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2012年5月

政局と政治の展望

現在、日本の政治は消費税問題を中心に混迷が深まり、なかなか展望がひらけない状況にある。日本の社会の閉塞感には、政治のこのこう着・混迷状態が深くかかわっているようだ。ちまたではそろそろ選挙だというムードが高まっている。私たちにとっては、今、一体何がどうなっているのか、どんな方向に事態が推移していくのか知りたいところである。今回はそうした私たちの関心に、一つの私なりの手がかりを提示してみたいと思う。

野田総理は、今や消費税に政治生命をかけるとまで言い切って頑張っている。彼を消費税引き上げに駆り立てているものは何なのか。一つは、ユーロ危機の教訓があるだろう。EUでは財政債務に苦しむギリシャがユーロ圏から脱落するのではないかとささやかれている。そのギリシャの政府累積債務のGDP比は150%台だが、日本の債務は216%にもなっている。ギリシャでは、政府債務が膨らんだために、ギリシャは債務を払えなくなるのではないかとの懸念がギリシャ国債を抱えた金融機関等に広がり、国債の価値が下がり、それは金融機関の自己資本を減価させた。金融機関を救済する財政支援にも限りがあったので、金融機関は貸し出し枠を縮小せざるを得なくなり、信用収縮が広がり、それが経済の足を引っ張るという悪循環が生まれた。

ギリシャなど欧州諸国では、消費税率は25%前後であり、これ以上の増税はし難い状況にある。日本は、消費税率がまだ5%なのでその気になれば消費税率を高めて累積債務問題を軽減させることができるのではないかと市場や国際社会は見ているようだ。日本政府は、「社会保障と税の一体改革」と称して、消費税値上げが年金・医療・介護・子育てなどの社会保障問題の改善に役立つと国民に期待を持たせているが、消費税が10%まで引き上げられても増収分はたかだか13兆円に過ぎず、社会保障改革に対してはほとんど焼け石に水の効果しか期待できない。それでも野田総理を消費税値上げに駆り立てている背景は、やはり日本がギリシャの轍を踏んではならないという思いだろう。

この消費税値上げ問題に対して、日本の政党や政治グループは様々な反応を示している。公明党は低所得層の支持者が多いので、消費税値上げには絶対反対の立場。その上で野田政権の命脈はそろそろ尽きると見ているようで、今や総選挙ムードに入っている。つまり、消費税値上げを否決して総選挙に持ち込もうという算段だ。

自民党は、消費税を10%に引き上げるというのはもともと自民党が言い出していたことなので、消費税値上げそのものには反対はしにくい。消費税引き上げはいずれにしても国民には不人気なので、ここは野田政権に消費税を値上げさせ、それを自民党は飲んだ形にして、野田政権が民主党のマニフェストを破ったという難癖をつけて総選挙に持ち込んで民主党政権を倒そうという算段のようだ。倒してしまえばもともと消費税値上げは必要なので、それは野田総理の置き土産ということになり、自民党は不人気の責任を免れることができると読んでいるのだろう。

民主党は消費税値上げについて党内の意見が割れている。小沢派は強く反対をしており、また民主党は総選挙になれば大敗することは明らかなので、できれば総選挙はしたくないと考えている。日本の国民から見れば誰が政権をとるにしても、日本経済の存続に必要な消費税値上げ、公務員改革、そしてなによりも、早く特例国債法案を通して、2012年度予算の執行体制を整えてもらわなくてはならない。特例国債法案が通らないと、日本財政はもう1〜2か月で資金繰りに行き詰まり、国家として立ち行かなくなるのだ。

さて、選挙になればどうなるのだろうか。ちまたでは民主党は現在の300議席から100ないし150に議席を減らすと言う見方がもっぱらだ。自民党は、現在の120から大幅に議席を増やす。特に前回の選挙で次点で破れた人たちが数十人再浮上すると期待している。しかし、政権を失って2年半、失われた180議席を復活するだけの力はもはや自民党にはない。

逆に、公明党やみんなの党は大幅に議席を増やすだろう。現在の2倍ないし3倍に増やすこともあり得る。そして世間の最大の関心は、大阪・橋下市長の率いる「維新の会」だ。「維新の会」は、現在国会議員がいないので、選挙を戦うにしても諸派の扱いとなる。最近、この問題に気がついた維新の会では、最低5人の国会議員を組織して政党となり、一気に力を広げようというもくろみをしているとされる。

