頑張っているといえる。3月22日の午後の日米首脳会談までに水面下で交渉を行い、アメリカでも自動車などの聖域がある一方日本側もコメなどは頑強な聖域があり、どちらの国も聖域がある。水面下で交渉し、外国団の交渉では「センシティビティ(Sensitivity)が存在するまで妥協した。例外というとアメリカは反対するので、センシティビティという重要品目を表す言葉を使った。その後、首脳同士の昼食会では、”聖域なき関税撤廃”を前提としない日本の立場を力説したと思われる。それに小浜さんも応じて、共同声明として、TPP交渉参加に際し「すべての関税撤廃を前提とはしない」と言質を取った。
日本に帰ってきて、TPP参加に向けた調整として、参加するかしないか判断の時期は、自民党「首相に一任」とりつけた。3月中旬にも交渉参加表明する段階である。

安倍政権とこれからの日本(島田晴雄講演録1/4)

講演『安倍政権とこれからの日本』(講師:島田晴雄)
平成25年3月12日開催 於:ホテルニューオータニ「舞」

l.はじめに
まずは、多くの皆様に集まりいただき感謝を申し上げたい。島田塾の勉強会も100回を迎え、100回にふさわしい歴史的なテーマをお話ししようと考えたが、政権が変わり、様々なニュースが報じられている中で、ここでは新しい政権の全体像を整理してお話ししたいと思う。その後どうなるのか展望するために、きちんと整理する必要がある。安倍政権が発足して100日がたつが、ここを節目に、皆さんと一緒に全てを総括して課題や可能性を考えてみたい。
最初は全体像の整理ですでに報道されていることであるが、講演の後半において、重要になるので、まずはこれまでの動きを整理したい。

ll.安倍政権の誕生
1.総選挙の結果と安倍政権の誕生
(1)選挙結果は自民党の勝利ではなく民主党の大敗
選挙結果は自民党の勝利ではなく民主党の大敗である。自民党は議席を119から294に伸ばし、公明党の31議席と合わせると、325議席である。この議席ではねじれ国会でも衆議院での再可決可能な状況になる。一方で、民主党は230議席であったのが56議席にまで減っている。
ただし注目したいのは、自民党の得票はそれほど伸びていない。比例代表によって選出される議席では自民党は前回より1議席しか増えていない。自民党にも積極的に期待する根拠はない。
選挙結果においても安倍さんは恒例の赤いバラ付けも控えめにしていた。安倍さんは自民が選挙民に信頼されて積極的に選択されたわけではない、自民党は変わらねばならないと発言している。
もう1つ懸念すべきことは、投票率が前回選挙の69%から59%までに低下したことだ。その背景には、第三局が台頭してきて、選挙民にとってみれば何が何だかわからなかったのだろう。理解できない状況において、選挙民は投票に行かないということは重要な意味を持つ。

(2)安倍自民党の人材力
今回の選挙によって、自民党には新人と中堅が119人もいる。郵政選挙の後に誕生したいわゆる小泉チルドレンでも83人であった。この119人は国会議員の仕事を何も知らないに等しい。この人たちをどうするかは今後の課題だ。

(3)ハードルは参院選
安倍自民党にとって、今後のハードルは参院選である。安倍さんが前回政権を担当したときに、参院選で自己崩壊したと言える。2007年の時には年金未納や閣僚の不祥事などがあり、改選前は64議席であったのが37議席までに減り、大惨敗であった。そのあと体調を崩して総理を辞職された。安倍さんには今度の参院選はかなりの重荷であり、参院選まで彼のカラーを封じるであろう。安倍さんのカラーとは、戦後生まれの総理であるから、憲法改正、国防軍設立、集団的自衛権、河野談話の撤回といったことである。
参院では過半数は119議席である。現在自民党84議席、公明党19議席、あわせて103議席であるので、過半数まで16議席足りない。どうやって埋めるかというと、みんなの党11議席、国民新党3議席、新党改革2議席の合計16議席とやっと埋められるのが現状だ。2月26日にギリギリのところで緊急経済対策が可決されたが、これは象徴的なことで、第三局の組み合わせでもってちょっとずつ可能性が開けたり、つぶれたりする。これでは政治ができない。参院選で勝ちたいと思っている。
今度の参院選での自民党の戦略は、各都道府県で1議席獲得戦略によって48議席(31の一人区で全勝、16の複数区のうち東京では2議席、それ以外の15議席では1議席ずつ)、比例で10議席、合わせて58議席獲得するというものだ。公明党は10議席を予想していて。合わせて68議席。改選前の議席57議席と合わせると125議席になるという戦略だ。3/17の党大会までに全候補決めたいとしているが、まだ調整されていないところもある。政治はかなり薄氷を踏んでいる形である。

