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政局と政治の展望

現在、日本の政治は消費税問題を中心に混迷が深まり、なかなか展望がひらけない状況にある。日本の社会の閉塞感には、政治のこのこう着・混迷状態が深くかかわっているようだ。ちまたではそろそろ選挙だというムードが高まっている。私たちにとっては、今、一体何がどうなっているのか、どんな方向に事態が推移していくのか知りたいところである。今回はそうした私たちの関心に、一つの私なりの手がかりを提示してみたいと思う。

野田総理は、今や消費税に政治生命をかけるとまで言い切って頑張っている。彼を消費税引き上げに駆り立てているものは何なのか。一つは、ユーロ危機の教訓があるだろう。EUでは財政債務に苦しむギリシャがユーロ圏から脱落するのではないかとささやかれている。そのギリシャの政府累積債務のGDP比は150%台だが、日本の債務は216%にもなっている。ギリシャでは、政府債務が膨らんだために、ギリシャは債務を払えなくなるのではないかとの懸念がギリシャ国債を抱えた金融機関等に広がり、国債の価値が下がり、それは金融機関の自己資本を減価させた。金融機関を救済する財政支援にも限りがあったので、金融機関は貸し出し枠を縮小せざるを得なくなり、信用収縮が広がり、それが経済の足を引っ張るという悪循環が生まれた。

ギリシャなど欧州諸国では、消費税率は25%前後であり、これ以上の増税はし難い状況にある。日本は、消費税率がまだ5%なのでその気になれば消費税率を高めて累積債務問題を軽減させることができるのではないかと市場や国際社会は見ているようだ。日本政府は、「社会保障と税の一体改革」と称して、消費税値上げが年金・医療・介護・子育てなどの社会保障問題の改善に役立つと国民に期待を持たせているが、消費税が10%まで引き上げられても増収分はたかだか13兆円に過ぎず、社会保障改革に対してはほとんど焼け石に水の効果しか期待できない。それでも野田総理を消費税値上げに駆り立てている背景は、やはり日本がギリシャの轍を踏んではならないという思いだろう。

この消費税値上げ問題に対して、日本の政党や政治グループは様々な反応を示している。公明党は低所得層の支持者が多いので、消費税値上げには絶対反対の立場。その上で野田政権の命脈はそろそろ尽きると見ているようで、今や総選挙ムードに入っている。つまり、消費税値上げを否決して総選挙に持ち込もうという算段だ。

自民党は、消費税を10%に引き上げるというのはもともと自民党が言い出していたことなので、消費税値上げそのものには反対はしにくい。消費税引き上げはいずれにしても国民には不人気なので、ここは野田政権に消費税を値上げさせ、それを自民党は飲んだ形にして、野田政権が民主党のマニフェストを破ったという難癖をつけて総選挙に持ち込んで民主党政権を倒そうという算段のようだ。倒してしまえばもともと消費税値上げは必要なので、それは野田総理の置き土産ということになり、自民党は不人気の責任を免れることができると読んでいるのだろう。

民主党は消費税値上げについて党内の意見が割れている。小沢派は強く反対をしており、また民主党は総選挙になれば大敗することは明らかなので、できれば総選挙はしたくないと考えている。日本の国民から見れば誰が政権をとるにしても、日本経済の存続に必要な消費税値上げ、公務員改革、そしてなによりも、早く特例国債法案を通して、2012年度予算の執行体制を整えてもらわなくてはならない。特例国債法案が通らないと、日本財政はもう1〜2か月で資金繰りに行き詰まり、国家として立ち行かなくなるのだ。

さて、選挙になればどうなるのだろうか。ちまたでは民主党は現在の300議席から100ないし150に議席を減らすと言う見方がもっぱらだ。自民党は、現在の120から大幅に議席を増やす。特に前回の選挙で次点で破れた人たちが数十人再浮上すると期待している。しかし、政権を失って2年半、失われた180議席を復活するだけの力はもはや自民党にはない。

逆に、公明党やみんなの党は大幅に議席を増やすだろう。現在の2倍ないし3倍に増やすこともあり得る。そして世間の最大の関心は、大阪・橋下市長の率いる「維新の会」だ。「維新の会」は、現在国会議員がいないので、選挙を戦うにしても諸派の扱いとなる。最近、この問題に気がついた維新の会では、最低5人の国会議員を組織して政党となり、一気に力を広げようというもくろみをしているとされる。

既存政党に選挙民が幻滅し、失望していることは明らかなので、「維新の会」の呼びかけで既存の国会議員が維新の会による新党結成に走ることは火を見るより明らかだ。そうなると、維新の会の今の勢いだと爆発的な勢力になる可能性が強い。多くの選挙民は、自民党に失望したので民主党に政権交代の夢を託したが、それも酷く失望させられたので、その願望が維新の会に向かっている。

「維新の会」は、政治塾を立ち上げ1000人もの候補を擁立するとしているが、そのブレーンとして堺屋太一、上山信一、古賀茂明、高橋洋一などの人気の高い論客が表に目立っているが、実際には最強のブレーンは、浅田均大阪府議会議長のようだ。彼は京都大学卒、スタンフォード大学大学院修士課程修了、元NHK職員、元経済協力開発機構(OECD)職員(在パリ)の経歴を持つ静かな奇才で、大阪都構想も単なる政治的かけ声ではなく、抜本的な経済戦略でもある。

ただ、「維新の会」の勢いがいつまで続くのかは未知数だ。半年もすれば息切れするだろうという見方と、1〜2年はますます大きくなるだろうという見方がある。短期的な現象との見方に立てば、秋から冬には勢いが弱まるだろうから総選挙は来年が良いという見方になる。しかし、1〜2年猛威をふるうとなれば本当の力になる前の8月、すなわち自民党総裁選、民主党党首選の前が良いという見方になる。総選挙はいつが良いかは「維新の会」の力をどう見るかで思惑が複雑に入り乱れているようだ。

このような政治状況は、自民党が長期政権の座にあぐらをかいているうちに選挙民から飽きられ、呆れられ、選挙民がその衝動で民主党に政権を託したが、民主党政権の稚拙さに日本が大変なコストを払わされ、国民の不満が渦巻く中で起きている現象だ。

民主党にも大きな可能性を持ち、知性豊かな優れたリーダーの候補がいる。その一人である岸本周平氏によれば、当選数回で大臣を経験したような議員の中に、勉強し、経験を詰み、将来の有望なリーダーになり得る人々が確実にそして急速に育っているという。自民党にもそうした人々はいる。これらの人々が政界再編の波の中で新しい集団(政党)を作って、国民の付託に応えてくれる日が一日も早く来る事を祈りたい。

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