既存政党に選挙民が幻滅し、失望していることは明らかなので、「維新の会」の呼びかけで既存の国会議員が維新の会による新党結成に走ることは火を見るより明らかだ。そうなると、維新の会の今の勢いだと爆発的な勢力になる可能性が強い。多くの選挙民は、自民党に失望したので民主党に政権交代の夢を託したが、それも酷く失望させられたので、その願望が維新の会に向かっている。

「維新の会」は、政治塾を立ち上げ1000人もの候補を擁立するとしているが、そのブレーンとして堺屋太一、上山信一、古賀茂明、高橋洋一などの人気の高い論客が表に目立っているが、実際には最強のブレーンは、浅田均大阪府議会議長のようだ。彼は京都大学卒、スタンフォード大学大学院修士課程修了、元NHK職員、元経済協力開発機構(OECD)職員(在パリ)の経歴を持つ静かな奇才で、大阪都構想も単なる政治的かけ声ではなく、抜本的な経済戦略でもある。

ただ、「維新の会」の勢いがいつまで続くのかは未知数だ。半年もすれば息切れするだろうという見方と、1〜2年はますます大きくなるだろうという見方がある。短期的な現象との見方に立てば、秋から冬には勢いが弱まるだろうから総選挙は来年が良いという見方になる。しかし、1〜2年猛威をふるうとなれば本当の力になる前の8月、すなわち自民党総裁選、民主党党首選の前が良いという見方になる。総選挙はいつが良いかは「維新の会」の力をどう見るかで思惑が複雑に入り乱れているようだ。

このような政治状況は、自民党が長期政権の座にあぐらをかいているうちに選挙民から飽きられ、呆れられ、選挙民がその衝動で民主党に政権を託したが、民主党政権の稚拙さに日本が大変なコストを払わされ、国民の不満が渦巻く中で起きている現象だ。

民主党にも大きな可能性を持ち、知性豊かな優れたリーダーの候補がいる。その一人である岸本周平氏によれば、当選数回で大臣を経験したような議員の中に、勉強し、経験を詰み、将来の有望なリーダーになり得る人々が確実にそして急速に育っているという。自民党にもそうした人々はいる。これらの人々が政界再編の波の中で新しい集団(政党)を作って、国民の付託に応えてくれる日が一日も早く来る事を祈りたい。

私の新しい本について

このたび、私の新しい本を発刊することになった。原稿は5月の連休までに書き終え、今、出版社の編集者の手元にある。出版社は東洋経済新報社で、上梓はおそらく7月になるだろう。

新しい本のタイトルは出版社がつけることになっているが、本の内容をふまえると、私なりの仮のタイトルは「日本経済再生の要件」ということにしている。おそらく出版社はもうひとつ魅力的なタイトルを考えてくれるだろう。

本の趣旨は、日本経済がこの20年間ほど長期デフレに苦しみつつ衰退傾向をたどって来ていることは誰の目にも明らかと思われるが、かつて第二次大戦後の廃墟の中から不死鳥のように甦り、世界第二の経済大国と畏敬されるまでになった日本としては、近年の低迷と閉塞感は、あまりにも残念である。日本人なら誰もそう思うだろう。

野田政権の下で、政府は、財政規律の回復や成長戦略あるいは再生戦略などを掲げ、それなりの努力をしているが、とりわけ重要な成長戦略については、私見では、政府案では根本的な構造的疾患にメスが入っていないため、成長実現のための政策案が上滑りしているように見えてならない。本書では、成長戦略のためにはまず複雑な疾患が複合している日本経済の根本問題にメスを入れ、そこから適切な処方箋を描くことを意図している。その意味で、”再生の要件(prerequisite for recovery)なのである。本質的な構造問題にメスを入れていない、という意味で、本書は、現在の政府の取り組みにかなり批判的な見解を展開している。

今朝(2012年5月14日)、東京のアークヒルズクラブで、興味ある朝食会が開かれた。「世界経済フォーラム」のGlobal Agenda Seminarと銘打たれた「特別朝食セミナー」である。その席には、今や、日本政府の経済政策運営全般を取り仕切る立場にある古川元久経済財政担当相、以前、小泉政権でその立場におられた竹中平蔵氏、前JAICA理事長の緒方貞子氏、船橋洋一氏、田中明彦氏、竹内弘高氏など錚々たる論客が参加をされていた。古川氏は日本が多くの問題を抱え世界史でも前例のない挑戦に直面しているとされたが、その後、日本の世界における位置づけと役割について、アメリカ(とくにHarvard大学など)では日本の資本主義をwise capitalismとして期待する面があり、また日本の国際貢献も多様に展開しており、日本への新たな関心が高まる兆しが見えるという観察がいくつも提示された。