2.市場の反応
安倍政権が発足して100日に過ぎないが、市場の反応はものすごいと言える。
日経平均株価は1万2千円をこえて、2か月で38%上昇している。世界的にも株式市場の動きとしては珍しいと言える。この背景としては外資の足が速いことがある。野田前総理が昨年11年15日に解散を宣言したが、その翌日にJames O’nealゴールドマンサックスアセットマネジメント会長が「We want Abe」(安倍政権を望む)というレポートを全世界に発信したという。そこからものすごい勢いで株価が跳ね上がっている。
キャッシー松井という専門家が興味深いことを言っている。日本は個人投資家があまり成長していない。日本ではここ30年資産が半分になっているので、そこに対して誰も投資に対して信頼がおけず、投資しない。だからデフレマインドに陥る。もちろん機関投資家がいるが個人投資家はリスクを負うことを避けがちになる。その中で外人が投資してくることは、バスタブに象が足を突っ込むようなものだと表現している。最近の日本のように外国の投資家が入ると、バスタブに象が足を突っ込んだように水かさが大きく増すように、株価は跳ね上がる。逆に、外国の投資家が引き上げると水かさは大きく減少する。安倍景気ではやしているが実態をきちんとあらわしている。

3.政権の人脈とたてつけ
(1)身近な人びとと側近人脈
安倍政権を支えている人脈についてみていきたい。命運握る数名がいる。
一人は菅義偉氏である。菅氏は秋田県農家生まれ、高校卒業後集団就職で上京し、働きながら法政大学に通った。その後、故小此木通産相の秘書から横浜市議、1996年47歳で初当選の「苦労人」である。2006年の総裁選の時に、「再チャレンジ支援議員連盟」をつくり94人を組織し、安倍勝利に導いた人物である。今回の選挙においても安倍さんに主戦論となえて立候補を促したのは菅氏である。2月半ば、自民、公明で300議席超が見えた頃、「参院選、公明党協力不可欠、維新、みんなとは政策ごとの部分連合」と主張し、維新と組んで憲法改正打ち出すことも選挙戦中は模索された。
ただし、森嘉朗氏など長老は疑念を持っている。旧小渕派から派閥離脱、梶山静六、加藤紘一、古賀誠、そして安倍の傍らに移ったことである。また、09年の自民党下野選挙のときに、当時の首相麻生太郎氏に解散先送りを進言しつづけた当時の選対副委員長であることからも信頼されていない。ただし安倍氏からは絶大な信頼を得ている。
菅氏以上に盟友といえるのが、首相補佐官の衛藤晟一氏である。大分大学時代、右派の学生運動家として全国に名をはせたが、25歳で大分市議、県議2期、1990年衆議院議員初当選した。その際に、安倍晋太郎氏の全面支援で大量当選の一人となったが、安倍晋太郎氏が病で倒れ、「晋太郎の夢を晋三に果たさせる」を悲願としていた。日本政策研究センター代表で学生運動の同志である伊藤哲夫氏を若き安倍氏に紹介にも紹介した。伊藤氏は今や安倍総理の最有力ブレーンである。
衛藤氏は保守政治家、安倍晋三の”生みの親”である。衆院選で圧勝した後に工程表をとりまとめたといわれる。中西輝政京大教授、八木秀次高崎経済大教授らが主張する、国防軍創設を柱とする憲法改正工程、限定的集団的自衛権行使容認、例外設けたTPP参加、尖閣列島への公務員常駐、河野談話の事実上の撤回などが含まれている。きわめて右寄りの思想である。
もう一人、財務省出身で官房副長官である加藤勝信氏もキーパーソンである。加藤氏は加藤六月市という昔の政治家の女婿である。加藤六月市は安倍晋太郎氏の最側近であり、塩川氏、森嘉朗氏、三塚氏とならぶ。加藤六月の睦子夫人(勝信の義母)は晋太郎の洋子夫人(安倍の母)と姉妹に近い関係であり家族ぐるみのつきあいである。加藤勝信氏は東大経済学部から大蔵省、主計局主査となり、衛藤氏の下で「創生日本」の事務局長就任、安倍氏の演説草稿で手腕をふるい、返り咲きの安倍総裁下で総裁特別補佐となった。
この面々のほかに内閣官房参与となった官邸御意見番”7人衆”とも言える人物がいる。
一人は浜田宏一エール大名誉教授である。国債金融、金融緩和、日銀法改正をとなえている。本田悦朗、静岡県立大教授氏は、国債金融、大胆な金融緩和をとなえ、アベノミクスを支えている。
丹呉泰健氏は、元財務次官、読売顧問であり、何でもできる方である。小泉政権の補佐官であり、私が特命顧問をやっていた時によく連絡をしていた。藤井聡京大院教授は、国土強靭化計画を提唱された方で、建築、土木、経済などに精通しており異能な人である。谷内正太郎氏は元外務次官であり、外交政策立案で名をはせている。宗像紀夫氏(元名古屋高検検事長)氏は検察、警察のたてなおしとして、飯島勲氏(元小泉首相秘書官)は特命として活躍している。