日本国内では、日本について悲観論や批判の声が高いが、日本の外ではむしろ日本に期待する声が高いという指摘は新鮮で面白い対照である。このセミナーの後に、知日派の旧知のアメリカ人(経営学者)とざっくばらんな会話をする機会があった。彼はアメリカの多くの知識人がそうであるように、アメリカの近年の政治や経済運営には失望をとおりこして怒りを抑えられない心境のようだ。たしかに、リーマンショックではアメリカが営々として築いた資本主義経済の蓄積を瓦解させてしまったし、世界中で戦争を繰り返してその犠牲を国民に強いている。私がアメリカ市民としてアメリカへの愛国心をもっていたらおそらく度し難い怒りに燃えるだろう。

私の新著はその意味で、私の愛国の書でもある。日本人であるからこそ、日本の低迷と衰退、指導力と気概のなさに慨嘆せざるを得ないし、また、日本には再生の可能性と潜在能力が十分にあると考えるからこそ、いまのふがいない状況を看過できないのである。本書では、現在の日本をしっかり批判したうえで、日本再生のための要件を処方箋を詳しく提示している。

本書は、以下の、12章から成る。
 1. 激変する世界経済環境と日本
 2. 再生をめざす日本:政府の取り組み
 3. 日本の複合疾患:負の遺産
 4. 進化の止まった日本システム
 5. 生かし得た大震災の試練
 6. 国民に安心(年金)と希望(雇用機会)を
 7. 新たなエネルギー戦略
 8. 新時代の国際立国
 9. 戦略農業のすすめ
10. 医療を強力な成長産業に
11. 住宅産業の大きな可能性
12. 観光産業躍進のために

これから、このブログで、本書の要点を適宜紹介していきたいと思う。おつきあい戴ければ幸いである。

太陽エネルギー革命のすすめ

原子力や化石エネルギーにかわる第三のエネルギー源として期待されているのが、太陽エネルギーにもとづく再生可能エネルギーである。

再生可能エネルギーは大別して6種類ある。水力、太陽光、風力、地熱、バイオマス、潮力・波力などである。これまで私達が使ってきた石化燃料や原子力のもとになるウランなどは、有限な資源である。確認されている可採年数は石油が41年、石炭が150年、天然ガスが65年(シェールガスを入れると150年)、ウランが85年にすぎない。これに対し、太陽エネルギーは少なくとも今後150億年は消滅しないと推計されている。言い換えれば、太陽エネルギーは私達が考えられる限り無限のエネルギーなので、それをもとに派生する上記の6つのエネルギー源が再生可能エネルギーと言われる所以である。

ところが、原発マフィアたちは、再生エネルギーは単位費用が高過ぎるし、実際に使えるようになるまで何十年もかかるので、現実的な選択肢ではないと言い続けてきた。その主張もまた、原発を推進したいあまりのマフィアたちの偏った主張である。彼らがしばしば言及するコスト比較では、原子力はkw/Hあたり5〜6円であるのに対し、太陽光は49円、風力は10〜14円、水力は8〜13円、火力7〜8円(『エネルギー白書2010年』)とされる。

日本の54基(うち福島の4基は廃炉)の原発の大半は30ないし40年と古く、原価償却期間を過ぎているので、当然運転コストは現時点でみれば、ほとんどタダのように安いはずだ。しかし、建設費や事故処理費や賠償費や使用済み核燃料の処理費などを考慮に入れれば、少なくともこの5〜6倍にはなる。一方、太陽光は発電設備に費用がかかるが、運転費そのものは原則ゼロである。すなわち、マフィアのコスト比較とは、何を比較しているのかが初めから明らかでないし、妥当でもない。2012年4月25日、経済産業省の有識者委員会が再生可能エネルギー電力買取り価格の基準を示したが、そこでは太陽光発電力は42円とされた。これは国際的にみると極めて高い。中国や欧州では、20円台になっている。太陽電池の発電装置は、いわば大型家電のようなもので、大量生産をすれば値段が下がる。また技術革新でも値段が下がる。現在の国際市場の傾向からみれば、日本でもほどなく適性な原価は20円前後になるだろう。そうなれば、設備費や事故対応なども考慮した原発の電力単価よりも太陽光電力は安くなる。しかももともと稼働率の高い風力や地熱はもっと安いのであるから、価格面からみて再生可能エネルギーは十分現実的な電力源というべきである。水力発電は日本の場合、大規模ダムが多く整備されているが、土砂が貯水池に溜まるなど投資効率が悪化しており、環境破壊も懸念されるので、これからの活用は小規模水力発電に限られるだろう。

諸外国では、これらの再生可能エネルギーの活用が急速に進んでいる。ドイツは太陽光発電などで総電力の35%(フランスからの電力輸入を割り引いても25%)、デンマークは風力で20%を賄い、2030年には50%を賄う予定。ニュージーランドは水力と地熱で2025年までに90%を賄うほど活用が進んでいる。

太陽光発電には、発電パネルなどで非常に広い地面(原発一基分の電力をつくるには、東京の山手線圏内約58km2をパネルで敷き詰めるなど)を必要とするので現実性がないと原子力マフィアは言う。ところが、日本には耕作放棄地が1010km2、使われていない工場団地169km2、ゴミ処分場46km2、河川172km2、鉄道127km2、海岸169km2の空いた空間があり、これらを太陽光発電に利用すれば、総出力は7600万〜9400万kw/Hを発電できる。これは原子炉で76ないし94基に相当する。ここで使われるソーラーパネルを地上10メートルないし20メートルの高架式でスノコ型のパネルにすれば、太陽光をあまり遮らずにその地面は農業や生活空間に十分使える。言い換えれば、空間利用の面でも再生可能エネルギーの現実性は極めて高いということだ。風力は、微震動が嫌われるが、海上にメガフロートを浮かべて風力発電機を浮かべれば解決する。火山国の日本は世界第三の地熱エネルギー国とされるが、国立公園では地熱発電所建設に対する反対が強い。この際、地熱発電所のないところは、国立公園とは認定しないとするくらいの発想の転換をしてはどうか。温泉旅館が困るというなら、発電所からあたたかい原湯を配給してはどうか。

以上のように、再生エネルギー発電の技術は既に十分実用化水準になっており、価格面でも空間利用の面でも十分に実現性がある。かつて日本は石油ショックの反省から、サンシャイン計画を唱え、再生可能エネルギー技術が大いに発展し、世界をリードした時期があった。その動きは原発マフィアの圧力にかき消され、今や再生可能エネルギー利用では日本は世界の後進国になってしまっている。しかし技術も条件も充分にある日本は、「太陽エネルギー電力立国」という目標を国民が共有し、正しく強い政治指導力があれば、その遅れを取り戻し、原発にも頼らず化石燃料にも頼らない未来志向の国としてその範を世界に示せるはずだ。

原発ゼロ問題にどう対処するか

2012年5月5日夜、日本で唯一稼働していた北海道の泊原発が検査のために停止をした。東日本大震災以前までは、日本の総電力供給の30%近くを原子力発電が担っていた。その原発が全て停止ということになると、今年の夏は深刻な電力不足に陥り、節電生活や停電の不便も避けられないだろう。電力制約のもとでますます多くの企業が生産活動を海外に移転するだろうし、フル稼働させる火力発電の原燃料コストは急騰するだろう。

実際、日本の化石燃料輸入額は、2000年代初頭には7兆円台だったのが、リーマンショック直前には24兆円になっていた。リーマンショック後の超円高で輸入額は3割ほど減ったが、それでも増え続けており、もしかつてのような円安なら今年の輸入額は30兆円にも上ることになる。深刻なエネルギー制約のもとで、生活の質は低下し、経済は収縮する恐れがある。

原発問題の諸悪の根源は、原発マフィア(電力企業、政府、その他の関係者)が喧伝してきた『安全神話』である。日本は、技術や管理が優れているので原発は安全だという刷り込みである。ところが福島第一原発事故を見て、人々はそれが許しがたい欺瞞であり虚構であることを嫌というほど思い知らされた。裏切られたと信じている国民の信頼を回復するにはどうすれば良いかが問われているのだ。

政府は大飯原発の再稼働を巡って、素人の政治家が2日間で安全基準を揃えた。ストレステストの結果が妥当と「安全委員会」が判断したからだという。ストレステストとは、現状の施設にショックや熱や圧力を加えた時にどれほど耐性があるかを調べるテストである。福島第一原発事故からも容易に想像されるように、巨大な津波が原発を襲った時に耐えられるか、というテストではない。しかも、原子力マフィアの一翼である「安全保安院」や「安全委員会」の見立てであって、専門能力を持った中立・公正な機関の判断ではない。