(2)助言者とリフレーショニスト達
次に、デフレ脱却には金融緩和が必要と主張するリフレーショニスト人脈についてみていく。
金融専門家会合において、下記の方より金融政策や日銀人事で意見を聞いている。浜田宏一エール大名誉教授、本田悦郎静岡県立大教授、日銀副総裁として名前の挙がっている岩田規久男学習院大教授。そして、中原伸之氏(元日銀審議委員)、伊藤元重氏(東大教授)、
竹森俊平氏(慶應大教授)である。デフレ脱却には大胆な金融緩和が必要という意見で一致している。

(3)内閣
内閣については、民主党との人材力の差を見せつけている。挙党体制、総主流派体制である。まずは、ベテラン議員の重用し、麻生太郎元首相を副総理・財務大臣に、谷垣禎一氏前総裁を法務大臣に起用した。また、総裁選競争相手を閣僚に起用しているが、しかし難しいところにしている。林芳正氏は金融の専門家であり農業については素人であるが、:農水相として、TPPの参加問題にかかわることになった。TPPについては、参加決めても決めなくても批判の的となる。また、石原伸晃氏を環境相・原子力防災担当と原発問題で難しい所に起用している。
お友達内閣の批判を意識しているが、実際はお友達内閣である。菅、甘利氏は第一次安倍内閣の主要仲間であるし、官房副長官の加藤勝信氏、世耕弘成氏は9月の総裁選で安倍氏を支えた人物である。また、事務副長官である杉田和博氏は小泉時代に安倍氏が内閣副長官時の危機管理監であった人物である。

(4)党と政権
石破氏が幹事長である。昨年の総裁選で石破氏が地方票で一位であったこともあり起用している。しかし政権が発足して石破氏との確執がみられる。石破氏と安倍氏の面会は政権発足後、1月末までに数回のみである一方、麻生氏や甘利氏とは20回以上である。政権発足に当たって石破はほとんど相談に預からず、日々の日程はほとんどTV出演である。そういうことを本来はすべきではない。また、無派閥で党内基盤がないだけでなく、長老から不評を買っている。自民党を離党した経歴や、脱派閥を掲げていることもある。
また、女性の登用目玉ということで、野田聖子氏を総務会長に、高市早苗氏を政調会長に据えている。お目付として、二階俊博氏を総務務会長代行に、政調会長代理として塩崎恭久氏を据えている。
党の主要ポストは以上のような立てつけである。

(5)経済戦略と政策の執行体制
一番上の機関として、経済再生本部があり、安倍総理が本部長である。その直下にミクロの経済政策の司令塔として、産業競争力会議があり、甘利経済財政再生相が担当である。岡素之氏(住友商事相談役)、竹中平蔵氏(慶大)、長谷川閑史氏(武田薬品社長)、三木谷浩史氏(楽天社長)、新浪剛史氏(ローソン社長)ら10人がメンバーである。
その関連に「規制改革会議」として岡素之住友商事相談役が座長であり、規制官庁・業界・族議員の三位一体となった既得権の岩盤を崩し、市場解放・競争促進、新サービスと市場の創出めざす。
一方で経済財政諮問会議は、マクロ経済政策を統括中長期の財政運営の目標や予算編成の基本方針描く役割を果たす。 安倍総理を議長として、民間議員は小林喜光氏(三菱ケミカルH)、佐々木則夫氏(東芝社長)、伊藤元重氏(東大教授)、高橋進氏(日本総合研究所理事長)だけでなく、官房長官、甘利経済財政相、財務相、総務相、経済産業相、日銀総裁をメンバーとしている。
また、教育が大切として、教育再生会議を立ち上げ、安倍首相と下村博文文科相が担当している。

(6)安倍首相の健康問題
退陣の直接の原因は潰瘍性大腸炎だったが、新薬「アサコール」でコントロールしているといわれる。ただし、アサコールは特効薬ではないので、完治はしていない。衆院選中12人の党首のうち、風邪を惹いたのは安倍氏ひとりである。疲労しやすい懸念がある。

« 2013年3月 | トップページ | 2013年6月 »