国民の理解と納得を得るには、少なくとも、
1)SAM(Severe Accident Management/深刻災害基準)の厳格な整備、
2)想定外の深刻な災害を想定した訓練、
3)電力会社内部ならびに関係機関の間の透明迅速な情報共有の体制、
4)津波の届かない高台もしくは高い防壁に守られた原発及び非常電源等の設置、
5)古く、劣化した原子炉を第三世代の最新式の原子炉で置き換える、
6)使用済みもしくはトラブった核燃料の中間処理と最終処理の展望を示す、
のような対応を明確に国民に示し、実行して見せることである。

電力会社に安全対策の行程表を提示させるといった安全基準で国民が安心するはずはない。国民の不信を解き、原発再稼働に賛成させるには、総理大臣の陣頭指揮のもとでの政府の強力なリーダーシップと実行力が問われているのである。

以上は日本経済にとって必須の原発再稼働のための条件である。しかし、原子力は「悪魔の火」とも言うべき本来危険きわまりないエネルギーである。できれば悪魔の火を使わないで済む社会を一日も早く実現すべきだ。高価な輸入石化エネルギーにも頼らない手段は、太陽エネルギーから来る再生可能エネルギーの活用である。これについては、また改めて述べたい。

フランス・オランド大統領の誕生の意味

5月5日のフランス大統領選出の決選投票で、フランソワ・オランド氏が現職のサルコジ大統領を破り、17年ぶりに社会主義者の大統領が誕生することになった。これは、欧州の財政金融の舵取りを巡って私たちにも影響のあることなので、その意味を考えてみたい。

オランド氏は選挙戦中からサルコジ大統領の緊縮財政路線を批判し、経済成長が大切で雇用を創出すると主張して選挙民の支持を得てきた。一方のサルコジ大統領はドイツのメルケル首相と組んでユーロ圏の債務危機を乗り切るために、ユーロ圏全体で財政規律を強める緊縮財政路線を進めてきた。サルコジ大統領のユーロ圏債務危機対応策は、多くの国民には辛く苦い薬ではあるが、それが原因で選挙に負けたわけではなさそうだ。サルコジ大統領と仕事をしたことのある私のフランスの友人は、彼の最大の難点はフランス国民が大統領に期待する教養と文化の香りがないことだと言う。目的のためには手段を選ばぬ狡猾な男、というイメージもあってフィナンシャルタイムス紙(5月6日)によるとオランド氏の最大の政治資産は、サルコジ氏の評判が悪いことの一点に尽きるという。

2012年3月に署名されたユーロ圏の財政条約は、財政規律強化路線の象徴ともいえる。オランド氏は、その財政条約の見直しも考えたいと唱えてきたので、メルケル首相は公然と隣国の大統領選挙に対して干渉まがいとも言えるサルコジ支持を強く打ち出していた。オランド新大統領は、近々ドイツを訪問し、緊縮財政の見直しを迫ると伝えられているが、ユーロ危機対応策で欧州の財政規律主義が後退するかあるいは対策運営が混乱することは避けられないだろう。

オランド氏の成長戦略が成功するなら話は別だが、すでにGDP比で86%もの累積財政赤字を抱えるフランスで、財政支出を増やし富裕層の限界税率を75%まで増やして雇用を創出するというオランド氏の主張が経済戦略として成立するとは思えない。欧州の財政規律が緩めば、また諸国の国債価値が崩落し、金融機関の債務が増え、金融収縮を起こし、それが世界経済全体に波及する恐れが大きい。オランド氏は、欧州中央銀行がもっと積極的な役割を果たすべきだと主張しており、積極的な金融緩和策が投資需要などを刺激する効果も経済的にはあり得るが、それは実体的な成長につながるか不透明な部分が多い。

フランスの新大統領が、財政規律の強化で歩調を合わせて債務危機に取り組んできたユーロ圏の戦略を混乱もしくは後退させることは避けられず、私たちはその行方を警戒しつつ見守っていく必要があるだろう。

御挨拶

このたび、ブログを始めることにしました。

実は、私は英文のブログをしばらく書いておりますが(http://www.haruoshimada.net/blog/)、頻度が少ないので、もっとリアルタイムで皆様と交流をするためにブログ「話題の泉」を始めさせて戴くことにしました。

もしよろしければブックマークをして時々御覧戴ければ有難く思います。

島田晴雄


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